山崎先生の運用記です.記されている時間は特に断りのない限り現地時間です.(10月末よりは冬時間になり、UTC + 1 hr, JST - 8 hr となりました.)


PAとONで共同開催されたEuro 2000(サッカー・ヨーロッパ選手権)を観戦するために、PAの友人宅を訪れました。大のYUファンの私はYUのユニフォームのレプリカを着て、この日の夕方LA vs YUを観戦しました。

Magic Band in Sweden (31)



編註;先生からいただいた音声ファイル(AIFF形式)は
小生がMP3形式に編集しております.概ね100KB以下です.

なおビーコンにつきましては、こちらにまとめてあります.

2002.11.18 (Mon)

私は密かにある作戦を立てていた。名付けて「チェコ・スロバキアに架ける橋」。今夜から明朝にかけて訪れるしし座流星群によるMsで、未交信のEU entitiesをgetする大作戦だ。標的としてはOK, OM, HA, ER, LX, OY, GD, GJ等が挙げられるが、これら のentitiesにおける50MHzのアクティビティーを考慮すると、OKとOMのふたつを標的 にするのが最も妥当と考えられた。流星群は明日の02:00頃から急激に頻度を増し、04:30頃をピークに07:30頃まで続くと予測されている。そこで、深夜に研究室へ向かい、屋上で一晩を明かすという決死の大作戦を計画したのである。しかし、唯一の不安は橋の長さ(Msの伝搬距離)である。夏場のEsシーズンを迎えたとき、マルメから 700 - 800kmほどの距離にあるOKとOMは、Esで簡単に交信できると期待していた。ところが、JAとSM7ではEsの性質が少々異なるらしく、OK, OMはSM7からEsでQSOするには近すぎることが判明した(SM7で聞くEs参照)。果たして、今夜のMsで見事OK, OM に橋は架かるのか、それとも、Esと同様にOK, OMはスキップしてしまい、「遠すぎた橋」となってしまうのか。期待と不安は徐々に高まりつつあった。一晩徹夜するからには、当然、その前後の仕事のやり繰りが問題となる。今日は明日の分まで仕事に徹すると決め、余程のことがない限りQRVしないことにした。
午後の休憩時間にWeb Clusterを見ると、どうやら流星群の先発隊が既に届いているようだ。SP-S5がスポットされている。さらに注意深く情報を見ると、「何ぃ? OY-OZ, OY-SMだと!?」アクティビティーの点で今夜の標的から外したOYが、何とMs先発隊で入感したらしい。 「やられた!!」しかし、今ここで仕事の手を休める訳にはいかない。「作戦遂行のためには多少の犠牲はやむを得ない!」そう自分に言い聞かせ、そのときはアンテナ作業を思い止まった。しかし、その直後、そんな私を鼻で笑うかのように、OZ西部からTR8CAのレポートが、、、。アンテナを立てておかなかったことを少々後悔したが、「これは罠だ!」、「SM7で聞こえているという保証はない!」と何度も自分自身に語りかけ、ここでも仕事を優先した。午後遅くにオーロラのアクティビティーを チェックすると、比較的高い値(level 8-9)を示していた。「これはAuとMsが同時にオープンするかもしれない!」私の期待は指数関数的に高まった。18:30に一旦帰宅し、いつもより早く夕食もシャワーも済ませた。深夜まで数時間の仮眠を取るつも りであったが、Auのことが気にかかった私は、寝る前に少しだけWeb Clusterを見ることにした。何と、そこには再びOY-OZがAuで報告されているではないか!私は一気に自身を失った。「いつも通りにQRVしていれば、昼間のOYかTR、または夕方のOYのどれかひとつはQSOできたのではないか?」今さら考えても遅いことはわかっていたが、あれこれと悩み始めてしまった私は眠れなくなり、予定より早く22:00に自宅を出ることにした。研究室に着いて早速アンテナ作業を始めたが、空は厚い雲に覆われて星は全く見えない。まずビームを北へ振ってAuをチェックする。しかし、Auは既に跡形もなく消えていた。次にアンテナを南へ向けてMsのシグナルを探したが、20分ほど粘ってみても一発のバーストも捕らえることができなかった。「本当に大丈夫なのか、、、?」暗い夜空の下で、自分がとても小さく感じられた。

2002.11.19 (Tue)

およそ30分おきに屋上へ上がってはワッチを繰り返したが、依然としてMsのバース トを受信できない。「みんな今は睡眠中だ」、「流星群のピークまではまだ時間がある」と呪文のように何度も繰り返してみたが、私の不安は大きくなるばかりであっ た。「こんなバカらしい作戦やめようぜ!」、「すぐに帰って暖かいベッドで寝よう!」私の耳元で悪魔がささやき始めた。その悪魔の言葉にあと一歩で誘惑されそう になった頃、Web ClusterにMsと思われるレポートがポツリ、ポツリと上がってきた。「ここまで来たら、もう後には引けない!」私は腹をくくった。02:00頃、屋上に出てみると、それまでの曇り空が嘘のように満天の星空が広がっていた。この時期のSM7で星空が見えることは珍しい。私に再び自信が芽生えてきた。そして、02:45、 東の空に流れる星を3個連続して発見した。「いよいよ作戦決行のときがきた!」 02:49、50.135で遂に弱いMsのバーストを初めて捕らえた。「どこだ?」注意深くワッチしていると、そのシグナルは一気に55まで上昇した。「CQ Ms, OK1FRG, OK1FRG.」いきなり目標のOKをキャッチ!あわててマイクを鷲づかみにして叫んだ が、その気合いも空しくOK1FRGはすぐに消えてしまった。「どうしてもこの局をget したい!」私は少々姑息な手を思いついた。Web ClusterにOK1FRGをスポットして、 「SM7XQZ 50.135 OK1FRG, clg U!」と書き込んだのである。彼がこのレポートを見てくれれば、チャンスは一気に膨らむと考えた。屋上に戻ってVFOのひとつを50.135にセットし、もうひとつでバンドを何度もスキャンしながら、次のバーストを待った。 VFOを頻回に切り替えてワッチすることしばし、03:03、50.165で強いシグナルを発見 した。「CQ Ms, OK1FRG, OK1FRG.」彼はいつの間にかQSYしていたようだ。強いバーストに何局かが一斉に群がるようにコールする。私は一瞬コールするのが遅れてしまった。「今回はピックアップされないだろう」、「次のバーストで勝負だ!」そう思った瞬間、「SM7XQZ, UR 59, JN79.」と返ってきた。予想外の結果に驚いたが、 「Roger, UR 59 too, JO65, 73!」と返し、ここに無事1st OKをgetした。「やった!!」深夜の屋上で、私は誰はばかることなく大声で喜びを表現した。このバーストは1分以上続き、この間に数局がQSOを成立させた。この後、またバンドは静かに なってしまったため、一旦6階へ下りてWeb Clusterで情報を得ることにした。そこ には、「OK1FRG 50.165 SM7XQZ, i am here now, frq is clear qrm」という書き込みがあった。OK1FRGは私のためにQSYして待っていてくれたのであった。彼の書き込みを見た数局が50.165で待機していたため、バーストと同時にパイルとなったのではないだろうか。屋上ではWeb Clusterを見ることができないため、彼の書き込みに気付いたのはQSOの後であったが、彼の気持ちが本当に嬉しかった。これで、MsではOKが射程距離に入ることが判明した。よって、アクティビティーさえあればOMともQSOできることがわかり、私の眠気は一気に吹き飛んだ。張り切ってワッチを再開する と、夜空を流れる星の数に比例してバーストの数も徐々に増えてきた。03:15に2匹目の獲物SP2MPOを釣り上げ、さらにSM3UZS, SP1UOP, S52SK, OK1KT, S59A(追伸1) と、ほぼ10分おきにgetした。流星群のピークの予測通り、04:30頃からバーストが さらに頻回になり、また複数のバーストが重なってMsのシグナルが長く(2分近く) 入感することも多くなった。G8BCG/P(ex H44PT、懐かしい!), ON4LO, S51IV, IZ2AAJ, G1YLE(以前Au, Esで交信), SP6GZZ, S59MA, ON4ANT(以前Auで交信), IZ1EPMと数分おきに連続してQSO。
そして、遂にその時はやってきた。05:03、50.127でCQ Msを出すOM3IDを発見!すかさずコールしたが応答がない。しかし、次のCQまでに若干の沈黙があったことから、彼は誰かにコールされたことには気付いている様子だ。ところが、再度呼んでみたが今度もコールバックはない。「彼のビーム方向が悪いのか?」先のOK1FRGのときのように、Web Clusterにメッセージを書き込むことも考えた。3回目のCQは様子を見ていると、私以外の誰かがコールしたようだ。すると、OM3IDは「Hum... CQ DX...」とコールし始めた。どうやら彼はEUとは交信したくないらしい。確かに彼がQRVしている50.127は厳密にはDX windowである。しかし、Es 等でバンドが混雑しているときは、50.120付近まではEU内でのQSOがしばしば行われている。強引にもう一度コールするかどうか迷っていたら、いつの間にかOM3IDは消えて(QRT?)しまった。「まあ、仕方ない」気を取り直してスキャンを再開し、1時間ほどの間にOK1MP, S51DI, DL5RBW, F1PUX, ES4EQ(以前Es, Auで交信), ES5AM, S56WKT, DK1MAX(以前Esで交信), G0UYC, G3WOS, I4YSS(以前Esで交信)を追加し た。06:00を過ぎると、バーストの間隔も少しずつ長くなってきた。「もう流星群の ピークは越えたな」そう思ったときであった。06:25、50.136でOM8NYのCQを発見。こ の周波数はDX windowではない。間違いなくEU内のMs QSOを目的としたCQである。今日一番の気合いを入れてコール!しかし、何局かが同時にコールしていてパイルに勝 てない。今夜はOM各局のアクティビティーが低かったため、かなり人気があるよう だ。最初のバーストでは手も足も出なかった。息を潜めて次のバーストを待ったが、 OM方向だけなかなか開かない。何と、次にOM8NYのシグナルを捕らえたのは30分後 のことであった。今回もまあまあのパイルになっている。「逃がしてなるものか!」 再びマイクに向かって叫ぶ。「ORZ?, SM again?」それは3回目のコールであった。 「Yes!!」慎重に2回コールサインを繰り返してスタンバイ。しかし、ピックアップされたのは私ではなくSM0某局であった。結局、今回もコールバックはなく、無情にもOM8NYはその姿を消した。さらに30分ほど粘ってみたが、OKが強力に入感しているバーストでもOM8NYは全く聞こえない。「QSYしたのか?」不安になってWeb Clusterをチェックしてみると、やはりOM8NYは50.110に出没していた。しかも彼自身がEX8MLEをスポットしている。こうなった以上、彼とQSOするのは無理だろう。以前 (2002.02.27)Scで彼のシグナルを聞いているが、そのときも一旦「CQ DX」と打ち始めた後は、EU内からのコールは完全に無視されていた。後は他のOM各局が出てきてくれることを祈るしかない。私は再びダイヤルを回し始めた。LA4LN(以前Sc, Auで 交信), S57M, SP6NVN(以前Auで交信), YO7LLEと交信したところで、東の空が明る くなってきた。「そろそろDXの入感にも注意が必要だ」そう考えてバンドの下の方へ行くと、50.110で強いCWが聞こえている。何とそれは、OM8NYのCQであった。誰かEU某局がコールしたが、OM8NYは「PSE DX」とだけ打ち返した。数秒後、OM8NYがCQを再開したが、「CQ」と打つだけで「CQ DX」とは打っていない。「どうする、コールしてみるか?」たとえDXと指定しなくても、50.110で出されたCQがEU向けである訳がない。きっと無視されるに決まっている。「でも、これが最後のチャンスかもしれな い、、、」そう思った瞬間、彼がスタンバイした。「あっ!」それは一瞬の出来事で あった。頭がまだ悩んでいるうちに、手が勝手に動いてしまったのである。「S」と打ってしまったところで私は覚悟を決め、「M7XQZ」と続けた。すると、「7XQ AGN」 と返ってきた。もう逃げる訳にはいかない。2回コールサインを繰り返してスタンバイした。私は、無視されるか、「PSE DX」だけが返ってくるものと予想した。「格好悪い!」、「いい恥さらしだ!」私は自分の愚かな行為を後悔した。ところが、OM8NYは「SM7XQZ, UR 599, JN98, BK.」と打ってきた。「えっ!?」私も夢中で打ち返す。「R, R, UR 559, JO65, BK.」、「R, TU, E, E.」、「E, E.」何と訳がわからぬうちにQSOは成立してしまった。おそらく私のQSOを聞いていたであろうEU各局が、一斉にOM8NYをコールし始めた。そして、OM8NYもこれに応じているではないか。私はこの事態を以下のように推察した。OM8NYは私のコールサインを1回でフルコピーできなかったため、DXかもしれないと考えて応答した。ところが、いざ蓋を開けてみたら実はSMだったのであるが、応答してしまった以上、仕方なくQSOに応じてくれた。 そして、一旦私と交信してしまったので、他のEU各局を無視する訳にはいかなくなり、しぶしぶQSOに応じた。とすれば、念願のOMをgetしたのは嬉しいが、私のせいで彼に多大なる迷惑をかけたことになる。(その時点でDXの入感はなかったが、、、。)すぐにOM8NYにメールを送ってQSOのお礼を伝えるとともに、私のせいで迷惑をかけたことを謝罪した(追伸2)。
メールを書き終えて屋上に戻ると、いよいよ流星群も終盤が近付いたようだ。07:59のPA4PAとの交信で、しし座流星群Msはとりあえずお開きとした。当初の予定ではすぐに帰宅するつもりであったが、あまりにexcitingなMsを体験した私の脳細胞は、完全にハイな状態となっていた。私は何を血迷ったか、そのままいつも通りに仕事を始め、時々屋上へ上がってはワッチを続けたのである。我ながら、どうかしているとしか思えなかった(笑)。午前中はまだ流星群の名残があるようで、単発でMs QSOレポートされている。TF某局が何回もスポット されるので、試しにビームを北西に向けてみたが、そのシグナルは最後まで聞くことはできなかった。早朝にEXがレポートされた東方向のコンディションは、期待も空しくその後はいまひとつで、結局F2はオープンせずに終わってしまった。正午近くになり、さすがに私も疲れが隠せなくなった。アンテナを下ろしに屋上へ上がった際、タイミング良くMsの小バーストが重なり、S53EOとQSOすることができた。そのとき、 50.165でOK1FRGのCQもかすかに聞こえてきた。彼は私のために03:00頃に50.165にQSYして以来、一晩中そこでCQを出し続け、自分から他局を呼びに回ることはなかったが、正午になってもまだ頑張っているとは驚いた。途中で多少は休憩しているとは思 うが、延べ9時間である。その気迫には、ただ脱帽するしかなかった。

この日の成果


追伸1:

S59Aは私のコールに応答するや否や、いきなり「おはようございます」と日本語で挨拶して私を驚かせた。私も日本語で挨拶とレポートを送ったが、彼はすべて理解しているようであった。これがEsならば、なぜ私が日本人とわかるのか詳しく尋ねたいところだが、残念ながらMsではそんな時間もない。QSOの後で彼にメールを送って事の真相を尋ねたところ、やはり今回も「私の英語に日本語のアクセントを感じた」とのことであった。
追伸2:
夕方、OM8NYからメールの返事が届いた。彼も私の1st OMであったことを喜び、QSLカードの発行を約束してくれた。 (すぐQSLが到着した。上参照。)
追伸3:
HE9JVZ: 2002.11.19 の SWL card。SASE で請求があり感動しました。


Magic Band in Sweden (32) へ つづく



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