山崎先生の運用記です.記されている時間は特に断りのない限り現地時間(冬季なのでUTC+1時間,JST-8時間)です.


屋上の西側の風景。マルメで最も大きい公園があります。私はこの公園の向こう側に住んでいます。天気の良い日は、遠くコペンハーゲンを望むことができます。

Magic Band in Sweden (4)

編註;先生からいただいた音声ファイル(AIFF形式)は
小生がMP3形式に編集しております.概ね100KB以下です.

なおビーコンにつきましては、こちらにまとめてあります.



2002.02.05 (Tue)

昨夜から激しい雨が降り続いていた。「アンテナ作業が大変だな」、それを思うと、研究室へ向かう足取りが重くなる。意を決して屋上に出ると、何と数分前の大粒の雨が嘘のように小降りになっている。 「今日は何かよいことが起きそうだ!」、そんな予感がした。Web Clusterでも南部EUから、JA, ZL, V7, EXなどがレポートされている。これらが北部EUまで上がってくることを期待してワッチを続けたが、私の予感は最後まで予感で終わってしまった。SM7では、EY8CQが3分間だけ519で入感しただけだった。

2002.02.06 (Wed)


今朝も例の如く、屋上へ上がる前にWeb Clusterをチェックすると、 JA6からUN1SIX入感のレポートが上がっている。そう言えば、先日ScでJAが聞こえた日も、JAからUN1SIXが報告されていた。鈴木先生から「このビーコンが聞こえるか否かが、EUのオープンを占うカギ」 と聞いている。「よし!」と気合いを入れてワッチしたが、残念ながらその気合いは完全に空振りであった。ローカルの声さえ一度も聞こえなかったため、アンテナが接続されていないのではないかと疑ったほどである。今朝はWeb Clusterも無風状態。OM某局が50.110で延々とCQを出しているらしく、endless cq, why 110? とコメントされていた。私も暇つぶしに50.110をワッチしてみたところ、08:47 から1分間だけOM某局のシグナルを519で確認した。たったそれだけのことだが、今日初めてのシグナルに大満足。今日も例の大学院生の実験を指導する予定がある。アンテナを撤収する前に確認したところ、今回は失敗はないと言う。2回確認してから09:00にQRTとした。

2002.02.07 (Thr)


研究室のミーティングのためQRVせず。Web Clusterには何もレポートされておらず、たとえQRVしていても結果は想像に難くない。今日は 仕事に精を出すとするか。

2002.02.08 (Fri)

昨日頑張って仕事をし過ぎたせいか、それとも、同僚のノルウェー人から風邪をうつされたせいか、今日は少々体調が悪い。朝起きてすぐに自宅でWeb Clusterをチェックしたが、何か起きそうな雰囲気は全くなし。「今日はオープンしないでくれ!」、そう祈りながら もう一度ベッドへ戻った。どうやら、私の願いは通じたようだ。

2002.02.09 (Sat)


今日は所用のため自宅待機。50 MHzにQRVできない悔しさを、 FMレピーター衛星で癒すことにする。

2002.02.10 (Sun)


昨日EU-JAが弱いながらもScで(?)オープンしたとの情報があり、 今朝は非常に気合いが入っていたが、ここにきて突然の体調不良。 研究室がはるか遠くに感じられ、無理をせず自宅で休むことにした。 今までの私の運のなさを考えると、こんなときに限ってバンドがオープンするのではないかと予想していたら、本当にEU-JAのScがWeb Clusterにレポートされた。午後になって体調はやや回復したが、 時既に遅し(泣)。今日もFMレピーター衛星に慰めてもらった。

2002.02.11 (Mon)


3日間続けてQRVできなかったため、私の欲求不満は頂点に達していた。 夜明け直前からワッチを始めたが、全く何も聞こえてこない。 Web Clusterも完全に開店休業状態だ。ローカルのシグナルさえ 聞かないままQRT。また今夜も衛星に遊んでもらおう(泣)。


2002.02.12 (Tue)


ここ数日、私がワッチする日はバンドが開かず、ワッチしないと開くという不運(編注:BPMウィルスに感染(笑))が続いている。さて、今日はどうするか。朝起きてす ぐに自宅でWeb Clusterをチェックしたが、それらしき雰囲気は微塵も感じられない。「今日はダメか?、でも、これは罠かもしれない!」私はだんだん疑い深くなっていく自分に気が付いた。JG3LEB東口さんのホームページで6m日記をチェックすると、「東南アジアからEU方面はしばらく期待できるのではないか」という主旨のコメ ントを発見した。この言葉に励まされ、今朝も早くから屋上に上が ったが、昨日同様にローカルのシグナルさえ聞こえなかった。「こ のままワッチを続けても時間の無駄かもしれない」、そんな不安が頭を過ぎった直後、ひとつの名案が浮かんだ。今日は実験の予定は なく、コンピューターで今までの実験データーの整理をする予定であった。「データーの整理はいつでも中断できる」、「先に仕事を 始めて、Web Clusterに情報が上がったらQRVしよう」、私は1時間ほどでQRTした。しばらく仕事に集中していると、既に10:00となっていた。「一応アンテナだけは下ろしておこう」、そう思って屋上 へ上がり、作業を済ませて研究室に戻って来ると、何と私が作業中 にA45XRがEUの広い範囲からレポートされていた。この局とは既に QSO済みなので問題はないが、「何かが起こりそうな雰囲気」を強く感じさせた。その後、実験データーの整理に精を出すが、なぜか今日に限ってコンピューターが頻回にフリーズし、遅々として進まない。(編注;先生のお使いのコンピュータはiMac:MacOSは良く謎のフリーズを起こす) 無線どころではなくなり、必死にコンピューターと格闘していると、もう昼休みの時間であった。「休憩する前にWeb Cluster でもチェックするか」と気軽な気持ちでページを開いた瞬間、私は思わず前のめりになった。5U6W(ニジェール)がEU中からレポート されている!しかも、エリア指定するほどのパイルらしい! 「たとえQSOできなくても、ものすごいパイルだけでも聞いてみたい」、 私はすぐに屋上へと駆け上がった。急いでアンテナを立てて南へ向け、 ワクワクしながらワッチを開始した。バンドのあちこちで、EU各局がback Scで入感している。とても午前中と同じバンドとは思えなかった。ところが、5U6Wが出ているはずの周波数をしばらくワッチして みたが、全く何も聞こえてこない。あたかも、その周波数だけが50MHzではないかのようであった。「落ち込んでしまったのか、それとも SM7にはパスがないのか、、、」、
仕方なく5U6Wをあきらめてダイヤルを回すと、すぐにSSBのパイルアップを発見した。そう言えば、5U6W以外にも何かレポートされていたことは覚えていたが、あまりにも5U6Wに気を取られていたため、コールサインと周波数を確認していなかったのである。パイルの相手局のコールサインを待っていると、 「EA8/DJ1OJ, QRZ?」、「この前逃したカナリア諸島だ!」、ビームは45度ほどずれているが、十分すぎるほど強力に入感している。 今回は躊躇することなくマイクを握った。数回目にコールバックがあり、先日の借りを返すことができた。満ち足りた気持ちでさらにダイヤルを回す。すると、もうひとつ強いシグナルを発見した。 CT3HFであった。こちらもかなりのパイルになっている。私も負けじとパイルに参加し、数回目に無事ピックアップされた。「でも、CTってポルトガルだろ?」、「何でそんなパイルになるの?」、「CTが聞 こえるのに、どうしてEAは聞こえないの?」、例によって私は色々と考えながら、またダイヤルを回し始めた。すぐに3つ目のパイルを発見したが、相手の局もパイルも先ほどの2つと比べてかなり弱い。 「これが5U6Wか!?」、しばらくワッチしてみたが、相手の局はなかなかコールサインを言わない。そうこうしているうちに、 シグナルは徐々に弱くなっていった。こんな状況でコールしても ピックアップされないだろうと判断した私は、一度6階まで下りて Web Clusterを見ることにした。どうやら3つ目のパイルはCU2CEらしい。 「でも、CU2CEってどこ?」、すぐに私はプリフィックス一覧表で確認した。「なるほど、CUはアゾレス諸島か!」、私は一旦満足した。 しかし、次の瞬間、一覧表でCUのすぐ上にあるCT3というプリフィック スが目に入った。「えっ!?、CT3はポルトガル本土じゃないの!?」、 「マデイラ島、、、?」、「わかった!」、私はやっと自分の勘違いに気が付いた。北から順に、アゾレス諸島、マデイラ島、カナリア諸島。 今回はアフリカ大陸沖の大西洋上に浮かぶ島々のオープンであった。 そうとわかった以上、できることなら3つそろえてgetしたい。もう 一度屋上へ上がってビームを微調整してみたが、既にCU2CE(と思われる局)は蚊の泣くような声になっていた。そのとき既にCT3は完全に姿を消しており、その痕跡すら見出せなかった。EA8は一旦フェードアウトしたものの、再び強力に入感し始め、しばらくしてから突然姿を消した。地図の上では3つ並んだ島々であるが、シグナルの消え方が全く異なり、非常に興味深い。屋上でたっぷりと1時間楽しんだ。私は、その後は、気分も軽やかに仕事を再開した。面白いことに、 私のコンピューターは二度とフリーズしなかった。

この日の成果

2002.02.13 (Wed)


今日は最初から、昨日と同じ作戦で行くことにした。朝一番から仕事を始め、時々Web Clusterをチェックして、バンドがオープンし たら屋上に上がる計画であった。しかし、仕事が忙しく、結局一度も屋上へは上がらなかった。Web Clusterでは8Q7JE (OP. JE1NCP) がEU各地からレポートされていた。SM7で聞こえていたのかどうか、 自分の耳で確認できなかったのが少々心残りである。もしも聞こえていたら、「こんにちは!SM7XQZです、どうぞ!」と日本語でコールすれば、EUのパイルの中でも目立ったのではないだろうか。でも、 それって、卑怯かな?

2002.02.14 (Thr)


今日はミーティングの日である。本来ならばQRVしない日であるが、 朝一番のWeb Clusterが私を大きく誘惑した。JA, EUの双方から UN1SIX, EY8CQ, VU2LOがレポートされている。「今日は要注意だ!」、 私はミーティングが一刻も早く終わることを願った。ミーティング終了後、すかさずWeb Clusterをチェックすると、JA-OH, ONがSc でレポートされている!今日は帰りが遅くなる(仕事を始めるのが 遅くなる)ことを覚悟して、一気に屋上へと駆け上がった。今日は無風快晴。どこを見ても雲一つない。海の向こう側のコペンハーゲンもくっきりと見えている。magic showには最高の日和だ。アンテナを立て、ワッチを開始するまでの約10分が、まるで1時間のよう にもどかしく感じられた。期待を込めて、無線機に一礼してから電源を入れた。YU, DLがback Scで聞こえてくる。しかし、目的のJAはもちろん、UN, EY, VUさえも影も形もなかった。ワッチを始めたばかりだというのに、back Scもぐんぐん弱くなっていく。どうやら、祭りは既に終わっていたようだ。しばし呆然、、、。「あと30分 早ければ、、、」と悔やんでみても、文字通り「後の祭り(祭りの後?)」であった。(今日SM7にパスがあったかは不明。)バンドは完全な静寂に包まれた。しかし、あきらめずにワッチを続けること 10数分、バンドのあちこちで少しずつバズ音が聞こえ始めた。 さらに10数分後、UN7GMのCQが入感。それまで聞こえなかった UN1SIXも聞こえ始めた。コンディション再上昇の予感に、ローカル各局がCQ DXを繰り返す。EUのback Scも再び聞こえてきた。10:49 遂にDU1/GM4COKのシグナルを確認。緩やかなQSBをともないながら、519-539で入感している。コールバックを聞いていると、EUの割と広い範囲で開けているようだ。何度かコールしてみたが、全くピックアップされる気配がない。さすがにローカルのbig gun各局は次々とピックアップされていく。しかし、彼らの設備をもってしても、 559のレポートを送っている。「こんな設備では論外か?」、私の自信が徐々に失われていくのに合わせるかのように、DU1/GM4COKの シグナルも弱くなっていく。既に約30分が経過していた。どうやらオープンも終わりに近付いたようだ。DU1/GM4COKがCQを出し始めた。 しかも連続して空振りしている。「ここを逃したら、二度とチャンスはない!」、私は必死にコールを続けたが、このとき既に DU1/GM4COKは419-519となっていた。何回目のコールだっただろうか、私はパドルをミスタッチして「SM7XQ7」と打ってしまった。すると、 「QRZ, 7?」というコールバックが聞こえた。怪我の功名とばかりに、 「SM7XQZ, SM7XQZ」、今度は慎重に2回コールする。すると、 (私にとっては)信じられないことが起きた。何とDU1/GM4COKは私のCWスピードに合わせるかのようにQRSしたのである。 「QRZ, 7, QZ?」もう私に間違いない。パドルを持つ手が震える。 何とかして私をピックアップしようとする彼の心遣いに感謝しながら、 再度2回コールを繰り返す。そしてスタンバイ。「SM7XQZ, UR 419, BK」、 「R, UR 519, BK」、 「,,,,(10秒ほどの沈黙),,,,, TU, DE DU1/GM4COK, QRZ?」 一応QSOは終了した。しかし、彼は私が送ったレポートは受信できていないかもしれない。後は「not in the log」とならないことを祈るだけである。私とQSOした直後、DU1/GM4COKは遂にその姿を消した。「あと数分遅かったら、、、」、「彼が親切な人でなかったら、、、」「これも一種のmagicか?」などと事後満足していると、何と数分後にDU1/GM4COKが復活したではないか!しかも、 前よりはるかに強く(579-599)!「やられた!こっちが本当の magicだ!」一旦フェードウトしてしまったためか、まだ誰も DU1/GM4COKの復活に気付いていない。CQの空振りが続く。私は悩んだ。「もう一度コールするべきか?」今コールすれば楽勝で QSOが成立することは明らかである。「しかし、それは、先ほど 必死に私をピックアップしてくれた彼の好意を踏みにじることにならないか」、私はパドルに手を掛けたまま数分間自問自答を繰 り返した。さすがにEU各局もDU1/GM4COKの復活に気付いたらしく、 再び巻き起こったパイルが徐々に大きくなっていく。「彼の好意を信じよう」そう決心してパドルから手を離した次の瞬間、何と DU1/GM4COKはSSBでQRVし始めた。「Lucky! SSBならもう一度コールしても許されるだろう!」喜んでマイクを握ったが、既にパイルは大きく膨れ上がっていた。全く歯が立たない。何度かコールしているうちに、まだパイルは続いているにもかかわらず、DU1/GM4COKが連続して「QRZ?」と言うようになった。どうやら(ノイズか何かで)受信状況が悪くなった様子だ。その後、DU1/GM4COKはCW, SSB を交互に切り替えながらQRVを続け、12:00頃にフェードアウトした。今日のmagic showは第1部こそ逃したが、第2部は十分に堪能できた。

追伸: QSOの直後にDU1/GM4COKにメールを送り、粘り強くピックアップしてくれたお礼を伝えたところ、すぐに返事が届いた。彼も私とのQSOを印象深く覚えていて、メールには「We made it!」と記されていた。 やはり彼はいい人だ。


Magic Band in Sweden (5) へ つづく



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