山崎先生の運用記です.記されている時間は特に断りのない限り現地時間です.(3月末より夏時間になりUTC+2時間,JST-7時間となりました.)


研究室内にある図書室でのスナップ。この階段は7階と屋上への近道となっているため、いつもここを上り下りしています。階段の上から順に、F出身の研究員(前出)、EA出身の研究員、SMとDLのハーフの大学院生、EA出身の研究員(前出の奥さん)。前列左から、教授(前出)、EA出身の大学院生、VU出身の大学院生。

Magic Band in Sweden (24)

編註;先生からいただいた音声ファイル(AIFF形式)は
小生がMP3形式に編集しております.概ね100KB以下です.

なおビーコンにつきましては、こちらにまとめてあります.

2002.09.22 (Sun)

JAではカリブ海がLpでオープンしたと聞く。いよいよ秋のシーズンの始まりだろうか。例年になく快晴が続いていたSM7も、今日は朝からシトシトと霧雨が降っている。典型的なスカンジナビアの秋の光景だ。ここには「秋晴れ」などという言葉は存在しない。「もうEsは絶対に開かない」鈴木先生に送ったメールにそう書いてしまった。

2002.09.23 (Mon)

「マジかよ!?」昼食から戻った私は、思わずコンピューターの前で腕組みをしてしまった。Web Clusterが南北のEsオープンを伝えていたのである。最初のレポートは約1時間前のOZ-9H。ちょうど同僚と食事に出掛けた頃である。そう言えば、以前 (2002.04.16)にも彼と、同じレストランへ、同じ時刻に出掛けた際に、Esを逃した経験がある。不安な気持ちで屋上へと駆け上がったが、案の定何も聞こえなかった。 「二度と奴といっしょにあのレストランには行くものか!」私は固く決心しながらアンテナを片付けた。しかし、後で落ち着いてWeb Clusterの情報を見てみると、どうやら今日のSM7はギリギリでパスの外にあったらしい。私が屋上でワッチしていた時刻にもIS-OZ(JO55)がレポートされていたが、マルメ(JO65)ではかすりもしなかった。今日のEsは、OZとI南部を結ぶ直線より西側だけでオープンしていたようだ。

2002.09.24 (Tue)

とうとう恐れていたことが現実となってしまった。最近バンドが全然開かないので、 「次のNordic Activity Contest(NAC)の日までQSOはゼロか?」などと考えていたら、本当にNACの日が来てしまった。19:00を少し過ぎてからワッチを開始したとこ ろ、CQを出しているOZ, DL各局の顔ぶれは先月のNACと全く同じだ。しかもQRVしている周波数まで。一応コンテストなので、以前QSOしたかどうかなど考えずにコールすればよいのだが、聞こえる局すべてとQSOしたところで結果は想像に難くない。やはり未交信の局を発見したらコールすることにした。ビーム方向を45度ずつ変えながらワッチを続けていると、前回と同様にLA8AV, LA1Vのシグナルを確認した。両局とも前回ほどの強さはなかったが(419-519)、この時間帯には海岸線に沿って安定し た伝搬があるのかもしれない。今日初めて捕らえた未交信局はLA8WFであった。しかし、彼のシグナルは319-519と弱く不安定で、最初はコールするかどうか躊躇した が、ダメで元々とばかりにパドルに手を掛けた。すると、見事に反応があったではないか。「QRZ, S? QG?」少々驚いて2回コールサインを繰り返すと、「SM?QZ?」と返ってきた。「ひょっとしたらコピーしてもらえるかも?」祈りを込めて再度2回 コールサインを繰り返す。しかし、、、彼のシグナルは二度と浮かび上がってこなかった。後でインターネットで調べた彼のロケーターはJO59GV。マルメから約500kmの距離であった。LA8WFのシグナルが消えた後、バンドをスキャンしていると、突然強いCWが聞こえてきた。コールサインの最初が「O」だったので、「ああ、OZか」と あまり気にせずに、そのままダイヤルを回し続けた。ところが「OH...(ダイヤルを 回したため聞き取れず)」と続いて超びっくりである。「何、OH!?」すぐにダイヤルを戻してはみたが、既に影も形もなかった。何だったのかよくわからないが、時間に して2秒ほどのバーストであった。その後も、しばらくワッチしてみたが、一向に状 況は変わらない。Web Clusterによれば、すぐ隣のグリッドにいるOZ某局のシグナル はPAまで届いているらしいが、マルメではPAの気配すら感じられない。21:00を過ぎ、そろそろ帰り支度の時間となった。「あと10分だけ」と決めて最後のワッチに入ると、何だか変なアクセントのCQが聞こえてきた。それはOZ1AOO。初めて耳にするコールサインだ。「こいつは絶対にデンマーク人じゃない!」私は確信を持ってコールした。一発でコールバックがあり、レポートとロケーターは英語で送ってきたが、アンテナの話になると彼は突然デンマーク語で話し始めた。彼のデンマーク語はお世辞にも流暢とは言えず、私のスウェーデン語といい勝負である(笑)。何語で応答すべきか迷ったが、結局は英語でQSOした。彼が何者なのか興味があったが、英語もあまり得意そうではなかったため、何も聞かずにQSOを終えてしまった。後日、彼のCQの録音を研究室の同僚に聞いてもらったところ、全員が「アジア系のアクセントがある」と答えた。彼のCQの最後のひとことは、私には中国語のように聞こえるのであるが、北京語と広東語の両方を話す中国人にも聞いてもらったが、「中国語ではなく、もっと南の方(ベトナム、タイなど)の言葉ではないか」という結論であった。以前、とあるEUの衛星関係のメーリングリストで、「最近、コールサインはSM7だが、変なアクセントの奴が出ている」と話題にされたことのある私は、彼に親近感を持たずにはいられなかった(笑)。

2002.10.01 (Tue)

「おい、いっしょに飯を食いに行かないか?」例の同僚が私にそう声をかけたとき、 「よし、あのイタリアレストランへ行こう」私はあえてそう答えた。彼とそのレストランへ食事に行くと、研究室を出た直後にバンドがオープンし、私が戻ってきたときには既にコンディションが下がっている、または、マルメではバンドが開かないということが2回続いている(2002.04.16, 2002.09.23)。先日、「二度といっしょに行かない」と決めたはずであった。しかし、「二度あることは三度あるのか、それとも三度目の正直か?」、「例の同僚とイタリアレストランの組み合わせは、バンドのオープンと何か因果関係があるのか?(あるわけがないだろ!?)」研究で飯を食っている科学者として、もう一度検証せずにはいられなかったのである(笑)。これが危険な賭であることは十分承知していたが、研究者としての性が私に決断させた。いつも通りの美味いパスタを食べ、さらに、もうひとつ所用を済ませて研究室に戻ったのは16:00少し前。緊張に震える手でマウスを握り、Web Clusterを開く。果たして、1時間ほど前からAuが発生している!!ここまで科学的な証拠を見せられては仕方ない。やはり、例の同僚とイタリアレストランの組み合わせは、magic bandのコンディションと何らかの関連があると結論せざるを得ない(オイオイ!!)。西のGMから東のOHまで広くレポートが挙がり、OZはもちろん、SM7の文字も見える。しかし、今までのパターンだと、それでも空振りに終わる可能性がある。私は全速力で屋上へと上がった。ビームを北へ振り、祈るような気持ちで電源を入れた瞬間、まだダイヤルに振れてもいないのに、いきなり、ほぼフルスケールの「モガモガ音」が飛び込んできた。何度も心を痛めながら待ちこがれた、夜明けの女神との再会であった。すぐにダイヤルを微調整してワッチに入る。何と、今日の彼女の美しさ(強さ)は半端ではない。どの局もまるでEsかと間違えるような強さでガンガン入感している。私との久しぶりのデートのために、美しく着飾ってきてくれたに違いない。そのあまりの美しさに、私はめまいがしそうであった。
バンドを軽くスキャンして驚いたのは、SSBでQRVしている局の多さである。言うまでもなく、AuではCWの方が格段に了解度が良く、 SSBでQSOするにはある程度のシグナルの強さが必要となる。よって、SSBで何局出ているかは、Auのコンディションの良い目安となる。私は改めて今日のAuが、超大オープンであることを確信した。16:16から30分ほどの間に、SP2BDR, DF9CY, SM5CEU, SP2MKO, SP6NVN, DK2PHと一気にQSOしたところで、私は少し落ち着きを取り戻した。 その場の状況を冷静に把握してみると、その時点では北部EUのなかでも東側がオープ ンし、OH, SP, DL, OZ, SM各局が非常に強力に入感していた。16:50頃からコンディ ションが徐々に変化し、SP各局のシグナルが少しずつが弱くなり始めた。フェードアウトの直前、タッチの差でSP1KVをget。「ああ、今日のデートももう終わりか?」と 心配したが、彼女はまだ席を立とうとはしなかった。弱気な私に渇を入れるかのよう に、PA2VST(既にAuでQSO済み)が強力に飛び込んできたのである。最初はパスが単純に西へ移動したのかと思ったが、SP各局がすべて消えてしまったにもかかわらず、 OH, DL各局には何の変化もない。少し様子を見ていると、PA2VSTがOH3BHL(既にAuでQSO済み)が先程からQRVしている周波数でCQを出し始めたではないか。ただでさえ聞き取りにくいAu CWが同一周波数でかぶり合うと、もう何が何だかわからない。どうやら、OHとPAの間にはパスがないようだ。両局は互いの存在に全く気付いていない様子であった。さらに15分ほど後、今度はG, GM各局がモガモガ、ザーザーと聞こえ始めた。しかし、この方向からのシグナルはそれほど強くなく、最高でも53A止まりで、交信できたのはGM3WOJのみであった。30分ほど膠着状態が続いた後、非常に面 白いコンディション変化が待っていた。それまで聞こえていたOHとGMが消え(Gは変化なし)、SPが復活すると同時に、ON, LA, ES, YLが新たにオープンしたのである。 バリバリのフルスケールで入感するYL3AGを一発コールで仕留め、久々のnew entityをgetした。G某局とSSBでQSO中のLX某局も発見したが、こちらは蚊の泣くような声で QSOには至らず、1日で2upとはならなかった。SM0ELV, LA6BB, ES4EQ(EsでもQSO済み)を追加したところで、コーヒーブレークのため少し屋上を離れることにした。数分後に再びワッチを始めると、バンドの様子が違うことに気が付いた。ES各局のシグナルが、先程よりもはるかにクリアーになっていたのである。その音声は少し歪んではいたが、はっきりと聞き取れる。どうやら、これが噂に聞いた「Auroral E (AuE)」という伝搬らしい。N1BUGのホームページ(http://www.n1bug.net/)にあるVHF, UHFの伝搬モードの説明によれば、「オーロラ活動によってEsによく似た伝搬が生じることがあり、その際はAu特有の歪みを伴わない」とある。しかし、この時点のES(エストニア)各局のシグナルは、通常のEs(Eスポ)のように完全にきれいな音声ではなく、Au特有の歪みを若干伴っていた。たとえAuEでも音声の歪みが完全になくならないこともあるのか、それとも、AuEとAuによる伝搬が同時に存在し、その両方を同時に聞いたのだろうか。夜明けの女神の新たな魅力を発見し、私は言葉を失うほど深く感動した。あまりにも感動してボーっとしていたため、AuEのシグナルを録音し忘れたのが悔やまれる!!注意深くバンドをワッチしてみたが、AuEで聞こえるのはES(エストニア)各局だけで、他の地域は通常のAuのままであった。バンドの上の方でSSBで CQを出すと、LC1LAT, ES4EQ, SM0ELV, LA2CQから応答があった。もちろん、ES4EQだけがAuEで、他の3局はAuである。ES4EQ, SM0ELVからは「先ほどのCW QSOありがとう」と言われ、LA2CQからは「数ヶ月前のQSOありがとう」、「今回はQTHが違うよ」 と言われた(笑)。今日のAuは、それほど込み入った会話ができるほど強かった。これらのQSOを終えると、いよいよ女神も帰宅の時間が近付いたようだ。18:50頃からすべての方向のシグナルが同時に弱くなり始めたが、面白いことに、場所によってフェードアウトするスピードに大きな差があった。ES, LA, SMは19:00までにはほとんどフェードアウトしてしまったのに対し、Gは弱くなりながらも19:30頃まで聞こえていた。3時間弱のデートの間に、GM, G, PA, ON, LX, DL, SP, YL, ES, LA, OZ, SM, OHと、次々にその美貌を見せつけて私を夢中にさせた夜明けの女神。今日のあなたは、あまりにも美しすぎた。

追伸1: Web Clusterの情報によれば、今日のAuは北緯46度付近(宗谷海峡とほぼ同緯度)でも57Aで受信できたらしい。

追伸2: 19:00過ぎに一旦は北の空へ帰った夜明けの女神であったが、21:00頃に再びその姿 (AuE)を現したらしい。明日、早朝から実験の予定さえなければ、とことんおつき合いできたのだが、、、。

追伸3: 今日は144MHzのNordic Activity Contestの日であったため、50MHzでAuが完全に消えてから144MHzをワッチしてみた。すると、Au CWでDL某局が聞こえるのである。 「Au復活か!?」とばかりに、もう一度50MHzを聞いてみたが、そこには女神の気配すらない。そこで、再び144MHzに移ると、確かにまだAuが開いているではないか。 Esの場合、50MHzでバンドが開いていないときに、同じ場所で144 MHzが開いているということはほとんどないと思うのだが、Auではそのような現象が起こり得るようだ。(Web Clusterによれば、432MHzでもAuがオープンしていた。)何だかよくわからないが、これも女神の魅力のひとつに違いない。

この日の成果




Magic Band in Sweden (25) へ つづく



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