山崎先生の運用記です.記されている時間は特に断りのない限り現地時間(冬季なのでUTC+1時間,JST-8時間)です.


私の研究室では、各自にコンピューター2台(研究室用と自宅用) と机2台(デスクワーク用と実験用)が与えられています。非常に恵まれた環境です。窓際にあるコーヒーメーカーで、毎朝コーヒーブレークします。

Magic Band in Sweden (6)

編註;先生からいただいた音声ファイル(AIFF形式)は
小生がMP3形式に編集しております.概ね100KB以下です.

なおビーコンにつきましては、こちらにまとめてあります.


2002.02.21 (Thr)


雪は夜のうちに止み、今朝は青空が広がっていた。今日は定例ミーティングがない。いつでもQRV可能だ。ここ数日のパターンから、今日もコンディションが良くなるのは(なるとすれば)10:00頃からと予想した。朝一番にアンテナを立てたが、すぐにやりかけの仕事に手を付け、切りの良いところで30分おきぐらいに屋上へ上がってバンドの状況を チェックする。10:20の時点までは、UN1SIXが519で入感し始めた以外は特に変化はない。「そろそろ要注意だ」と思っていたところ、予期せぬハプニングが起きた。普段は誰もいない7階に、3人の男が現れたのである。彼らは7階に置いてある空調設備のメインテナンスにきた作業員であった。屋上でも何か作業をするらしい。私が屋上への出入り口付近にいては、作業の邪魔である。仕方なく無線機等を一旦片付けて、彼らの作業が終了するのを待つ羽目になった。「最も要注意の時間帯にワッチできない!」しかし、私はじっと待つしかなかった。彼らが帰ったのは 11:00少し前。Web Clusterをチェックすると、約10分ほど前にSM7FJEがJAからレポートされている。どうやらEUの広い範囲で、JAがScでオープンしているらしい。「まだそれほど出遅れてはいない!」私は気持ちを前向きに切り替えて、屋上へと駆け上がった。再び無線機等をセットして戦闘開始だ。当然のことながら、ローカルのbig gunたちがCQ DXを出している。11:05、まずはSM7AEDのCQに注目した。すると、 「JA2***」聞こえる!!!「JE3###」今日は419-519で聞こえる!!! はるか彼方のJAを出発し、東南アジア周りのScではるばるとSM7までやってきた同胞のシグナルを、私の2ele HB9CVはしっかりと受け止めた! 私の興奮は限界点に達しようとしていた。バンドをスキャンしてCQを出しているJAを探す。しかし、聞こえてくるJAは、すべてローカルをコールする局ばかりだ。私は意を決してCQを出すことにした。「CQ CQ JA, DE SM7XQZ, SM7XQZ, K」そして緊張のスタンバイ。「.....」 かすかに何か聞こえる!「QRZ? DE SM7XQZ, K」「OZ2..」「えっ?OZ? そんなバカな!何かの間違いだろう」もう一度仕切り直してCQ JAを出す。 「JG3...」ノイズレベルぎりぎりのシグナルにQSBのおまけ付き。完全にコピーできない。「QRZ?」を2回出して何とかコピーした。「JG3***? DE SM7XQZ, K」「.....(応答がない).....」20秒ほど待ってみたが何も聞こえない。私はもう一度CQ JAを出した。JG3###(先ほどとは別の局)が呼んでくる!今度は519で入っている。楽勝でコピーした(つもりだった)。しかし、相手がQRSしながら何度もコールサインを繰り返すではないか。「ひょとしてミスコピーしてる?」私は再度注意深く彼のコールをコピーした。「えっ!?JZ3###だって??」間違い ない、プリフィックスの2文字目はGではなくZだ。そんなバカな! 「QRZ?, J?3###??」と聞いてみた。しかし、「.....(応答がない).....」 私に愛想を尽かして見捨てて行ったのだろうか。それとも、最初のJもOの聞き間違いで、実はOZ3###が呼んでいたとか?私はこの瞬間まで、 JA以外が私をコールすることを全く予想していなかったため、プリフィックスに関して先入観があったのは事実である。しかし、私は間違いなく「CQ JA」と打った。しかも、ScでJAがオープンしている最中に、何が面白くてOZがSM7をコールする必要があろう。私は混乱の極致に追いやられた。しかし、ここで時間を無駄にしている訳にはいかない。「QRZ? DE SM7XQZ, K」今度は試しにわざとJAともDXとも打たなかった。するとOZ2**が呼んでくる。私は不安になった。彼は有名なDXerである。こんな状況で私をコールする訳がない。「きっと、同じ周波数にJA(またはDX)が出ていて、その局をコールしているのだろう、 悪いことをした!」そう考えてQSYしようとした瞬間、OZ2**のコールがまた聞こえた。どう考えても、タイミング的には私をコールしているとしか思えない。私は半信半疑ではあったが、コールバックすることにした。「OZ2**, UR 55N, BK」「R, UR 55N, BK」「TU, E, E」「E, E」 何とQSOは成立してしまった。(しかし、私自身は全く納得していないので、 このQSOは成果に入れないことにした。)「何だこれは?」「私は夢を 見ているのか?」「それとも単にからかわれているのか?」私は本当に恐ろしくなった。私の低レベルなCW技術、ScでJAが聞こえたことによる興奮、そして訳の分からぬOZからのコール、、、。もはや私は正常な精神状態ではいられなかった。「こんな状態では私が誰かをピックアップ するのは無理だ、誰かに私を拾ってもらうしかない」私はJA各局のCQをコールすることに決めた。バンドをスキャンし始めると、すぐにSM7BAEのCQを発見し、応答する局に耳を傾けた。「JF3...」、「JR3...」やはり聞こえる!!夢ではない!!私は少しだけ落ち着きを取り戻し、さらにバンドをスキャンした。しかし、(おそらく)JAを呼ぶEU各局のパイルは聞こえるが、肝心のJAが聞こえない。時間だけが無駄に過ぎていく。 「やはりダメか、、、」あきらめかけたその時、SM某局が73を送るのが聞こえた。「相手はJAか?」一瞬の緊張の後、「QRZ?, DE JL3***, K」 今日一番の強いシグナルだ。519-539で入感している。「JAがScでメーター を振っている!!」チャンスを逃さずコール。「SM7XQZ, SM7XQZ」「QRZ?, DE JL3***, K」「DE SM7XQZ, SM7XQZ, K」「QRZ?, DE JL3***, K」 タイミング的に明らかに私のコールに対するQRZである。祈りを込めてコールを繰り返す。「DE SM7XQZ, SM7XQZ, SM7XQZ, K」しかし、 「.... G3###, DE JL3***...」残念!他局に取られてしまった。「よし、次こそは!」とさらに気合いを入れたそのとき、数KHz上でOZ某局がSSBでCQ DXを出し始めたではないか。これはたまらない!JL3***のシグナルは完全にかき消されてしまった。OZ某局の空振りCQは2分ほど続いたであろうか、その迷惑CQが終わるのと同時に、私は必死にJL3***のシグナルを探し求めた。しかし、、、今日のmagic showは既に閉幕となっていた。 もはやJL3***の姿はどこにも見あたらず、気が付けばローカルのbig gun 各局のCQも聞こえなくなっていた。強い虚脱感が私を襲う。この約40分ほどの出来事が、私の頭の中を駆けめぐった。さらに30分ほどワッチを続けてみたが、私は完全に集中力を失っていた。しかし、そんな私に再びを入れたのは、VK6JQの入感であった。559-599で入っていたため、 最初はローカルかと思ったほどである。やる気満々でパドルに手を掛ける。 しかし、SM, OZ, OHから何局も一斉に呼んでいるにもかかわらず、VK6JQ は挨拶に始まり、レポート、ロケーター、名前を丁寧に最低2回は繰り返し、マイペースでゆっくりとQSOしている。(私のCWの受信練習にはちょうど 良い!)レポート交換だけで終わろうとすると、必ず「LOC?」「NAME?」 と聞き返される。さらに、「OK, *** OM, MY RPT 599 OK」などとコピー した内容をオウム返しするため、何と1局QSOするのに5分かかっている。 (JAとQSOするときも同じですか?編註:同じですHi)HFならともかく、いつコンディションが変わるかわからない50MHzで、そのようなQSOをすることに大いに疑問を感じたが、我々が彼をコールしているのである。彼のやり方が気に入らなければ、コールしなければよい。しかし、ローカル各局もしびれを切らしていたのだろう、みんなロングコールを始めた。中にはコールサインを10回以上繰り返す局もいて、さらに余計な時間が消費される。私がその入感に気付いてから約30分後、VK6JQは急速に弱くなり始め、ストンと落ちるように姿を消した。北部EUに限局した、非常に強力な、しかも安定した30分のオープンで、QSOできたのは5局だけであった。私は別の種類の強い虚脱感に襲われ、即座にQRTを決意した。今夜は眠れないかもしれない。

2002.02.22 (Fri)


昨夜からまた激しい雪となった。バルト海からの強風も加わり、最悪の天候である。コペンハーゲンとマルメを結ぶ橋は閉鎖され、鉄道もストップした。 こんな天候にもかかわらず、屋上へ上がってアンテナ作業をした私は、単なるバカかもしれない。(編注:もはや末期的症状です)しかし、そんな私の気迫は天に通じなかった。聞こえるのはほとんどローカルのCQ DXだけ。当然、応答する局はない。 08:50に50.110でちょっとしたパイルを発見した。相手の局は419-519で入感 しているが、コールを確認する前にフェードアウトしてしまった。後でWeb Clusterを見たところ、それはEY7AFだったらしい。その後、バンドは閑散とした状況が続いたため、例によって、仕事をしながら時々屋上に上がって ワッチしたが、今日は本当に何も聞こえない。雪と強風がおさまってきたところで、12:30にアンテナを下ろすことにした。「その前に、ちょっとだけ 」 と軽い気持ちでWeb Clusterをチェックすると、私が仕事をしている間にEU の広い範囲で9U5Dが聞こえていたらしい。既に遅いとは思ったが、一応その周波数を聞いてみると、31-41で何かSSBが聞こえた。多分、それが9U5D なのだろう。自分の耳では到底確認できなかった。今日の唯一の収穫は、 ほとんどワッチしなかったため、予想外に仕事がはかどったことだった。


2002.02.23 (Sat)


ここ数日、1日おきにJAがScでオープンしている。その順番で行くと今日はオープンする日だ。期待を込めて早朝からワッチするが、聞こえてくるのはローカルの空振りCQばかり、土曜日だというのに、仕事をしながら時間をつぶす。09:00を過ぎてから、中南部EUでVK, EX, 9M入感のレポートがWeb Clusterにアップされた。これらの局はSM7では全く確認できないが、今日も東南アジア方向へのコンディションは良さそうだ。徐々にWeb Clusterが賑わいを見せ始める。しかし、すべてはるか南での出来事であり、SM7は静寂に包まれていた。仕事だけがどんどん進んでいく。喜ぶべきか、悲しむべきか、、、。仕事が一段落した12:30、しばらくぶりにWeb Clusterを 覗いてみると、相変わらずの賑わいを見せているが、先ほどまでと少し様子が違う。先日と同様に、CU, CT3, EA8がそろって入感しているらしい。 今日のコンディションは東と見せかけて、実は西方向であった。すぐに屋上へ上がり、アンテナを南西へ向ける。EA8/DJ1OJを発見。先日はSSB だったが、今日はCWだ。599で入っている。CQに応答すると、一発でコールバックがあった。さらにダイヤルを回すと、弱いCWのシグナルに気が付く。 LAと打っているようだ。ビーム方向を微調整したところ、西南西が最も強い (ピークで539)。LN4LNであった。どうやら大西洋上のScのようである。 私にとって西方向のScは初めてであり、コールしてみたいが、こういう状況でコールしてよいのかわからない(注:下記参照)。しばらく迷っていたら、ローカル局がLN4LNをコールして、あっさりとQSOを終えた。 ならば、自分もコールしても構わないだろうと考え、パドルに手を掛けた。 今回も1回でピックアップされた。さらにその直後、59で強力に入感するEH8QLを発見し、三度一発コールでQSOを終えた。その後、CU, CT3を探し 求めて、バンドをスキャンしてみたが、遂に確認することはできなかった。 13:05、それまで強力かつ安定して聞こえていたEH8QLが、一瞬にしてその姿を消した。その時点でEA8/DJ1OJは、まだ聞こえてはいたが、シグナルは徐々に弱くなりつつあった。コンディションが急激に変化しているのは明らかだ。私は注意深くワッチを続けていると、13:20、50.113 でパイルが湧き起こった。相手の局は英語で話しているが、明らかにラテン系のアクセントがある。とても早口でコールサインを言うので、 なかなかコピーできない。しかし、59で聞こえているところをみると、 ビーム方向は問題なさそうだ。最初はCU, CT3, EA8のどれかが復活したのかと思ったが、彼のコールサインを何回か聞いているうちに、何と言っているのかやっと理解できた。「Papayelloweightenglandamerica (Papa-Yellow-Eight-England-America, PY8EA)」であった。コールバック を聞いていると、どうやらパスがあるのはPA, OZ, SM, SPだけらしい。 DLは1局もピックアップされなかった。パイルは徐々に大きくなり、 5分後には超ド級のパイルとなった。「OZ, SMには、こんなに局がいるのか?」と感動したほどである。SM7BAEは早々にピックアップされたが、 SM7AEDは少し出遅れて苦戦している。彼でさえもが大パイルの中で今にも溺れそうだ。私などは論外の論外で、既にパイルの中で土左衛門と化していた。各局のイライラも頂点に達し、ロングコール合戦が始まった。 OZ#CII(名誉のため仮コール)は「India-India」だけを何度も繰り返す作戦に出た。 これが功を奏し、何回目かに「India-India, go ahead!」とコールバック があった。OZ#CIIは喜んで、3回コールサインを繰り返してスタンバイした。 しかし、次の瞬間、「last letter Victor only!!」と言われてしまう。 この言葉にOZ#CIIは切れた。「You said "India-India"!! You said "India-India"!!」と食い下がったが、別の局がピックアップされてしまう。 その後もあきらめずに「India-India」だけを繰り返すのかと思っていたら、時々はOscar-Zulu-,,,とフルコールもするようになった。さらに5分ほど過ぎた頃、今度は「OZ#C, go ahead!」とコールバックがあった。OZ#CII は再び喜んで応答したが、またしてもピックアップされたのはOZ**** (エリア番号もサフィックスも全然違う局)であった。OZ#CIIは完全にブチ切れた。PY8EAが話しているとき以外は、誰が応答していようとお構いなしに、「India-India」を延々と繰り返す。(温厚なスカンジナビア人がここまで熱くなることは珍しい。)もはや、その周波数に秩序など存在しなかった。私がその入感に気付いてから25分後の13:45、何の前触れもなく、PY8EAは忽然とその姿を消した。その事実に気付かないまま、さらに数分間「India-India」と叫び続けていたOZ#CIIを、哀れに思ったのは私だけではなかったはずだ。

(注)今までに私は、back Scで数多くのEUのentityを聞きました。しかし、それらの局をコールしたのは今回を含めて2回だけです。その理由は、 (1)EUならば夏場のEsで交信できるであろうこと、そして、 (2)もっとDX(例えばJA)がオープンしている(または、その可能性が ある)ときに、EU同士がコールしてよいか否か、そのがまだわからないこと、の2点です。コペンハーゲンの無線機屋に行った際に、「OZとSM7は互いにDXなのか?」と尋ねたところ、答えは「Yes」でした。もちろん常識的に判断すべきでしょうが、30kmほどしか離れていないOZのCQ DXに、私が応答 しても文句は言えないそうです。

本日の成果

2002.02.24 (Sun)


天候も回復し、今朝は青空が広がっている。屋上からコペンハーゲンの町並みがはっきりと見えた。気分もさわやかにアンテナを立て、バンドがオープンするのを待つ。Web Clusterによれば、08:00頃から南部EUでVK各局が、 09:00頃からXV3AAが入感し始めたらしい。今日も東方向に期待が高まる。 最近のパターンだと、JAがScでオープンするのは10:00過ぎだ。09:35にバンドをワッチしたときは何も変化はなかったため、まだ余裕で構えて いた。その直後に6階でWeb Clusterをチェックすると、09:42にJA-OZが Scでレポートされたばかりであった。今日は見事に足下をすくわれた。 すぐに屋上へ戻って戦闘体制に入る。ローカルのDXerたちがCQ DXを出して いる。「今日はJAは聞こえるか?」祈る気持ちで耳を傾けると、「JA7...」 「JO6...」「JR2...」前回ほどの強さはないが、何とかCWは判別できる。 しかし、QSBの山でやっと419というシグナルをコピーするのは困難を極めた。 少しでも強い局を探そうと、バンドを上へ下へと行き来する。CQを出して いるJL1***を発見し、1分以上かけてやっとコールサインをフルコピー した。一応何度かコールはしてみたが、やはり私のコールに気付く気配すらなかった。それでもあきらめずに、ワッチを続けたが、結局コールサインを フルコピーできたのは、JL1***1局だけであった。11:15頃、ローカル各局のCQ DXも止み、今日の宴は約1時間半でお開きとなった。その後も、DLより南では引き続いてJAが入感し、さらにはDU, XW, VKも聞こえていたらしいが、SM7は平静そのものであった。


Magic Band in Sweden (7) へ つづく



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