山崎先生の運用記です.記されている時間は特に断りのない限り現地時間(冬季なのでUTC+1時間,JST-8時間)です.


AC220Vを7階(空調の機械等が置いてある)から取り、DC13.8Vが出ているコードを階段の上まで引っ張ります。安定化電源の乗った台車は、QRV後に6階の研究室まで毎回持ち帰ります。

Magic Band in Sweden (3)

編註;先生からいただいた音声ファイル(AIFF形式)は
小生がMP3形式に編集しております.概ね100KB以下です.

なおビーコンにつきましては、こちらにまとめてあります.


2002.02.01 (Fri)

今朝も屋上へ上がる前にまずWeb Clusterに目を通す。何と、昨夜から全く何もレポートされていない。いつもなら、最低でもひとつふたつはレポートがあっていいはずだ。「今日は全くダメなのか?」、 暗い気持ちでアンテナをセットした。07:10からワッチを開始するが、確かに何も聞こえない。「今日は早めに切り上げようかな」 などど、既にQRTモードに入りつつあった08:08、今日初めてのシグナルを捕まえた。CWのCQが559で入っている。「どうせローカルのCQだろう」と決めてかかった私は、次の瞬間、極度の混乱状態に 陥った。「あれ、今、SMでもOZでもなかったよな!?」、「ん!?、 A.....」、「AH.....」、「AHってどこ?」、「あれ、AHじゃない、 A4だ!」、「A45.....」、「A45XRか!」。人間は一旦混乱すると、 そこから立ち直るのにかなりの時間を必要とする。「A45XR..... それって、どこ?」。何を隠そう、今までほとんどDXをやったことがない私は、超メジャーな国以外はプリフィックスを聞いてもすぐにわからないのである。私はまだ混乱していたが、とにかくコールしてみることにした。しかし、ビームの方向がわからない(このと きは東に向けていた)。一旦6階まで下りて、プリフィックスとビーム方向を確認することも考えたが、これは50MHzである。その数分の間に消えてなくなってしまうかもしれぬ。私に少しずつ正常な思考回路が戻ってきた。「559で聞こえているんだから、このままのビームでコールしても大丈夫だろう」。私はやっとパドルに手を掛けた。何と、A45XRのCQを発見してから既に3分が経過していた。 2回目にコールバックがあり、08:11無事QSOは成立した。「ところで、A45XRってどこ??」。私は6階まで下りて、qrz.comでA45XRを検索した。「オマーンか!」、やっと私の疑問は解決した。そういえば鈴木先生のホームページにあるMost Wanted Entitiesの上位に、オマーンがリストアップされていたことは何となく覚えていた。「お前、喜べよ!」、「EUからは難しくないのかもしれないが、とにかくnewじ ゃないか!」、と自分自身に語りかけてみたが、今ひとつ反応が鈍い。ここ数日の睡眠不足(編註:毎日朝6時ころからQRVされている)に加えて、既に一度QRTモードに入ってしまったためか、私の脳細胞は完全に活動を停止していた。少し濃い目のコーヒーを飲み、再度QRVモードとなった私は、屋上へ戻ってワッチを再開した。その後A45XRは、QSBを伴いながら10分弱ほど入感 しては、10分強ほど消えていなくなることを繰り返しながら、 9:30頃にフェードアウトするまで、EUのあちこちからコールされていた。 08:21, 50.110でEX8MLEのCQを発見。519-539で聞こえている。QSBの山のピークでコールしたが、応答もなく、そのまま消えてしまった。 今日は金曜日。間違いなくこの局は火曜日以外もQRVしている。(パイレートでなければ。) EX8MLEが消えた後、A45XR以外に入感する局はなく、しばらく膠着状態が続いた。Web Clusterをチェックしに6階へ下りると、DLから 7Z1SJがレポートされた。「7Z1SJって、どこ?」。先ほどプリントアウトしておいたプリフィックス一覧表が、こんなに早く役に立つとは思わなかった。「サウジアラビア!」。すぐに屋上に戻ってワッチすると、59で強力に聞こえている。08:50一発コールでQSOは成立 した。 その後、Web Clusterでは、JA-LZ, (さらにJA-9A)がレポートされたが、SM7からは、はるか彼方での出来事であった(何も聞こえない)ため、予定通りに10:00にQRTした。研究室に戻ってみると、 何と、アンテナを下ろしている間に、4X, SUがOH, SM, LAから報告されていた。「お願いだから、もう30分早く出てきてね」、私はスクリーンに向かって話しかけてから仕事を開始した(泣)。

この日の成果


【後日談(2002/11/4)】

A45XRと交信した際の SWLカードが YL-RS-152からビューロー経由で届きました。SM7XQZに対してもらった初めてのSWLカードになります。少し感動しました。


2002.02.02 (Sat)

SM7は久しぶりに天候に恵まれた日となった。しかし50MHzも無風状態であった。Web Clusterでは、SV, IでそれぞれEX8MLE, EY8MMが入感していたようだが、SM7では、ローカルのラグチューが聞こえただけ。

2002.02.03 (Sun)

今日は朝から無風快晴、昨日よりもさらに良い天気だ。この時期のSM7では珍しく、ポカポカと暖かい。私はいつもなら、アンテナを まず最初に東に向けてワッチを開始する。しかし、今朝は祈りと期待を込めて、ビームを南東に振ってワッチを開始した。その理由は、 昨日のWeb Clusterにあった。YI9OMから「50MHzにQRVする準備が できた、今から50.xxxをワッチしてほしい」という主旨の書き込み があり、F某局が「今日はコンディションが悪い、明日tryしてほしい」と応答していたのである。おそらく多くのEU各局が、今朝はアンテナをYI方向に振って、じっとその時を待っていたに違いない。 ところが、今朝最初にEU各局を興奮させたのはYI9OMではなかった。 まず、南部EUを中心に広い範囲でVK3SIXが入感し、Web Clusterが一気に活気づいた。EUから見ればVKは地球の真裏、日本で言う南米に値する。EU各局の興奮が頂点に達したであろう頃、ZL, YIが連続してレポートされた。Web Clusterがさらに忙しくなる。私もそれらの周波数を耳が痛くなるほどのボリュームで聞いてみたが、本当に耳が痛くなっただけであった(笑)。今日のオープンはDLより南だけで、北欧は完全に取り残されてしまった。Web Clusterを見て焦っていたのだろうか、OZ, SMのローカル各局が、いつもよりしつこくCQを出していたが、見事に全部空振りに終わっていた。私は半ば諦めムードで、屋上を離れ、研究室で、今あなたが読んでいるこの文章を書き始めた。するとWeb ClusterにGとSM0からOYがレポートされた。さっそく屋上に戻ってワッチしてみたが、残念ながらSM7では聞こえていなかった。何気なくダイヤルを回していたその時、強力なSSBのシグナルが飛び込んできた。その時は運悪くCWモードになっていたため、最初に相手のコールを完全にコピーすることができなかった。すぐにSSBモードに切り替えて、周波数を合わせるとSM0にコールバックが返っている。「と言うことは、DXだろう」と考え、マイクを片手に相手のコールサインを待った。「This is EH8BPX. QRZ?」。ここで、また私の悪い癖が出た。「EH8って、どこ?」、「ビームはこれでいいのかな?」。この一瞬の遅れが命取りであった。EH8BPXはSM3某局をピックアップしていた。「とにかく、これだけ強く入っているんだから、とりあえずそのままのビームでいいだろう」。私がそう結論を出したとき、既にEH8BPXは深いQSBの谷に落ち込み、ほとんど聞こえなかった。数十秒後、QSBの山が訪れたのを見計らってコールしたときは、ローカルのbig gun各局もEH8BPXの入感に気付いていた。パイルで彼らに競り勝つのは、サッカー日本代表がワールドカップでベスト8に入るくらい難しい(不可能ではないが、かなり難しいという例え)。しかし、次の瞬間、ローカルのbig gun各局さえもピックアップしないまま、EH8BPXは忽然とその姿を消した。最初に私がその入感に気付いてから、実に2分後のことであった。しばし呆然、、、。「そうか、スペインの8エリアだから、カナリア諸島か、、、」、私がそれを思い出したのは さらに数分後のことであった。後でWeb Clusterを見てみると、EH8BPXのオープンはOH, SMの北部EUに限られた、非常に短時間のものであったことがわかった。「これがmagic bandなんだ」、私はアンテナを下ろしながら深いため息をついた。

2002.02.04 (Mon)

ここ数日コンディションが悪いこともあり、少しずつ朝起きる時間 が遅くなり、それに対応してワッチを開始する時間も遅くなってきた。08:00現在のWeb Clusterには、数時間前にJAでUN1SIXが入感していた旨のレポートがあったが、他には特に目立った情報はなかった。「明日はもう少し寝坊しても大丈夫かな?」、などどダラケたムードでアンテナを立て、一応ワッチを開始したものの、やはり何も聞こえてこない。いつものようにコーヒーブレークのために6階 まで下りてくると、少々気になる情報がWeb Clusterにアップされた。「OHでJA7のビーコンが聞こえている」。私はコーヒーブレーク のことなど忘れ、即座に屋上へ戻り、アンテナを北東(JA方向ダイ レクト)へ向けた。しかし、SM7ではJA7のビーコンは確認できなかった。その他のJAのビーコンもワッチしてみたが、聞こえてくるのはノイズばかり。「OHとSM7は近そうで、遠いからな、、、」、完全に諦めムードに陥った私は、先ほどコーヒーを飲んでいないことに気が付いた。休憩を取るために再度6階へ下りた私の目は、コンピューターのスクリーンに釘付けとなった。OH-JA7, OH-JA9がWeb Clusterにレポートされている。「JAから200度の方向、、、?」、 「やられた!」、「Scか!」。私はまたもやコーヒーを飲まずに屋上へと駆け上がった。今度はアンテナを東南東へ向けて、OH某局がCQを出しているらしい周波数をワッチしてみた。しかし、何も聞こ えない、、、。「やはり、2ele HB9CVでは、Scは無理か、、、」、 そう思い始めた頃、OZ某局が自分のコールサインを、ゆっくりと何度も打っているのを発見した。「ということは、相手の局はDXで、伝搬状況がそれほど良くないということか?」、私はこのQSOを最後までじっくりとワッチすることに決めた。OZ某局がスタンバイした直後、数秒間だけ相手のシグナルが319-419で入感した。 「えっ!?、今JAって打たなかったか!?」。私は自分の胸の鼓動が聞こえてくるのがわかった。全神経を集中してそのシグナルに耳を傾けたが、残念ながらCWが聞こえていることはわかるのだが、符号として識別できるほどの強さではなかった。「確かにJAだった!!」 、祈るような気持ちで、OZ某局が相手局のコールを打つのを待った。 次の瞬間、「JA9..., DE OZ4...」、「やはりJAだ!」、私の興奮は頂点に達した。しかし、50 MHzの女神は、私にもう一度そのJAのシグナルを聞くことを許さなかった。その後は、OZ某局の空振りCQだけが空しく響き渡った。Web Clusterには、ぞくぞくとEU-JAがレポ ートされている。やはり、南部EUが中心のようだが、OH, SMからの レポートも上がっている。しかし、バンドのどこをワッチしてみても、アンテナの方向を微調整してみても、私はそれらJAのシグナルを確認することができなかった。「やはりこの設備では限界なのか」、 「SM7にはパスが落ちていないのか」、何度も自問自答を繰り返した後、予定通り10:00にQRTとした。スウェーデンで50MHzの免許を取得したときから、確かに私はSM-JAのQSOを夢見てきた。しかし、いつも心のどこかに、「そんなの無理だよ」と言うもうひとりの自分がいたことも事実である。だが、私の夢は決して実現不可能ではないことが、今ここに証明された。あとは50MHz 'magic' showの開演を待つばかりである。JAのシグナルが聞こえたあの数秒間、それこそはいつの日かやってくる'magic' showの予告編に違いない。


Magic Band in Sweden (4)


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