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| マルメとコペンハーゲンを結ぶ橋が開通するのを記念して、自転車で国境を越えるツアーが企画されました(2000.6.8)。 |
| スウェーデンで50MHzの運用許可を無事に得た先生は,もうひとつの難題に直面します.この局面を打開しようとした矢先,運命のいたずらが次々と先生を襲います. |
難航する無線機の入手無事に 50MHzの運用許可を得た私は、次に無線機、アンテナ等の準備を始めました。しかし、精密機械を日本の実家から送ってもらうのは、輸送中の衝撃による故障の心配があります。では、当地で新たに購入すると言っても、マルメのような小さな街で無線機屋など見たこともありません。インターネットで検索してみると、アマチュア用の無線機やアンテナを扱っている店が、スウェーデン全体で数軒ヒットしました。しかし、マルメの近くには1軒もありません。そこで、バルト海を挟んでマルメの対岸に位置する、コペンハーゲンに目を付けました。コペンハーゲンは人口100万人、デンマークの首都です。「一国の首都ならば無線機屋の数軒はあるだろう」と考えました。OZの有名なDXerであるOZ6OMへメールを出 して、無線機屋について尋ねたところ、すぐに丁寧な返事を頂きました。ところが、「コペンハーゲン市内には、無線店は1軒しかない」と言うのです。しかも、「その店はYAESUしか扱っていない」 とのこと。あまりにも日本の状況と異なる現実を目の当たりにして驚くとともに、日本人の感覚は通用しないことを改めて実感しました。まあ、とにかく、一度その店に行ってみることにしました。 その店は主にコンピューターのソフトとハードを扱っていて、店の片隅の1畳半ほどのスペースに、アマチュア無線関係のものが所狭しと並んでいました。無線機屋のゴチャゴチャした雰囲気は、世界中どこも同じです。しばらくその懐かしい雰囲気を楽しんだ後で、 いよいよ本題に入りました。購入を検討していたFT-817とFT-100Dの値段を尋ねたところ、思わず、「マジ!?」と日本語で言ってしまいました(よかった、相手にわからなくて)。FT-817は税込みで7495デンマーク・クローネ(約11万円)、FT-100Dは12995デンマーク・クローネ(約20万円)だったのです。私がインターネットで調べた限りでは、当時の日本での実売価格は、 税込みでFT-817は約8万円から、FT-100Dは約12万円からでした。とにかくカタログをもらって帰りましたが、あまりの価格差に驚くばかりでした。もうひとつの候補であったIC-706MKIIGの値段をインターネットで調べてみると、スウェーデンの通販で16500スウェーデン・クローネ(約21万円)なのに対し、日本では約10万円から購入できることがわかりました。いったいこの値段の差はどこからくるのでしょうか。日本製の無線機は、スウェーデンでは舶来品です。輸送料、関税に加えて、さらに25%の消費税が追い打ちをかけてます。フランスやイギリスから通販で購入すれば、消費税分が多少は安くなりますが、大した差ではありません。スウェーデンの大卒の初任給は、手取りで13000スウェーデン ・クローネ前後だそうです。大卒の初任給を全額つぎ込んでもIC-706MKIIGが買えないなんて、やはり高くありませんか?無線機の値段がこれだけ高いと、無線をやる人が少なくても仕方ないかも しれません。日本は恵まれていますね・・・・・・運命のいたずらしばらく悩んだ末、私は結論を出しました。「日本に帰って買ってこよう」、「値段の差も飛行機代も同じだ」、「日本食も食えるし、家族や友人にも会える」。 当初私は、8月下旬に10日間ほど休みを取って、日本に一時帰国する計画を立てました。ところが、急に仕事が忙しくなったため一時帰国の予定を1ヶ月ほど遅らせることにしました。それでも 「何とか秋のDX シーズンには間に合うだろう」と期待していたのですが、2001年9月11日、世界を震撼させるあのテロ事件が起きたことは記憶に新しいことと思います。鈴木先生が10月上旬に予定していた沖縄行きをキャンセルされたのと同様に、私も一時帰国の計画を白紙に戻しました。 「どうせ50MHzで JA と QSO なんてできない」、「無線ができるだけで十分だ」、「次の一時帰国まで待とう」と、何度も自分自身に言い聞かせました。しかし、そんな私をあざ笑うかのように、今度は50MHzで運命の日がやってきます。そうです、10月下旬のEu SPの大オープンです。インターネットで歴史的な大オープンを知ったときは、ただコンピューターの前で呆然とするだけでした。その後も、あちこちのホームページで見かける、「2002年の春のDX シーズンが、今サイクル最後のチャンス」という言葉が、さらに私を追い詰めます。 「もう後悔したくない」、私は再び決断しました。仕事が一段落ついた11月下旬、私は遂に一時帰国を果たし、必要機材一式とともにスウェーデンに戻ってきました。日本に一時帰国して無線設備一式を調達するにあたり、私はどのようなスタイルでQRVするかをじっくりと検討しました。自宅のアパートでは、ベランダに小さなアンテナを設置するのが関の山です。 そこで、50MHzは研究室のある7階建てのビルの屋上からQRVすることにしました。さて、その屋上の広さですが、その気になれば3.5MHzのフルサイズDPも張れそうです。理論的には、がっちりとルーフタワーを組み上げて、10ele YAGI を回すだけのスペースはありますが、それではあまりにも大袈裟すぎます。アンテナはQRVするときだけ上げて、終わったら下ろすJN1BPM方式を考えていました。また、スウェーデン南部は秋から春にかけて、バルト海からの風が強く吹き付けます。毎回の上げ下ろしと強風の2点を考慮した結果、アンテナは2ele HB9CV(Comet CA-52HB)が最も現実的であるという結論に達しました。本格的にDXを狙うならば、 もう少しグレードの高いアンテナを使うべきでしょうが、私のレベルならばこれで十分です。あとは、50MHzの女神が私にどんな 'magic' を見せてくれるのか期待するだけです。無線機の選択も大いに迷いましたが、コンパクトで持ち運びができ、リニアアンプなしで100W出せるという理由で、最終的に IC-706MKIIGにしました。私は 50MHzで200Wの免許を得ていますが、アンテナと同 じ理由で100Wで十分と考えました。電源とマストは当地で購入し、遂に必要な機材一式がそろいました。Blue X'masスウェーデンに戻ってからというもの、常に私の心はビルの屋上にありました。しかし、変な時期に仕事を中断して休みをとったツケはしっかりと回ってきました。しばらくは雑務に振り回される日々が続き、50MHz QRVの準備は遅々として進みません。日本の各局のホームページでは、「昨年同様に年末に Eu のオープンはあるのか?」が話題になっていました。「早くしなければ!」と気ばかり焦っても、状況は一向に好転しません。結局、アンテナ作業をするだけの時間と心の余裕ができたのは、クリスマス直前の週末のことでした。(この時期の日の出は午前9時、日の入りは午後3時です。 野外で作業できる時間は限られています。)「さあ、今日こそはアンテナを立てるぞ!」と、気合いを入れてベッドから飛び起きた私は、窓の外を見て呆然と立ちつくしてしまいました。そこには一面の銀世界が広がっていたのです。私の住むマルメは、北緯55度、 樺太の北端とほぼ同じ緯度に位置しますが、メキシコ沖から流れてくる暖流の影響で、冬はそれほど厳しくありません。しかし、昨年 の12月だけは例外でした。クリスマスの直前に強い寒波が襲来し、 10数年来の大雪を降らせたのです。スウェーデン人たちはホワイ トクリスマスを喜んでいましたが、私にとっては単なる迷惑でしかありません。最高気温が零下5度という日が何日も続き、降り積もった雪は氷の固まりへと姿を変えました。研究室のあるビルの屋上も完全に雪に埋まり、一部がアイスバーン状になっていました。 その屋上には柵がなく、しかも若干傾斜がついています。もしも、作業中に足を滑らせたら、そのまま30メートル下まで真っ逆さまです。(左の画像で屋上が若干傾いているのがわかりますか。水平に取り付けられたレンガと比較して下さい。端の方に20cmほどの「雪止め」がついていますが大寒波のときは、そこまで完全に雪に埋まっていました。)
もちろん、私はアンテナ作業を延期することにしました。ところが、そんな私をあざ笑うかのように(どこかで聞いた台詞)、 「Eu!!今年も年末にオープン!」のニュースがインターネットを駆
け巡りました。レポートを見ると、JAでオープンしたのはEu南部と東部が中心で、私が知る限りでは、SM-JA
のオープンは報告されていませんでした。しかし、その数日後、SM7では空前の北中米大オープンが起きたのです。ローカルの有名DXer
SM7AEDは、彼のホームページに「私が50MHzにQRV
し始めて以来、最高の1日だった」、「10月末のコンディションとは比べものにならない」
と記しています。「output 1W の局が59で入感」、「1日で
500局以上 QSO」等々、どれほどの大オープンだったのか目に浮かぶようでした。私は、自分の運のなさに心底嫌気がさし、しばらく50MHzのことを考えるのを止めることにしました。決心新年を迎え、雪は降らなくなりましたが、依然として気温が低く、それまでに降り積もった雪(氷の固まり)はなかなか溶けてくれません。アンテナ作業ができるようになるまでは、まだしばらくかかりそうな雰囲気だったので、それまでの間 FMレピーター衛星 (UO-14, AO-27)に挑戦することにしました。私は鈴木先生と同様に、50MHz以外に衛星通信にも興味を持っており、50MHzと同時進行で、FMレピーター衛星にQRV する準備も進めていました。実際に衛星にQRV し始めると、50MHz とは異なった面白さがあり、私はすっかりFMレピーター衛星に夢中になってしまいました。毎日衛星を追いかけていると、昨年10月、12月と連続して、50MHz の大オープンを逃した心の傷が癒えていくのがわかりました。しかし、そんな私をあざ笑うかのように(また、どこかで聞いた台詞)、1月下旬、Eu-JA がショートパスでオープンします。今回もEu南部と東部中心のオープンで、SM-JA のパスはなかったと聞いています。私はこれを神の警告と理解しました。ふと気が付けば、年末に降り積もった雪は既に跡形もありません。 |
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「もうこれ以上後悔したくない」 遂に私はビルの屋上へ通じるドアに手を掛けました。 |
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Tomio YAMAZAKI, M.D.(SM7XQZ esJG2GSY) & Hideki SUZUKI, M.D.(JN1BPM) ,2002