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■■■ 第18〜38節 ■■■
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男たちの意地
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■■■ 2010年7月17日(土) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第18節
ザスパ草津 2−1 アビスパ福岡
正田醤油スタジアム群馬 3160人
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夏を呼ぶ迅雷
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どうやら梅雨が明けたようです。関東亜熱帯たる群馬県内は、そりゃあもう酷暑全開で、暑いこと暑いこと。夕方になると、県北の山稜を覆うような黒雲が徐々に南へと流れだし、敷島の天気も一層怪しくなってきました。梅雨の最末期には決まって凄い雷雨があるんですが、どうやら今日がそのようです。ま、上州草津のサポーターは雷雨ごときには屈しませんがね^^。
天候の事はともかくとして、サッカー界の一大イベント、W杯南アフリカ大会も盛況のうちに閉幕し、国内ではいよいよリーグ戦が再開されます。中断期間をどのように使い、後半戦へどう臨むのか。今日はその披露の場ともなります。中断期間中には、各チームとも色々な動きがありましたが、我がチームでも新戦力補強の情報がありました。しかも3人(+1人)。登録の関係で今日は出場しませんが、いずれも期待できそうな選手達と伝え聞きます。早く見てみたいですねぇ。
さてそれでは、天気が怪しいので早目に晩ご飯を済ませてしまおう。今日はダンクのキムチ豚丼。暑い日には辛いモン喰って元気いっぱいなのです。ウマウマ、と飯を食いつつスタメンを確認。GK:21・常澤選手、DF:7・佐田選手、18・御厨選手、13・有薗選手、4・田中選手、DMF:6・櫻田選手、30・松下選手、OMF:14・熊林選手、9・高田選手、FW:8・ラフィーニャ選手、19・後藤選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:16・佐藤選手、20・柴田選手、MF:10・廣山選手、23・菊池選手、25・山田選手、FW:27・杉本選手。すっかりポストプレーヤーが板に付いたラフィーニャ選手、反対にハーフに位置を下げた事で本来のストライカーとしての本能が目覚めた感のある高田選手、加えて夏になると元気が増す後藤選手ら前線の爆撃機達が良い感じを維持しているようなので、大事なこの一戦に期待が集まります。守備ラインを見てみると、負傷の報がある崔選手に代わって起用されたのは、CBが本職の田中選手。で、本来右SBを務める佐田選手はポジションを左へ移し、左SBでの起用です。中盤の構成では、櫻田選手が久々のスタメン起用です。良くも悪くも、彼の出来が試合の鍵を握る事になるかも知れません(過去の歴史がそう語ります)。控えの選手も充実していると言って良いでしょう。廣山選手のような歴戦の勇士が控えていると思えば、若い選手達も力一杯戦えるでしょう。
榛名方面は黒雲がいよいよ低く濃くなり、黄金色の稲妻が縦横に走り、雷鳴が轟きます。雨だけが未だありません。県出身のアーティスト・富澤栄子さんによる正調・草津節の独唱に続き、サポーターによる闘歌・草津節が雷鳴にも負けない激しさでスタジアムを揺さぶる中、選手入場です。上昇の足掛かりを掴むのは果たしてどちらか。緊迫の一戦、開幕です。
試合序盤は、ニュートラルエリアでのチェックが互いに厳しく、ボールを取ったり取られたりといった攻守の応酬が繰り返されます。そんな中、リズムを掴んだのは草津でした。前半6分、ハーフウェイ右サイドから田中選手が投げ込んだロングスローが、前線の後藤選手へ収まります。後藤選手、DF2人を引き付けておいて、背後からフォローに来た高田選手へバックパス。→高田選手はこのパスをワンタッチでラフィーニャ選手へパス。→ラフィーニャ選手もワンツーで再び高田選手へパスし、やや高く浮いたパスを高田選手はハイボレーでペナルティエリアで待ち受ける熊林選手へパスします。→熊林選手からはノールックパスが中央へ蹴り込まれます。→このややトリッキーなパスにバッチリ反応していたラフィーニャ選手、ノートラップでシュートを放ちます。ボールは僅かにバーの上へと逸れて行きましたが、ワンタッチでバンバン繋いで行くプレーは見ていて気持ちいいし、なにより相手も付いて来られないので絶好機になります。この感じでいぐんべぇや。前半9分、草津は中盤でのショートパスを繋いで右サイドから侵攻。一端は福岡側に跳ね返されたセカンドボールを中央で再び確保し、すかさず右の高田選手へ展開します。高田選手はシュートを打ちましたが、コース選択の余地なく、GK正面で弾き返されてしまいました。惜し〜。前半12分、草津はセンターサークルの縁辺りから、ゴールまでおよそ45mの位置でFKを獲得します。キッカーは松下選手。凄い距離の助走を取ります。やる気です(笑)。この距離でも福岡は壁をキッチリ作ってきます(良く分かってます)。まあ、さすがにこの距離で直接シュートは難しく、結局シュートまで持ってゆけませんでしたが、「長距離砲を保有しているという事実は抑止力にもなり得る」、とかつて述べた事もありましたが、この場面こそがまさしくその体現です。松っつん、遠慮いらねぇからベシベシ打つんべぇや! 前半22分、右サイドで高田選手とのワンツーパス交換から前線へ駆け出したラフィーニャ選手、少し球が伸びすぎたのでラインを割るかと思ったんですが、ギリギリで追いつき、しかもDFを振り切ってセンタリングを蹴り入れます。後藤選手がマイナスにセットし直したボールを熊林選手がシュート、→GK防御、→跳ね返ったボールを今度はラフィーニャ選手がシュート、→バーの上でした。外しましたが、外れてしまいましたが、シビレル展開だぃね。ここまでは、はっきり草津のペースです。ですが、得点には至っていません。サッカーという競技には「優勢勝ち」ってものがないので、流れがあるうちにしっかりと点を取っておきたいですね。ダメダメな時は攻めども打てども全く枠に収まらないんですが、昇運気配の時ってのは、得てして全てが上手く転がるものです。
それを感じさせる前半37分でした。中盤のルーズボールを確保して駆け出すラフィーニャ選手。左サイドにはフリーな位置に熊林選手が居て、ラフィーニャ選手のすぐ前方にはスペースへ走って行く後藤選手が居ます。福岡のDFに進路を狭められてしまったため、選択肢は1つになっていました。そして、前方の後藤選手へパスを送る事になりました。パスを受けた後藤選手は、スピードを殺さずそのまま単騎突破を図ります。ペナルティエリアに入った所で福岡DF2人が進路を狭め、直後に後藤選手が転倒。笛が吹かれてプレーが止まります。主審はペナルティスポットを指差します。PK獲得。キッカーを巡ってラフィーニャ選手と後藤選手が互いに譲りません(笑)。結局、高田選手の仲裁で後藤選手が蹴る事になりました。サイドステップで弾むような助走から右足を振り抜くと、GKの飛ぶ方向と反対の右サイドへとボールが突き刺さります。GOOOOOAL!!! PKではありますが、優位な流れを殺す事なく先制点を奪えたのが何よりです。そして、僕達は後藤選手のために揺りかごダンスをして祝います。涼クン、オメデトー。前半は危なげなく、完全に試合を掌中に収め、なおかつ先制してリードしたまま終える事が出来ました。気分は上々ですが、確か前節もこうだったなあ、と思えば、いかんいかん試合はこれから、と気を引き締めたりもします。もちろん選手達は分かっていると思います。
後半は、1分の福岡のヘディングシュートから開始です。これで福岡が復権するか?とも思われたんですが、対する草津が、後半3分に櫻田選手の縦パスとそれに反応したラフィーニャ選手のランニングからチャンスを作り出すなど、双方相譲らない組合いです。雷鳴は時折天空を震わせますが、雨は一向に降りません。実に蒸し暑い空気が場内を満たします。そして、その空気が選手達の体力と精神を確実に蝕んでゆきます。大きな展開がないまま10分、15分と時間が過ぎてゆきます。後半18分、福岡ハーフでのせめぎ合いの中、佐田選手から縦に長いパスが高田選手へと通ります。福岡DF3人と後藤選手、ラフィーニャ選手が横一線に並ぶ状況で、この試合ここまでのプレーによって、「この選手はパスを出す」と思い込ませてきたのが功を奏し、ペナルティエリア付近に至っても誰も高田選手へチェックには来ません(むしろラフィに集中してましたね)。これはチャンスと見た高田選手は、さすがストライカー。やや外回転の掛かったシュートを放ちます。ボールはGKの手を超えてゴールへと迫りましたが、左ポストを直撃して跳ね返ってきます。リフレクトボールには櫻田選手が詰めて再びセンタリングを入れます。二の矢はラフィーニャ選手。しかしこのシュートもDFに防がれます。前半同様、勢いはいまだ草津にありますが、得点には至りません。スタミナが切れて中盤が空いてくると色々な“事故”が起こりますので、危険回避の意味からも早く追加点が欲しいですね。後半23分、福岡・左サイドを突破した城後選手に気を取られて、右サイドから攻めてきた田中(佑)選手のケアが疎かになった所を衝かれ、フリーシュートを許してしまいました。間一髪ゴールインは免れましたが、冷や汗が出たぃね。この後も遠目からではあるものの、2本のシュートを放つなど、福岡が攻撃態勢を整えつつある感じがします。この状態に危機感を持った草津ベンチは善後策を講じてきます。後半27分に、疲労の見える熊林選手に代えて菊池選手を投入します。セットプレーが試合の流れを変えるのは良くある事ですが、後半33分のプレーがまさしくそれでした。後半33分、福岡の右CK。ファーに飛んだ低いボールに飛び込んだ中町選手のヘディングがゴールを割り、同点となりました(公式記録では田中(佑)選手のシュートと変更になったようです)。「流れがあるうちに追加点を取らないと、試合を失う事になるんだよ」、って懸念事項は、往々にして現実となります。「終わってねーぞ!」「下向くなー!」。そうです。まだです。自分達で終わりにしちゃあいけません。後半35分、後藤選手に代えて山田選手が登場。高田選手をFWに上げるのかな?とも思いましたが、どうやら山田選手がそのまま2トップの1角へ収まりそうです。選手交代を行いつつあくまで勝利を目指す草津ですが、追いついた福岡とて思いは同じ。そして、勢いは今福岡にあります。草津劣勢の中、それでも頑張れば好機は作り出す事が出来ます。後半37分、左サイドから中央へ折り返されたボールを、待ってましたと蹴り込む松下選手のロングシュートは、しかし少しばかり力んでしまってミートせず、枠を外してしまいました。ただ、劣勢の中で攻撃姿勢を見せるアクセントとしては効果的だと思います。ゴールを狙う気持ちは失せていない、と草津サポーターも感じられたと思います。後半41分、草津は高田選手→杉本選手の交代で勝利を目指します。後半43分、ラフィーニャ選手が突破からシュートを打ちます(GKがナイスセーブで防いでCKとなりました)。この時間帯でも隙を逃さずゴールを狙うその魂が素晴らしい。そして、これが、この闘魂こそが勝利への分岐点になります。
後半44分、草津の左CKは、菊池選手が蹴ります。ニアへ飛んだボールは福岡DFによって一端防がれます。こぼれ球をフォローした櫻田選手から前線左フロントの菊池選手へと再びボールが渡ります。菊池選手は、味方選手の陣形が整う時間を僅かですが稼ぎ、その後、一番守備の手薄なファーサイドへとセンタリングを蹴り込みます。CK直後のため、福岡のDFも相当な人数が居ましたが、草津にとって幸いだったのは、守備陣の意識が草津のオフェンス要員に向いていた事と、ややボールウォッチャーになっていた事です。福岡守備防壁の大外を回って侵入してきた大柄な選手が、センタリングボールに到達するその瞬間まで、おそらく誰もその姿を捉えては居なかったでしょう。彼の名は御厨選手。もんの凄い勢いで突入すると、駆け込んだ勢いのまま左足でボールを蹴り、ゴールマウスへ食らわせます。GOOOOOAL!!! 御厨選手、駆ける勢いを殺さず、そのままバク転まで披露してくれます。長身なんで栄える栄える^^。2試合連続となるゴールは、草津起死回生の一撃となりました。ミック凄いよミック♪ そしてロスタイム(4分)に突入。得点直前まで決して状況が良くなかった事を草津は忘れてはなりません、なんて、言うまでもないようですね。選手達は良く分かっています(水戸戦の惨事は無駄ではなかったと言う事でしょう)。最後のFKをGK常澤選手がキャッチし、少し後に終笛となりました。
バックスタンドへやって来る選手達を待つ束の間、ほうっ、と大きく息を吐き、空を見上げます。「あぁ、三日月が出てる…」 あれだけ激しかった雷鳴はいつしか去り、結局雨は降らずに月明かりが射し込んでいます。バクスタ前に整列した選手達は、みんな笑顔です。そして、全身汗でびっしょりです。「頑張ってるんだけど結果に繋がらない」これまでとははっきり異なり、今日は心技体の歯車がガッチリかみ合った結果が表れた、そう表現できるでしょう。トラメガで挨拶する御厨選手は、まず失点を反省していました。勝って全て良しではないという姿勢は、パフォーマンスでも何でもなくて、これまで嘗めた辛酸からくる本心でしょう。こんな気持ちを持ち続けられるうちは、うん、草津はきっと大丈夫。それにつけても、久方ぶりの勝利の草津節は、いやぁ五臓六腑に染み渡るぅ〜♪これだよねぇ、これ。長く文章を書いてきた身ながら、勝利の味わいって奴は実に表現しきれません(知りたい方は是非スタジアムへ!)。この何とも言えない雰囲気とか感動とかの為に今ココにいる。全てのサポーターがそうだと思います。でもね、勝利の興奮と感動は薄れやすいので、毎週繰り返し繰り返し味わう必要があります(笑)。もう酸っぱいのやしょっぱいのや苦いのはいいですから、今日みたいな甘くておいしいのをいっぱい下さい。
激しく身を打つ驟雨も、暗鬱たる長雨も、今日を境に過去のものとなりました。今日この時からは、熱く力強い太陽の季節がやって来るのです。それを肌で感じられる、そんな今日の草津戦士の闘いっぷりでした。今日の2ゴールは、まさに梅雨を払い夏を呼ぶ迅雷であった、と後に語られるかも知れません。その歴史の行く末を決めるのは、他ならない自身です。上州草津の選手達よ、大気震わす豪雷のごとく闘わん。我ら一同、その雷鳴に唱を合わせ、共に行こう。【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年7月25日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第19節
サガン鳥栖 0−0 ザスパ草津
ベストアメニティスタジアム 5696人
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喪章を腕に
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序盤から両サイドを起点に、杉本、後藤の2トップにボールを送り込んだザスパ。しかし、なかなかシュートに結び付かず、十分な好機が演出できない。後半になっても状況は変わらず、後半はDF御厨のシュート1本にとどまった。その一方、守備では松下、桜田の両MFの中盤での早めのチェックが光ったほか、GK常沢の好判断が再三ピンチを救った。 (7月26日『上毛新聞』より引用)
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■■■ 2010年8月1日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第20節
ロアッソ熊本 0−1 ザスパ草津
熊本県民総合運動公園陸上競技場 8887人
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豪快ボレー!
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序盤からテンポの良いパスワークと素早いサイド攻撃でザスパペース。前半は相手の好守備に阻まれる場面もあったが、後半5分にカウンターから右サイドでパスを受けたMF高田が中央につめたFW後藤にピンポイントのクロス、これを後藤が豪快な右足ボレーでたたき込み先制した。その後も攻め続けたザスパは追加点は奪えなかったものの、攻守のバランスが整い相手にチャンスを与えなかった。 (8月2日『桐生タイムス』より引用)
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■■■ 2010年8月8日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第21節
ザスパ草津 2−1 栃木SC
正田醤油スタジアム群馬 7946人
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歴史は創り上げるもの
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二十四節気的には「立秋」も過ぎ秋の始まりですが、いやいや、まだまだ暑い夏の盛りです。恒例夏の甲子園大会では、奇しくも今日、本県代表の前橋商業高校が見事に一回戦を突破しました。これにあやかり、我らが草津も勝利の凱歌を挙げたいところです。
本日の対戦相手は「宿敵」栃木。すなわち、北関東ダービー3rdレグです。栃木のホームへ乗り込んでの1stレグはプライドをかなぐり捨ててのドロー試合(泥仕合)、水戸へのアウェイ戦となった2ndレグでも、およそダービーに相応しくない煮え切らない幕引きでドロー試合(泥仕合2)。ダービーって何?それを今日確かめたいと思います。
今日の試合は、エフエムぐんまの冠マッチでもあります。試験放送の頃から聞いていますが、いやぁ25周年ですか。ザスパ草津草創期からチームの喧伝をして下さり、今日も斯様に盛り上げてくれるなど、嬉しくもあり、頼もしくもあります。これからも末永く宜しくお願いします(見捨てないでね^^)。マッチスポンサー様やクラブの努力に加え、チーム状態が良い事が触媒となり、今日は早い段階から満席状態です(実はゲストのJOY目当てとか言わない!)。メインスタンドが満席になったのは9325プロジェクト以来だぃね。それどころか、ゴール裏芝席まで立錐の余地がないほどの盛況です。おうおう、盛り上がってきたぞぅ!
スタジアム入りが遅くなったので、飯も食わずに大急ぎでスタメンを確認します。GK:21・常澤選手、DF:7・佐田選手、18・御厨選手、13・有薗選手、4・田中選手、DMF:6・櫻田選手、30・松下選手、OMF:14・熊林選手、9・高田選手、FW:8・ラフィーニャ選手、19・後藤選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:3・尾本選手、5・崔選手、MF:10・廣山選手、23・菊池選手、FW:11・氏原選手、27・杉本選手。スタメンは好調持続中なので不変。とりわけDFラインの安定感が抜群なので、今日も守備を基軸にした安定感ある試合運びが期待されます。ともあれ、今日はダービーです。求められるのは唯一つ、勝利のみ。前口上とか、過程とか、内容とか、そんなものは問いません。全身全霊で対戦相手を粉砕し、勝利の凱歌を挙げる、これだけです。
暮れゆく立秋の空、暑い大気を熱く力強い迎歌・ラスハル〜草津節が震わせます。今季2回目にして最終となる対栃木決戦。今度こそキッチリハッキリ白黒付けんべぇや!いぐぞー!
前半序盤は右サイドを起点とした攻撃で栃木陣内へくさびを打ち込む草津。前半10分は、草津陣内での栃木のスローインからの攻撃場面です。栃木側のパスを巧みにカットした熊林選手が、前方待機していたラフィーニャ選手目掛けてロングパスを蹴り込みます。ラフィーニャ選手、このパスを受けるとそのまま中央突破開始。追いすがる栃木DF3人をトリッキーな動きを交えつつ躱すと、ペナルティエリア内左45°から鋭いシュートを放ちます。このシュートは枠の上に外れてしまいましたが、パスを出した熊林選手、持ち込んでシュートを打ったラフィーニャ選手、共に良い判断、良い動きで、この先期待が持てます。この後、時間経過と共に栃木もパスを繋ぎつつ攻めて来ます。セカンドボールが栃木側に収まる事が多いようにも感じます。ただ、草津はボランチ及びDF陣が早目早目の対処で決定機は作らせません。前半20分、草津は自陣で与えた栃木のFKを凌ぐと、直後に自陣で得たFKから素早いリスタートで、パス2本を右サイドへ展開。右サイドを駆け上がってこのパスを受けたのは熊林選手。熊林選手は右45°からシュートを狙いますが、ミートせず枠を外します。外しはしたものの、熊ちゃんいつの間にそんな所に居たの。今日の熊林選手はまさに「神出鬼没」。さらに、パスの狙いもその精度も抜群で、何より攻撃意欲が旺盛です。俗っぽく言えば、「モチベーションが高い」感じがします(→この理由は後ほど文末に記します)。ここまでのところ、両軍とも概ねやろうとしている事は出来ているようです。双方がある程度自分の色を出せている、と言う事は、つまり拮抗していると言う事でもあります。得てしてこういう場合、一つの切っ掛けがその後の流れを変えて行く事になる訳で、サッカーの場合、それはセットプレーだったりします。で、前半22分な訳です。草津は自陣でのファールによりFKを与えてしまいます。位置は2分前と同じ正面やや左30数m。栃木はこの場面でトリックプレーを敢行。キッカーの高木選手は直接ロングボールを入れるのではなく、草津DFの位置取りを見てグラウンダーのスルーパスをまっすぐ蹴ってきました。これに対応出来たのは、栃木FW・崔根植選手ただ一人。慌てて田中選手も追走しましたが、時すでに遅く、崔選手の蹴ったボールは対角右隅のネットを擦り上げていました(得点は前半23分)。警戒していたはずのFKから先制点を奪われました。栃木にしてみれば、得意のセットプレーからしてやったりの先制点です。しかしながら、先制を許して乙女のように意気消沈していたのは過去の事。今の草津は点を取られても前を見て闘います。ただ、栃木もなかなか巧者で、キーマンであるラフィーニャ選手を徹底的にマークしてきて、草津に攻撃の形を作らせません。やる気はあるのに上手くいかない。そんなときに松下選手がイエローカードなんぞを頂いちゃったりするもんですから、なんか、変な所のスイッチが入っちゃったようで、どうにも不穏な雰囲気がありありです。そんでもって、前半27分にも先ほどより少し深い位置でFKを与えるなど、やや空回り気味です、草津。思うに任せない試合展開に加えて、ジャッジに関するフラストレーションが溜まり、選手達が相当イライラしているのが分かります。見ている僕らもかな〜りイライラしてます。ますが、「審判は絶対」なんで、そこんとこよっくと踏まえて、堪え難きをグッと堪え忍んで下さい。前半28分、単騎突破を図ったラフィーニャ選手が倒されて、かなり距離がありますが(40数m)、栃木陣内でのFKを得ました。この距離は松ゾーン。もちろん直接狙いましたが、大きく外れてゆきました。いやあ、変に力入ってるね、松っつん^^; 落ち着け〜。前半30分〜40分の間は、草津が持ち前のパスで繋ぎながらの攻撃を取り戻し、栃木ゴールへと迫りますが、栃木の守備も堅い堅い。とにかくラフィーニャ選手への徹底したマークに破綻が生じません。前半41分、栃木・左サイドから高木選手が上げたセンタリングがロボ選手へピンポイントで通ります。ロボ選手、これをフリーな状態でダイレクトボレーシュートへと持って行きます。いやあ、危ねぇ危ねぇ。強いシュートではありましたが、コースがGK常澤選手の真正面で助かりました。胸でガッチリ掴んで難を逃れます。前半44分にも左サイド起点として、同じく高木選手のセンタリングからのシュートがありました。しかし、高木選手、敵ながら上手ぇな。そして油断も隙もねえ。かくして、1点のリードを許したまま前半終了。前半は栃木が予想以上の機動力を持って草津陣内へ強圧力を掛けてきました。ただ救いなのは、圧力を受けて若干機能低下してはいるものの、中盤での組立が完全に破綻している訳ではないと言う事でしょう。今は栃木のプレスが強く掛かっているので、セカンドボールがなかなか取れないし、裏を取るパスもしっかりした崩しからとはいっていませんが、はっきりオーバーペースな栃木の拘束は、後半必ず破綻します(リードしている安心感もそれを助長するでしょう)。要は、決して諦めないこと。その時は必ず来ます。
そして後半が始まります。後半は、開始直後から栃木が勢い良く攻め込ん出来ます。このまま流れが行ってしまうかとも危惧しましたが、ラフィーニャ選手が、こりゃゴールラインを割るな、と言うような足の長いルーズボールを懸命に追いかけて、しかも取られはしたもののエリア内に残す執念を見せたり、直後には佐田選手が相手DF2人に囲まれ、転けそうになりながらもドリブル突破を仕掛けたりと、ボールを失わないようにワンプレーを実に大事にしているのを見て、まだまだ草津は折れてない、と確信出来ました。後半4分、その佐田選手の頑張りで得た(ほぼCKに近い位置からの)左FKの場面では、先制された時のお返しとばかりに、トリックプレーを披露します。キッカーの熊林選手はゴール正面30m弱の位置に居る松下選手へとパスを蹴ります。もちろんフリーな松下選手、ここは撃ちます。ええ、波動砲(笑)。ただセットプレー陣形なので、栃木のDFが多数ゴール前に居て、シュートはこの壁に阻まれてしまいました。このシュートがラインを越えてくれていたら良かったんですが、最も悪い形に嵌りました。シュートの威力が強かった分、なんとリフレクトボールがそのまま栃木のカウンターアタックへの起点になってしまったじゃあありませんか。もうね、見事なくらいに綺麗にカウンターが決まって、しっかりシュートまで持って行かれましたよ。入っていてもおかしくなかったけんど、これ不幸中の幸い、ボールはアウトサイドネットを揺らすに止まりました。ふひ〜、冷や汗かいたぞ。しかし、ピンチの後にはなんとやら。後半7分、草津自陣でのパスカット→松下選手のパスから侵攻開始です。松下選手のパスは、まずハーフウェイライン上右サイドの高田選手へと渡ります。高田選手は、パスを受けた時点で前方に展開する栃木の守備ラインに隙間がある事を瞬時に看破し、ワンタッチで前方の熊林選手宛てにスルーパスを送ります。これが綺麗に通ると、熊林選手は前方すぐ近くを栃木DFの包囲の外側を迂回するように回り込みながら切れ込んでくる後藤選手に対して、これまた絶妙なスルーパスを蹴り出します。このパスに対して栃木DFとの駆け比べになった後藤選手、いや頑張った頑張った。倒れ込みながらも右足でボールをミートすると、ボールはGKの体の下(たぶん股の下)を通過し、そのままゴールマウスへと転がり込みました。GOOOOOAL!!! 後藤選手の2試合連続ゴールは、雰囲気を一変させる値千金、いや万金の大同〜点〜弾〜♪この得点で雰囲気がガラッと変わりました。いや、ギアが上がったって感じです。そうして気が付けば、栃木の足色が良くないですね。あれだけきつかった前線からのプレスが影を潜め、草津は中盤でのパスネットワークが機能回復して来ています。後半19分、今度は速攻からラフィーニャ選手のシュートです。しかし、これは枠の上へ。ラフィーニャ選手、色々な局面で良く頑張っているんですが、シュートだけが決まらない><。ガンバレ、ラフィ。後半20分は草津・右CKの場面です。バクスタ側でCKを蹴る時に大きな歓声が上がりますが、キッカーの熊林選手は「もっともっと!」と煽ります。熊ちゃんのこういうパフォーマンスが、一層僕らの距離を縮めてくれます。そして、増量した歓声が選手達にチカラを与えます。後半22分にもラフィーニャ選手のシュートが枠外へ飛びます。ここまで何本か外してはいますが、良く考えてみると、後半になってからシュートが打てるくらいにフリーになっている、と言う事でもあります。栃木の拘束が解けてきたようですね。しかし油断は禁物。後半23分、パウリーニョ選手が放ったミドルシュートは、GK常澤選手が正面でキャッチに行ったものの、思わずこぼす位に強烈な一撃でした。凄ぇ〜、怖ぇ〜。こういうプレーがあるので気が抜けません。
後半27分の右CKは印象的でした。これまでのようにバクスタを煽ってコールを要求した後、拳を強く握り、自らの胸を叩く熊林選手。(「任せておけ…」)、そんな無言の、しかし確固たる自信に満ちた言葉が聞こえた気がしました。振り抜かれる右足。弧を描きニアサイドへ落着するボール。先ず触ったのは後藤選手。頭でファーサイドへホイップします。このボールに頭を合わせたラフィーニャ選手のヘディングシュートはGKの正面へ。しかし、強く打ち出されたボールはGKのキャッチを逃れ、再びラフィーニャ選手の足元へ。今度は足で。蹴り上げた足を離れたボールは、今度こそゴールネットを突き上げました。GOOOOOAL!!! 逆転!幾つかの決定機を逃していただけに、ここでキッチリ決めてくれた事に大きな意味がある、僕はそう思います。ラフィはもっと大きくなるよ。逆転直後には栃木に攻め込まれますが、集中切らさず凌ぎます。後半29分、最初のカードは草津が切ります。熊林選手→菊池選手へと交代します。熊林選手、今日も攻守に八面六臂の大活躍でした。熊ちゃんなくして草津は語れねぇやぃね。交代出場の牛若丸・菊池選手も、熊林選手に劣らないハイセンスの持ち主です。残り時間は任せたぞ。対する栃木も矢継ぎ早に選手交代を敢行(後半26分、36分、37分)、あくまで勝利を目指します。残り時間が少なくなってくると、さすがに草津の選手達にも疲労の色が濃くなり、栃木の攻勢を受ける場面が増えてきます。それでも引いて守る事なく、中盤でのパス構成は色褪せる事なく組織されています。攻撃への意識も失っていません。これで良いんです。後半40分を過ぎるまで、リズムの良い草津は選手交代を控えていましたが、満を持して2人目の交代を後半43分に行います(後藤選手→氏原選手)。ロスタイムにはロボ選手のシュートを受けました。栃木も天晴れ、捨ててません。これぞダービー。されど、勝利するは我にあり!4分のロスタイムが消化され、主審の笛が鳴り響くと、満場の草津サポーター、選手達がいつも以上の喜びを表現します。これがダービーに勝つという事。選手達が示してくれた、「3回目にして真の回答」です。
さて、これで直近6試合での戦績が3勝3分となりました。現状を表現する言葉として、「復調」とか「好調」っていうのはちょっとしっくりこないなぁ、相応しいのは、そう、「安定」ですね。シーズン前半戦と比べて一目瞭然なのは、スタメンが「安定」したこと。過去を顧みると、スタメンの固定化はチームの柔軟性を損ない、戦力の底が浅い事を露呈したものでしかありませんでしたが、今季に限って言えば、前半戦で試行錯誤を繰り返した事がかえって戦力の均質化と底上げに寄与したようです。おかげで、サブメンバーも充実しているし、誰が出てもやる事にブレがない。万事塞翁が馬ですな。具体的に見てみると、守備の安定感が増し、選手達が相手の方を向いてプレー出来るようになりました。また、最終ラインの危機察知スキルが向上し、余計な人数や手間を要しなくなりました。これらの効果で、攻撃へ移行するポイントやタイミングが良くなり、また引いた位置に多くの人間が張り付かなくなった為に、カウンターを打った時に前線に絡める人数が多くなりました(FWが守備ラインで球を蹴っている光景が減ったぃね)。前線ではラフィーニャ選手を始めとして役割分担が明確化し、それを忠実にこなすだけの信頼関係も出来ています。問題を挙げるとするならば、ハードワークが全てのキモになっている為に、時間経過と共にスタミナ低下が激しく、全体のクオリティが維持出来なくなる事です。これはある程度仕方ない面もあるので、ベンチワークの工夫などによって極力致命的な状況になりそうな時間を少なくする事が必要です。まあ、後は気持ちの問題かな。
内容はどうでも良い、と冒頭で書きましたが、今日は内容的にも得る物が多くありました。試合自体に関しては観戦記に書いた通りで、相手の執る「草津封じ」にも良く耐えて、先制されながらも諦める事なく自分達のスタイルを貫いた上で逆転出来た事が重要です。大きな自信にもなったでしょう。興業的には、「大事な試合に勝てない」「大観衆だと勝てない」などのネガティブなジンクスを悉く払拭しました。些細な事ですが、こういうのって、意外とメンタルに影響するんですよね。早目にそういう雰囲気を追い払っちゃった方が今後のためになります(→だから、今日ご来場下さった皆様、また来て下さいね^^)。
さて、栃木は仕留めました。次のターゲットは水戸です(10/24@ホーム)。アウェイでの借りは、やっぱりシッカリお返ししておく必要があるでしょう。まあ、もっとも、現時点でのリーグ順位でライバルチームに大きく後れを取ってしまっているので、次なるダービー対戦時までには馬鹿にされないくらいの位置まで昇っておかねばなりません。この後草津はアウェイ2連戦を戦い、夏の終わりにホームへと帰ってきます。今日の試合を戦い抜いた今のチームなら、どこでやろうと、誰とやろうと、きっと勝ち切ってくれると信じられます。この興奮と熱気を持って僕らはこれからの茨の道を突き進もう。「歴史は出来上がるんじゃあない。創り上げるものだ。」 僕らの「ザ・ダービー」は、僕らサポーターと選手達の強い思いと熱気が創り上げてゆく。【ほーせん@高崎】
追記:試合後の「お立ち台」で、熊林選手が静かに、しかし力強くこう語りました。「大基の分も頑張る」。昨季まで共に闘った草津戦士・佐藤大基さんが、7月19日に急逝しました。享年21歳。なんという年若い。なんという。なんという…。佐藤大基さんと非常に親しかった熊林選手から「大基のためにコールをして欲しい」との申し出があり、B-Hで盛大にして厳かな「大基」コールをしました。熊林選手も込み上げるものがあるようです。僕らも泣きそうです。佐藤大基さん、いままで本当にありがとう。そして、どうか安らかに。【なっから!ザスパ!!関係者一同】
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■■■ 2010年8月15日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第22節
カターレ富山 1−2 ザスパ草津
富山県総合運動公園陸上競技場 3767人
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ロスタイムの沸騰
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攻撃のリズムがかみ合わず決定機をつくれないまま0−0で前半を終えたザスパは、後半に入ると富山にペースを握られ、同27分にCKから先制を許した。
しかしザスパはその5分後に同じくCKからDF御厨が右足で押し込み、すぐさま同点とすると攻勢を強めた。そして、迎えたロスタイムに相手ゴールエリア付近からのフリーキックをFWラフィーニャが左足で豪快に決め、終了間際で逆転した。 (8月16日『桐生タイムス』より引用)
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■■■ 2010年8月21日(土) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第23節
大分トリニータ 1−0 ザスパ草津
大分銀行ドーム 10223人
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温泉ダービーの結末
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時は8月、お盆シーズンも終わり残暑まっただ中のこの時期、親戚の会合も夏休みも返上し、ザスパ草津の試合を見るがために遠路はるばる大分へ。羽田空港から飛行機に乗りこみ定刻より早く大分空港へ到着。そして空港を出て、大分へ向かう高速バスに乗るため外に出た瞬間、残暑の時期とはとても思えないひりつくような暑苦しい空気がじりっと迫り、群馬から着た私たちを手荒く歓迎してくれました。あとで知った話だと、どうやら大分の日中時の気温は38度だったらしい・・高熱だしたときの体温と同じくらい、それだけ暑かったということなのだと思います。高速バスで別府温泉に立ち寄り、ここでも草津温泉に張り合えるくらいの高温の湯の洗礼を受け熱中症ぎみになりながらも大分駅に到着。そしてそこからシャトルで現地へ。駅から大分銀行ドームまでは30分くらい時間を要しました。
そしてスタジアムに着くなり、早速スタグルメを堪能!と思いきや、屋台が存在するのはすべてホーム席があるコンコースの中・・コンコースの入り口からチケットを提示して入場することになっているので、とても入れる雰囲気ではありません。カレー・とんてき・焼きそばなどいろいろあって楽しそうなんだけどな〜。しかもニータンのぬいぐるみを買うつもりが、グッズ売り場もホームコンコースの中・・しかも今回は別府温泉vs草津温泉ということで、今回の試合は温泉ダービーという事が決まったのですが、それにちなんで、我らが草津温泉を紹介したブースがあるというのに、これもまたホーム席の中。ビジターとして大銀ドームに入場する我らは、スタジアムを取り囲む柵越しからホーム席の盛り上がりをこっそりと指をくわえて見ておりました。そしてビジター席に入ると、おそらくホーム屋台の1/6と思われるぽっちりした売店のみ。やはりJ1に長く在籍したチームのホームスタジアムは違うわ・・しかし売店で目をひいたのが「豊後とりめし」というメニュー。ん・・?登利平のとりめしとは違うん?よく見ると鳥釜めしのような混ぜご飯がおにぎりになっていて、それにたくあんが入ったものが売ってありました。とりめしも地域によって全然違う料理になるんだいね。スタジアムの屋根も流線型でお客さんも沢山入りそうだし(収容人数なんと4万人だそうで)こんなスタジアムが群馬にもできねえかなー。
そして今回の試合のスタメン。GK 常澤、DF 田中・有薗・ダニエル・佐田、MF 高田・松下・櫻田・熊林、FW 後藤・ラフィーニャ。控えGK 伊藤 DF 尾本・西澤MF廣山・山田FW 前田・杉本。今年のザスパはワールドカップ開けてからそれまでの不調がすっかり過去のことのように好調な出だしで、三連勝しかも七試合負けなし。そんな中副島監督が前節の富山戦で、審判への執拗な抗議で退場になったため大分戦では鳥居塚コーチが監督代理をつとめることになったのです。
そして守備の要でありかつ得点源でもある御厨選手が累積警告で出場停止。今まで彼と有薗選手のセンターバックコンビが的中して勝利が続いていただけに、御厨選手の代理が誰になるのか注目が集まっていましたが、途中加入したダニエルがスタメンに入るということで、彼なら熊本戦でも途中出場したことがありいい動きしてたので、今回もきっちり守ってくれるはずだと大いに期待。応援では久々の「ト・リ・イヅカ!」コールでトリさんを後押ししました。大きなスタジアムの中で半分ほどのゴール裏もがらんとしている30人ほどの少数精鋭ザスパサポ。でも少ないからこそ、気持ちはひとつ!
キックオフ。その直後からすでに大分にフリーキックを許してしまいヒヤヒヤするようなすべりだし・・・・そんな中でもクマや後藤選手がチャンスを作りラフィーニャにつないでいきますが、大分のがっちりと固い守備をなかなか破ることができず・・しかもあっさり取られドリブル突破されたり・・ディフェンスライン近くで奪われないようにボールをパスしつつ回避するのが精一杯だったような気がします。それでもその中でダニエルは初のスタメン出場ながらも与えられた役割をこなしており、押し込まれたボールも長身でクリアしていました。
そんな中昨年栃木にもいた河原選手がまたたく間にゴール前に進出し、これは危ない・・と思ったら・・左サイドからまた別の大分の選手がクロスを入れようとする様子。それをさせてたまるかと、そのボールをダニエルがゴールに向かってヘッドでクリア・・と思いきやそのボールは運悪く自陣のゴールに入ってしまい、オウンゴール=ザスパの失点が決まってしまったのだ・・自分がやってしまったことに気落ちしてそのままその場でうずくまってしまうダニエル。即座にトッキーに慰められていました。それにしても前半の早い時間から痛恨の失点。ゴール裏は一瞬の事で何がおこったかわからず凍りつきました。あのボールがあっちのゴールにはいっていればまぎれもなくスカパーにノミネートされるようなスーパーゴールだったけど、方向が違った・・。しかし取られたならとりかえせばいいじゃないか。事故だと開き直って得点して巻き返せ!
しかしその後もピンチが幾度となくおとずれ、こちらに試合展開をひっくりかえせる空気は感じられず。大分選手のクロスが素晴らしい角度で放たれたが運よくポストに当たってくれたりして相当ひやっ・・逆にチャンスがあっても得点の入る気配なく・・何故だろう?オフェンス陣はいつもと同じメンバー使ってるのに・・得点王ラフィは3人がかりで抑えられているのでほとんど何もできないのが悔しい・・今回は前節での監督の退場も関連して特殊な状況だから仕方といえば仕方ないけど・・シュートほとんど見れてないなあ・・。なんだかなあ・・。(公式記録によると前半シュート数1だったようで・・)消化不良のまままま前半は終了。さすがにこれでは終われないだろう・・後半からの激的な展開に期待!
後半また大分のセットプレーでピンチを迎えたがこれはトッキーのナイスセーブで難を逃れる。バーすれすれの位置で、おそらく相手側にしてはスーパーゴールになったと思われる難しいシュートをセーブ。トッキーは昨年の本田選手から紺色の十本指を引き継いで、すっかり2010シーズンの守護神に定着しましたね。そのあと大分選手に疲れが見え始めたのもあり、前半よりはスムーズにパス回しをできるようになって得点の予感はしたものの、いまいち決め手に欠けるような気がします。なんせ大分の守備が非常に固くザスパの攻撃陣がそれを破れないため、シュートすら打てない、打てたと思ったら運悪くそれる・・パスも長すぎて相手に届かず連携していない、そんな印象で試合自体も面白みの欠ける内容になったような・・。そして62分には後藤涼選手にかわり杉本選手が投入されました。杉本選手も果敢にゴール進出するもフィニッシュで決められず、残念。今回のザスパの前にはなかなかチャンスが転がってきません。杉本選手は今までの中で出場時間が長かったような気がしますが、若干焦りがあったような・・。ビッグチャンスがあったのに競り合いに負けシュートまでいたらなかったのは残念。ザスパ草津U23出身の彼には期待しているのでこの試合を糧に今後に生かしてほしいと思います。そして後には熊林選手に代わって前田選手、櫻田選手に代わって廣山選手が入りました。しかし交代により劇的に流れが変わることはなく4分のロスタイムに突入。この時間帯になっても1点も入らない焦りもあり大分側の時間稼ぎ的になかなか始まらないキックにいらいらさせられながらも、4分間にザスパに起こるであろう奇跡を待ちましたが、そのままスコアはかわることなく大分1-0草津で終了しました。
これで大いにザスパの雰囲気を盛り上げていた連勝はストップ、負けなし記録も同時にストップしてしまいました。副島監督がいないこともありますが、このスコアにこの内容、今までの好調ぶりはなんだったのだろう・・としばし呆然。不運な失点だったのでせめて1点でも入っていれば・・という気持ちがありました。しかしこれも、やはり大分が一段と実力が上だったと思い知らされたことで、本物の勝利は楽に手に入らない、もっと強くならなければと実感させられたきっかけになったと思います。この試合はザスパ草津に課せられた新たなる試練と受け止めて、次に臨んで欲しいと思わずにいられません。そのためゴール裏の応援は次に切り替えようという意味のザスパ草津コールで締められたのでした。
帰り道は予想以上の別府温泉の熱さと大分トリニータの実力に圧倒されつつ、実はそれよりももっと熱いであろう草津温泉の源泉とザスパ草津の真の実力についていろいろともの思いにふけっていたのでした。【さねやん@東京】
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■■■ 2010年8月29日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第24節
ザスパ草津 1−4 徳島ヴォルティス
正田醤油スタジアム群馬 3309人
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真夏の幻影
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暑い。利根川沿いで山颪の涼風が期待出来る立地であるにも関わらず、ここ敷島は今日も暑いです。川面が陽炎で揺らめーてらぃね。そして、試合のある週末の敷島は、いつも通り“熱い”です。今日は、アウェイ2連戦を1勝1敗とした後の、久々のホーム戦です。
熱気漂うメイン側広場を見回りながら、まずは晩飯の調達です。本日は、以前から気になっていた「ダンク」のお弁当、「油琳鶏(ユウリンチー)丼」を購入しましょう。ザスパ自販機で冷たい飲み物を買って…って、入れたんべぇきゃ、これ。温りぃぞ(ガックシ)。ともあれ、バックスタンドの定位置で、甘酸っぱいつゆの掛かった鳥唐揚げ飯を喰らいながらスタメンを確認します(おぉ、美味いぞコレ♪)。スターティングメンバーはこうなりました。GK:21・常澤選手、DF:7・佐田選手、18・御厨選手、13・有薗選手、34・西澤選手、DMF:6・櫻田選手、30・松下選手、OMF:14・熊林選手、9・高田選手、FW:8・ラフィーニャ選手、19・後藤選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:4・田中選手、32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、23・菊池選手、FW:15・前田選手、27・杉本選手。今節は「同期のライバル」徳島が相手です。今季の徳島はJ2でも屈指の中盤を擁し、攻撃力には定評があります。すなわち、攻勢を食い止めつつ試合を優位に運ぶことが勝利へ至る道です。冷めぬ熱風、大気震わす大音声。選手が散り、草津のキックオフで試合開始です。
前半序盤は双方にボールが出入りする展開です。草津の攻撃は基本形態であるパス・ポゼッションからの構成で、ひとまずは右サイドの西澤選手を拠点にするように見えます。前半5分、その西澤選手は、左サイドから来たパスを受けると、意表を衝いてミドルシュートを放ちます。枠を外しはしましたが、良いアクセントになります。攻撃姿勢は上々です。前半9分、自陣の御厨選手から前線へ大きくフィードボールが蹴り出されます。これに反応してラフィーニャ選手が走り込んで追い付き、高田選手→DFの裏スペースへ走り込んだ西澤選手→グラウンダーのクロスボール→ゴール前に詰めた熊林選手のシュートは枠の左へ。良い流れです。前半15分過ぎまでは徳島の攻撃を完全に封じ、かつ草津の標榜するポゼッションサッカーが出来ています。前半18分、草津バイタルエリアで細かくパスを繋ぐ徳島。このエリア内で関与する人数は草津の方が多いんですが、パスが繋がりボールが動く度にフリーになる徳島の選手が現れます。アレアレ?そうこうするうちにボールと人がペナルティエリアに入ります。この時点ではボールを持つ津田選手と同じライン上に左・島田選手、右・佐藤選手がそれぞれ完全にフリーな状態で前を向いています。一方の草津守備陣は、津田選手のチェックに当たっている御厨選手の他には、直近でボールの出所を見極めているCB・有薗選手しか居ません。こうなると徳島の選択肢は1つ。中央でフリーになっている佐藤選手へパスを流すと、簡単に蹴り込まれあっさり先制を許します。ここまでチャンスらしいチャンスを与えていなかったのに、ファーストシュートで先制されてしまいました。一見するとラッキーシュート、しかしよく見ればディフェンスエラーです。思い込みたい幻影と受け入れたくない現実。そのことを草津側が把握しているかどうか、それがこの試合の鍵になりそうな予感がします。
失点はしたものの、草津優勢な流れ自体は変わりません。パスが綺麗に繋がります。しかし徳島の組織立った守備防壁を破るにはもう一工夫が必要なようです。前半30分、後藤選手が相手のバックパスをチェイスしたところを背後から倒され、ペナルティエリアすぐ外からのFKを獲得します。おお、良い位置だぞ。涼クンナイス♪ このFKに対し、ボール位置にはラフィーニャ選手、熊林選手、松下選手が立ちます。最近の実績ではラフィーニャ選手でしょうが、草津の選択は熊林選手でした。まずラフィーニャ選手がフェイクで左方向へ走り抜け、直後に熊林選手が左方向へミドルスピードの弓なりのボールを蹴ります。壁の上を越えたボールは一歩も動けないGKの脇を通りゴール左隅へと刺さります。GOOOOOAL!!!(前半32分)。徳島に島田選手が居るように、うちにだって熊林選手が居ます。追い付いた。流れもこちらにある。いける、この試合いける。前半35分、左サイドで後藤選手のポストプレーから前方へのスルーパスが出されます。ここにラフィーニャ選手が駆け込み、逆サイドをフリーランニングで駆け上がる高田選手へ向けてセンタリングを上げます。高田選手、右足を一杯に伸ばしてボレーシュートを放ちますが、GKが良い反応でキャッチしました。うむ、あと一歩だ。頑張ろう。いよいよ得点の匂いが濃くなってきましたよ。しかし、期待の割に得点機は訪れず、同点のままハーフタイムとなりました。
で、後半です。後半4分、左サイドでの攻防から徳島・倉貫選手がスーッと抜けるようなスルーパスを前線の津田選手宛てに送ると、津田選手、眼前を塞ぐ草津DF2名をあっさり躱し、左足を振り切ります。ボールはゴール右隅へ突き刺さり徳島2点目獲得です。嗚呼、後半もファーストシュートで失点してしまいました。草津も対抗するように後半6分、ラフィーニャ選手がミドルシュートを放ちます。が、シュートは左へ外れます。流れの中では徳島に思うような形を作らせていない。一方の草津はと言うと、形はしっかり作りながら決定的な形にまでは持って行けない。この辺りから形容しがたい空気が漂っていたように思います。「こんなにパスが繋がるのに」、「攻め込んでるのに」、「おかしい、おかしい、オカシイオカシイオカシイ…」。おそらくフィールド上では、みんながこんな心境だったんじゃないでしょうか。状況打開のため、草津は早目に手を打ってきます。後半16分、後藤選手→前田選手の交代を敢行。フォーメーション自体は弄らず、戦術にも一切の変更はありません。後半22分、熊林選手からの縦パスを受けたラフィーニャ選手、先ほどの徳島2点目と同じような展開で前を向きます。しかし、徳島DFのチェックを受けてシュートを撃てません。後半23分、両軍共に選手交代です。草津は熊林選手→菊池選手、徳島は佐藤選手→ドゥグラス選手。そして、このベンチワークが、この試合の分水嶺になりました。 後半25分、草津のゴールキックからでした。ハーフウェイでルーズボールの応酬を経て、ボールは草津陣内へと帰って来ます。ここで徳島はカウンターに移ります。津田選手(フリー)→島田選手(ここもフリー)→センタリング→ゴール前で待機するドゥグラス選手(なんてこったこれもフリーだ!)→綺麗なヘディングシュートが決まって、徳島に3点目を奪われます。選手交代が嵌った徳島がまたしてもワンチャンスで得点を奪います。草津の選手がほとんど関与していないため、実に流れるような一連のプレーでした。無人の野を行くが如しとはこの事かと。後半29分、草津は高田選手→杉本選手の選手交代により、どうやらラフィーニャ選手と杉本選手の2トップとする様です。フォーメーションは変わりましたが、しかし、戦術には変更無しのままです。後半32分、徳島は守備固めの選手交代です(輪湖選手→三田選手)。もとよりポゼッションを草津に奪われていた徳島です、得点差を考えると守備ブロックを固めてワンチャンスでカウンターを打った方が危険が少なくて効率が良いとのベンチの意図が良く分かります。そして、そのベンチ采配がまたしても嵌ります。後半33分、中盤でのルーズボールの奪い合いから、徳島側がロングボールを蹴り出します。徳島側は、得点差から守備重視の陣容に変更していたので、前線に張る選手は少なくなっています。で、その前線に残っていたのが津田選手。カウンター一本に絞って待機していた津田選手、何の迷いもなく(まあ、フォローがないのでやるしかないって事情もありますが)このボールを追いかけます。前掛かっていた草津の守備陣は、このカウンターに全く対処出来ず、DF2名が追走(併走じゃないよ)、結局振り切られてGKと1対1になったシュートを決められてしまいました。脆い。脆すぎるぞ草津…。ここまで打たれたシュートがほとんど得点になっているのに対し、草津はゴールに肉迫出来ません。攻めども攻めどもゴールに収まらない様は、蜃気楼に向かって突撃する兵隊のようです。そして、状況は変わらず、試合終了。状況は変わらず、と書きましたが、果たして草津側に変える気があったのか…。
徳島はシュート7本で4点と実に低燃費。一方の草津はほぼ倍の13本で1点。しかも徳島はほぼカウンターなのに対し草津はポゼッション。この気候で球をこね回した挙げ句に外しまくっていれば、それだけで体力・気力を喪失するのは必然です。4失点の守備にも問題はありますが、より深刻なのは流れから得点出来ない攻撃です。連勝も含めここ数試合の得点はほとんどがセットプレーがらみです。流れの中で得点のチャンスがない訳ではなく、最終局面でゴールを割ることが出来ないんです。シュートが外れる場面は、まあいいでしょう。問題なのは、ペナルティエリア内までボールを持ち込んでいながら、シュートを打つことが出来なかった場面です。いや、もっと正確に言うならば、「打たなかった」ですが。何故打たないのか。より確実なコースや選手を探しているうちに取り囲まれて機会を失っている場面が多く見られます。一概にそれがいけないとは言えませんが、それが万事においてベターであるとも思いません。相手に「こいつらは囲んじゃえば絶対に打たない」と思われてしまうことによって、精神的な余裕を与えることだってあります。時には無理押しにでも強いシュートを打ち込んで、「何をやらかすか分からんぞ」とでも思わせておいた方が、付け込む隙が出来るってもんです。中盤でのパス連携は素晴らしいくらいに繋ぐことが出来るんですから、それがゴール前で出来ない方がおかしい。中盤とゴール前では状況が違う?そりゃそうです。だったら工夫しなくちゃ。工夫もひねりも何にもないから得点機が近付いて来ないんです。
もう一つお小言を言わせて下さい。今日の試合では、攻撃時のチームとしてのコンセプトにも疑問を感じました。試合開始直後から終了までの間、草津は一貫して細かいパスによるポゼッションサッカーを展開しました。綺麗なネットワークが構築され、相手陣内に攻め込む場面も結構ありましたが、結果として(流れからは)1点も取ることが出来ませんでした。1点差までは構いませんが、2点差、3点差と点差が広がり、時間は無くなってゆく。この状況で時間を掛けてパスを繋いで攻めて行く、その必然性が全く分からない。どちらかと言えばランニングアタッカーと言える杉本選手や前田選手を投入したんですから、展開を見つつ「ロングパス蹴り込みそれ行けー戦法」を織り込んでも良かったんじゃあねえんきゃ?時間ねえんだし。「一戦の勝敗よりも失いたくないポリシーがある」、と言えば聞こえは良いですが、こうも大差を付けられてしまえば、何を言っても戯れ言にしか聞こえません。
「一見」優勢に見えた試合展開も、終わってみてから気が付けば、全て仕組まれた罠でした(もしかしたら自分から嵌っただけかも知れませんが)。守備ブロックをシッカリ固めた徳島を攻めあぐねているうちに生じるミスや隙を相手が見逃さず、しかも一撃必殺でものにした結果がこうなった、そういう話です。
選手達の名誉のために、誤解の無いように書いておきますが、選手達は決して手を抜いただらけたプレーはしていません。追い詰められてなお、勝利を目指して果敢に闘いました。その姿勢と闘志は大いに讃えられるべきです。看過しがたいのは、その気迫の使い方と方向性が間違っていることと、その修正が出来なかった(しなかった)こと。「孔明の石陣」に嵌り込んだ兵隊を救い出してあげられるのは、陣外から全貌を見渡すことの出来る軍師(ベンチワーク)だけです。その辺も今後早急に改善が求められる部分と言えます。
連続不敗、連勝、優勢な試合展開。蠱惑の響きに痺れた頭と体が見るのは、しかし幻影。幸いにもこの大敗でそのことに気付けたはずです。真夏の陽炎にユラメク幻影は8月に置いて、9月からは心機一転、トキメク現実を僕らに見せて下さい。【ほーせん@高崎】
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■■■ 第25節はお休みだぃね! ■■■
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■■■ 2010年9月19日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第26節
ザスパ草津 2−1 FC岐阜
正田醤油スタジアム群馬 2816人
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英断
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9月になりました。陽の高い日中は相変わらず暑い空気が支配的で、軽く体を動かしただけでも汗が噴き出してきます。夕闇迫る敷島へ降り立ち、視線を利根の川面から上、榛名山へ上げ、ぐるりと右方向の赤城山を見渡します。ああ、それでも季節は刻々と過ぎて行くんだなあ。薄水色からやや茜差す空を彩る雲は、もうすっかり秋のそれです。さて、刻々と近づく試合開始に向けて、スタジアムへ向かうとしましょうか。
場内は時折吹き込む涼風が心地良いですが、それでもまだまだ暑い。まあ、陽が沈めばもう少しマシになるでしょう。事前情報によると、病気・負傷で櫻田選手と佐田選手が今節はお休みです。いずれもキーマンで、換えの利かない選手です。気になるスターティングメンバーはこうなりました。GK:21・常澤選手、DF:4・田中選手、18・御厨選手、13・有薗選手、34・西澤選手、DMF:14・熊林選手、30・松下選手、OMF:25・山田選手、9・高田選手、FW:8・ラフィーニャ選手、19・後藤選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、17・秋葉選手、23・菊池選手、FW:27・杉本選手、33・アレックス選手。SBには左・田中選手、右・西澤選手が配されました。ボランチには松下選手の相棒として熊林選手が一列下がります。空いた左SHとして、山田選手が久々のスタメン起用です。布陣としては、ラフィーニャ選手を1トップに置き、トップ下に後藤選手、右SHに高田選手を並べる4-2-3-1です。先に櫻田選手、佐田選手を換えの利かない選手と評しましたが、替わりに入った選手には彼らとは違った別の仕事が出来るはずなので、持っている特徴をいかんなく発揮して欲しいです。本日の対戦相手である岐阜で注意すべきは、FW・嶋田選手および押谷選手、そしてMF・染矢選手でしょう。いずれもスピードと技術を備えるプレーヤーで、フリーにさせて前を向かせたら相当厄介な事になりそうです。僕個人は、とりわけ染矢選手の潜在力に畏怖の念を抱いています。何かのきっかけで大きく伸びそうなものを感じていますが、そのきっかけを与えたのが草津だ、なんて事だけは避けて下さいね(マジ勘弁)。
下呂温泉、草津温泉それぞれの幟旗の林を通り、両軍の選手達が入場します。三名泉ダービー、ここに開幕です。前半、先ず攻勢を掛けたのは岐阜です。前半2分、左サイドを快足で突破した嶋田選手がクロスボールを中央へ入れます。ここは合わせる選手がなく、シュートまで至りません。序盤の岐阜は前線からのチェックが速く、それでいて何でもかんでも追いかけ回すという感じではありません。的確に要所を締めてくる、そんなやり方に見えます。一方の草津は、熊林選手がボランチの位置にこだわらず、かなり前目で球捌きをしてゲームを組み立てています。さらに、右SB・西澤選手がかなり高い位置をキープしつつ、頻繁にオーバーラップを仕掛けるなど、攻撃的な姿勢を顕わにしています。「配球係」としてみた場合、櫻田選手は自身を含めたネットワークからの守備突破を指向しますが、熊林選手は縦一本のスルーパスを相手DFの隙間隙間にビシビシ蹴り込んで前線の選手を駆け込ませる形を多用します。前線の各選手、特にラフィーニャ選手や後藤選手辺りはこれを感じ取っていて良い動きをしていますが、なかなか綺麗に決まりません。良い感じにスルーパスが通れば決定的チャンスに直結するんですが、そこは流石に相手も良く分かっていて(良く読んでいて)、パスカットされる事も少なくありません。で、思い出されるのが岐阜の特徴である素早いカウンターアタック。いやあ、取ってからの切り替えと展開が速い。しかも前線の選手達の足の速い事!草津DF陣が何度置き去りにされたか。前半14分、岐阜・左サイドの染矢選手から中へ走り込んだ嶋田選手へスルーパスが通ります。嶋田選手は対応してプレスに行った草津DF1人を躱すと、GKと1対1となりシュートを放ちます。GK・常澤選手は果敢に飛び出し、体を張ってシュートを防ぎます。おおー、サンキュートッキー♪どうもパスカットされてショートカウンターを喰らったり、セカンドボールを奪われて一気に前線に詰められるなど、草津は受けに回って良い形で攻められません(前半15分:秋田選手のミドルシュート、前半20分:西谷選手のクロスボール、前半25分:染矢選手のドリブルからのシュートなど)。前半27分、岐阜に中央やや右寄り25mの位置でFKを与えます。蹴り込まれたボールを草津DFが一端は跳ね返しますが、こぼれたボールは再び岐阜・秋田選手の前へ。秋田選手はこれに反応してオーバーヘッドシュートを放ちます。これを再び跳ね返しますが、ボールは三度岐阜へ。今度は西川選手が強いシュートを打ち込んできますが、GK常澤選手が右手一本で防ぐスーパーセーブを魅せます。あ、危なかった…。いや、助かったよトッキー(滝汗;)。そして今度は常澤選手のスーパープレーに攻撃陣が応える番です。前半33分、前方の視界が開けたのを見計らった松下選手、30mはありましたが波動砲発射です。強烈なロングシュートはキッチリ枠を捉えていましたが、岐阜GK・野田選手も負けじとファインセーブでこれを弾き出します。前半40分、高田選手がドリブルで中央に切り込みながら、左足でシュートを放ちます。枠を捉えたGoodなシュートでしたが、これもGK・野田選手がファインセーブで防ぎます。前半42分、ペナルティエリア内から西川選手にシュートを打たれますが、ここも常澤選手が防ぎます。今日の常澤選手は、正に神。危ない場面を何度も防ぎきってくれた事で、前半はこのまま、後半へ期待を掛けよう、と思っていた前半終了間際の44分でした。草津のゴールキックがセンターエリアに落ち、これを岐阜側が草津陣内へと跳ね返します。このこぼれ球を岐阜の選手が拾ったところで、中央の2人と合わせ3名が同時に駆け出します。草津の守備は5人が当たりましたが、全てがボールウォッチャーになってしまい、選手やスペースを見ていませんでした。まず押谷選手が中央でパスを受けてシュートを放つと、GK・常澤選手が反応して防ぎます。しかし、こぼれたボールはペナルティエリア内に活きたままです。これにすかさず詰めた嶋田選手が頭で押し込み、先制点を奪われます。いやあ、何とも良くない時間に良くない形で先制点を奪われてしまいました。警戒していたにも関わらず、まんまとしてやられるとは。ともあれ、後半やる事はこれで決まりました。シッカリ攻めて、キッチリ点を取りましょう。
後半開始の円陣を見ると、菊池選手が居ます。どうやらハーフタイム中に高田選手と交代になったようです。前半動きに精彩がなかったとは言え、草津を動かす大きな歯車である事には変わりなく、この交代はベンチの英断と言えます。なので、交代出場の菊池選手には、同じく若い山田選手と呼応した溌剌プレーを期待します。後半に入って変わった点は2つ。熊林選手がかなり前目に張り付いていて、どちらかと言うとオフェンシブな仕事が目立ちます。前半は上がったり下がったりと出入りが激しく、見ていてもスタミナが心配なくらいでしたが、兎に角点を取らねばならんという事から、こういう形になったものと思われます。反面、前半はほとんど上がりっぱなしだった右SBの西澤選手が、一転、DFラインから上がりません。これは反対側の左SB・田中選手も同様。ボランチ・CB・SBの計5人で守備ブロックを構築して、岐阜のカウンターを受け止める戦術と見ました。しかし、これで良いと思います。前半はSBが上がった後の空きスペースをいいように使われていたし、高めで仕事をする熊林選手の守備負担が軽減されるので。熊林選手の位置取りと働き方次第で今日の試合は決定する、と言って過言でないと思います。その意味からも、可能な限り負担を減らしてあげて、かつ前目で得点に直結するようなラストパスを送り続けてほしいところです。そして、草津ベンチの采配が功を奏して、中盤でのセカンドボールは草津側に収まるようになりました。こうなると組織力に勝る草津の攻撃陣が機能を発揮し始めます。パスセンスの高い菊池選手と熊林選手を基軸にして、ドリブル突破を図る山田選手、ポストプレーでお互いに守備網突破を図る後藤選手とラフィーニャ選手。それぞれの持ち味がいかんなく発揮され、序盤から草津が優勢です。試合は、後半10分から大きく草津側へと舵を切ります。後半10分、草津は左タッチライン近くで約20mのFKを獲得しました。ボールを蹴るのは熊林選手。右足を振り抜いて蹴り出されたボールは、前目に出ていたGKの背後を取る形でゴール左隅を正確に射抜き、直接ゴールへと突き刺さります。GOOOOOAL!!! おおー、熊ちゃんスーパーゴーーーール!そして同点だぁーー!沸き上がる場内の歓声が鎮まらぬうちの後半11分、キックオフ直後のボールを奪った熊林選手は、ドリブルで岐阜陣内へ突進します。併走する味方は右前方にラフィーニャ選手(フリー)、左前方に後藤選手(DF1人マーク)、その更に左サイドに山田選手(フリー)で、対する岐阜DFは、熊林選手を追走する1名+CDF2名+後藤選手のマーカー1名の計4人です。同数ながら、追っかけ守備になっているため、岐阜側は迂闊に手が出せない模様。しかも全員がボールウォッチャーになってます。ボールを持つ熊林選手は、流石にクレバーです。この状況を良く見極め、味方が一人でも多く且つ広く展開するタイミングと相手DFが寄せてくる頃合いを十分に見計らい、岐阜側にとってエアポケットとなっていた右前方へキラーパスを蹴り出します。ここに走り込んだのがラフィーニャ選手。岐阜DFが後方から走り寄ってきたものの、これをフェイントで躱し、すかさず体勢を整えてシュート!しなやかな体躯から撃ち出された弾丸は、ゴール左上・ポストギリギリを掠めて枠内に着弾します。GOOOOOAL!!! 逆転!1分間で逆て〜ん!場内騒然。こんな短時間での連続得点なんて、Jに上がってからやられた記憶は多々あれど、やった記憶はありません。まさかの逆転劇に岐阜ベンチの動きが慌ただしくなります。後半13分にOMF・西川選手→FW・佐藤選手、DMF・川島選手→OMF・池上選手、と2枚のカードを切り攻撃的姿勢を示します。しかし、運命の輪はあくまで草津に傾いたままでした。
選手交代直後の後半14分、またもカウンターで単騎抜け出した後藤選手が右サイドで後方から倒されると、岐阜DF・吉本選手がレッドカード提示で退場となり、岐阜の戦術が大きく破綻します。後半15分に、(個人的に岐阜の攻撃の要と目していた)MF・染矢選手を下げてDF・野垣内選手を投入せざるを得ませんでした。この交代を機に、岐阜の攻撃・守備のパターンが1つに固定されました。すなわち、低めに残したワントップをよすがとしたリトリート・リアクションカウンターです。こればかりは仕方ないよね。でも、同情してやれるほどうちも余裕がないし、大体失礼なので、ここはもうガッツンガッツン行かせてもらいます。後半32分、約35mのFKの場面です。熊林選手の蹴り込んだボールは弾き返され、こぼれ球を山田選手が拾います。山田選手、レシーブすると迷わずミドルシュートを放ちます。シュートは枠の右へ少し外れてしまいましたが、その果敢な姿勢は良いですぞ。後半35分、今度はゴール正面25mのFKです。熊林選手はまたも直接狙いましたが、GKの好セーブに阻まれました。流石に同じ轍は踏みませんね。後半39分、右サイドからのFKでは、熊林選手から左へ展開され、菊池選手がシュートを放ちます。このシュートはGKの正面に飛んで止められてしまいましたが、兎に角撃つ事が今は大事なんです。先輩がセットしてくれたおいしい場面は、大事にしつつもシッカリ最後まで持って行く(出来れば決める)、これです。数的優位を背景に、岐阜に全く仕事をさせず攻勢にあるのは良いんですが、相手の好守もあって追加点を奪えません。圧倒的優位で試合を掌握しながらも、追加得点を奪うに至らないあたり、まだまだ「王様サッカー」をやれるほど練度が高くないなあ、とも思いますね。ま、慣れが必要だぃね、こうゆーのは。何はともあれ、攻める姿勢を最後まで保ち続けた草津は、危なげなくゲームクロージングを履行し、試合終了。ホームスタジアムに久しぶりの凱歌・草津節がこだまします。それにしてもラフィが大喜びだな(笑)。
今日の試合の節目は両ベンチの選手交代にあった、と僕は考えます。草津の決断は、主柱である高田選手を試合半ばで替えた事。まさに「英断」であったと思います。今日の試合に限って言えば、交代出場した菊池選手が良い働きをした事から相乗効果を生み、全体の活性が上がり逆転勝利へと至ったので支持されますが、結果が伴わなかったら大批判の的になるところでした。加えて、前半の欠点であったSB裏のスペースを後半から封じた事もナイスベンチワークと言えます。一方の岐阜側のキーは、染矢選手の交代ではなかったかと。彼の去った後の岐阜の攻撃は、中継点を失ってまとまりを欠いた散発的なものになったように見えました。一人少ないので攻撃に割ける時間はあまりないとは思いますが、もとよりカウンターの上手いチームなので(そしてうちはそれに弱いと)、一人少ないなりの戦い方が出来たと思います。扇の要が外れた感じに見えたのは僕の錯覚ではないと思います。やはり一角の選手なんだと思います(末恐ろしい限りです)。
試合前に、草津観光協会長兼ザスパ草津支援委員会会長の山田さんが、ザスパ草津サポーター及び選手達へ向けて力強いメッセージを贈ってくれました。「残り試合全部勝ちます!!」と。「いやいやいや…」と苦笑する向きもありますが、「よくぞぶち上げた!」との歓声も少なくありませんでした。かつて「2番じゃダメなんですか?」との名(迷)言を仰られた方がおりましたが、はなから銀メダルや銅メダルを狙って取るなんて、人間業じゃあありませんね(それが出来るくらいならば金取れんじゃん)。常にトップを狙って、積み重ねた先にやっと転がり込んでくるものが、もしかしたら金であり、銀であるのだと、そういうものだと思います。然るに、先のエールは、至極真っ当な発言だし、大いに共感すべきものだと思います。明確な目標を立て、それに向かって努力邁進する。一つずつ克服すべく知恵を絞る。時に大きな決断を下す。僕らが目指すものは大きいですが、出来る事は本当に小さく些細なものです。一つ積んでは崩し、さっきより少しだけ高く積んだと思ってはまた崩し。周りからはやり方が悪いから崩れるんだとか、そもそも積めるような形じゃねーじゃん、とか色々言われる事もあります。でも、その時々の判断でやるしかない訳で、その決断が「暴挙」と言われるか、「英断」と言われるかは、後の歴史に委ねるべきものです。今の僕らに出来る事は、己が信じる道を迷いなく選び進む事。それが「英断」であると信じて。【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年9月23日(木・祝) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第27節
ギラヴァンツ北九州 0−1 ザスパ草津
北九州市立本城陸上競技場 2404人
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ゴールはゴール!
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長かった夏もようやく終息を迎えた秋分の日、台風の余波の雨の予報も吹き飛ばしてしまうくらいの秋風が冷たく感じられた、北九州・本城陸上競技場にやってきました。以前、実は本城陸上競技場には2回程(JFL時代のNW北九州に移籍した、元・ザスパ草津の宮川大輔選手の応援で^^;)来たことがありますが、J昇格にあわせスタジアムは改修され、アウェイのゴール裏は、コンクリートがうたれ応援し易いように段差も作られていました。今日の相手の北九州と言えば、今年J2昇格のチーム。5月のホーム戦では勝利直前に宮川選手に恩返し弾を見舞われドロー、今月5日の天皇杯2回戦にホームの敷島サカラグにおいて対戦し、草津が無念の敗戦に追い込まれた因縁の相手!今日のリーグ戦、決して連敗する訳にはいきません。今日は必ず勝ち点3をゲットしてこなければなりません。
本日の草津サポーターは40〜50人くらいでしょうか。今日のコールリーダーは、試合開始前に一人一人に握手をしながら「みんなで精一杯頑張りましょう」と、声を掛けてくれました。群馬からも応援メールが次々に届き、みんなの祈りを力に代えて応援体制は万全です。草津の選手も試合前のピッチアップでは、みんなで声を合わせ昇り調子になってきた?チームの結集^^を感じ取ることができました。草津のスタメンは、GK21:常澤選手 DF34:西澤選手 DF13:有薗選手 DF18:御厨選手 DF4:田中選手 MF23:菊池選手 MF30:松下選手 MF14:熊林選手 MF25:山田選手 FW19:後藤選手 FW8:ラフィーニャ選手 控えとしては、GK1:伊藤選手 DF32:ダニエル選手 MF9:高田選手 MF10:廣山選手 MF17:秋葉選手 FW33:アレックス選手 FW27:杉本選手の布陣で戦います。16時03分キックオフとなりました。
草津は、開始早々から両ボランチの松下選手と熊林選手を起点に、両サイドに球を振りそこから菊池選手や山田選手が足を使ってタイミングよく駆け上がるシーンが目立ち、何か早い段階で試合のペースを感じさせるものがありました。ファーストシュートも草津のMF菊池選手でしたが、惜しくもゴールにはならなかったものの、やはり最後はシュートで終わりたいものです。早い時間から積極的に仕掛けて攻撃の型を作っていきました。しかし、相手の北九州も球をカットするとそこからの展開が速く、速攻で球を放り込んでバイタルエリアまで持ち込まれ、はっとさせられる場面もありましたが、シュートまでにはいたらず、こちらのDF陣の堅実なプレーが光りました。前半は、熊林選手のFKもありましたが、惜しくも壁に当たったりと、点には繋がりませんでしたが、かなりの強い向かい風にもコントロールができ、守護神:常澤選手も安定したキープ力でで、試合の流れを握る貢献者となっていました。
後半に入ってからも積極的なプレーが目立ち、攻撃の手を緩めませんでしたが、なかなか点が入らなかった後半12分、ボランチの松下選手から右サイドのMF菊池選手へ球が送られ、そこからワンタッチでクロスが上がった所、相手の選手がクリアしようと足を出したものの、その球はゴールの中へ・・・GOOOOOAL!!! 草津も2人の選手がゴールに詰めていたため、こぼれ球があったとしてもゴールになったかも知れませんが^^; オウンゴールでもゴールはゴール。しかも、試合の流れはこの1点先取によって、こんなにはっきり明暗を分けてしまうもの。均衡が破れると草津の動きはさらにパワーアップしてきました。1点先取はしましたが、さらなる追加点を取るために攻撃は続きました。丁寧なパス回しからチャンスを伺いますが、ゴールエリア内のコースラインが消されているのか?なかなか速くシュートに持ち込むことができず、追加点にはいたりません。後半26分には、MF山田選手からMF高田選手へ、さらに後半37分にはFW後藤選手からFW杉本選手へと走りと高さを補強し追加点を狙っていきました。攻撃の流れは、休むことなくパスミスもあまり感じられず、短いパスを堅実に回し相手を翻弄していきました。 その後も、交代した高田選手のシュートや松下選手・ラフィーニャ選手のシュートもあり、点に結ぶことができませんでしたが、最後はシュートで終わる流れのいい型になっていきました。終了間際に相手北九州の宮川選手のきわどいシュートもありましたが^^;ロスタイムも冷静に試合をコントロールし、無事試合終了。
結果は、相手オウンゴールの0−1にて草津がリーグ戦連勝で終わりました。草津が17本のシュートを放ち圧倒していましたが、終わってみれば得点は相手のオウンゴールだけで1本も決められませんでした。確実なパス回しから、速いシュートに何とか持ち込めれば、今後も結果は付いてくるのではと確信しました。これからも、チャンスを多くの点につなげ、確実に勝ち点を積み上げ、順位を上げていきたいものです。【あきべー@北毛】
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■■■ 2010年9月26日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第28節
ザスパ草津 0−2 サガン鳥栖
正田醤油スタジアム群馬 2746人
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泥縄
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季節は急速に秋めいてきました。敷島公園の園内を散歩すると、かすかにキンモクセイの甘い薫りが漂ってきます。サッカーラグビー場ではJFA主催のイベントで、シニアチームとジュニアチームの微笑ましいサッカーの試合が行われていたりします。季節はスポーツの秋です。少し早く着いたので、僕は木陰で読書の秋です。ぐぅ。あ〜でも食欲の秋でもあるし、まずは食料の調達に行きますか。トントン串やら焼きそばやらを抱え込んで、いそいそとバクスタ定位置へ収まります(←おい、読書はどおした(笑))。
では、いつも通りスタメンの確認から参りましょう。GK:21・常澤選手、DF:4・田中選手、18・御厨選手、13・有薗選手、34・西澤選手、DMF:14・熊林選手、30・松下選手、OMF:25・山田選手、23・菊池選手、FW:8・ラフィーニャ選手、19・後藤選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、17・秋葉選手、9・高田選手、FW:27・杉本選手、33・アレックス選手。フォーメーションは前節と同じで、左SB・田中選手、右SB・西澤選手、ボランチに松下選手と熊林選手、左SH・山田選手、右SH・菊池選手、トップ下に後藤選手、ラフィーニャ選手を1トップとする4-2-3-1です。第26節からの過密日程を全く同じメンバー(26節はスタメンが一部異なります)でこなす事になりました。怪我人等が多く、メンバーを弄りづらい事情からですが、さすがに疲労が心配です。これ以上怪我人が出ないように祈るばかりです。さて、対戦相手は鳥栖です。今節はキーマンの一人である萬代選手が出場停止です。草津にとっては願ってもない事ですが、注意すべき選手は他にも居ます。その筆頭は、なんと言ってもFW・豊田選手でしょう。185pの長身ながら足も速いので、間違ってもフリーにしてはいけません。
ひつじ雲浮かぶ敷島の空に草津節が染み渡り、両チームの選手が定位置に付くと笛一声。第28節鳥栖戦、開幕です。前半5分、右サイドコーナー付近で相手DF2人に囲まれながらもボールをキープしたラフィーニャ選手から、フリーな状態で詰めてきた松下選手へパスが通ります。松下選手、ここは狙い澄ましてミドルシュートを放ちます。ボールはしっかり枠を捉えていましたが、GKの好セーブで弾き出されました。まずは幸先良い出だしと言えます。前半15分までは、草津はワンタッチプレーからの早いパス回しによる攻撃で、鳥栖のアタッキングサードまで頻繁に侵攻します。一方の鳥栖は、草津の激しいプレッシングに阻まれて、シュートチャンスを作り出すに至っていません。優位に試合を進める草津ですが、得点を奪えないまま時間が経過してゆきます。あまりこの状態が長引くと、ちょっとした切っ掛けで流れが大きく変わっちゃったりすることが往々にしてありますので、早目の先制点が望まれます。前半16分、接触プレーでラフィーニャ選手が負傷したようで、頭を押さえてピッチに倒れています。プレーが切られると自分で立ち上がってしっかりと歩いていますが、どうやら頭を切って出血した模様。この治療のため、一端場外へ出ます。この辺りから鳥栖の攻勢がやや強くなり、試合は完全に膠着状態になります。前半24分、鳥栖・右CKの場面です。センタリングは、ゴール中央に居る豊田選手をターゲットに蹴り込まれ、ナイスタイミングでヘディングシュートを打たれます。ゴール右隅を狙って打ち込まれたシュートは、GK・常澤選手の守備範囲外で、あわやゴールインかという危機でした。これを救ったのは、こぼれ球のフォローに当たっていた松下選手です。ゴールイン直前でシュートボールをヘディングで弾き出しました。危ねぇ危ねぇ! ここまでは互いに守備ブロックが大いに機能していて、その突破に手こずりながら打開策を模索しているという状態です。しかし、試合は思わぬ形で、草津からしてみると「暗転」します。
前半28分、オウンゴールで鳥栖に先制点が、文字通り転がり込みます。バックスタンドからは、この時の状況がよく見えていました。右ハーフライン付近から、鳥栖はクロスボールをゴール方向へ蹴り込んできました。この時ボールの行く先には鳥栖選手はおらず、常澤選手はゴールラインへそのまま流せ、と言う指示をDFの選手達に出していました。この指示を受けて、ゴールに一番近い位置に居た有薗選手はボールの軌道を見つめながら走る速度を落としていました。しかし、右サイドに居た西澤選手はこのハイボールを流さず、ゴール方向へ向かってジャンピングヘッドでバックパスをし、これが枠の右隅へ転がり込むことになりました。「聞こえなかった」、ここまでは良いでしょう。場内の歓声を考えれば仕方ない。大問題なのは、「バックパスは枠を外せ」と言う大原則を守らなかった事。相手が寄せていて緊急事態ならやむを得ませんが、切迫した場面でもなかった事を考えると、見過ごす事の出来ないミステイクです。勇ましいドリブルや華やかなトリックプレーも結構ですが、最低限求められる基本的スキルだけは、もう、これでもかと言うくらいに練習して、寝ていても体が反応するくらいに徹底的に習熟して下さい。古くからのサッカーファンならご存じでしょうが(と言っても東京オリンピックの頃ですが)、「日本サッカーの父」と呼ばれるデットマール・クラマー氏の指導は基本に忠実で、パス、トラップを徹底的に反復練習させたと言われています。日本代表監督も務めたジーコ氏もまた、アントラーズの監督として常に言っていたのは「基本的な技術」です。この失策の直後は、かつての悪い癖が再発し、いっそ清々しいくらいの混乱ぶりです。何をそんなに慌ててるのやら。ま・だ・前半だー、取り乱すなぁー! 前半35分頃までには草津も落ち着き、熊林選手、松下選手を中心としたワンタッチプレー、ラフィーニャ選手のポストプレー、山田選手のドリブル突破など、持っている良い所を出しつつ攻勢を取り戻します。前半40分、熊林選手がゴール前にセンタリングを蹴り込みます。このハイボールに対応した菊池選手、相手DFと競りながらもヘディングシュートを打ちます。ボールはわずかにゴール左へと外れましたが、ファーサイドにはラフィーニャ選手もダイビングしていて、あと少しでゴールという際までいきました。惜しかった。と、ここで前半終了。午後3時頃は秋空ながら陽射しが強く、西日が眩しいほどでしたが、前半終了の頃になるとさすがに陽が落ちて薄暗くなったため照明に灯が入りました。そして、この辺りから気温もグングン下がりだし、肌寒さを感じます。頼むで、後半は暖かくさせてくんなぃ。
後半立ち上がりは、開始5分までに2本のシュートを打たれるなど、鳥栖の攻撃が優勢です。このまま流れを持って行かれるとまずいので、草津には攻撃的な姿勢が求められます。後半6分、松下選手の縦パスがポストのラフィーニャ選手へ入ると、ラフィーニャ選手は後藤選手と素早い連携でパスを交換。ボールを受け取った後藤選手はそのままドリブルで駆け上がり、ミドルシュートを発射します。シュートは枠の上へ飛んでしまいましたが、押され気味な情勢を考えると、一つ楔を打つプレーになると思います。そして、草津ベンチは早目の選手交代を行います。後半10分、後藤選手→杉本選手の交代により、どうやら2トップへ変更したようです。後半11分、鳥栖はカウンターから左サイドを山瀬選手が駆け上がり、縦に追い抜いた田中(輝)選手へパスを繋ぎます。草津DFとの競り合いでこぼれたボールを再び山瀬選手が拾い、センタリング。ここに居たのはフリーの豊田選手。やばーい!蹴り込まれたシュートに完全に体勢を崩したGK・常澤選手でしたが、伸ばした右手一本をボールに当て、辛くもゴールを守ります。うおー、神セーブ!ここで追加点を奪われていたら試合が決していたところです。まだツキがあると思います。後半15分、山田選手→高田選手の交代です。山田選手、今日は良くボールに絡んでいたし、動き自体も悪くなかったんですが、交代ですか。ちょっとベンチ焦ってませんか?前線・中盤と良い圧力を掛けられているので、このまま持って行けば、早晩同点、逆転する事も十分可能なようにも見えるんですが。なかなか大きなチャンスが作り出せない草津でしたが、後半22分に絶好機を迎えます。中盤の熊林選手から左サイドをオーバーラップする田中選手へ長いクロスボールが通ります。田中選手はペナルティエリア内にスルーパスを通すと、ゴール前に詰めていたラフィーニャ選手、杉本選手がこれに反応します。手前のラフィーニャ選手は、自分がマークされていることを悟ると、このパスをスルー、後方の杉本選手が完全にフリーになりました。さあ、あとは流し込むだけ。だがしかし、ジャストミートのシュートを打つことが出来ず、GKの手の中に流し込んでしまいました。スギモン、またもヒーローになり損ねました。後半36分、鳥栖のFKがゴール前に蹴り込まれ、そのリフレクトボールが再び左サイドに展開されます。ドリブルでペナルティエリアに侵入した野田選手、草津のDF2人に囲まれながらもゴール前にパスを出します。草津守備の網をかい潜って、ここにフリーになっていたのは早坂選手です。オフサイドかとも思えるタイミングでしたが、ボールはゴールマウスへ流し込まれて追加点を奪われます。身長183pという長身の早坂選手は、前所属のHONDA FCでは当初FWで活躍していた選手で、得点機の嗅覚に優れているのも頷けます。さあ、これで攻めるしか勝利への道はありません。後半40分、草津ベンチは菊池選手を下げて、身長193pの野獣、ダニエル選手を前線へ投入すると言うパワープレーに打って出ます。しかし、このパワープレー、練習すらした事がないんじゃあなかろうか。ダニエル選手のポジショニングがあやふやな上、意思の疎通が全く見られないために、連携プレーなどは無残な限りです。結局ダニエル選手をターゲットにした放り込みが始まる訳ですが、いや、これがまた酷い。彼、前線でのプレー経験なんて無いんじゃあないですか?入ってくるボールに対しての対処(位置取りやジャンプのタイミング合わせ)が出来ず、せっかくのハイボールは全て競り負けて跳ね返されてしまいます。後半43分には、それでもゴール前まで攻め込んで絶好のチャンスに絡みます。ここで決めればオイシイぞ!しかしながら、がら空きのゴールが目前にありながらシュート出来なかったりと、その残念な空回り具合が、ガッカリを通り越して笑えてくるくらいだよ。それでも、彼を責めるのは気の毒です。ベンチの采配にも疑問はありますが、この場合は致し方なし、ですね。使い物になるかどうかのお試しセール的な色合いも含んでいたんでしょうが、残念ながら現状では全くダメですね、これは。どうせなら、御厨選手をトップに入れちゃって、ダニィをCBの壁にしちゃえば良かったのに。杉本選手の反転からのシュートが枠を外れたところでホイッスル。試合は終わりました。試合終了の頃には空一面に薄黒い雲が満ち、雨の匂いが感じられます。寒さを感じたのは試合内容からだけではなかったようです。
今日のパワープレーでハッキリした事は、今の草津にはスクランブル時の特別態勢がないと言う事です。ドログバという有名な選手が居ますが、今日の草津は「泥縄」(笑)。僕自身、過去の観戦記に「点差があるならポゼッションではなく蹴り込みサッカーを選択するのも一手段だ」と書きましたので、今日のようなやり方に異論はありません。ただ、反省はしてます。やっぱりね、練度の低い方法は、本番でやってもそう成功するものではありませんね。ま、相手が浮き足立ってくれたりする副次的な効果に期待する側面が大きい戦法でもあるので、伸るか反るかは状況次第の大博打になっちゃいますね。
ラフィーニャ選手は負傷にも関わらず最後までポストプレイヤーとしての仕事を全うしました。守備の壁に阻まれながらも反転突破を敢行する場面も多く、ゴール前にあと一人居てくれたら、と思う事しきりです(→基本的にその場所に一番近いのはFWです。多くは語りませんが、…分かりますよね?)。熊林選手のスルーパス、松下選手の大きなサイドチェンジクロスは今日も綺麗に決まっていました。中盤の組織は機能していたんです。得点を奪えなかったのは、つまり攻撃の最前線に課題があったから、と言う事になります。 ドリブルで果敢に突破する山田選手、サイドから細かくパスを配球する菊池選手、ポストプレーで起点を作るラフィーニャ選手と、各選手個々の働きは献身的で素晴らしいんですが、これが線で繋がらない。鳥栖の防衛戦術が優れていたのは確かですが、それを突破しようとする発想が足りませんでした(熱意だけが空回り)。連戦の疲れもあり、また守備フォーメーションの事も考慮すると、熊林選手にこれ以上の負担を強いる事は出来ません。その分OMFが攻撃の組立で頑張る必要があるんですが、先発の両SHは良く頑張っていたと思います。
今日の試合は博打的ではあったものの、一つ大きなチャレンジをして失敗しました。もともとが泥縄であった感が否めないので、これはこれで必然であり、仕方ないかな。ただ、これを今日一日の急場しのぎとして終わらせてしまうか、今後に対しての何らかの手がかりとして行けるかで、この挑戦の評価が変わってきます。負けても失敗してもただでは転ばない。立ち上がる時には必ず何かを握りしめていたい。十回に一回、百回に一回くらいは貴重なものを得られるかも知れないですからね。
文末に、デットマール・クラマー氏の名言をもう一つ紹介して筆を置きます。
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「せっかくここまで盛り上がったサッカーだ。
これを栄えさせるかすたれさせるかは、君達の肩に懸かっている。」
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【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年10月3日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第29節
ザスパ草津 1−0 東京ヴェルディ
正田醤油スタジアム群馬 4701人
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たのしんでるかい?
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早いもので、もう10月です。天気は朝から曇り空。それでも湿度が高いのか、少し散歩すると汗が出ます。試合前のイベントでは、ピッチを3つに分けて子供達と「ふれあいサッカー教室」が行われています。秋葉選手、佐藤選手、崔選手の3名が子供達と一緒にボールを追いかけてます。その最中、スタジアムDJ氏にマイクを向けられて色々とインタビューされてます。3人共通の質問として、「サッカー上達のコツは?」と聞かれて、3人が同じ回答を返しました。曰く、「楽しんでやること」と。それを聞いてアウェイ側の壁に貼られた断幕に目がいきます。奇しくも東京の断幕には、「たのしめ→+α闘え」の文字。やっぱり、物事は苦しいばっかりじゃあダメね。選手、サポが共に楽しめて、ハッピーになれる試合が理想です。少なくともホームスタジアムだけはいつでもそうであることを願ってやみません(子供達が眉間に皺寄せて毒吐いてるのを見るのはね、おじさん辛いのよ)。
ちびっ子達の微笑ましい光景を見ながらも、ちっとんべぇ厳しい現実を確かめんべぇか。事前情報によると、どうも熊林選手、有薗選手が今節は休場のようです。方やチームコントローラー、方や守備双璧の一柱。中盤の若武者・菊池選手はU19日本代表遠征のためチーム離脱中で、怪我人多数と。いやはや、今日は一体どーするん?恐る恐る今日のオーダーを確認します。GK:21・常澤選手、DF:4・田中選手、18・御厨選手、3・尾本選手、34・西澤選手、DMF:6・櫻田選手、30・松下選手、OMF:19・後藤選手、9・高田選手、FW:8・ラフィーニャ選手、27・杉本選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:7・佐田選手、24・梅井選手、32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、25・山田選手、FW:33・アレックス選手。知人に聞いた話では、先日見に行った練習では、ある選手(詳細は明かせません)がFW練習をしていたとか。コンバート?いやあ、背水の感満載ですな^^;。明るい話題を幾つか。先ず、今節台所事情からとはいえ、尾本選手がスタメン復帰になったのは嬉しいですね。パパさんになったばかりなので、一層気合いが入るでしょう。おめでとうございます。そしてガンバレ!それから、高田選手がこの試合でJ2通算400試合出場となります。J2初の大記録です。網膜剥離を始め、満身創痍ながら打ち立てた金字塔です。素晴らしい!おめでとうございます。そして、これからも末永くヨロシク!
さて、本日の対戦相手は東京ヴェルディです。中断開け戦績では首位をゆき、J2不敗の柏、それに次ぐ驚異的な強さを見せる甲府を相手に土を付けるなど、上位戦線に肉迫する好調ぶりです。スタメンを見ても、売り出し中の高木ブラザース・高木善朗選手、高木俊幸選手を筆頭に、河野選手、阿部選手などの優秀な若手選手と井上選手、飯尾選手、菊岡選手、土屋選手、土肥選手など中堅・ベテラン選手が良い感じで組み合わされているなあ、と思います。草津も東京と同じようなパスサッカーを標榜するチームです。がっぷり組んで、果たして力負けしないだろうか。それとも、四つ組みを回避し、敢えて注文相撲で変化を見せるか。副島監督の思惑は、おそらくスターティングメンバーに隠されているはずです。よろしい、読み解いて見せよう。試合が楽しみになってきました。
試合が始まると、当初想像していた展開(中盤の攻防とパス合戦による拮抗した立ち上がり)に反して、どうも草津が押し気味に運んでいるようです。幾つかの要因が考えられますが、一番大きいのは、草津の司令塔である熊林選手の不在にあるのは間違いないと思います。熊林選手が居ないことにより、中盤における構成がいつもとは異なります。ゲームコントロールを司るのはボランチの2名(松下選手と櫻田選手)。それも、高い位置へ切り込んでパス網に絡むのではなく、あくまでやや引いた位置で長いパスをピンポイントで入れる戦法を採ります。これであったか、副島監督の秘策。四つ相撲では流石に分が悪いと見ての奇策です。これに面食らったか、東京側の中盤が対処に手こずっています。見ていると、中盤の選手達は細かいパスを警戒して、プレスに来るよりも球の出所と出先を見分けようとするような態勢を取っています。そこに頭の上を越えるような長いパスが頻繁に飛んで行くものだから、どうしても対応が後手に回ってしまう、そんなところでしょう。自然、草津優勢な流れが生み出されてゆきますが、草津もまた良いところまでゆきながら決定打に欠けます。最終ラインを統率する土屋選手がことごとく壁になり、草津の決定機を潰します。この土屋選手、上背はありませんが身体能力が高く、空中戦では無類の強さを見せるほか、元々がサイドバックだったこともあって足も速い選手です(全盛期には、「犬よりも速い」と言われた彼の野人・岡野選手よりも足が速かったとか)。草津の戦法は秀逸で、ロングボールを入れるだけでなく、中盤に隙間が出来ると見るや、本来のパス連携からサイドアタックを絡めた攻撃を仕掛けるなど、東京に的を絞らせない消耗戦術を波状的に繰り出してきます。ボールを持つ時間が多くなれば自然とチャンスも多くなる道理で、草津は0分;左CK、3分;正面25mFK、9分;正面22mFK、13分;右コーナー付近FK、17分;正面25mFK、と、次々とセットプレーを獲得してゆきます。そして迎えた前半25分、草津はゴール正面約25mという絶好の位置でFKを得ます。この距離・位置だとキッカーとしてラフィーニャ選手と松下選手が考えられますが、ここは松下選手が蹴るようです。壁、GK、枠、味方選手の位置、諸々を確かめた後、助走から右足が振り抜かれます。右足から撃ち出された豪球シュートは、ゴールマウス右上隅ギリギリを掠めてゴールマウスへと突き刺さります。GOOOOOAL!!! あの位置は絶対捕れない。よくぞ決めてくれました、さすがはキャプテン!メインスタンド側では選手を集めて揺りかごダンスを披露しています。強敵相手に良い時間で先制することが出来ました。あとはこのペースを維持しつつ、可能な限り追加得点を狙いましょう。 前半30分の右CKからの場面では、キッカーの松下選手が蹴り込んだボールを一端は弾かれますが、この跳ね返りを西澤選手が拾いそのままミドルシュートを放ちます。このシュートは相手GKに防がれましたが、前が空いたと見て躊躇なくシュートに打って出る気概は見上げたものです。前半35分、中盤でボールを奪取したラフィーニャ選手がカウンターでドリブル独走です。これに対して東京DFは2人が対応しますが、ラフィーニャ選手に寄せるだけでなく、併走する杉本選手に対するマークを指示する辺り、さすが東京はただ者ではありません。で、ラフィーニャ選手ですが、併走する杉本選手を囮に使いつつDF網を突破します。ただ、利き足である左側に体を寄せられたため、右足でシュートを放ちました。このシュート、利き足でないという割に、球威、スピードとも申し分ないものです。惜しくも枠をわずかに外れましたが、今後磨き上げてゆけば大きな武器になり得ると思います。前半は草津が圧倒的優位を保ったまま終了となりました。セカンドボールの奪取率が高く、相手の攻撃陣に対する圧力もしっかり掛かっています。ただ、最後の詰めが不完全なので、後半はその点の精度を高めたいですね。東京が草津の術中に嵌ったままでいてくれるならば、次の得点で試合が決まる、そんな勢いではあります。もっとも、東京がこのまま手を拱いているとは思いませんが。
ハーフタイムが終わり、ピッチに出てくる選手を見てみると、ああ、やっぱり東京側は手を打ってきましたね。OMF・菊岡選手に替えて同じポジションに河野選手を入れてきました。河野選手はドリブルが上手い選手です。草津は前半とは違う対応が必要となるかも知れません。要注意です。後半は4分、東京の40mFKから攻防スタートです(ここは草津が防ぎました)。後半5分、左サイドからラフィーニャ選手がスルーパスを蹴り込みます。このパスに走り込んだ杉本選手、相手DFを躱してゴール前にクロスボールを上げます。このボールに対してフリーな状態で後藤選手が突っ込んで来ていて、GKの頭さえ越えれば追加点は確実な状況です。が、後藤選手に届く前にGKに掴まれてしまいました。スギモン、どこまでついてないんだ、君は…。後半11分、東京は左サイドの角度のない位置から飯尾選手にシュートを打たれます。このシュートはしっかり枠を捉えていましたが、GK・常澤選手がナイスセーブで防ぎます。この時間以降、流れは東京が掴みます(17分;左CK〜右CK、20分;左CK、24分;ミドルシュート、25分;左CKなど)。後半26分、高木(俊)選手に至近距離からシュートを打たれますが、ここもGK・常澤選手が好セーブで凌ぎます。後半28分には久々にシュートチャンスまで持ってゆきますが、結局シュートを打つことが出来ず、逆にカウンターアタックを喰らうというお粗末な攻撃になってしまいました。東京はこの攻勢で一気に片を付けるべく、FW・高木(善)選手→OMF・阿部選手の交代を行います(後半28分)。阿部選手はMFですが、元々はFWであったと記憶しています。攻撃的な仕掛けに出たな東京。更に後半37分、東京は飽くなき勝利への執念を見せ、DF・和田選手→FW・井上選手の交代を行い、パワープレーに打って出ます。この井上選手で思い出されるのは、彼のデビュー戦となった2007年の開幕戦(3月4日)です。後半35分に途中出場してJリーグデビューを果たし、終了間際の後半44分にフッキ選手の得点(5点目!)をアシストしたのが彼です。井上選手が入ったあとの東京は、高木(俊)選手、阿部選手、井上選手の3トップに飯尾選手、河野選手の両SH加えた攻撃陣がカサに掛かって猛攻を仕掛けてきます。前節草津が見せたパワープレーに比べると、その精度と迫力が段違いです。こういった辺りはさすがヴェルディ、むむむ、な感じです。
後半39分、草津は尾本選手→佐田選手の交代です。尾本選手は久しぶりの先発でしたが、連携面などにも齟齬なく、堅実な守備を心がけてくれて、安心して見ていられました。交代出場の佐田選手ですが、本来のポジションである左SBに入り、田中選手がCBへと移りました。後半43分、草津は東京側左コーナーでボールキープに入ります。取り得る選択肢の一つではありますが、草津サポの脳裏にはかつて同じ事をしてとんでもない事態に陥った際の記憶がトラウマとなっているので、賛同者は多くないのが実情です(早いよー!の声多数)。そして、「積極的に勝利を求める消極的戦術」(謎の日本語(笑))の結果、4分のロスタイムは東京側に押されまくりです。最も肝を冷やしたのは、東京の右サイドから草津ゴール前へロングボールが蹴り込まれた場面。時間がないので遮二無二突っ込んでくる東京攻撃陣。この場面では猛進してくる阿部選手に気を取られてボールの処理を誤り、ペナルティエリア内からシュートを打たれてしまいました。ジャストミートはしなかったものの、ゴロのシュートはいい感じにゴール方向へ転がっていくじゃあありませんか!や・め・て・く・れ・ー!!ボールはほんの数十cmほどポストの左側を抜けて、枠外へと去って行きました。………、もうダメかと思ったぞ…。冷や汗ものの時間が過ぎ、西村主審の手が上がって、試合終了。勝った…。
ここホーム敷島・正田スタで、初めて東京ヴェルディに勝ちましたよ。ああ、嬉しいなあ。老舗であり、名門であるチームと闘って勝利するというのは、やはり感慨深いものがあります。相変わらず課題はてんこ盛りですが、反面、収穫もたくさんありました。ともあれ、今日は両軍のアクティブな試合運びや監督の思惑が滲むベンチワークなど、サッカーの醍醐味を堪能することが出来ました。
すっかり暗くなったスタジアム外周を歩いていると、岐路へ就くご家族草津サポさん達の談笑が至る所から聞こえてきます。「たのしかったねー♪」「次来た時も勝てるといーね♪」「くまが居なくても勝てたんだから、せーちょーしてるんだよ♪」 これ全部実際に聞いた会話ですよ。子供達は正直です。楽しいことが大好きです。そして、今日は楽しめたようです。僕ですか?はは、ちっとんべぇハラハラしましたが、ええ、楽しませて頂きました。さて、選手諸君はたのしめたかな?【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年10月17日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第30節
アビスパ福岡 2−1 ザスパ草津
レベルファイブスタジアム 5558人
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好事魔多し
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ザスパは立ち上がりから守備陣が福岡の2トップをうまく抑えて、0―0で後半へ。先制点は許したが、13分にMF熊林の右CKをDF御厨が頭で一度折り返して、これをDF尾本が左足で押し込んで同点とした。しかし、その3分後に尾本が相手シュートを手でブロックして一発退場。PKを決められ、一度引き戻した流れを失った。(10月18日『上毛新聞』より引用)
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■■■ 2010年10月24日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第31節
ザスパ草津 0−0 水戸ホーリーホック
正田醤油スタジアム群馬 3356人
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ハロウィーンの悪夢
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スタジアム正面広場を歩いていると、僕らにはお馴染みのキャラクター、湯友くんの後ろ姿が見えました。?、なんかいつもと違います。近づいてみて納得。怪しいマスクをして背中にはカボチャ柄(温泉マーク入り^^)のマントを纏ったコスプレをしています。そう言えば、ハロウィーンの季節ですねぇ(定着しないねぇ^^;)。怖いはずのモンスターの扮装で練り歩くイベントは、日本離れしていてどこか幻想的な、まるで夢の中のようなイメージです(←僕のハロウィーンに対するイメージですが)。夢、と言えば、子供の頃に怖い夢を見たことはありませんか?僕はキングギドラに追いかけ回されて、助けを求めたゾフィーに見捨てられたのがトラウマだったりしますが(だからゾフィーは嫌い)、多かれ少なかれ、そんな経験はあると思います。もっと抽象的な怖い夢もあります。よく分からない物体が体の周りを取り囲んでいる夢や、自分やほかの物体が同じ動作を繰り返す夢など。とりわけ後者の繰り返し系の夢は、目的も結果も不明な分、どんどん不安感に苛まれて行くという、たちの悪いものでした。現実はなかなかに辛かったりしょっぱかったりするんで、せめて夢くらいは幸せ気分でいたものですがね。そんなことを考えつつ、スタジアムに入ります。
試合前の前座マッチでは、水戸、草津のジュニアチームによる試合が行われました。前回アウェイの時は、水戸の組織力が圧倒的で、手も足も出ないという状態だったのですが、今日はどうしてどうして。トップチームも唸るくらいの強烈なプレッシングで相手のボールを奪う奪う。それぞれのポジションの選手達が近い位置関係を保つ意識が高く、奪った後のボール回しにそつがありません(以前のように「クリアも展開も取り敢えず長く蹴っとけ」、という子供っぽいサッカーではありません)。終始試合を掌握した結果、4-0で勝利を手にしました。子供達の伸びる速さには驚きです。U-12小澤監督の指導も良いのでしょう。この子達の将来が楽しみです。
前座で良いものを見せて頂いて、ホクホクしながらメインマッチのスタメンを確認します。GK:21・常澤選手、DF:7・佐田選手、18・御厨選手、4・田中選手、34・西澤選手、DMF:6・櫻田選手、30・松下選手、OMF:23・菊池選手、14・熊林選手、FW:8・ラフィーニャ選手、33・アレックス選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:16・佐藤選手、32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、25・山田選手、FW:15・前田選手、27・杉本選手。試合開始前のセレモニーでJ2通算400試合出場の偉業をお祝いした高田選手は、今節休場です。また、前節の退場により、尾本選手も居ません。CBに欠員が目立ってきましたが、今日は田中選手が久々に本来のポジションへ入ります。FWも駒不足感に満ちていますが、今日はラフィーニャ選手の相方をアレックス選手が務めます。チームフィットの点で難があるようですが、言葉の通じる2トップの連携に期待しましょう。
なんにせよ、今日の一戦の勝者が今季の「北関東ダービーチャンピオン」となります。J全体から見れば取るに足らない小さな小さなカップですが、深い穴の底から眩しい天空を見上げることしかできない現在の我々にとっては、この小さな栄冠は大切な心のより所になり得る重要なものなのです。そして、それは相手の水戸も同じはずです。さあ、試合開始だ、ガチでいぐべぇ!
初弾は水戸。前半4分、自陣からのロングボールを左サイド深いところで収めた水戸が、至近距離からのシュートを見舞います(シューターは常盤選手)。幸い枠の上に飛び難を逃れましたが、水戸らしいスピーディーな展開でした。対する草津は前半6分、右寄りおよそ25mのFKを熊林選手をフェイクにして田中選手が直接狙いました。低い弾道は枠を捉えていましたが、キーパーの正面に飛んでしまったのが残念でした。直後の前半8分、今度は40m近い距離のFKですが、またしても田中選手が直接狙います。低く抑えたシュートはGKの目前でバウンドするというトリッキーなもので、さしもの名手・本間選手も弾き出すのがやっとです。それにしても、田中選手も良いキックを持ってますねぇ。見直しましたよ。前半11分、水戸は自陣でボールを奪うと素早くカウンターアタックに移行、島田選手が中央を独走突破して決定的な形でシュートを放ちます。ボールは枠のわずかに左側を抜けて行きました。危ねぇ危ねぇ、肝が潰れたぞ。そして前半17分、水戸・DMF・村田選手にイエローカードが提示されたのが、ある意味、この「仕合」の始まりでした。試合展開自体は、草津のポゼッション〜トップのポストプレーと水戸の速攻カウンターのせめぎ合いとなっていて、相手ゴールに肉迫するにはロングレンジからのアタックおよびセットプレーになりそうな様相です。前半25分、今度は佐田選手にイエロー(遅延行為)が提示されました。下らない警告を受けてしまって、実に勿体ない。そして、この警告で何となくではありますが、この試合のジャッジメントの傾向が見えました。自陣での不用意な追っかけファールは即イエローとなりかねませんので、総員自重の方向でお願いします。この懸念は現実のものとなりました(水戸サイドに対してですが)。前半36分、水戸・村田選手に2枚目のイエローが提示され、合わせレッドで退場。この早い時間で、草津は数的優位な立場を獲得したことになります。水戸はどうするのかと思いましたが、引いてくるかも知れないという予想に反して、トップを1枚減らしただけで、ディフェンスラインを高く保ちつつ中盤をコンパクトにして、草津のパスネットを分断・減速させる作戦を採ってきました。これにまんまと嵌った草津は、一見攻めているようで、実は攻め切れていない、といういつもの病気にかかります。どうも攻勢に転じて加速した際の連携がよろしくないようで、とりわけポストプレーからの突破でパス交換が出来なかったり、サイドに流した裏へのパスに反応できなかったりとか、なんともちぐはぐな感じです。そして前半は終了。
ハーフタイムにFW・アレックス選手→FW・前田選手の交代がありました。前半終了時に引き上げながらユニフォームを脱いでいたので、予定交代かも知れません。そして、後半開始ですが、開始早々の後半1分、水戸の守備の要である大和田選手にイエローが掲げられます。…予感がします(多くのサポが感じたかも知れませんね)。後半14分、草津は自陣最終ラインの田中選手が蹴ったロングボールに反応して相手DFラインを突破したラフィーニャ選手が、相手GKと1対1の場面を迎えます。決定的チャンスでシュートを撃ちましたが、狙いすぎたか、サイドネットに刺さってしまいました。後半16分、今度は速攻から菊池選手がミドルシュートを放ちましたが、これも枠の右へ。数的優位を背景に攻勢にある草津ですが、ウッカリしていると水戸のカウンターを受けてしまいます。後半20分の水戸・常盤選手の独走〜シュートなどは、早目に打ってくれて幸いでしたが、危なく失点するような場面でした。油断ならねぇ。後半26分、中盤でのパス回しで組み立てた後、縦にパスを入れる草津。これに反応してラフィーニャ選手とのワンツーパスを成功させた松下選手がDFラインを突破し、キーパーと1対1でシュート!このシュートをGK・本間選手がスーパーセーブ。しかしいまだボールはアクティブ。駆け込んだラフィーニャ選手が右足でシュートを打ちましたが、これも相手に弾き出されてしまいました。またダメか!後半28分、左サイドから切り込んだ菊池選手がフリーでシュートを打ちましたが、ここもゴール前を固める水戸の守備防壁に阻まれてしまいました。直後の後半29分、今度は右サイドから西澤選手がゴール前に入れたセンタリングに櫻田選手がフリーで合わせましたが、これも枠を外しました。後半30分、右SH・菊池選手→右SH・廣山選手の交代でリズムを整えたい草津です。焦れた展開にお天道様がへそを曲げた訳ではないでしょうが、この辺りからポツポツと雨が降ってきました。選手交代直後、前田選手からのスルーパスにDFラインを越えたラフィーニャ選手が駆け寄り、そのままシュート。だがしかし、これも左サイドネットを揺らすのみで、枠内へは飛びません。水戸は後半32分にOMF・島田選手→DF・中村選手の交代を、草津は後半36分に左SH・熊林選手→左SH・山田選手の交代をして、それぞれ状況の打破を目指します。水戸は更に後半38分、FW・遠藤選手→FW・中山選手の交代を敢行し、守備ではなく攻撃に対するアクセントを付けてきます。ワンパンチでカウンターを決める目論見と見ました。しかし、この水戸ベンチの戦術は、直後に瓦解することになります。後半39分、小和田選手にも2枚目のイエローが示され、なんと2人目の退場者となりました。
そしてこのファールで得たFK(ペナルティエリアのすぐ外)を蹴るのは松下選手。壁、枠、敵味方の位置、それらを見定めて助走、右足を振り抜きます。ジャンプした壁の足下を抜ける速いグラウンダーのシュートは、ゴール目指して一直線。今度こそ!しかし、しかし、しかし、GK・本間選手の神セービング炸裂!左手一本、すんでの所でこれを阻止しました。この瞬間に悟りました。今日はどうあってもゴールは割れない、と。「そういう日」なんだと。2名の退場者を出しては、さすがに「玉砕覚悟の攻勢」か「ガッチリ守ってラッキーパンチ頼み」の二者択一しかなく、水戸は考えるまでもなく後者を選択します(後半44分、水戸・OMF・大橋選手→MF・西岡選手へと交代)。しかし、こうなるといよいよ水戸は堅い。後半ロスタイム1分、アタッキングサード左サイドの山田選手→松下選手→山田選手のワンツーパスが綺麗に決まり、キーパーの目前に迫ります。山田選手が流し込むようにゴール右隅を狙ってシュートを打ちましたが、またしてもGK・本間選手が防ぎます。残念、というより、「あ、やっぱり」と思ってしまうようになってます。後半ロスタイム終了間際に、佐田選手に2枚目のイエロー(抗議)で、とうとう草津にまで退場者が出る始末。それにしても、遅延と抗議って…ソータロー君…。結局、草津は数的優位を背景に合計26本ものシュートを放ちながら、(相手GKの好セーブもあるものの)ただの1つもゴールにねじ込むことが出来ませんでした。
評価の難しい試合ではありました。圧倒的優位を活かし切れなかったという点で見れば、「何やってんの」となるでしょう。劣勢になった時に堅い守備を見せた水戸は、最近でこそ影を潜めはしましたが、ミトナチオのDNAは未だ健在、と言ったところでしょう。互いに「この相手にだけは負けてはならない」という思いが伝わる試合でもありました。試合後に盛大なブーイングを受けはしましたが、それは勝てなかった事実に対してであって、試合に込めた熱意や努力に対しての非難ではないと思います(少なくとも僕個人的には)。今大事なのは、「なんで勝てなかったのか?」の負の側面に囚われて変なスパイラルに入り込まないことと、「じゃあどうすれば勝てたのか」というポジティブな反省を行うことです。
優勢に攻め立てながら相手ゴール前で跳ね返される光景は、一つ勝っては一つ負け、順位を上げてはまた下げる、という今季を象徴するようです。さながら「繰り返しの悪夢」を見ているようで、言いようのない不安感に苛まれます。草津というチームに色々な想いを託し夢を見る僕らは、そんな「良くない夢」みたいな現実も込みで集って来ています。でも、本当は、「幸せな夢みたいな現実」をたくさん見たい、ってのが本音です。残り少なくなってきた今季。せめてホーム戦では、「いい夢」を見せて頂きたいと願っています。【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年10月31日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第32節
コンサドーレ札幌 0−1 ザスパ草津
札幌厚別公園競技場 5731人
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3戦ぶり白星
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ザスパは前半、札幌のサイド攻撃への対応に忙殺され、攻撃の起点がつくれずにシュートゼロに終わった。しかし、後半になると持ち味の中盤でのパスがつながり始め、15分に相手ゴール前でDF西沢、MF熊林とつないで、熊林からのスルーパスにFWラフィーニャが反応、右足で押し込んで決勝点とした。(11月1日『上毛新聞』より引用)
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■■■ 2010年11月6日(土) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第33節
愛媛FC 1−0 ザスパ草津
ニンジニアスタジアム 3704人
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中位進出失敗
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序盤からの猛攻で優位に立ったのは愛媛。劣勢のザスパは前半13分、愛媛に左サイドを崩され、センタリングから頭で合わされて先制を許した。反撃に出たいザスパだったが、愛媛の前線からの積極的な守備に苦しみ活路を見いだせない。 後半に入ると、徐々にペースをつかみ、相手ゴールに迫るも、愛媛の集中したプレスは変わらず、ボールを支配され逃げ切られた。(11月8日『桐生タイムス』より引用)
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■■■ 2010年11月14日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第34節
ザスパ草津 2−1 ファジアーノ岡山
正田醤油スタジアム群馬 2232人
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アレックスごめんね
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すっかり暗くなった晩秋夕刻の敷島の杜は、黒くたゆたう海原のようにも見えます。そんな中で、煌々たる灯りに照らされた一角、正田醤油スタジアムだけが、切り出された宝石のように輝いています。今日は岡山を迎えてのナイター戦です。…寒いです。「サンクス伊勢崎デー」にちなんで、メイン広場ではもんじゃ焼きの物販屋台も出ています(あとで知人に頂いた「もんじゃパン」(もんじゃ焼きをそのまま四角く固めた感じのもの)は焼きそばパンみたいで意外とうんまかったぃね^^)。温かい物が飛ぶように売れて行くのを見るに、シーズン終幕近しを感じ、ちょっとしみじみ。
僕も温かい食べ物を、と言うことでスワンのtontonカレー(普通のポークカレーね^^)を買い込んで定位置へ入場。カレーを掻き込みつつ、本日のラインナップを確認します。GK:21・常澤選手、DF:7・佐田選手、18・御厨選手、3・尾本選手、4・田中選手、DMF:6・櫻田選手、34・西澤選手、OMF:23・菊池選手、14・熊林選手、FW:9・高田選手、33・アレックス選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:5・崔選手、16・佐藤選手、32・ダニエル選手、MF:10・廣山選手、15・前田選手、FW:8・ラフィーニャ選手。今節は警告累積でDMF・松下選手が出場停止、FW・杉本選手が負傷長期離脱と、いよいよ緊急事態な草津ですが、スタメンにはボランチに西澤選手が起用されました。これまでSBとして主にサイドアタッカー的な仕事を担当していましたが、今日はゲームメイキングおよび攻守のバックアップに関する手腕が試されるポジションでの起用となります。色々語る前に、まずはお手並み拝見。また、FWには高田選手とアレックス選手が入りました。ストライカーとしての登場は久しぶりとなる高田選手、ゴールに向かう貪欲な魂は、草津FW陣においても筆頭ではないかと思います。大いに期待しています。その相方を務めるアレックス選手ですが、いやあ、これまでのところ、残念ながら良いところなしです。その原因の最たるものは連携不足だと思っています。こればかりは、練習練習、練習あるのみです。先発起用の意味するところを見せ付けて頂きたいですね。それにしてもラフィ、どしたん?ブラジルトリオがピッチ確認しているのを遠目で見る限り、至って元気そうですが…。これ以上の戦力ダウンはご勘弁ね。さて、一方の岡山。何かと注目されているのが、FW・久木田選手です。この選手については、マスコミの取り上げ方が随分酷く(→某有名大学初Jリーガーとかいう枕詞付きで語られます)、ご本人には気の毒だし、僕個人的には憤慨しています。Jで活躍出来るだけの資質を認められているからこその今の地位な訳で、それだけで十分な戦力だし、相手にとっての脅威と言えます(これについては現在各チームに所属している全選手に等しく言えることだと明言しておきます。出自だけでプレーの質が変わる訳ではないのよ)。2連勝中で気を良くしている上に、もとよりアグレッシブなボールチェックからの素早い展開を持ち味としているチームなので、特に試合の立ち上がりには気を付けたいです。体は寒みぃけんど、それを忘れるくらい熱っちぃ試合を頼まぃ!さあ、試合開始です。
前半は先手を取ろうとする岡山のアグレッシブなチェック&チェイスに押され、落ち着いたパスワークをなかなかさせてもらえません。岡山の方はそれでリズムを得られたかというと、さにあらず。中盤でのボール奪取から速攻カウンターを狙ってはいますが、上手いこといきません。中盤でのせめぎ合いが、5分、10分と続きます。序盤から今ひとつフィット感に欠けていたアレックス選手ですが、前半13分に大きな仕事をします。左サイドでボールを運ぶ熊林選手、ハーフウェイラインを越えた所で前方のアレックス選手へパスを通します。このパスを受け取ったアレックス選手は、数歩のドリブルの後、ゴール前にセンタリングを蹴り込みます。キーパーの出られない絶妙なポイント、高さはぴったり顔の位置。このボールに突っ込んだのはFW・高田選手。岡山DFの隙を衝いてダイビングヘッド敢行。ボールは一直線にゴールネットに突き刺さりGOOOOOAL!!! 実に高田選手らしい魂のこもった熱いゴールです。高田△!!先制点の行方次第では難しい試合になりそうな状況を、草津側に引き寄せる大きな1点です。先制はしたものの、岡山のアグレッシブな姿勢は変わらず、というよりもむしろ強まっているようにさえ見えます。草津からボールを奪ってからの展開が早く、瞬く間に草津のバイタルエリアまで侵攻してきます。これに拍車を掛けたのが、草津の急造守備網です。どうにも連携が悪く、攻守にわたってボールを失う場面が目立ちます。それでも、岡山の攻撃は速くはあるが厚みがない、という事情に助けられて、決定的な場面はこれまでの所作らせていませんが。こうなると怖いのは、セットプレーとミスからのカウンターです。前半21分、岡山はゴールほぼ正面、ペナルティアークの少し外側からという位置でのFKを得ます。キッカー・小林選手は直接狙いましたが、ここは壁に当たって決められませんでした。これに対して草津もセットプレーで応酬します。前半30分、草津は左CKからの攻撃です。熊林選手のセンタリングはゴール正面中央へ。これに反応し、高田選手がDFを躱してヘディングシュートを撃ちます。叩き付けたシュートは惜しくも枠外へ飛んでしまいましたが、高田選手はFWとしての力を示してくれています。直後の前半32分にも相手の隙を突いたロングシュートを狙うなど、今日の高田選手はキレてます。どうやらリードして折り返せるぞ、と思っていた前半終了間際、思わぬ展開から失点します。前半41分、岡山陣内でパス交換による組み立てを図っていた草津ですが、ミスパスを岡山に奪われてカウンターアタックを受けます。2度に渡る草津のミス(パスミス、クリアミス)を経て右サイドを独走する岡山・白谷選手。対応に当たった草津の選手はCB・御厨選手ただ1人。トップスピードで切れ込んでくる相手に対して、迂闊に寄せることも出来ず、さりとて味方の支援もなくという絶望的状況を尻目に、白谷選手は瞬く間にペナルティエリアに迫ります。そして、状況が良いうちにと白谷選手の放ったミドルシュートがゴール右隅に決まり、同点とされます。なんたる…。そして前半は同点となって終了。正ボランチ、それも長いパスの精度や展開力、長距離砲まで兼ね備えた支柱の不在が、こうまで試合構成に響いてくるとは思いませんでした。櫻田選手、西澤選手も個々には力を発揮してくれていますが、慣れないコンビでは連携に綻びが生じるし、やはり広い視野に基づく展開には限界があります。前線から激しくプレッシャーを掛けてくる岡山に対して、思わず横へ後へと消極的になる場面が多発するのも、ある程度はやむを得ないでしょう。ただ、このままではジリ貧確定なので、縦に速く入れて2トップに走ってもらう、とか、SBを守備から解いて前線での起点になってもらう、とかしないことには、またしてもカウンターから点を奪われかねません。アレックス選手のポジショニングが不安定なのも気にはなりますが…(今日も前半で交代とかかなぁ)。それでも結果だけを見ると、岡山に打たれたシュートはわずかに2本です。中盤でボールを失うことが多いように思いましたが(実際そうですが)、最終局面にまでは持って行かせていない、という風にも取れます。それだけに、失点の場面が悔やまれます。
ハーフタイムが明け、ピッチには前半と同じメンバーが円陣を組んでいます(あ、交代は無しなのね)。そんな失礼な感想は直後に撤回することになります。後半3分、草津は右CKを得ます。直前のプレーで御厨選手が粘って得たCKのチャンスです。バクスタの大声援を更に煽り立てた熊林選手、静かにボールをセットするとニアサイド胸上の高さに速いボールを蹴り入れます。ゴールラインから動けないGKの眼前を通過したボールは、岡山DFの壁を割って現れた大きな黒い影の前で直角に進路を変え、ゴールネットを擦り上げました。ゴール前に詰めたアレックス選手が、信じられないようなハイボレーシュートをねじ込みGOOOOOAL!!! 2点目をGET!びゅーてほー!あんびりーばぼー!!バックスタンドに駆け寄るアレックス選手は喜び爆発。J初ゴールを決め、これでこの試合1ゴール1アシストの大活躍です。アレックス君、ごめんよー、貴方のことを見くびっていたと素直に謝らせて頂きます。追加点で動きが良くなった草津は、その後攻勢を強めます。後半8分、草津は左サイドの田中選手がペナルティエリアにクロスボールを蹴り込みます。右サイドに流れたボールを佐田選手がフォローし、すかさず中央へセンタリングを入れます。このセンタリングの先にいたのがアレックス選手。頭を左に振って、ゴールへとボールの軌道を変えました。このシュートはわずかにゴール左側へと外れて行きましたが、いやはやアレックス選手もなんだか前半より一層キレが良くなってきているように感じますよ?大化けの予感さえします。この調子で突き放す追加点を奪いましょう。後半15分、アタッキングサードでパスを受けた菊池選手は、ドリブルでゴール前に迫ると果敢にシュートを放ちます。シュートは右へ外れましたが、相手守備の隙を突いた突破、そこからのシュートなど、試合を重ねる度に洗練されてきているという印象を受けます。後半16分、今度はハーフウェイラインの熊林選手のロングフィードからのチャンスです。縦に長く速いスルーパスに対し、草津は高田選手が反応し、そのままドリブルで直進。ペナルティエリアの少し外からDFの隙間に楔を打つようなミドルシュートを放ちます。低く抑えた強いシュートを、GKは胸で取りに行きましたが、キャッチしきれず、しかしそれでもなんとか弾き出してゴールを割らせません。うむ、互いに好プレーです。直後には右CKからの2次攻撃が始まります。右サイドでルーズボールを確保した後、一端後ろの西澤選手へボールを下げて態勢を整えます。西澤選手は、30m以上の距離からゴール目掛けてボールをまっすぐ蹴り入れます(もしかするとシュートかも)。さすがにこの距離では相手DFに防がれてしまいますが、岡山DFがクリアミスし、ボールは直上へ舞い上がります。落ちてきたボールを岡山DFが再度空振りし、寄せていたアレックス選手がこれを奪います。アレックス選手、弾んだボールにリズムを合わせて、迷わず横蹴りボレーシュート敢行。撃ち抜かれた弾丸はゴールマウスへ一直線。入った!誰もがそう思いましたが、ボールはクロスバーを直撃し、ガゴンッ!という音を残してインフィールドに転がりました。入りこそしませんでしたが、いやそれにしても、アレックス選手のボレー能力は凄いの一言です。今までなんで隠してたの!って言いたくなるくらいです。
後半23分、早く追い付きたい岡山はMF・小林選手→FW・李選手の交代でゴールを目指します。これに対して草津は後半29分、SH・菊池選手→FW・ラフィーニャ選手の交代を行います。アレックス選手を一列下げてSHに、空いたFWにラフィーニャ選手が入ります。前半から飛ばしていた岡山にとっては、ここでラフィーニャ選手の登場はきつかったはずです。アレックス選手よりもはっきり運動量・速度が大きく、その上ポストプレーや個人技にも秀でる選手がフレッシュな状態で最前線を駆け回るんですから、そりゃあ攻撃どころではありません。あ、もしかして副島監督狙ってた?だとしたら恐れ入りました。後半31分、草津はゴール正面およそ25mのFKを得ます。ボールポイントには熊林選手、少し離れてラフィーニャ選手が控えています。ボールを蹴ったのは熊林選手。直接ゴールを狙い、ゴールマウスの右上隅目掛けてボールが飛びます。ここは岡山GK・真子選手が好セーブで阻みました。しかしながら、改めて熊林選手のセットプレーは凄いなあと感じます。草津の至宝です。後半34分、岡山はMF・川原選手→FW・久木田選手の交代を行います。新物にからきし弱い草津にとって、彼の選手は鬼門です。しかしベンチスタートの鬱憤を晴らすかのように超元気印のラフィーニャ選手に牽引され、草津の優勢は揺るぎません。後半39分、岡山のロングボールカウンターの場面です。岡山・左サイドを長いボールが転がりますが、これは草津、岡山双方とも競走になるほどの球足です。ここで、このボールをクリアしようとして、思わずGK・常澤選手が飛び出して来てしまいました。しかしスライディングした常澤選手とボールを追っていた御厨選手が交錯し、こぼれ球が岡山・李選手に収まってしまいます。ガラ空きのゴール目掛けてシュートが打たれます。やばーい!しかし、今日はツキもありました。李選手の放ったシュートは枠外へ飛び、すんでの所で助かりました。DF間の連携をしっかり取ろう!この調子なら勝てそうなんだから、凡ミスで勝ちを逃がすようなことが無いように集中しましょう。後半41分、草津はSH・熊林選手→SH・廣山選手の交代で、ボールキープの更なる向上を図ります。ロスタイム、中盤でボールを奪った草津は、カウンターを仕掛けます。右サイドからラフィーニャ選手がドリブルで上がり、左サイドの廣山選手へパスを出します。廣山選手はペナルティエリア付近から右サイドの西澤選手へ横パスを繋ぎます。西澤選手はすぐそばまで駆け込んでいた高田選手にヘッドで折り返し、このセットを受けた高田選手はゴール目掛けてシュートを撃ちます。ボールはキーパーの手を越えましたが、枠の上に外れてしまいました。それにしても、流れるような一連の連携、そしてシュートをこの最終盤で演じられるのが素晴らしい。試合は結局このまま終了。勝ちました。
結果だけ見れば、草津が前後半とも試合を優勢に進めたように見えますが、特に試合序盤の攻防では岡山のハイプレッシャーに手を焼いていたり、新しい陣構成で連携に不備があったりと、必ずしも盤石ではありませんでした。それでもこうして良い結果を残せたのは、起用に応えようと選手達が頑張ったからにほかなりません。で、特筆すべきは、やはりアレックス選手でしょう。これまで、そして今日も序盤ではポジショニングにいささかちぐはぐな点が見受けられ、見ていてかな〜り不安でしたが、1点目のアシストでどうやら何かに目覚めたようで(笑)、その後の活躍ぶりは目を見張る物がありました。それと、高田選手。やはり彼はフォワードです。ゴールゲッターなんです。FW陣の駒不足を感じて頑張る彼の姿は、その背中を見ている後ろの選手達の励みになるし、大きな力になります。
さて、これで残りは4試合。しかも全て(現時点において)昇格レースに関わるチームです。負傷や警告累積によって戦線離脱する選手が多数発生する中において、アレックス選手のような新たな力が見いだせたのは、もしかすると何かの予兆かも知れません。
さてさて、小難しい事は一時忘れて、利根川の向こうに浮かぶ半分の月を眺めながら、今日の幸せを噛み締めて帰るとしましょうか。【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年11月20日(土) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第35節
ヴァンフォーレ甲府 2−4 ザスパ草津
山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場 12113人
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非情の宣告の後
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その朝私は、新宿駅から今にも走り出そうとする「特急あずさ」に駆け込み、お手洗いにダッシュした。自宅から新宿駅に向かい到着したとたん、突然原因不明の腹痛が襲ったのだ。いや原因不明ではない。相当はっきりした理由があるのだが・・出てからも空席を選ぶ余裕もなくうずくまっていた。
対戦相手のヴァンフォーレ甲府もすでに優勝&昇格が決まり、「目の前で昇格劇場を見せられるのはごめんだ!」とピリピリせずにすんだはずなのに。遠征ついでに甲府旅行もしたいと思い、楽しむつもりで、偶然お知り合いになった甲府サポーターの方とほうとうをご一緒する予定をたて、ホテルも予約したのだ。それがこんな突然の宣告で一転したのだ。
甲府に行く二日前に知らされた「契約満了」の告知。まさか長年エースとして君臨してきた、あの選手の名前を見つけるとは・・しかもベテラン陣はこれでもかという程のめった切り。私の頭の中には悲しみというより怒りが充満していた。大事な選手ばかりを契約満了にして、このクラブはいったいどうするつもりなんだろうか?来季、チーム改編というくらいの立派な補強ができる自信があるんだろうか?などといくら前向きに解釈しようと不可解で納得いかない。前日はさすがに眠れず、眠れても3時間しか起きていなかったような気がする。
そんな事を思い起こしながら、つかの間の移動時間が終わり甲府に着いた。駅に着いたときふっと降りてくるなんともいえない感情。このままずっとたどり着かなければいいのにと思った。ホームに降りると、シーズンの終わりを早々と告げるような冬のようなしんとした寒さが突き刺ささってきた。そんな気持ちも駅前のヴァンくんの看板とバス乗り場前の歓迎ムードにあふれた横断幕に癒され、バスの中では年配のお客さまが席を譲ってくださったりして、甲府の街はやさしく出迎えてくれた。
2年ぶりにきた小瀬は屋台もかなり充実していて、B-1グランプリで一躍名をはせた「甲府鳥もつ煮」をモチーフにした料理も複数軒を連ねるほどの豪華さ。2年前初アウェイ参戦にいた当時は屋台もなく売店があったとしてもすぐに売り切れて、その頃とはだいぶ事情が変わって浦島太郎状態だった。入場するなり早速鳥もつ煮丼に舌鼓をうつ。やはりJ1昇格が決まったチームは活気がある。なのに・・とサポーター仲間と果てしない愚痴をこぼしつつアウェイ会場の入場口に並び、その後で気分転換すべく小瀬のスタジアムを一周してきた。晴れ男・副島さんのおかげで(?)小瀬には抜けるような青空が広がっていた。そんな中、ギターをもった子供が広場で座って弾き語りをしていた。ブルーハーツの「青空」がお祭りムードの中のスタジアムの前でなんともいえず物悲しく響
く。ほんとこんなはずじゃなかっただろうに。
ピッチアップ時間が訪れ、コールリーダーのカリスマ的なリードもあり、ピッチアップ前からアウェイゴール裏のボルテージは最高潮に達していた。ようやくピッチアップが始まり、選手たちがやってくる。どうしてもサポーターの大半のまなざしは高田選手に注目する。5年間ザスパのエースとして低迷時も引っ張ってきた彼が契約満了・・はっきり言えば「クビ」なのだから、誰にとっても受け入れがたい真実に違いない。今回は特別な事情が絡んだ試合ということで、選手がピッチに入る前に、コールリーダーが代表して選
手たちにメッセージを送った。高田選手は硬い表情でコールリーダーからのメッセージを聞いていた。
ピッチアップが終了し一時期の静けさが過ぎたあと、場内では甲府J1昇格決定時のビデオが流される。そうだった、今日は甲府は昇格決定以来初めてのホーム戦になるんだった。だから今日はずっと応援しているサポーターの前で凱旋試合といきたいだろうな。とは言えこちらにはそんな事情は関係ない。こちらは今与えられた中で最大のプレーをするだけだ。だけどいつかはザスパ草津もあの場所に・・という気持ちを強くして試合開始を迎え、いろんな気持ちを込め草津節で迎えた。メンバーはFW:9高田選手を始め、FW:33アレックス選手、MF:23菊池選手、10廣山選手、34西澤選手、14熊林選手、DF:7佐田選手、4田中選手、32ダニエル選手、18御厨選手、GK:21常澤選手。控えは1伊藤選手、3尾本選手、5チェ選手、17秋葉選手、15前田選手、25山田選手。残念なことに6櫻田選手、30松下選手は出場停止。ザスパの要であるボランチが2人とも不在なのはかなり痛いが、今の気持ちがあればきっと乗り越えられるだろう。
ザスパ草津先行で試合が開始し、スピーディーな試合展開。高田選手もアレックスも果敢に攻めている。ほぼ心あらずで私自身はここに存在している事自体が精いっぱいであった。そんな中ぼんやりした気持ちで守備陣の背中を見ていると驚くべき光景が・・御厨選手の左腕にキャプテンマークらしき黄色い布が巻かれている!松下選手が不在だったのもあるが、スタメン出場している熊林選手もキャプテンを務めることができるはずなのだが、なぜに御厨選手なんだろう?やはり御厨選手はザスパに移籍する前の年まで甲府に在籍していた選手なので、昔から応援しているサポーターに成長した姿を見せたい強い思いがあったからかもしれない。甲府に在籍していたときも、時々だが試合でキャプテンマークを巻くことがあったとサポーターの友人から聞いている。頼もしい限りだ。ぜひこの大事な試合を守り抜いてほしいと願った。
前半なかなか膠着した試合が続いたが、縦パスを受けアレックスがシュートを決めゴール・・を決めたように見えたがオフサイドとなった。がっくし!実に惜しいが、ゴールまでのいきさつを振り返ると非常に計算されたすばらしい連携だった。そしてここで起点を作った菊池選手、これだけの活躍で終わらなかった。すでにこの時から大介フィーバーの匂いはしていたが、彼の活躍が得点に結びついたのはそのわずか5分後、前半28分だった。廣山選手のクロスが左サイドからくりだされ、それがアレックスの足元に・・というところを、アレックスが野生の勘でスルーし流れてきたところを、非常においしい位置にいた菊池選手が力を振り絞りGOOOOOAL!!! この試合は彼のおかげで我らがザスパ草津が先制ゴールを決めたのだ。おそるべし19歳だ。その後ようやく甲府が息を吹き返し最初のシュートを放つも、常澤選手らザスパ守備陣が許さず。その結果前半戦はザスパ草津1点リードで終わった。ぜひともこのまま勝って帰りたい。あと3試合しかともに戦えない選手たちのためにも・・・
そして後半開始、後半9分にまたしても菊池選手がミドルシュートを放ちこれが難なくゴールマウスにヒットしGOOOOOAL!!! 真っ先に笑顔で抱きついて祝福したのはやはり菊池選手の湘南ユース時代の先輩でもある高田選手だった。あの、大ちゃん、大事な試合で昇格決まったチームに2ゴールも決めちゃうなんてマジ泣きそうなんすけど!!やはりこの選手はなにやら持っている!!
しかしそれ以上の感動的なシーンが私たちを待っていた。後半11分やはりここでも起点は菊池選手。彼からのパスを高田選手が見事に受け止めシュートを放つと、待ち構えていた甲府GKの荻選手の足の間をすり抜け、そのボールはコロコロと転がり吸い寄せられる・・GOOOOOAL!!! 決まった瞬間、サポーター達は手摺に駆け寄り、ゴールを決め走り寄るヤスを迎えた。やっと待望のゴールが見れた。。いつものヤスらしいハプニング的なゴールだった(個人的には2009年の小林選手の初ゴールを彷彿とさせる。あの時も見事なまた抜きゴールで甲府に勝利したのだ)この選手が来年はいなくなるなんて信じられない!あまりにもドラマチックすぎるあの瞬間はいつまでも忘れることはないだろう。
さらにこれだけでは終わらず、さらにザスパの得点チャンスが待っていた。後半24分、甲府のダニエルとアレックスがゴール前で競り合って荻選手が飛び出したところを、斜めのかなり難しい位置から競り合いに勝ったアレックスがシュートを決めGOOOOOAL!!! これはなかなか難しい技なのでは!最終戦間近にしてアレックス覚醒の前触れが見えた。気付けばスコアはザスパ草津4-0甲府!いや対戦相手は今までかなり苦手な相手だしJ1昇格も決まっているチームだして何かの間違いだろう、私たちは夢でも見てるのかと思ったが、頬をつねれどやはり痛い。思えばひっそりとたたずみながら後ろからじっくり大事な4点を守り抜いている御厨選手は名キャプテンかもしれない。彼を手放した甲府のフロント陣は何を思うやら。まさか来年は御厨選手をうちのチームに戻して・・なんていわれないだろうかちょっと心配になってきた。
しかし甲府も4点も入れられて黙っているはずがない。すでに菊池+高田劇場と化した小瀬だが、ヴァンフォーレ甲府はホームチームそしてJ1昇格決定チームとしての意地があるはずだ。菊池選手が下がりラフィーニャが入った後、わずかなミスを狙われ失点が決まった。後半32分、御厨選手がクリアしたところそのボールは横で見張っていたハーフナーマイクの元に届き、一瞬にして決められたのだ。今まで高得点+無失点でここまで上手くいっていただけに、この些細なミスでの失点は非常に残念だった。この後熊林選手にかわり秋葉選手が入る直後、後半36分にさらに養父選手に見事にミドルシュートを決められてしまった。立て続けに失点というのはやはり辛い。この後西澤選手が前田選手と交代したが、双方のゴール裏は異様なブーイングの嵐に。一瞬のことで見逃してしまったので、何があったのかとサポーターに訪ねたら、マイクがゆっくりピッチ上からでていこうとする西澤選手の腕を引っ張り、早くここから出て行けといわんばかりにピッチ外につまみ出そうとしたらしい。西澤選手がどれだけゆっくりしていたのかわからないが、カリカリして今までの活躍を無駄にしては元も子もない。このためマイクは今までの累積警告に重ね
て二重警告で退場となり、2010年ではこれが最後の出場となってしまったようだ。
一人減ったのでチャンスがあったにもかかわらず、ザスパの勢いはフェイドアウトしていくばかりで、その後もマラニョン、松橋選手らにゴールの危機を作らせてしまい、試合終了直前までかなり危ないシーンがふえた。前々からの課題でもあるが、失点後それまでの活躍はなんだったのかと思うほどにガタガタと崩れる癖はいつか建て直してほしいものだ。
ようやく試合終了のホイッスルが鳴り、4-2で逃げ切り終了した。思えばここまで得点できたことはなかったような気がする。うまく言えないが、明らかに皆の思いが結集して実現したこのスコアだろう。ザスパ草津はそんなチームなのだ。しかしやはり大勝したという爽快感よりも、今後のことを考えてしまいなんとか勝ててよかったという気持ちの方が強かった。甲府はここで敗退しても来年はJ1という大舞台に立つことができるが、ザスパは主力選手の大半がいなくなったことで一寸先は闇状態で来年のことなんてわからない。
試合後そんなもやもやとした気持ちで選手バスを見ていたら、大勢のザスパサポーターに笑顔で挨拶する高田選手と甲府サポーターの黄色い声援にも丁寧に答える御厨選手の姿が見えて少しほっとした。選手バスを見送って休んでいると、甲府サポーターの方に話しかけられた。「草津のダニエル選手、うちのダニエルにそっくりでしたね〜」と言われたのには和んだ。「御厨選手、いつも応援してますよ」とお伝えしたら、喜んでおられてこちらもうれしくなった。また待ち合わせしていた甲府サポーターさんからは、念願の「ほうとう」をごちそうになり、心も体もポカポカと温まった。いつも甲府駅前のバスターミナルに張られてある、アウェイサポーターに向けた「ようこそやまなしへ」の弾幕に象徴されるように、どんな時でも相手の事を思いやれる甲府の人々の優しさに、傷ついていた心も癒されていた、そんな遠征旅行だった。【さねやん@東京】
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■■■ 2010年11月23日(火・祝) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第36節
ザスパ草津 2−0 ジェフユナイテッド千葉
正田醤油スタジアム群馬 5351人
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束ねたチカラの強さ
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北風が強く、強弱を繰り返しながら敷島の杜を吹き抜けてゆきます。サカラグは高校サッカー、高校ラグビーの最終戦も終わり、すっかり静けさに包まれています。園内の木々の紅葉もほぼ終わり、散歩道は一面落ち葉舞う様相で、季節が冬に向かいつつあることを実感させます。
午後2時。試合開始は午後5時なので、まだだいぶ時間があります。しかしながら、スタジアム正面広場のこの賑わいは一体…。よく見れば、黄色・緑色の装束の人がずいぶんたくさん居ます。ようこそ敷島へ!千葉サポーターの皆さん。と言う訳で、本日は現在4位、J1昇格レースにおいて、もはや負けの許されない状況にある千葉が対戦相手です。サポーターのモチベーションが高いのも頷けます。ですが、それは相手様の事情です。うちだってそう簡単にはやらせませんよ?ま、一つお手柔らかに。
強風に断幕やフラッグが大きくはためいています。入場時はまだ陽があってそれなりに暖かかったんですが、夕刻迫り陽が低くなるにつれ、寒さが肌を刺すようになってきました。今日の試合は風との闘いにもなるねぇ。ポットの温かいお茶を啜りつつ、本日のスターティングメンバーを見てみましょう。GK:21・常澤選手、DF:4・田中選手、18・御厨選手、3・尾本選手、34・西澤選手、DMF:14・熊林選手、30・松下選手、OMF:23・菊池選手、10・廣山選手、FW:9・高田選手、33・アレックス選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:7・佐田選手、32・ダニエル選手、MF:6・櫻田選手、15・前田選手、17・秋葉選手、FW:8・ラフィーニャ選手。出場停止の明けたボランチコンビのうち、松下選手がスタメン復帰し、櫻田選手はベンチスタートとなりました。ボランチの相棒には熊林選手が入り、その一列前のSHにはベテランの廣山選手と若武者の菊池選手が配されました。目下絶好調の攻撃陣の先触れを務めるのは、共に2試合連続ゴール中の高田選手とアレックス選手です。とりわけアレックス選手については、ファーストゴールによって覚醒した感がありますので、今日も大いに期待したいと思います。対する千葉ですが、兎に角メンバーが豪華です(逐一ご紹介はしませんが)。4-2-3-1の2ボランチ1トップというフォーメーションを採っています。注目選手は、守備の要ではCB・茶野選手、攻撃の組み立てではボランチの佐藤(勇)選手とトップ下・米倉選手、1トップの青木(孝)選手といったところでしょうか(あと控えの深井選手や林選手、ネット選手も要注意です)。この試合、千葉にとっては決して落としてはいけないという一大決戦であることは間違いありません。受けて立つ草津としては、相手の気迫を凌駕するくらいの熱く、それでいてクレバーなプレーが求められます。その雰囲気は僕らが作り出しますので、心置きなく存分に働いて下さい。
榛名山の稜線が夕闇に映し出されて綺麗です。眩しかった西陽もすっかり沈み、漆黒の闇をカクテルライトが切り取って、このスタジアムだけが煌々と輝いています。強い風が吹き荒ぶなか、両軍サポーターの熱いエールを受けて試合が始まります。草津は前半、風上からの攻撃となります。前半1分、自陣でボールを奪った草津は、その奪った廣山選手から熊林選手へとボールを繋ぎ、カウンターを仕掛けます。熊林選手はドリブルで左サイド方向へ流れながら味方選手の動き出しを見定めます。前線に走っていた高田選手にパスを繋ぐと、高田選手は相手守備を引き付けてから中央ゴール前に走り込んで行くアレックス選手へと絶妙なセンタリングを蹴り込みます。アレックス選手、このハイボールをヘディングシュートでゴールマウスへと送り込みますが、コースがやや逸れて左ポストへと当たって跳ね返ってしまいました。しかし、このリフレクトボールを自ら詰めて再度右足でシュート!絶好機でしたが、今度はクロスバーに当たってゴールを割ることは出来ませんでした。いやあ〜、惜しい!しかし立ち上がりの攻撃としては上々です。前半2分、およそ35mの位置で獲得したFKの場面です。今日は松下選手が居るので、ここは当然狙います。松下選手の放った波動砲は残念ながら弾かれましたが、このこぼれ球を拾った高田選手が再びシュートします。このシュートはGK正面でキャッチされてしまいましたが、ここ数試合の攻撃陣の好調ぶりが続いている印象を与える上で、大変良いプレーだったと思います。前半はやはり風の影響が強く、サイドを起点とした攻撃を指向する千葉はDF裏を狙ったロングボールのコントロールが出来ず、全くと言って良いほど攻勢に打って出られません。対する草津はと言うと、風上を利したロングボールは蹴り込まず、細かいパスを繋ぐといった従来通りの戦術を黙々とこなします。これが存外有効だったようで、中盤のポゼッションは草津が制しました。前半16分、18分の右左のCKのチャンスや、19分の左サイドからのロングスローなど、ゴール前に迫る攻撃を見せるなど、千葉にプレッシャーを与えてゆきます。前半40分、カウンターから千葉・青木(孝)選手にロングシュートを打たれますが、ここは上に外してくれて助かりました(結局前半の千葉のシュートはこれ1本でした)。危ない場面もありました。前半42分、ペナルティエリア方向に転がってきたロングボールを処理する際、GK・常澤選手がクリアに飛び出したんですが、先に相手にボールを取られてしまい、空き家になったゴールを狙われたらアウトな場面を作ってしまいました。ここでは守備陣が戻って相手にシュートを打たせませんでしたが、大勢を押さえていてもちょっとした隙やミスが命取りになりますので、ゆめゆめ油断なきよう。ピンチのあとには何とやらで、前半43分には右サイドからアレックス選手がシュートを放ち、前半ロスタイムには右CKからのセンタリングに反応した尾本選手がヘディングシュートを撃ちます。これらのシュートはともに枠を外しはしましたが、いつもと違って得点の匂いが漂っています。この後のプレーに期待しましょう。草津優勢に試合を展開しましたが、結局前半は双方無得点で終えることになりました。ただ、この状況はそれぞれにとって思惑の範疇なのか否か。少なくとも千葉にとっては不本意であったことと思います。前半はゴールキックが何本もタッチラインを割る場面が見られたように、千葉は風の扱いに相当苦しめられていると言った印象です。風上になる後半はどういった対応をしてくるか、注目です。
後半になっても双方の戦術には変化がありません。風上になってロングボールが伸びるようになった千葉ですが、球が伸び過ぎてしまって、かえってコントロールがしにくいようで、前半同様風の扱いに苦慮しています。一方の草津はさすがにホームだけあって、風下に応じたやり方を心得ています。ゴールキックは極力低く蹴り、上空の風に押し戻されるのを防いでいます。ロングボールも多用せず、ショートパス主体の組み立てでフィールドを支配してゆきます(まあ、いつも通りって事ですが)。後半11分、千葉の右CKはあわやの場面でした。ニアサイドへ蹴り込まれたセンタリングに走り込んできた米倉選手がバックヘッドでゴールを狙いました。意表を衝かれた草津でしたが、GK・常澤選手のスーパーセーブでゴールを死守しました。よくぞ防いだ。後半14分、今度は草津の番です。廣山選手が自陣でボールを奪うと、すかさずカウンターへ打って出ます。ドリブルで持ち上がった廣山選手は、左前方に開く菊池選手、右前方に開く高田選手の動き出しと千葉DFの位置取りを見極め、菊池選手へとパスを出します。フリーな状態でパスを受けた菊池選手は、そのままペナルティエリア内に侵入、守備の隙間を狙ってシュートを放ちます。ゴール右隅へと飛んだシュートを千葉GK・岡本選手がパンチングで弾きましたが、この時点でゴール前には高田選手、アレックッス選手が詰めていました。そして、ルーズボールの落下地点に居たアレックス選手が、狙い定めた右足でコントロールボレーシュートを繰り出します。低い弾道のシュートはブロックに来たGKを躱してゴールへと吸い込まれて行きました。GOOOOOAL!!! アレックス選手の3試合連続ゴールで、草津が先制です。いやそれにしても、アレックス選手、またしてもボレーだよ。どんだけボレーが上手いのかと。風に翻弄されつつもロングボールを多用する千葉ですが、この失点で戦術の変更を決断したようです。後半18分、千葉は山口選手→深井選手の交代で前線の活性化を図ります。深井選手は快足ドリブラーなので、うっかりカウンターを許すと取り返しのつかない事態を招きかねません。重々注意。そして、そう思っている先から危機が訪れます。後半24分、GK常澤選手のミスキックで自陣深い位置からのカウンターを招くと、単騎仕掛けてきた深井選手にシュートを許します。遠目には入っちゃったかと思いましたが、サイドネットを揺らしただけでした。助かりました。風が強く、しかも向かい風なので、とにかくハイボールの取り扱いには気を付けべぇや。
後半27分、草津は右CKのチャンスです。バクスタを煽り自ら雰囲気を作り出した熊林選手の蹴ったボールは、ゴールほぼ正面、ゴールエリアのやや外側へと落ちて行きます。千葉DF3人の壁を割って頭から突っ込んだ尾本選手のヘディングシュートが炸裂。ボールはゴールネットに突き刺さりました。GOOOOOAL!!! 草津は待望の追加点を得ます。それにしても、守備・攻撃含めて人数の多いニアサイドの密集地帯を避けてその先を狙ってボールを蹴り入れる熊林選手のCKが、まず凄い。3人もの壁をこじ開けて突っ込んだ尾本選手もまた凄い。今日の草津は気迫が技術をブーストしているようにさえ感じられます。2点差を付けられて後が無くなった千葉は、後半28分に米倉選手→ネット選手の交代を行い、パワープレーに入ります。そしてその効果はすぐに現れます。後半30分、千葉は速攻カウンターで攻め寄せて来ます。自陣から縦に速いボールを出すと、これに呼応して走り出したネット選手にボールが渡ります。ネット選手、凄い勢いで脇目も振らずに直進、そのままの勢いでフリーシュートを放ちます。立ち塞がる草津の守護神・常澤選手、股抜き気味のグラウンダーのボールを体を張って弾き飛ばし、絶体絶命の危機を切り抜けます。おお〜、助かったよ〜、トッキーサンキュー♪ 草津は千葉のパワープレーに対して、守備の充実で対抗するべく選手交代を行います(後半34分、熊林選手→櫻田選手)。守備型の本職ボランチを据えたことで攻撃のカードは目減りしましたが、守備ブロックの強化という点では現状においてこれがベストだと言えます。後半35分、千葉は右サイドエリアから40mのFKのチャンスを得ます。時間を考え、ここは迷わずロングボールをゴール前へと入れてきます。ゴール前の密集状態で、一蹴りされればゴールインしてしまいそうな状況でしたが、草津の守備陣は集中してゴールを許しません。そうこうするうちに気が付けば時計は後半45分を過ぎています。後半ロスタイム、高田選手→ダニエル選手の交代で、草津は守備固めに入ります。得点こそありませんでしたが、今日も高田選手は攻守にわたって大いに尽力してくれました。今日の草津は、リードがあるからと言ってみだりにボールキープに固執しません。
ロスタイムには、右サイドを駆け上がるアレックス選手から蹴り込まれたクロスに反応した廣山選手がヘディングシュートを放ちます。GKにキャッチされましたが、最後まで攻めの姿勢を保つことは、相手の攻撃機会を減じる事に繋がるので、大変結構なことです。そして、オーラスの千葉・右CKを防ぎ切ったところで主審の笛が鳴り、試合終了となりました。
今日の試合はパーフェクトと言っていいでしょう。前半に風と言う地の利を活かした攻勢を掛けてペースと雰囲気を作り出し、相手に体力だけでなく心理的な負荷を掛けることが出来たのが、目に見えない勝利への布石だったと思います。後半も手を緩めることなく集中して先制点、追加点を奪ったことで、完全に試合を掌握することが出来ました。そして、試合を掌握したことで不用意な「追いファール」をしなくて済み、その結果として無警告で試合を終えることが出来ました(これ重要!)。戦力だけを見れば、残念ながら草津は相手よりも下かも知れませんが、結束して一丸となったチームのベクトルは、そんな差など物ともしないほどの力を発揮してくれました。今の草津は強いです。
弱い一本の繊維も、幾重にも束ねれば大岩さえも持ち上げる力を持つようになります。色々と足りない物だらけの我がチームが持ちうる唯一にして最大のモノ、それこそが「束ねたチカラ」ではないでしょうか。今日はそのことを心の底から感じることが出来ました。ナイスゲーム!【ほーせん@高崎】
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■■■ 2010年11月28日(日) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第37節
横浜FC 0−1 ザスパ草津
ニッパツ三ツ沢球技場 6677人
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もってる男
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気がつくと秋も終盤、肌寒さで12月=シーズン最終節到来を実感する11月28日。そして、もう2010年のアウェイ戦は今日の三ツ沢での横浜FC戦で終わるのだな・・と思わざるを得なかった。毎回ピッチはきれいで見やすい、選手との距離は近い三ツ沢競技場での対戦は毎年楽しみにしているのだが、今度ばかりは違う。今日は高田保則をアウェイの地で見る最後の試合となるのだから。否応なしに時間は過ぎる、来るべき時は訪れるのだな・・そんな気持ちに押しつぶされそうになりつつ重苦しい気持ちで横浜に向かっていた。
とはいえ、腹が減っては戦はできない。このような状況でも腹が減るのかと怒られそうだが、空腹で試合中に倒れて試合後ヤスの姿を見逃したら本末転倒だし・・やっぱり横浜といえばあれだな。ということでJR横浜駅でシウマイ弁当を購入した。不思議な話だが、この弁当を試合会場で食すると毎回勝つジンクスがあるのだ。些細な事だけど、このシウマイ弁当の力で応援に気合をいれ選手たちを後押ししよう。
いつものアウェイゴール裏に行ったが、思ったより妙に時間がかかる。昔は会場に入って駐車場を経由してゴール裏に行っていたような気がするが、今回はなぜかスタジアムの周囲をぐるっと回って迂回しないと向こう側にあるアウェイ席に到達できない。最終戦の混雑を回避しての対策なのだろうが・・三ツ沢のピッチの見やすさは魅力なのだが、アウェイサポに対しての待遇はいつもあまり満足のいくものではないような気がする。
やっとのことで会場入りし、ザスパサポーターと歓談するが、やはり話のメインはヤスの話に。「もう、来るべき時が来たね」と・・。しかしながら、私はヤスがザスパ草津からいなくなるとは、本当にいまだに信じられない。もしいなくなったとしても、何かの拍子でまたひょっこり帰ってきそうな気がする。それくらいヤスの存在というものはザスパにとって大きいものなのだ。アウェイゴール裏は、そんなヤスをはじめとする、今季見納めになる選手を後押ししようとはるばる群馬からかけつけたザスパサポーターでぎっしり埋まった。(たぶん横浜FCのゴール裏より密度が高かったと自負している)話にふけっていたらあっという間にピッチアップの時間が訪れ、さきほどのシウマイ弁当は味わう暇はなく、かきこむように腹におしこんだ。ピッチアップの時間は、食い入るように選手たちの様子に見入ってしまい、あっという間に時間がすぎた。ピッチアップも終了し、試合前にオペラのような歌が響き渡る。横浜FC戦の試合前は昨年のレポにも書いたけれど「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を流すのが習慣になっているのだ。何に対しての「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」なのか・・契約満了した選手に対するはなむけの歌かと深読みもしてしまう。
そんなぼやきはほどほどにして、今回のメンバーをチェック。GK:21常澤選手、DF:34西澤選手、18御厨選手、3尾本選手、4田中選手、MF:23菊池選手、30松下選手、14熊林選手、10廣山選手、FW:9高田選手、33アレックス選手、控えは1伊藤選手、7佐田選手、32ダニエル選手、6櫻田選手、15前田選手、17秋葉選手、8ラフィーニャ選手。うーん、契約満了が決まって以来、チェソンヨン選手は今回も控えにいません。ソンヨンも今季契約満了の選手なので、せめて控えにいて欲しかったのだけど・・でもいないものは仕方ない。
キックオフの笛がなり、その時点でゴールを狙うべく駆け上がるヤス。もう片手で数えても余るくらい残り少ないザスパ草津での試合に、すべてをかけているのが伝わってくる。驚くべきは廣山選手がこれまでにない動きをみせたこと。いつもプレー中はいい意味で廣山選手は影が薄い存在なのだが、このときばかりは倒れつつヘディングを決めようとしたりするゴール寸前のシーンも見られた。こんなのんびさんはじめてみたような・・。その他菊池大介の存在感も際立っていた。甲府戦の勝利を決定付けた2ゴールは記憶に新しい。西澤選手との連携もばっちり。二人とも来年はどうなるのだろうか・・ぜひ来年もいて欲しいのだが。いやいや、来年のことなどはおいて、今のこの瞬間を楽しもう。
時間がたつにつれ日も暮れ、後半に入ったがもう応援でせいいっぱい。当たり前だが、試合終了までの残り時間のカウントダウンは止まってくれない。ザスパ戦士たちは美しいクライマックスを決めようと何度もゴールに立ち向かうが、なかなか決まらず。中でも少し気になったのが常澤選手。ゴールキックで何度もタッチを割ったり、いつものトッキーらしからぬ不安定なプレー。大丈夫だろうか・・。いやいや、今までの試合を振り返るとヤスはいつもロスタイム間際にゴールを決めていた記憶があるから、きっと80分台くらいにきまるはずだ!と勝手に予感していた。ぜひそれまでに必ずトッキーも無失点で抑えられるよう耐えてくれ!
そしてその時間は88分にしてようやく訪れた。田中淳が左サイドをかけあがりゴールに直接シュートすると、いったんそのボールは横浜FCのキーパーにはじかれたものの、キーパーのすぐ前に詰めていたその場で高田保則こぼれ球をがはじき返し、ゴールにすいこまれたというものだった。それは横浜FCのゴール裏側で決まったため、その場では誰が決めたのか確認できず「入った」という実感しかなかったが、その直後、高田保則がゴールを決めたというアナウンスを聞き、ようやくと実感した。GOOOOOAL!!!最後の最後に泥臭いけど気持ちが入ったゴール・・最後までヤスはヤスらしい!それにしてもこの選手、そのときピッチ上でさらに粋なことをやっていたとは・・。
そして無失点で逃げ切り1-0でザスパ草津が勝利!大事なアウェイ最終戦を勝利で決めることができたのだ!
試合終了後、選手全員がゴール裏にやってきた。そのとき驚くべき光景が・・!ゴールを決めた高田選手は、自分の9番ユニフォームを手に持って、試合に出れなかったソンヨン選手の5番ユニフォームを着て現れたのだ!どうやらゴールを決めたとき、一瞬だったが着ていた9番ユニフォームをめくって、裏にきていた5番ユニフォームを見せたらしい。
ということは、試合中、ヤスはずっと9番ユニの裏に5番ユニを着て、契約満了が決まったものの、試合に出れないソンヨンの分まで走っていたということになる。自分こそ今年までしかザスパ草津にいられないというのに・・どうかしてる。いや、ヤスがではなく、こんな熱い魂を持ったヤスを何故フロントの人々が契約満了にしたのかどうかしてると思ったのだ。
そしてその後、思わぬ人物がベンチから現れた。5番ユニを着てピッチに立ちたいと思いながらも出場が決まらなかったソンヨンだ。彼は練習着姿でベンチからずっと試合の行方を見守っていたのだ。ソンヨンも最後に挨拶にやってきた。ヤスもソンヨンも、もうベテランで年齢的にも戦力外にされてもおかしくないポジションにあるかもしれないが、今までなかなか勝てずにいた苦しい時も、二人の熱い気持ちの選手にずっと支えられてきたことを、私達は忘れてはならないと思う。
これで気づけば4連勝。残り少ない中ザスパ草津は新しい奇跡でラストシーンを美しく飾ろうとしていたのだった。
個人的なことではあるが、このとき、私が高田保則の存在を知り、ザスパ草津の応援をはじめたきっかけを思い出していた。それは検索して見つけた一枚の写真。時は5年前、ザスパに移籍する前に所属した湘南ベルマーレと横浜FC戦の試合のワンシーンである。当時ヤスは10年近く湘南ベルマーレに所属していたにもかかわらずシーズン途中で横浜FCに期限付き移籍となった。そしてその年の最終戦が皮肉にも三ツ沢で湘南ベルマーレと横浜FCとの試合だったというわけだ。当時は退場という不本意なかたちで横浜FCでのプレーを終えたらしいが、その試合のとき、どういうことか横浜FCのユニフォームの下に湘南の緑のユニフォームを着て、試合終了後は横浜FCのユニフォームを脱ぎ、緑色のユニフォームのままで湘南ベルマーレのサポーター達に挨拶に行ったという。この様子が、横浜FC側のサポーターから見た写真としてあるサイトに残っていたのである。この写真を見て、私は高田保則を応援しようと思い、未踏の地群馬に向かいザスパ草津を応援しようと決めたのだった。
あれから5年後、私達は奇しくも同じ場所で同じようなシーンを目撃することとなる。しかし明らかに違ったのは、ヤスは自分のためではなく、共に戦うチームメイトのためにいつもとは違うユニフォームを着て戦ったということである。このザスパの5年間が少なくともヤスの人生に強さと優しさを与えたのかもしれない。ヤスが残した数々の出来事で、3年間応援してきた私自身も、ほんの少しではあるが強さと優しさを頂いたと思っている。ヤスがいなかったら群馬という土地に1年に12回以上も行くこともなかっただろうし、サッカー自体に夢中になる人生を送ることもなかったと思う。そしてこの群馬での日々は今でも私の中に息づいて、いるのだ。
今後ヤスの進路がどうなるか全くわからないが、本人にとって一番ベストな進路を選んでくれることを心から祈っている。【さねやん@東京】
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■■■ 2010年12月4日(土) ■■■
J.LEAGUE DIVISION 2 第38節
ザスパ草津 0−4 柏レイソル
正田醤油スタジアム群馬 5800人
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イカロスのごとく
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太陽が眩しいです。雲一つ無い晴天です。遠景の赤城・榛名もくっきりと、その美しい姿を見せています。ただ、北風が強いです。
3月から始まった今季のJ2リーグも、悲喜交々、本日をもって千秋楽です。前半戦の不調が信じられないほどの戦績で、後期を驀進してきた我らが草津。今日は多くの事柄が懸かった試合となりました(チーム新記録となる5連勝、対柏初勝利、今季勝ち負け五分へ回復等々)。その大事な試合の対戦相手は、今季J2を無類の強さで席巻してぶっちぎりの優勝を果たした柏です。後半戦の好調がどれほどのものなのかを計るに、これほど相応しい相手は居ないでしょう。今日ばかりは後先なんて考えず、がむしゃらにこの強敵にぶつかって頂きたい。もちろん、僕らサポーターも精一杯後押しをさせて頂きますよ。
今日最終戦の現時点において、既に13名の選手と1名のコーチの退団が発表されています。長年にわたってこのチームを牽引してくれた選手。なかなか出番がないながらも、チームの一員として支えてくれた選手、そしてコーチ。その誰もが僕らにとって欠けがいのない戦力であり、想い出を共有する仲間です。その皆さんに、ありがとう、と、草津に来てくれてありがとう、と言わせて下さい。あなたたちは、小さな僕たちの大きな希望となってくれました。そして、皆さんのこれからの未来が、輝かしいものであることを願ってやみません。
っと、試合が始まる前だってぇのに、妙にしんみりしちまったぃね。今日は大事な一戦なんで、気ぃ入れて頑張んねぇと。ではでは、いつものようにスターティングメンバーを確認しましょう。GK:21・常澤選手、DF:4・田中選手、18・御厨選手、3・尾本選手、34・西澤選手、DMF:14・熊林選手、30・松下選手、OMF:23・菊池選手、10・廣山選手、FW:9・高田選手、33・アレックス選手、リザーブメンバーGK:1・伊藤選手、DF:5・崔選手、7・佐田選手、32・ダニエル選手、MF:6・櫻田選手、15・前田選手、FW:8・ラフィーニャ選手。最終盤にきて好調な草津、スタメンは固定で臨みます。
コイントスの結果、どうやら柏がコートチェンジを選択したようです。前半、柏は風上を取りました。良く考えてみると、風の他に太陽光線も考慮したようですね(後半は北側のゴールの方が西に傾いた光線が直接目に入ってGKの障害になります)。むー、先手を取られましたな。ま、アゲインストなら、それなりの戦い方ってものもあるので、気を引き締めてかかりましょう。
試合が始まり、戦機いまだ熟さずといった序盤、最初のチャンスは柏のセットプレーです。前半5分、柏は右コーナーからのCKの場面です。キッカーのレアンドロ選手がニアサイドに蹴り込んだセンタリングに近藤選手が頭を合わせ、そのままゴールに押し込まれました。……早っ!早くも先制を許したかよ。まあ、流れから失点した訳ではないので、まだまだ挽回は出来ます。切り替えていごー。草津の戦術はいつも通りで、自陣からハーフエリア辺りでボールを回しつつ相手の隙を窺ってスペースへ攻撃陣を走らせる、というものです。一方の柏の戦い方も似たような感じですが、草津が中央のアレックス選手や高田選手を突破口に使うのに対して、柏は少ないタッチ数で正確に繋ぎ、素早く展開してからDFラインを抜けたアタッカーでゴールを狙う、といった違いがあります。これに加え、柏は中央に草津側の意識を集めておいて左右のSBがオーバーラップしたサイドアタックを効果的に織り交ぜてくるので、なかなかに守備がしづらい状況にあります。
前半25分、草津は右CKのチャンスを得ます。バクスタの大歓声に押されるようにして熊林選手が撃ち出したセンタリングをニアサイドで田中選手が競りながらゴール方向へ流します。この流れたボールの落下点ではアレックス選手が待ち受けていました。アレックス選手、落ちてくるボールに対してボレーでシュートを蹴り出します。これは入ったろう!しかし、ボールは左ポストを直撃して得点ならず。入っちゃってくれて良かったのに〜。前半44分、柏・茨田選手の放ったミドルシュートは風にも乗りゴール目指して一直線。右ポスト直撃で得点はなりませんでしたが、いやはや心臓止まるかと思いました。決定的な場面を凌いで前半も残り少しとなったロスタイム、やれやれ、追いつくことはできなかったけんど、まあ、1点差なら何とかなんだんべ、な〜んて思っていた終了間際でした。柏・左サイドのロングボールを競った尾本選手が林選手を倒して、ペナルティエリアのすぐ外からのFKを与えてしまいました。追い風、至近距離、ロスタイム、多分前半ラストプレー、キッカーは巧者・レアンドロ選手。嫌な予感が脳裏をよぎったのは、きっと僕だけじゃあないでしょう。そして、その予感的中。このFKを直接決められてしまい、何とも痛恨の2点目を献上。直後に終了の笛。なぜ、あと少し持ち堪えられなかったのか…。
後半は草津が風上です。有効に使いたいところですが、まあ、あまり慣れないことはするもんではないとの判断でしょう、不要なロングボールは使いません。あくまで草津らしい戦法で闘う、といった姿勢を貫きます。一方の柏も、リードしている事に加えてアゲインストであることを考慮し、無謀なアタックはせず、相手のミスを誘ってそこに付け込んで一気にゴールを落とす、そんな様子がうかがえます。後半13分、左サイド深い位置で相手クリアボールを奪った草津。田中選手がヘッドでペナルティエリア内にハイボールを打ち込み、高田選手が潰れながらこれをマイナスにセットします。ここに居た菊池選手、迷わず左足を振り抜きシュートを放ちます。今度こそは!しかし、柏GK・菅野選手の右手一本に弾き出され、またしてもゴール奪えず。あ゛〜、声にならない溜息が場内にこだまします。後半17分、廣山選手に替えてラフィーニャ選手を投入、得点を目指します。この交代によって、アレックス選手が一列下がって左SHに入り、ラフィーニャ選手と高田選手の2トップとなりました。後半22分、ペナルティエリアに侵入してきた工藤選手を後方から倒してしまい、今度はPKを与えてしまいました。嗚呼、やってしもうた…。これを林選手にあっさり決められると、柏サポ歓喜のラインダンスで3点差です。後半35分、柏・左サイドから直前に交代出場(後半30分、工藤選手→OUT)となった田中(順)選手に大きく崩され、がら空きになった右サイドに駆け込んだ山崎選手にゴールへと流し込まれ、ついに4点目上納。アウェイゴール裏では、あぁ、またやるんですか?ラインダンス。楽しそうでなにより。後半38分、西澤選手→崔選手の交代です。崔選手にとっては、選手として最後のピッチとなります。なんとかして花道を飾って欲しいところです。
後半39分、草津は左45°・30m超のFKのチャンスです。ゴール中央正面に弧を描いて蹴り込まれたボールは、ニアサイドで田中選手が軌道を変えると、なんとフリーになっていた御厨選手の胸元へ落ちました。御厨選手、しかしトラップがやや大きく、自分の足下に落とすことが出来ず、ボールは右サイド方向へ流れます。ここに居たのが高田選手。左足を振り抜いてシュートを撃ちましたが、またしてもGK・菅野選手が立ち塞がりました。っっっくぅ〜!これでもダメなのか…。後半41分、草津は菊池選手→前田選手と最後のカードを切り、一矢報いるべく柏ゴールを目指します。後半43分、右サイドからのセンタリングに高田選手が飛び込みますが、これもクリア。最後までゴールを諦めず、あくまで攻めました。しかし、今日の草津にサッカーの女神様は一度として微笑んではくれませんでした。笛の音が赤城おろしに揺れ、試合は終わり、今季の幕が降りました。
点差ほどには悪い試合内容ではなかった、と僕は感じています。柏と草津のちょっとした、しかし決定的な違いは、「基礎技術の差」ではないかと。風に揺られてボールが扱いにくい状況下において、草津の選手の多くがトラップを胸で受けると大きく弾ませていたのに対し、柏の選手達は自分のコントロール可能な範囲にきちんとボールを落としていました。また、パスを出す際にも、足元へのボールは正確に足元へ、スペースへのボールは狙ったスペースへと撃ち込む柏の技術が随所に見られました。これが手数の少ないパスワークの原動力で、カウンターやサイドアタックの起点になり、また正確無比なセットプレーに繋がっていたんですね。世界の強豪チームでは、往々にして派手な個人技に目を奪われがちですが、真に強いと感じるチームの試合をよく見ると、こうした基礎的なところが先ずしっかり出来ていることに気付かされます。しっかりした基礎があっての派手な建物、と言う訳です。
もう一つ気が付いたことを。草津はこの試合で4枚のイエローカードを貰いました。そして、その内の2枚が失点に直結しています。草津はこの試合で合計11回のCKを蹴りました。対する柏は前半の2回だけですが、その内の1回が得点に繋がりました。そう言えばオフサイドも随分取られましたね(合計6回)。こうした数字だけを見ても、草津と柏の現状をよく示していると思います。統率の取れた堅牢な守備とチャンスは一撃必中で物にする精度の高い攻撃、これが(少なくとも今日の)柏の正体でした。前回のアウェイ対戦の時もやはりセットプレーでやられましたが、柏は好不調の波や展開の不利があっても、得点の手段を多く持っていると感じました。当たれば沈む必殺のヘビー級ワンパンチを持つ柏に対し、そもそも軽量ストロー級パンチな草津は、良く狙ってきちんと弱点を衝かないと相手は倒れてくれない、そういった違いが根本的にあるように感じます。だから尚更「基礎力を高めよう!」ってことに繋がるんですが。
いにしえの神話の話です。囚われの塔からの脱出を図ったイカロスは、高く飛びすぎて太陽の熱に羽の蝋を溶かされて終えなく墜落してしまいました。今日の草津そのものです(草津の羽をむしった相手が太陽王・レイソルってのはちと出来過ぎですが)。しかし、高みに向かって果敢に挑み続ける姿勢を貫いての撃墜であるならば、それは大いに称賛すべきです。飛び立たなければ、これから向かうべき世界の広さや風の強さなどは、決して分かりはしないのだから。そして、今日は墜落しましたが、幸いにも墜落死した訳ではありません。この傷が癒えれば一回り頑丈になれるはずです。懲りずに何度だって大空に羽ばたいて行こうじゃありませんか。そして、いつの日か、あの太陽だって蹴り落とせる日が来る、そう信じて。【ほーせん@高崎】
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2010年終了 14勝6分16敗、勝点48、得失点差-12、12位・・・
ザスパを支えた功労者たちに非情の戦力外を通告
その男たちの意地がもらたした最後の猛攻・・・
ザスパを愛し粉骨砕身してくれた功労者たち ありがとう
彼らのためにも停滞は許されない
限りなき前進 歩みを止めることなかれ
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