音声・音韻・アクセント

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全体的なイントネーションについて

ほかの地方の人に、「普通にしゃべっているのにケンカしているようだ」ともいわれます.これは、東部北関東が抑揚のない語調なのに比較して、群馬弁は用言へのアクセントが明瞭なため、語調が荒々しく聞こえるためだと思われます.音声・ 音韻の特徴として、全国的な鼻濁音がなく、「が、ぎ、ぐ、げ、ご」が鼻にかかることもなく、むしろ「が!、ぎ!、ぐ!、げ!、ご!」のように、表記ズバリの発音(破裂音)で、かつ強くアクセントがおかれてしまい、より強い語調になります.しかもしゃべるのも速くて、慣れないと「話すのが速くて、何いっているのかわからないよ!」と指摘されるときもあるでしょう.
しかし、そこをぐっとこらえて、なるべくゆったりと、平静に話せば、栃木や茨城などの東部北関東圏と比較すると、群馬弁のイントネーションは幸いなことに、下に示す一部の単語のアクセントを除いて比較的共通語に近いと思います.
別ページの独特の表現を、うまく殺していれば、東京人ぶって生きていくことも可能でしょう.


ならば逆に群馬弁を心の底から話してみたいアナタ! 
以下の点に留意して発音してみましょう.

動詞・形容詞・副詞に強いアクセントを置いてテンポ良く話してみる.

かつなるべく可能な限り用言を促音化、撥音化させる.撥音化した「ん」は弱く発音する.

こうすることで語気が荒っぽくなり、群馬県人の話す言葉に似てきます.栃木、茨城の北関東圏が、抑揚の明瞭でない語調なのに比べて、群馬弁は意識して「元気よく、テンポよく?」しゃべってみるとより似てくるのではないかと思います.(意識したケンカ腰でもよいかな?)

例: っとはやくくりゃいーだん

鼻濁音がなく、「が、ぎ、ぐ、げ、ご」が鼻にかかることもなく、むしろ「が!、ぎ!、ぐ!、げ!、ご!」のように表記ズバリの発音で、かつ強くアクセントが置かれる.

逆に、鼻濁音にしようとすると、妙にわざとらくしくなってしまうのです.
例:「ぐ!ぃ?」

疑問には、「〜ん」を用いてみる.この「ん」は弱く添えるだけでよい.

群馬県人の基本ともいえます.マスターしてもらいたいものです.若い人との会話ではこれでOKですが、お年寄りが相手の場合は語尾に「〜かぃ」あるいは「〜きゃ」をつけて下さい

例: 「そー?」  「んな?」(何なの?) 「?」

ーなぃ?」  「ぐんゃぁ?」

断定の助動詞「〜んべぇ」がある場合は、「べぇ」に強くアクセントを置く.

例: 「ったんべぇ!」 

あいづちや過去の行動説明には助動詞「さぁ」を語尾につけてみる.

共通語は「だよ」、「だね」、「だよねぇ」に相当するときは、語尾を「さぁ」にかえてみる.
例:「ったんぁ」

更に東毛地区では、さらに助詞「さぁ」を語尾に連発、強調してみる.最後は上の助動詞の「さぁ」で締めてみよう.

他県の人には耳障りと思うほどに連発、強調するのがポイント!

例: 「昨日、医者ったんさぁ.そしたら、っからまたされてさぁっかもだかわっさぁ

これだけでも十分群馬県人化すると思いますよ!


※群馬が舞台のNHKの朝の連続テレビ小説「ファイト」(2005年)が、県内でいまひとつ盛り上がりにかけたのは、「登場人物があまりにもきれいな共通語をしゃべっていて、舞台が全然群馬らしくない」ということにも起因したのではないか.何も出演者全員「〜だんべ」を使えよというわけではないが、現実には四万の旅館の仲居さんも、高崎や前橋の女子高の高校生たちもいつも「〜なん?」や「〜なんさぁ」を使っているはず.登場人物がもっとこれらの語尾をきちんと使ってくれたら、県内ではもっともっと「ファイト」が盛り上がっただろうに残念でならない.


単語編

私が知っている一部の共通語との言葉のアクセントの違いを書いてみます.
(cf.)『明解日本語アクセント辞典第2版』三省堂
※アクセント:●=高、○=低
英語などの強弱アクセント(stress accent)とは違い、
日本語は高低アクセント(pitch accent)なので、音の高(●)・低(○)で表記します.

「前橋」

以下は、seriさんにいただいたメールを参考に大幅に加筆・修正したものです.
seriさんの卓越した観察には感服致しました.ありがとうございます.
  1. マエバシ(●○○○):頭高型アクセント → 共通語
    (例.)NHK中央ニュース、天気予報、NHK関東ローカルアナ(群馬以外出身者)、FMぐんまの女子アナなど.
  2. マエバシ(○●○○):中高型アクセント → 共通語もどき
    (例)群馬177(天気予報)「前橋地方気象台発表」のお姉さん.FMぐんまの女子アナにも.NHKローカルの群馬出身アナ(きっとこれらは、アナウンサー教育で共通語化教育をされた人々か?中央への迎合のささやかな抵抗なのか、単に群馬弁に引きずられたのか?はたまた共通語アクセントを「中高型」と知覚している人か?(推測理由:「船橋」「豊橋」「市橋」「高橋」「行橋」(いずれも○●○○)
  3. マエバシ(○●●●):平板型アクセント → 群馬弁(というか、これが正しい地元発音
    登録してある音声ももちろんこれです!やっぱこーだぃねぇ.

 Jリーグのジュビロ磐田も、群馬県人が発音する「イワタ」は「○●●」(平坦型)だろうが、多くのスポーツ番組でも地元の「イワタ(●○○)」と同じ発音がされている.これはニュースステーションで「ゴン」こと中山雅史さんが、イワタ(○●●)と発音した司会の久米さんをさえぎり、「イワタ(○●●)ではなく、イワタ(●○○)と呼んでください」と言っていたのを見たこともあるが、地元の発音を全国に浸透させた非常にすばらしい例である.本来、地名は地元のアクセントが優先されるべきである.すなわち群馬県人は「前橋」と「前橋放送局」では、「まえばし」のアクセントはかわらないが、東京人は「前橋」と「前橋放送局」では「まえばし」のアクセントが異なるのだ.その点では東京に迎合するNHK前橋や、FM群馬のアナウンサーは真の「地元」局とはいえない!と思う.思えば「グリーンドーム前橋」っていうのが、「前橋グリーンドーム」だったら、「前橋」の発音を守るのにどんなにか役立ったと思うよ.「グリーンドーム前橋」にしたのは、前橋の失政だぃね.「前橋育英」高校も、活躍するのは大いに結構だけど、全国中継のアナならともかく県内のアナまで「マエバシ(●○○○)育英」っていうのは、なんだかなぁ・・・・どうして前橋人は、彼らに抗議し、是正させようとしないのか!市議会で問題にしてもいいくらいだ(笑) 逆に、群馬テレビのニュースや天気予報は、地元の地名のアクセントに準じて読んでいる人が多い(残念ながら全員ではないが).とても好感が持てる!群馬テレビこそ、真の地元局である!そもそも、前橋はもともとは「厩橋(うまやばし)」の転じたもので、「前」の意味を持っていなかった.NHK発音は、前橋の歴史的経緯や変遷を無視した「暴挙」に近いものである!
 故金田一春彦先生の説だったか、東京人は異郷と判断すると、頭高型アクセントにかわるんだそうだ.東海道では「しながわ」「よこはま」「おだわら」までは平坦だが、「あたみ」では頭高型アクセントになる.北方面でも「うらわ」「おおみや」「かわごえ」あたりでは平坦だが、「おけがわ」「くまがや」あたりになると両者が混在し、「たかさき」「まえばし」は完璧「異郷発音」である.(ちなみに「伊香保」が平坦なのが解せないのだが・・・東京人が群馬の町を頭高型アクセントで呼ぶのは、それは致し方ないとして、なにも群馬県内の放送局が、そのような「群馬=異郷」発音に追従することもないだろうに・・・・群馬は異郷でもなんでもなく、放送局のあるところでしょ?もちろん放送局の視聴者も、そこに住んで生活しているんだ.県民が聞いて「変な地名発音してる!って感じる地元局」って、「本当に地元局を名乗っていんかねー?」って思うよ.

 NHKやFMぐんまの文化侵略に負けず、後世に正しい「まえばし」発音を残そう!

 同様に、「いせさき」(共通語では(○●○○)、群馬弁では(○●●●)).「たかさき」も(○●○○)と言う東京人も多いが、(群馬弁では(○●●●))上越・長野新幹線内では、「次は高崎」という自動アナウンスでも、群馬弁と同じ(○●●●)と発音されており、群馬県人として、JR東日本の「粋なはからい」には敬意を表さずにはいられない.

「館林」もNHK(○●○○○)は、地元(○●●●●)と異なる発音をしていることに気づいた.

また「イ■ン太田」店での録音時報アナウンスは「イ■ンおーた」の「おーた」(○ー●)が、地元(●ー○)と異なる発音ですごく気持ち悪かった.店長に即刻メールしたが約1年後に訂正された.出店するときにはその土地の文化にも配慮してほしいものだ.

「赤城」

 群馬県では「(○●●)」であるが、東京人は「(●○○)」にアクセントを置く.(地元の発音が優先されるべきだとは思うのですが)すなわち「あかぎやま」と言った場合、群馬県人は「あかぎ」の発音は変わらないが、東京人は変わるのだ.赤城は、国体の名にもなった群馬人のアイデンティティの山だから、共通語の違和感あふれる頭高型発音はカンベンしてほしいな.ちなみに東武桐生線特急「りょうもう」号の終点大間々の「赤城」駅の特急車内アナウンスは「●○○」.JR東日本と違って、東武は粋でない.しかし新幹線と比べてかなり料金が安いので大目にみようじゃないか.(笑)

「利根川」

 共通語では「平板アクセント(○●●●」であるが、群馬県人は、「とがわ(○●○○)」のようにアクセントを置く.NHKの関東ローカルのニュースで、東京のアナウンサーの話す、平板アクセントの「利根川氾濫」のニュースは、同意に「奇異感の氾濫」でもある.これも群馬県内の利根川関連のニュースは群馬音韻にしてほしいものだ.ちなみに県庁32階の展望台へのエレベータの中では、眼下に臨む利根川の解説があるが、見事に東京音韻!県庁よ、まず自らの襟を正せ!

これらの理解を深めるために、
地元局での東京音韻撲滅と正しい群馬音韻の継承をめざして
新しいページを作りました.ぜひこちらをご覧下さい.


「半袖」

 東毛地区では「んそで(●○○○)」のように前にアクセントが置かれるが、共通語ではほぼ平板アクセント(○●●●)である.
私の知り合いはこれで、「東京人」と偽っていたメッキがはげたそうです.(実話)

「おおい」(多い)

共通語では、どちらかといえば「ーい(●○○、○●○」にアクセントが置かれるが、群馬弁では、「い」にアクセントが置かれ「ぉーいぃ(○●●○)」という感じで発音されることが多い.他に「とぉぃ」(遠い)など

「中学校」

 共通語は「平板アクセント(○●●○○○)」だが、群馬県人は「ちゅーぅがっこう(●○○○○○)」のように前に強いアクセントを置く時がある.同時に共通語では、鼻濁音の「カ゜」、群馬弁は破裂音の「ガ」であることは上に述べた通り.小学校」はあまり変わらないのに・・・・

 ついでに学年の呼称に触れると、群馬では、1年「いちねん○●●●」2年「にねん○●●」6年「ろくねん○●●●」のようにほぼ平板アクセントが用いられる.東京方面では、「いちねん○●○○」「にねん●○○」「ろくねん○●○○」のようにアクセントが異なる.しかし 3、4、5年はほぼ同じ.群馬県人であることを隠すには、「2年生」などと「生」をつければ、共通語と同じになるよ.

「5番」、「2回」

 共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、群馬県人の多くは「ばん(●○○)」と発音する.東京の会社に就職した際には、「△▽さん!ごばんにお電話です!」という時には、細心の注意を払おう!似たような例としては、「2回」、共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、群馬県人の多くは「かい(●○○)」と発音する.東京人は、「1回、2回・・・」と「1階、2階・・」の発音は違うが、群馬県人は同じなのです.

「花瓶」

 共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、群馬県人の多くは「びん(●○○)」のように、前に強いアクセントを置く.このことは群馬県人の殆どが、共通語と違うということに気づいていない.しかし「過敏」はほとんど同じイントネーションである.すなわち群馬県人は「花瓶」と「過敏」の発音が全然違うのだ!しかもこれは東京に住んだとき直そうとしてもなかなか直せないらしい.

「イチゴ」

 これも顕著である.共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、上と同様、群馬県人の多くは「ちご(●○○)」のように、前に強いアクセントを置く.このことは群馬県人の殆どが共通語と違うということに気づいていない. しかも東京に住んだとき直そうとしてもなかなか直せないらしい.
夏の暑い日、東武動物公園に行った際、カキ氷を頼んでいた少女が、「あたし、ちご!」と頼んでいた.きっと彼女は群馬からきたのだろう・・・

 2006年1月某日、某スーパーの果物コーナーで、店員さんの録音した宣伝がラジカセで流れていた.聞けばしっかり群馬発音!やっぱ、群馬はこーでなくっちゃ!ぜひこちらを!

「革靴」

 共通語では「平板アクセント(○●●●)」だが、群馬県人の多くは「かぐつ(○●○○)」のように、「わ」に強いアクセントを置く.かかとを踏んでいても、更に「ふんずぶるなよ!」なんて注意すると更に群馬県人とわかってしまう.

「あくび(欠伸)」

 共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、上と同様、群馬県人の多くは「くび(●○○)」のように、前に強いアクセントを置く.このことは群馬県人の殆どが、共通語と違うということに気づいていない.「おくびにもださない」の「おくび(○●●)」は共通語と同じであるのは、なんとも不思議.授業や講演がつまらなくて「あーあ、眠くてあくびがでちゃうよ!」という時に群馬県人かどうかわかってしまうので、発言にはくれぐれも注意しよう!

「電車」

 共通語では「平板アクセント(○●●)」だが、上と同様、群馬県人の多くは「んしゃ(●○○)」のように、前に強いアクセントを置く.このことは群馬県人の殆どが、共通語と違うということに気づいていない.それ以上に「汽車で行ぐ?」なんて言ってしまうと東京の人は唖然としてしまう.

「あんこ(アンコ)」

 共通語では「んこ(●○○)」と前にアクセントがおかれるが、群馬県人は「あんこ」と平板アクセント(○●●)か、むしろ「こ」(○○●)が強い.他のものとアクセントが逆で、群馬弁のマスターに、「甘さ」を感じさせない単語ともいえる.

「よそ」

 共通語では「そ(●○)」と前にアクセントがおかれるが、群馬県人は「よ(○●)」と「そ」が強い.特に、「よそんち(よその家)」と言わせてみれば、「よそ者」かどうかが歴然.

「つつじ」

 共通語では「つつじ」(●○○)ないしは、(○●○)だが、群馬県人は「つつじ(○●●)」である.館林の「つつじヶ岡公園」の「つつじ満開」のニュースがNHKで放映されるたび、何ともいえない不快な感じが満開になってしまうのは私だけ?それとも、つつじが岡公園には、群馬県人の知らないNHKだけが知っている新種の「つつじ」が咲いているのかもしれない.

「けんちょう(県庁)」

 共通語では「んちょう(●○○○○)」と前にアクセントがおかれるが、群馬県人は、「県庁」を単独で言う場合は「(○●●●●)」と平板アクセント.「群馬県庁」、「埼玉県庁」という場合は変わらないのが不思議.昔は、駐車場停めづらかったから、行く気もなくて「平板」になっちゃったのかな?今は群馬の摩天楼だよ!見学もできるしね.でもあれが見える範囲が群馬県だと思ったら大間違いですぞ!

数の数え方:「11から20」

 群馬では「1から10まで」の数え方は、あまり共通語とはかわりないが、「11から20」の数え方は、念仏講のような独特の「節回し」があるようです.まずは上の音声ファイルをお聴き願いましょう.徐々に「15」までは音程が下がっていきますよね.「もみ手の手拍子」が妙にマッチするから不思議.お孫さんとお風呂に入っているご年輩の方、あるいは運動会の「玉入れ」で数を数える人が年輩だったりすると顕著に出現しているように思います.


「前橋」をはじめ、このページの内容に、多大な貴重なるご助言をいただいたseriさんに、改めて厚く御礼申し上げます.

Y先生(埼玉県出身)、I先生(宮崎県出身)、T先生(大分県出身)、K先生(東京都出身)、A先生(千葉県出身)、ご指摘・ご意見ありがとうございました.

群馬のイントネーションや音韻の違いについて情報をお持ちの方、ぜひ教えて下さい.