- Chapter 3 -The New Star !

期待の新星誕生
 

▲AO-40のロゴ (C)AMSAT

 2000年11月16日、ちょうどFM衛星に挑戦を決意していたころ、全世界待望のフェーズ3衛星がフランス領ギアナから打ち上げられ、AO-40と名づけられました.すぐに145.899MHzで強力なミドルビーコンが発せられたと聞きました.しかし私は当時、144MHzSSBを受信できる設備がありませんでした.12月になり、(当時は短大で教鞭を取っていたのですが、)なぜか12月は講義時間が多くて、文字通り「師走」.その準備に追われていました.またFM衛星に挑戦したり、6mでC21JHのDX-Peditionを追いかけていたりと、なかなかAO-40のビーコンを受信する準備ができませんでした.

 そうこうしているうちに年があけ、翌2001年1月2日、軌道を修正しようとガス噴射をしたAO-40は突如、2m送信機故障でミドルビーコンが消失してしまったのです.爆発か?世界中の衛星愛好家がまさに天を仰ぎました.しかし関係者の尽力で、2.4GHzのS2送信機によるビーコンのみ復活したのです.とりあえず衛星は死ななかったものの、私にとって2.4GHzという未知の周波数に挑戦を余儀なくされたのです.

144/430MHzの簡易な設備でAO-40にアクセスできたらと考えていた私は大いに計算が狂いました.AO-40で、全世界と交信し、できればサテライトVUCCやサテライトDXCCもゲットしたしな・・・と思っていのに・・・確かに静止衛星JCSATでは、Ku帯(11GHz)を使っていましたが、回線設計はできていたのでスイッチをON/OFFするだけでした.これまでにもサイクル23を迎える太陽活動ボトムの時期に、1.2GHzも一時やったことがありましたが、「苦労の割に飛ばないバンド」という印象が強かったと思います.その倍の2.4GHzはいったいどんなバンドなんだ??電子レンジの周波数ではないか?(笑)しかしAO-40をはじめサテライトを、サイクル24までのサイクルボトムの楽しみにすると決めた今、何が何でも挑戦しなくては・・・

 送信には、430MHzが使えるらしいので、なにはともあれ2.4GHzを受信する設備をなんとかしなくてはいけません.まずとりあえずドレークの中古の2.4GHzコンバータを手に入れようと考えました.これは2400MHz(=2.4GHz)を144MHzに変換してくれるのですが、改造する暇もウデもないので、ミリコム社製のMC-251Rを秋葉原のニッシンで買いました.これは電源をケーブルに重畳するタイプだったので、ならばアイコム製のリグがないかとYahoo!オークションをあさり、IC-820Mの中古を手に入れました.

S1送信機、死す!

 次はアンテナをなんとかしなくてはいけません.このころにはS2送信機による試験運用が開始されていましたが、最初はマキ電機の29elループで大丈夫だと思っていたのですが、衛星からの電波が思いのほか弱いので、29elでは受信が今ひとつとの話でした.結局、アンテナは何にするか迷ったものの、長いは短いのをかねるということで、7月にマキ電機さんがキャンペーン特価をやっていたこともあり、57elループを買うことにしました.アンテナが届いた数日後の8月3日には、パラボラアンテナに接続されているというS1送信機のテストが始まり、皮肉にも(笑)29elでも強力なビーコンが受信できたそうです.それならば、57elの半分でも聞けるはずだ!と考えた私は仕事が早く終わった8月13日、ビーコンを受信すべく、リグ+57elの半分アンテナ+コンバータを2階にセットしました.AO-40は20時過ぎにウィンドウがあるようです.

 待っていると夕方、突然家の電話が鳴りました.電話は埼玉に住む弟からで、今お盆休みで実家に帰ってきているとのこと.AO-40に後ろ髪はひかれたものの、「衛星は毎日来るじゃねーか」と弟との再会を優先し、久しぶりに実家にもどり、AO-40のことも忘れてすっかり一晩酒を酌み交わしてしまいました.

 次の日の朝、衛星関連のウェブサイトを見ると、どこもかしこもS1送信機の突然送信停止のニュースが巡っています.なんという不運!なんという巡りあわせ!結局私は強かったというS1送信機の信号を聞くことはできなかったばかりか、自分の「運のなさ」にとことん愛想が尽き、しばらくの間はAO-40に対する気力も失せてしまいました.

BBQアンテナ?


 秋になりました.あいかわらずFM衛星で遊んでいましたが、AO-40への挑戦の種火はくすぶったままです.幸か不幸かS1送信機は失われましたが、S2送信機は生きています.しかしやはりS2では、あまり信号は強くは入ってこないようです.しかし57elはブーム長が2.5mあり、ベランダからQRVをもくろんでいた私には少し長すぎます.


 ある日、JAMSAT-BBにJF6BCC今石さんが、アメリカで流行っているというバーベキューグリルタイプ(以下BBQ)HG-2424Gのパラボラの記事を紹介されていました.大きさを調べると1m程度で、重さもあまりなく、これはベランダに置くにはちょうどよいのではないか?と思いました.さりとて国内ではこのアンテナを販売している会社はなく、手に入れるとしたら輸入するか、米国までいって調達するしかありません.しかもこのBBQアンテナ、どことなく私が幼少のころ憧れた「ウルトラ警備隊」の基地に設置されていたあのアンテナようです.ちょうど6mの知り合いのGMGエンタープライズ社に、輸入の可否を相談したところ、数がまとまれば安く輸入できるとのこと.7L1FPU中田さんの掲示板で呼びかけ、結果30名近くの応募があり、無事BBQを輸入できました.結果として私が音頭を取った形になってしまいました.


▲HG-2424G
(通称BBQグリルアンテナ)

幅は約1m(水平偏波)
庭においてあるだけでも、
かなり「アヤシイ」(笑)
家についたBBQアンテナをさっそく組み立ててみました.
上州名物空っ風にあおられて、ベランダから落下しても困るので、結局、庭の地面の上に置くことにしました.メンテナンスも、仰角あわせも(仰角ローテータ持ってませんし)、衛星が見える位置に、持っていくことでもできたり、自由度が高いでしょう.

いよいよ我が家の庭も「警備隊基地」に変身?

2002年新春、6mでやっと念願の100エンティティをWkdし、一区切りがつきました.衛星に傾注する舞台は整ったのです.でも冬を迎えてすっかり寒くなってしまい、庭で運用するのがキツくなってきました.


▲100円ショップ「ダイソー」で売っている傾斜計.なぜか近所の「ダイソー」では売ってなく、巡り歩くこと4軒目の佐波郡赤堀町の「ダイソー」でやっと発見.(どこでもおいてあるわけではなさそう.)ちなみに方位をみているコンパスも「ダイソー」製(笑).
 AO-40の姿勢も悪くなり、春まで交信はおあずけかな?と思っていた矢先、JF6BCC今石さんがグアムよりKH2GRでQRVするとの情報がありました.FM衛星ではなんとかQSOできました.「そうだ、AO-40の受信の絶好のチャンスではないか!?」、今石さんがAO-40に集中的にQRVするという2002年1月14日10時ころ、100円ショップで購入した(笑)傾斜計とコンパスで、HG-2424GをAO-40がいるであろう位置に合わせました.IC-820とMC-821Rをセットし、バンドを聞いてみると、2401.205MHz付近でミドルビーコンが強力に聞こえます!! おーっ!これか!あー周波数が動く動く!さすがは高い周波数!ビーコン自体は単調な音なのですが、久しぶりに感動しました.その約20KHz上を聞いてみると、KH2GRがSSBでもCWでも聞こえます!すごいっ!
 しかし私はここで大変なことに気づきました.まさか最初の挑戦でビーコン他が受信できると思ってなかったので、アップリンクのやり方を十分に調べてませんでした.もちろん430MHzのアンテナも準備してません.結局アップリンクは断念し、ビーコンとKH2GRに聞きほれました.こうして、2.4GHzビーコン受信は一応成功しました.しかしMC-251R単体では受信能力不足も感じました.けれどまたAO-40へ確実に一歩近づきました.




新たな世界へ

 今石さんが、帰国してe-mailで2.4GでのKH2GRの受信の報告をしました.その際に、MC-251Rでは受信性能が今ひとつであること、IC-820のパワースイッチの下のTRANSMITボタンを慌てて押さないか心配であることを伝えると、今石さんが提唱したドレークコンバータの水晶を変更し、受信周波数を送信できない143MHz台に変換する改造を行ってもらえることになりました.これならば誤ってIC-820を送信状態にしても、オフバンドになるので送信されず、MC-251Rが燃えることはありません.今石さん、TNX!.しかし、試して見ようにも、冬の間はAO-40の姿勢が定まらず地球に向いてくれません.しかも、冬から春先は群馬では空っ風シーズンで、かつ私を悩ませる花粉症の季節.外での作業はツライものがあります.2.4Gへの挑戦の気力は減衰の一途.しかもRS-13がModeTになって、ROBOTに挑戦したりと、また別のことに挑戦してしまいました.

 無事、RS-13でROBOTとのQSOにも成功し、CW/SSBでの衛星通信の面白さもわかるようになりました.しかし私はFO衛星には、当時良い印象をもっていなかったので、次なる目標はやはりAO-40ということになるでしょう.そんな矢先、今石さんが、ゴールデンウィークに小笠原父島へサテライトDXペディションに行かれるというニュースが伝わりました.「これは、今までの恩義に報いるためにも、JF6BCC/JD1とAO-40で交信しなくては!」と思いました.目標が決まれば、それに向かって邁進するのみです.

 しかしこともあろうか!一番良好なウィンドウは、よりによって当直勤務の日!これは職場で聞くしかないだろう.しかしまさかHG2424を持っていくのは・・・・ HG-2424Gを買って、お蔵入りになっていたマキの57エレループを引っ張り出してきて、半分の28エレ分を釣り竿ケースの中にいれて、目立たないように(十分目立っていたが(笑))職場にもってきました.職場のホールにあった、マイクスタンドを借りてきて、アンテナをつけてみました.ちょうど、アンテナのブームの太さが、マイクの径と同じくらいで、マイクホルダにぴったりとはまります.(左図)職場の同僚いわく「スターウォーズに出てくるビーム砲みたいだな」だそうです(笑)面倒な工具を使わないで、仰角も手軽に変えられるのが最大の特徴です.我ながら良いアイデアが浮かんだものです.名づけてBravo!PortableMicstand! (今後、このスタイルをBPMスペシャルと名づけることにします.)


Bravo!PortableMicstand! 
BPMスペシャル
▲面倒な工具を使うことなく、 仰角を手軽に変えることができるのが特徴.
重心が低く、運搬も楽.でも強風時には不安・・
マイクスタンドはヤフーオークションでも送料込で4k弱で売ってます.


 2002年5月2日深夜AO-40は夜中に東の空に上ってきました.懐中電灯を頼りに屋上で、BPMスペシャルを設置し、IC-820の143MHz台でビーコンを聞いてみます.だんだんあの特徴あるミドルビーコンが聞こえてきます.しかもビーコンの20KHz上で、ついにJF6BCC/JD1を捕まえました!よっしゃぁ!聞こえる!呼ぶぞ!

 uplinkはFT-790R+リニア(30W)とマスプロWH59(2m/430MHz共用を水平に設置)です.よし!ダウンリンクはこの辺かな!CWでループテスト・・・あれ、これかな?これか?ん、どうしてオレのコールサインを打つCWが3つも4つも聞こえるんだ?しかもAO-40は、長楕円軌道で、衛星が遠くにあるときは、自分の送信符号がコンマ数秒遅れるって聞いたことがあるけど、これ全然遅延がないぞ・・・ ご本尊はどこだ? ここか? あー、ちがうな・・・ いったいどうしたらuplinkできるんだ・・!!??私はJF6BCC/JD1をみつけてから40分位、あれこれ真剣に悩んでいました.計算式でこの辺かな?とDownlinkを想像してみたり・・・・ その間にJF6BCC/JD1はSSB,CWでテキパキと交信をされているのが聞こえます.


▲JF6BCC/JD1のQSLカード

 と、そのとき、自分の打ったCWが遅延してdownlinkしてくるのを偶然に発見しました.「ご本尊はこれか!!」JF6BCC/JD1の運用している周波数にはこうあわせてっと、あー微妙に違う.合わない.あーLEILAに怒られた・・・・リニアを切って・・今度は届かなくなったぞ!・・・そうこうしているうちに、SSBでCQを出していた今石さんが、上下でうろうろしている、JF6BCC/JD1をCWでコールする私に気づいてくれたようです.興奮と、ヘッドフォンから聞こえる遅延してくるCWで、頭がめちゃくちゃ混乱してしまいました.0258JST、ついに559/559で交信成立!!ついにAO-40での初交信に成功!それからどっと疲れが襲ってきました.仮眠を取ったあと、朝日に輝くBPMスペシャルを撤収しました.その日は一日中眠かったけど、かなりの充実感がありました.


▲あとでCALSAT32で計算させた交信時のAO-40の位置(楕円上軌道の緑点).地球とは約54500km離れていた.
 記念すべきAO-40での交信はそれは上のように紆余曲折でした.私の電波は片道54500kmの旅をして、AO-40から今度は小笠原まで届いたのです.感動しました!(143MHz台で何波も聞こえた「分身」はおそらく共用アンテナを使用しているので、2m分のアンテナからのスプリアスだったのでしょう.次の交信時に、デュプレククサを挿入し、シングルバンド八木に変えたらでなくなりました.(笑))

 ダウンリンクを探すには、G6LVBが作ったすばらしいツールがあります.(ここをご覧下さい) 私のような失敗をしないためにも、周波数早見表を配備しておくのがよいでしょう.またJF6BCC今石さんの小笠原運用記は、ここの中にあります.楽しいです!

 その後、家の庭にあるBBQで、AO-40に挑戦してみました.職場においてある28エレループより、ミドルビーコンは強力に受信できます.28エレループでは、CWは大丈夫ですが、SSBでは自分の返り信号は良く聞こえません.でもBBQはCWの交信はもちろん、SSBでも返り信号が明瞭に聞こえます.SSBに挑戦してみましたが、無事交信できました.BBQはアメリカでも愛好者の多いアンテナと聞いていますが、大きさ・価格も手頃で、高性能、AO-40へのQRVを考えている方にはオススメです.職場のアンテナもBBQに換えてしまおうかな??(笑)


▲自宅(新田郡;当時)でのAO-40用アンテナ

Uplink(430MHz):ダイヤモンドの10エレ八木
赤い三脚はホームセンターで購入した「投光器」のものを流用
Downlink(2.4GHz):HG-2424G(通称BBQグリルアンテナ)
地面の上に置いてあります.
こんな屋根より低いアンテナでも衛星通信はできます!

2002年11月3日追記


 なにはともあれ、AO-40での初交信が成功しました.
これからこの「星」を通じて、いくつ新たな出会いがあるでしょうか?

【註】AO-40は、残念ながら2004年1月24日未明、
原因不明の事故により機能停止してしまいました・・・・


今後の奮闘第4章 逍遥で随時ご紹介します!

第4章 逍遥 へ