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第18節〜第34節

3から2








■ 2019年7月27日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第18節

ザスパクサツ群馬 5−1 セレッソ大阪U−23

正田醤油スタジアム群馬 2893人

未来をこじ開ける日

 ザスパサポーターが毎年心待ちにしている冠マッチがある。その名も「高山眼科スペシャルマッチ」。院長高山秀男氏による、とにかく熱い激励の挨拶は、平ちゃんことサッカー好き芸人の平畠啓史氏曰く、「もはやひとつの芸の域に達している」とのこと。しかし、その待ち遠しい冠マッチが、今年はよりによって前日に台風が発生し、直前まで開催自体が危ぶまれる事態になっていた。当日、朝方は雨模様だったものの、幸い徐々に回復して青空も見え隠れするようになった。この日上毛新聞敷島球場では、夏の高校野球群馬県予選の決勝が行われ、前橋育英が前橋商を3-0で破って、4年連続で甲子園行きの切符を手に入れた。
 キックオフは19時だが、この日は様々なイベントが用意されていることもあり、普段よりサポーターの出足も早い。正田醤油スタジアム群馬の正面入口前に用意されたステージには、平ちゃん、NHK前橋放送局の安川アナを司会に、高山院長、Mottoザスパクサツ群馬広め隊OG、LACCOTOWERの塩崎さん、真一ジェットさん、ザスパ草津チャレンジャーズの面々などが登壇し、ザスパ愛を語り、パフォーマンスを繰り広げた。そして、昨シーズンをもって引退し、ザスパのスタッフとなった小林竜樹、川岸祐輔の両名が登壇、現在の心境などを語った。サプライズゲストとして、両名の奥さんとお子さんが花束を手に現れると、その後ろに見慣れた坊主頭が。なんとこの日栃木シティFCの選手として、試合を終えた松下裕樹が駆けつけ、新たな人生のスタートを切った二人にエールを送った。専用ブースには、二人の雄姿や現役時代のユニフォームが飾られ、VTRでは江坂任、吉濱遼平、坪内秀介など、かつて共に戦った選手、OBからもメッセージが届いていた。笑いや歓声の上がったトークショーに続いて、ステージではLACCOTOWERのスペシャルライブが始まる。単なるタイアップではなく、メンバーがプライベートでもスタジアムに足を運ぶLACCOTOWERは、サポーターにとってこの2年間苦楽を共にしてきた戦友。ボーカルのケイスケさんの掛け声に呼応して手を振り上げ、スタジアムに向かってエールを送る。バンドとオーディエンスが一体となった「火花」、「雨後晴」、そして「夜明前」。最高のライブでサポーターの気分を盛り上げ、その熱をピッチへと繋げた。
 太陽が沈んでも気温はそれほど下がらず、台風の影響か、湿気を含んだ風が少し吹いている。今日からJ3も後半戦。2周目最初の対戦相手は、セレッソ大阪U-23。前回アウェイでは、今シーズンこれまでで最も悔しかった、2-0からの逆転負けを喫している。しかし、あの試合を糧に成長したザスパは、リベンジに燃えている。試合開始に先立ち、高山院長が昨年と寸分違わぬフォームから熱いエールを送り、スタンドはさらにヒートアップ。ライブでウォーミングアップを済ませた喉を開き、アンセムを歌う。ザスパのスタメンは、GK吉田舜、DF吉田将也、舩津徹也、渡辺広大、光永祐也。ボランチに佐藤祥、金城ジャスティン俊樹、右に青木翔大、左に田中稔也。トップに高澤優也が入り、トップ下には岡田翔平が入った。ベンチにはキム・チョルホ、福田俊介、窪田良、坂井大将、中村駿太、岩田拓也。そして先日京都から期限付きの加入が発表された、磐瀬剛が入った。先日のケガの影響か、加藤潤也がいない。一抹の不安がよぎったが、今はこの目の前の選手たちを全力で後押しするのが、サポーターの役目。キックオフに合わせて手を上げ、声を出す。
 序盤から出足の良いザスパ。C大阪の淡白な攻撃からボールを奪うと、両サイドに展開し、チャンスを窺う。しかし、加藤潤也不在の影響か、攻守の切替でスムーズさを欠き、決定機を作れない。それでもザスパペースで試合を進め、迎えた16分、自陣センターサークル付近で岡田がボールを奪うと、左サイドの田中に預ける。ドリブルで持ち上がり、バイタルエリアまで上がった岡田に戻す。一瞬顔を上げて周囲の状況を確認すると、迷わず振り抜いた右足から放たれたボールは、きれいな弧を描き、GKの頭上を越えてクロスバーに当たり、そのままゴールラインを越えて落ちた。GOOOOOAL!!! ゴールを決めた岡田を始め、ザスパの選手がメインスタンド側のタッチライン付近に並び、ゆりかごダンスを披露した。赤ちゃんが生まれたばかりの久木田紳吾に向けての祝福だった。その後も攻め続けるザスパ。しかし、左サイドの崩しから上がったクロスをフリーでヘディングした高澤が枠を外すなど、決定機を決められず、なかなか追加点を奪えない。時折パラパラと落ちていた雨粒が、まとまって降ってきた。しかし、熱せられたスタンドの空気は冷めない。そして、その熱に応えるかのように、ピッチ上でもゴールラッシュが始まった。37分、右サイドで奪ったボールを、ジャスティンが右足で巻くようにロングフィード、相手DFの裏を取った高澤が、ドリブルでゴールに突進する。PA内に入ったところで放ったシュートは、相手GKの左足に当たり、一度は防がれるが、こぼれたボールに反応したのは、またしても岡田。バウンドを合わせて蹴り込んだ技ありゴール。GOOOOOAL!!! 士気の上がらないC大阪の選手を尻目に、仕切り直しのキックオフのボールを即座に奪い、今度は左サイドから光永がクロスを送る。ゴール前で受けた青木翔大は、体勢を整えて左足を振り抜き、GOOOOOAL!!! 3点目を奪った。さらに5分後、左で作ったボールを田中が右に展開、待ち受ける吉田将也がクロスを入れ、逆サイドの高澤がダイレクトで折り返す。中央にいた青木翔大が押し込んでGOOOOOAL!!! 4点目。そして仕上げはアディショナルタイムのCK。ジャスティンがゴール正面に落とし、DFを釣った高澤の後ろからヘディングでゴールGOOOOOAL!!! 奪ったのは、渡辺広大。ザスパ移籍後初ゴールは、この日300試合出場のセレモニーで来場した家族にも届ける、メモリアルゴールとなった。
 今シーズン2回目の5得点。前半でC大阪U-23を圧倒したザスパだったが、前回対戦の苦い記憶は点差が離れても頭から消えていない。後半キックオフと同時に、さらに得点を奪いに行く。しかし、ゴールを奪えないでいると、個々のスキルが高いC大阪の選手が牙をむく。68分、ザスパは岡田から窪田に選手交代、その再開の一瞬の隙をつき、ボールをきれいにつないだC大阪、最後は安藤が決めて1点を返す。一瞬嫌な空気が流れるが、これまで苦しんできた経験が、ザスパを慌てさせない。直後に佐藤に替わって、加入したばかりの磐瀬を投入、中盤の運動量を回復させると、79分、カウンターから高澤が左に流し、光永がPAに侵入しシュート、DFが弾いたボールがゴール前に転がり、詰めた窪田がシュートを放つがこれもブロックされ、最後は吉田将也が三度ゴールを狙うが、これもGKに防がれる。85分には、ケガから復帰した岩田が昨年以来の敷島のピッチに立つ。持ち前のドリブルで切れ込み、チャンスを演出するが、ゴールまでは至らない。結局そのまま5−1で試合終了。後半はゴールを奪えなかったが、前回不覚を取った相手にリベンジを果たした。
 今節熊本が敗れたことで、J3の首位は藤枝になり、ザスパとの勝ち点差は5。その中に5チームがひしめく混戦となっている。ここを抜け出し、昇格圏内を確保するには、勝ち点を取りこぼさず、積み上げていくしかない。折り返しを勝利で飾ったザスパは、様々な後押しを力にして、頂上を目指す戦いを続ける。【yosuie@中毛】



■ 2019年8月4日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第19節

ザスパクサツ群馬 3−2 Y.S.C.C.横浜

正田醤油スタジアム群馬 3323人

Be Cool !

 梅雨が明けて、連日の猛暑日続き。そして北関東は灼熱地獄。7月が涼しかっただけに、この暑さが例年になく堪えらぃなぁ。前節C大阪U-23に大勝し、好調でホーム連戦。今日の相手は最下位に沈むYS横浜。ここは順当に勝ち点3を奪いてぇところさね。とはいえ油断は禁物だし、何よりこの猛暑で、勝負の後半に体力が残ってるかどうかもキモだんべ。群馬の暑さははぁ災害レベルだしなぁ。
 群大の駐車場に車を停めて、もわっとした外気にやられながら歩って、正田スタに到着。いやぁまっさか暑っちぃ。ゴール裏の打ちっぱなしのコンクリートがなっから熱くって、そのまま座ってっとケツが低温火傷しちゃうんじゃねーかっつー熱さ。自販機で買ったペットボトルをコンクリの上に置いとくとすぐにぬるまったくなっちゃうで。今日はこの暑さとの戦いも課せられらぃなぁ。うちわのサービスがまぁずうれしぃやぃ。一雨来てまっと涼しくなってくんねぇかと期待した夕立も、今日は全く気配はねぇし。
 今日の先発はGK23吉田、DF19吉田・2舩津・32渡辺・24光永、MF6佐藤・15金城・14田中、FW9岡田・10青木翔・17高澤、サブはGK21キム、DF28福田・22飯野・35磐瀬、期限付き移籍で先日甲府より加入したMF41後藤、FW18中村、そしてケガは大丈夫なんきゃ?FW7加藤。後藤は昨季までYS横浜に所属してたんで、古巣との対戦なるか?
 風はほとんどなく蒸し風呂状態。群馬ダイハツスペシャルマッチ、この暑さじゃマスコットキャラのカクシカの中の人が不憫でなんねぇよ。夕暮れの中、キックオフ。ともに4バック、ザスパはこのところの鉄板の4-2-3-1の模様。ザスパの攻勢で試合が進む。前半15分、田中のスルーパスに岡田が裏に抜け、1対1の局面となるが、相手GKに阻まれ先制のチャンスを逸す。しかし前半20分、右CKのチャンス。キッカーはジャスティン。ニアに走り込んだ舩津がニアで絶妙に合わせて、相手GKの弾いたボールは内側からサイドネットを揺らした。GOOOOOAL!!! ザスパ先制!この後も吉田のシュートは枠を捕らえられず得点ならず。25分に主審がゲームを止めて、両軍に給水タイム。オレたちもここで給水だ。それにしても暑っちぃやぃなぁ。その後も田中や高澤にシュートチャンスが訪れるも、これらをことごとく外して追加点ならず。こうゆう展開は嫌なんだぃなぁと思ってたら、前半39分、横浜にぽーんと縦バス一本を通され、裏に抜けた浅川に冷静にループシュートを見舞われ、同点に。圧倒的に前半押しまくってたんに、この展開ですよ。前半終了、1-1。
 後半開始、両チームともに交代はなし。なんとか流れを変えて、追加点を奪いてぇところ。後半8分、岡田がドリブルで一気に上がり、シュート!ボールはGKの手を超え、GOOOOOAL!!! よっしゃ!勝ち越し!これで勝てっか!と思ったのも束の間、横浜の河野に左前から敵ながら天晴の見事な思いっ切りのいぃミドルシュートを見舞われ、あっという間に同点、振り出しに。敷島に漂う嫌ーな雰囲気。しかしその雰囲気を打ち払うように、後半14分田中の左からのクロスを高澤が頭で合わせGOOOOOAL!!! これで三度リードを奪う。しかしさっきのミドルシュートのようなことがあっから油断はなんねぇしな。 田中に替えて、待ってました!加藤、ジャスティンに替えて磐瀬。暑さの中、運動量豊富な加藤で前を活性化させ、磐瀬で後ろの守りも厚くしたってことだんべ。相手の横浜も2枚替え。雨の気配は全くなく、蒸し風呂の消耗戦を呈する。後半25分でまたも給水タイム。その直後、岡田がタックルでピッチに倒れ込み、試合が止まる。一度は立ち上がった岡田だったけんど、数分後再びピッチに座り込み続行不可能で無念の交代。大丈夫か?岡田。岡田に替えて、飯野を投入。その後、吉田のクロスに高澤のヘッドは枠内に飛ばず、その後、左に侵入した加藤からのパスを受けた高澤、流し込むだけだったんだけんど、体力を消耗してたんだか、まさかのミスで外に流れちまい、トドメを刺すことができねぇし。いやぁなんともやるせねぇ展開。いつまたあっけなく同点にされたらどうすんべ、とハラハラドキドキが続く。アディショナルタイムは岡田の病んだ時間もあって5分。胃の痛くなるようなその長ぇ時間をなんとか凌いで、3-2の勝利。いやぁ疲れたぃ。
 いくつもあった決定機を冷静に決め切ってれば、まっと簡単な試合のはずだったんになぁ。暑さでおーか消耗してたんだんべけんど、高澤にはもうちっと奮起を期待するで。一時の低迷から、これで3位に浮上、昇格圏の2位までわずかに勝ち点2差。先制ゴールの舩津はゴール裏サポータの前で「優勝を狙ってる!」と宣言し、やんやの喝采を浴びた。残りは15試合、まだまだ気は抜けねぇで。さぁJ2に帰ぇるんべぇ。【すずき@東毛】



■ 2019年8月10日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第20節

カマタマーレ讃岐 0−1 ザスパクサツ群馬

Pikaraスタジアム 1698人

J2昇格圏2位浮上!


 ザスパが1点を守り切った。序盤からボールを保持し、押し気味に試合を進めた。前半終了間際、MF金城のクロスにFW高沢が頭で飛び込んで先制。そのまま折り返した。
 後半は讃岐の猛攻を受けた。ゴールポストに当たるシュートを2度打たれたが、ゴールは割らせず、組織的な守備で無失点に抑えた。(8月11日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年8月31日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第21節

ザスパクサツ群馬 3−2 AC長野パルセイロ

正田醤油スタジアム群馬 5467人

未来へのカウント

 逆転勝利のスイッチは、大粒の雨だった。
 約3週間の中断期間を経て再開された、J3リーグ。讃岐を1-0で下し、2位に浮上したザスパは、新たに田村友、榎本樹という2選手を加え、残りの試合でJ2昇格と優勝を目指す。8月最後の土曜日、群馬マスコミ3社『躍動』応援マッチと題し、上毛新聞社、群馬テレビ、エフエム群馬の3媒体のバックアップを得た試合が開催された。同時に、みどり市民デーということで、みどり市のPRブースやマスコットのみどモスも来場、今シーズン一番の人出となった。
 所用で太田から向かうことになり、敷島周辺に着いたのは、キックオフの直前。いつもの河川敷駐車場の入口に向かうと、警備員から満車の返答が。別の駐車場に何とか停められ、スタジアムに入れたのは、7分過ぎだった。メインスタンドはホーム側が端まで埋まり、ゴール裏のスタンドも隙間がほとんどない状態。好調なチーム事情と各社の協力によって、素晴らしい舞台が整っていた。相手は隣県のAC長野パルセイロ。一時は最下位に沈んていたものの、直近ではザスパと同じく3連勝を飾っている。多くのサポーターが反対側のゴール裏に陣取り、スタンドはオレンジ色に染まっている。ザスパは途中加入の後藤京介が初スタメン、ベンチには田村も入っている。空いている席を見つけ、チャントに声を合わせた時には、一進一退の攻防が繰り広げられていた。後藤が入ったことで、これまでと攻撃のリズムが変わっている。それが良い面にも悪い面にも表れているようだった。長野も補強選手を加え、アウェイで対戦した時とは違うチームになっている。中盤での主導権争いが激しい中、15分に右サイドの吉田将也がパス交換から突破し、チャンスを迎えるが、シュートは左に逸れる。27分、今度は内側に切れ込んだ吉田が右足で前線に浮かすと、高澤優也がフリーでヘディングシュートを放つが、これは相手GKがファインセーブを見せた。いくつかチャンスは作ったが、攻めあぐねる雰囲気ができつつあった前半アディショナルタイムに、先制点は生まれた。右サイド、吉田が高澤のポストからまたも中央に切れ込んで、左で待つ加藤潤也にスルー、飛び出したGKをあざ笑うかのように左足で浮かせたシュートは、ゴールに吸い込まれた。GOOOOOAL!!! 前半のうちに均衡を破ったザスパ。
 しかし、後半も両チームのせめぎ合いが続く。66分、ザスパは左SHの田中稔也に代わって磐瀬剛を投入、守備力アップを図る。しかし、右サイドのクロスのこぼれ球を、逆サイドPA外から矢のようなシュートで決められ、同点に追いつかれてしまう。この日、藤枝MYFCがドローに終わり、勝てば首位に立てるザスパ、77分に後藤に代え、田村を投入、3バックに移行する。しかし、落とし穴が待っていた。80分、クリアボールに途中出場の長野FW津田が反応し、渡辺広大と競ると見せかけ、そのまま裏に走る。不意を突かれた広大はボールに触れられず、そのまま入れ替わった津田がGK吉田舜と1対1に。飛び出した吉田が津田を左サイドに追い詰めるが、折り返したボールを中で待っていた選手に決められ、逆転を許してしまう。広大が不用意だったかもしれないが、ベテラン津田のFWとしての経験が生きたプレーだった。一転して勝ち点0の可能性が大きくなったザスパ、残り10分弱で試合をひっくり返さなければならない。ゴール裏のサポーターも一時は静かになったが、チームを、選手を信じて声を枯らす。しかし、時間はどんどん残り少なくなっていく。88分、青木翔大に代えて飯野七聖を投入、ロングスローをゴール前に入れるが、長野DFがヘディングでコート外に逃れる。
 ポツポツと落ちていた大粒の雨が、本格的に降り始めた。スタジアムの照明に照らされて、カーテンのように揺れている。これが、逆転勝利の幕開けだった。
 ゴール裏からは、眼前の選手の背中を後押しするべく、「ク・サ・ツ!ク・サ・ツ!」の大音声。左CKを得たザスパ、加藤が直接上げず、吉田に繋ぐ。左バイタルから吉田が入れたボールはGKが弾いたが、主審が笛を吹いた。競り合いの中で田村が相手選手に掴まれながら倒され、土壇場でPKを得る。蹴るのは高澤。騒然とする中、ルーキーらしからぬ落ち着きで、冷静にゴールネットを揺らし、GOOOOOAL!!! 同点に追いついた。
 そして、アディショナルタイム4分に突入。諦めないサポーター。スタジアムに歌声が響く。両チームの選手も諦めていない。攻防は続いて残り1分を切る。右サイド吉田がアーリークロスを入れるが、高澤は触れられず、左サイドに流れる。キープした磐瀬と加藤が繋いだライン際のボールを今度は光永祐也がゴール前に入れる。待ち構えていた田村も届かず、クリアされたボールは再び右サイドへ。拾った吉田は、トラップしてすぐさま折り返す。走りこんだ磐瀬にDFがつられて高澤の前にスペースができる。左から別のDFに寄せられながらも放った低い弾道のヘディングシュートは、GKの指をかすめてゴールに吸い込まれた。GOOOOOAL!!! 大台をあっさりと超え、11点目となる高澤の逆転弾。歓喜の渦に包まれる正田醤油スタジアム群馬。わずかな残り時間をしのぎ、試合終了を告げる主審の笛が鳴り響く。残り10分からの逆転劇は、こうして完結した。
 アウェイに続いてアディショナルタイムまでもつれた、長野との血戦を制し、勝ち点で3チーム並ぶものの、圧倒的な得失点差でとうとうJ3首位に立ったザスパ。スタジアム一体となった最後まで諦めない姿勢が、勝利を呼び込んだ。あと13試合。痺れるような戦いが続いていく。【yosuie@中毛】



■ 2019年9月7日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第22節

SC相模原 0−1 ザスパクサツ群馬

相模原ギオンスタジアム 3160人

ウノゼロの勝利


 ザスパが辛くも逃げ切った。前半14分、相手ペナルティーエリアに進入したDF吉田将が倒されて得たPKを、FW青木翔が決めて先制。1点リードで折り返した。
 後半は相手に長所を消され、主導権を握られる時間が多かった。MF後藤やDF磐瀬が惜しいシュートを放ち、追加点はならなかったが無失点で終えた。(9月8日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年9月14日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第23節

FC東京U-23 2−4 ザスパクサツ群馬

味の素フィールド西が丘 1560人

打ち合いを制す


 ザスパが打ち合いを制した。前半10分に先制を許すと、4分後、FW高沢が左足で同点弾を決めた。同36分にFW加藤が追加点を決め、1点リードで折り返した。
 後半は連係の乱れから再び失点して同点に。後半26分に高沢がミドルシュートを決めて勝ち越し、同39分はFW青木翔が追加点を挙げた。(9月15日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年9月28日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第24節

ザスパクサツ群馬 2−1 アスルクラロ沼津

正田醤油スタジアム群馬 4084人

事故

 家庭の事情でなかなかスタジアムに足を運べていなかった今季。今節ようやく3度めのスタジアム観戦です。ゴール裏のサポーターは随分と増えましたね。メインスタンドも手拍子をする人が随分と増えた印象です。
 キックオフ直前の会場入りでしたが、前橋市民デーのチケットとLACCO TOWERさんご提供のラバーバンドを受け取る事ができました。市民デーのチケットはまだまだ余っていた様子。今のザスパは良いサッカーをしていて、見ていて楽しいです。もっともっと多くの人に見に来てほしいですね。ラバーバンドはリーダー塩崎さんがひとつひとつ来場者の手にはめてくれて、ハイタッチで送り出してくれてました。本当に頼もしくて温かい最強の仲間です。...翌日九州でライブなんに大丈夫なんきゃ?
 この試合の対戦相手は沼津。過去3戦して、2分1敗と分が悪い相手です。というかここから先、前半戦で勝てなかった相手や相性の悪い相手との試合が続きます。その最初で躓くわけには行きません。しっかりと沼津を破って、難しい試合の連続に向かってゆきたいところですね。沼津は元ザスパのGK牲川選手がスタメン、GK朴昇利選手はベンチ入り。沼津へレンタル中の藤原雅斗選手は残念ながらベンチ外です。怖いのはキャプテンをつとめる染谷選手。タフでスピードがあって、いつも厄介な相手としてザスパの前に立ちはだかってくる印象です。要注意。
 ザスパのスタメンは、GK・吉田舜、DF・吉田将也、舩津徹也、渡辺広大、光永祐也、MF・姫野宥弥・佐藤祥・後藤京介、FW・青木翔大、加藤潤也、澤優也。田中選手に代わって姫野選手が久しぶりの先発です。ながらくベンチからも遠ざかっていたので抜擢という印象ですね。サブは、GK・キム チョルホ、DF・田村友、磐瀬剛、飯野七聖、MF・金城ジャスティン俊樹、坂井大将、田中稔也。
 前半はザスパがボールを支配。余裕を持ってボールを回し、しっかりと攻撃を組み立てて行きます。いやー頼もしい。ボールを持てても攻めあぐねていた姿はもう過去のもの。堂々とした攻撃が展開されてゆきます。沼津は最終ラインで跳ね返してもセカンドボールはザスパのもの。前線の染谷選手へのスルーも絶妙のポジショニングでカット。沼津もゴールに迫るシーンはありましたが、押さえるべきところはしっかりと押さえて決定的な仕事はさせません。
 前半27分、GKへのバックパスを澤選手が激しくチェイス。とりあえずDFへボールを預けるがそこには姫野選手がプレッシャー。更に出たパスは佐藤選手が相手選手の背後からカット、パス。そのボールを受けた加藤選手はGKの位置をしっかり確認してシュート。GOOOOOAL!!!  連動したプレスでボールを奪い、隙きを逃さないKJの一撃でザスパ先制です。
 この試合、事故とよびたくなるようなシーンが目立ちました。最初の事故は前半32分。競り合いで佐藤選手の顔面に肘が入り出血。現地ではよくわかりませんでしたが、DAZNで見直してみるとかなりの出血が見られました。右の頬骨あたり。もしも少しずれて目に当たっていたらと想像するとゾッとします。出血を伴う怪我にもかかわらず、関与した選手にイエローは出ず。佐藤選手は止血を終えるとピッチに戻りそのまま試合終了までプレー。しかし試合終了後には一足早く控室に戻っており、決して軽いけがではないのだろうな、と想像できます。その後は、澤選手や姫野選手が決定的な場面を見せますが、惜しくも決めきれず。追加点なく1点リードのまま前半終了。
 後半は両チームとも交代なしでスタート。後半21分、スローインからの展開。吉田選手からのパスを受けた加藤選手は、パスを出してそのまま駆け上がった吉田選手の動きをよく見てヒールで流す。それに追いついた吉田選手はゴールラインギリギリのところからマイナスのクロス。これをゴール前の澤選手がドンピシャヘッド。GOOOOOAL!!! 相性バッチリのルーキーコンビで追加点。加藤選手のヒールも鮮やか。連携できれいに崩したゴールでした。
 沼津はギアを上げて攻めかかってきます。この試合序盤から当たりが厳しいシーンが多くありましたが、後半に入って一段と背後からのチャージが増えてきます。気持ちが入っているのは結構ですが、突くように背中に強く当たるのや、背後から足へ当たるのが多いのはいただけません。見えないところからのチャージは怪我につながりかねない危険なプレーですから、しっかりジャッジして試合を落ち着かせてほしいものですが...。
 後半38分に失点。ペナルティエリアの僅かに外、右45度からのボレーシュートはサイドネットへ。今季何度か見たような気もする失点ですが、まあこれは防ぎようがないよね。事故と思って切り替えましょう。
 しかしこの失点を境に一転して苦しい場面が続きます。間が悪いというかなんというか、失点前に準備されていた交代は失点直後に許可されます。一枚イエローを貰っていた澤選手を下げ、田村選手が入ります。監督の目論見は2点差のまま守備をテコ入れして逃げ切る構えだったでしょうが、リードが1点になり沼津も気勢の上がる難しい展開になってゆきます。
 さらにこの直後この日最大の事故が。青木選手がピッチに倒れ込みます。その瞬間に何があったのかは見ていませんでしたが、倒れた青木選手は膝を抱え、救護を呼ぶような仕草。入ったスタッフは一言言葉をかわすと即座にバツ印のジェスチャー。担架に乗せられた青木選手はその間も膝を抱えたまま自力では動けず、そのまま控室へ下がりました。交代は磐瀬選手。スクランブル状態ですが、時間的にもミッションは明確。がっちり固めて逃げ切りを狙いますが、過剰な守備陣形ではボールをキープできず。こんな場面で頼りになるのは最後までスピードが落ちない、加藤選手と姫野選手。大きく蹴り出したボールに追いつくと相手陣内深くまで持ち上がり、時間を使ってくれます。長い長いロスタイムを声を掛け合って守り抜き、ようやく終わり試合終了。逃げ切り!これで7連勝、10試合負けなしで首位キープ。ホームでは8連勝。
 いやー、勝つには勝ったけれど、とにかく青木が心配。この試合、あまりに接触プレーが多かっですね。序盤に主審がひとことふたこと注意を与えていれば、あるいは、せめて佐藤選手の怪我の場面ではっきりと警告を提示していれば、もう少し落ち着いた試合になったのではないでしょうか。うまく試合をコントロールすることで事故は防げたのではないでしょうか。主審にそういう期待をしてはいけないでしょうかね...。
 考えたくはないけれど、あの様子では軽い怪我とは思えないのが正直なところ。長期離脱になるかもしれません。この試合も強さとうまさを存分に見せてくれていた青木選手。張り付かれても倒れずボールをキープし、囲まれても冷静に相手の股を抜いて抜け出す。今日も素晴らしいプレーでした。攻守の要として替えの効かない存在だけに、離脱となるとダメージが大きいです。
 でも。それでも。今のザスパならば、きっと大丈夫。久しぶりの出場だった姫野のキレキレのプレーがその証拠です。攻守で走り回り、大活躍と言っていいプレーでした。青木選手が抜けたとしても、他の選手が持ち味を発揮してくれるでしょう。長くベンチ外だった姫野選手があれだけ活躍するのですから誰が出てきても不思議じゃない。岡田選手がいる、岩田選手がいる、中村選手もいる。今節スタメンを外れてしまった田中選手だっているし、ジャスティン選手や坂井選手もいる。飯野選手を入れても面白いだろうし...。さあ次は3位藤枝との上位直接対決です。【ばた@前橋】



■ 2019年10月5日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第25節

ザスパクサツ群馬 2−2 藤枝МYFC

正田醤油スタジアム群馬 4579人

灼熱の首位攻防戦

 残り10試合を残し、連勝街道で首位をひた走るザスパ。10月に入り、いよいよ上位との直接対決が始まる。まずはホームに藤枝MYFCを迎えての一戦。藤枝には昨年シーズン終盤に0-1で敗れ、昇格を事実上絶たれた苦い思い出がある。今シーズンも5月に行われたアウェイ戦で試合終了間際に追いつかれ、ドローに終わっている。
 リベンジと首位キープを懸けた試合は、10月とは思えない日差しが降り注ぐ、30℃越えの陽気。ゴール裏のスタンドは、コンクリートの照り返しもあって、座っていても汗ばむくらいだった。ザスパは前節の沼津戦に勝って7連勝を達成したものの、今シーズン10点を決めている青木翔大が後半に足を負傷して途中交代。得点だけでなく、右サイド攻撃の起点となっていただけに、ケガの状況が心配される。スタメンはGK吉田舜。吉田将也、渡辺広大、舩津徹也、光永祐也の最終ライン。ボランチが佐藤祥と後藤京介。左サイドには前節に続き姫野宥弥が先発。ワントップ高澤優也にトップ下は加藤潤也。そして注目の右サイドには岡田翔平が入った。藤枝の先発には元ザスパの川島將が入り、ベンチには昨年在籍していた星原健太もいる。勝ち点差2の藤枝とは勝ち負けで6ポイントの価値がある直接対決。サポーターの気合も試合前から高まっている。ビッグフラッグが掲げられ、アンセムが響く。緊張感の高まる中、ザスパボールで前半が開始された。
 序盤はお互いロングボールが飛び交う展開。藤枝のワントップは高澤と得点王争いでしのぎを削っている「デカモリシ」こと森島康仁。大きな体躯でボールを引き出し、収めている。しかし、この試合のレフェリーはちょっとした接触でも笛を吹くタイプ。ザスパの選手を倒す森島のプレーに度々笛を吹かれ、ストレスが溜まっているようだった。ザスパはボランチの後藤から何度か鋭いパスが出るが、大きなチャンスにはならない。青木とのコンビで右サイドを駆け上がっていた吉田も、岡田とのコンビネーションはそれに比べるとまだ完成度が低いのは否めない。ボールを保持しつつ相手の弱点を突くザスパと、デカモリシにボールを集める藤枝。一進一退が続いたが、先制したのはザスパだった。14分、中盤で後藤が加藤に縦パス、左サイドに流したところに走りこんだ光永がクロス、岡田がジャンプしてDFと競った後ろに控えていたのは、高澤。冷静にゴール左にヘディングを決め、GOOOOOAL!!! 得点王争いのライバル森島の前で、一歩リードする15得点目を決めた。その後も冷静にボールを回し、得点チャンスを窺うザスパ。ディフェンスも危なげなく、得点は動かずに前半を終えた。守備の固い藤枝相手に、1-0でリードしている状況は悪くない。しかし、このままでは行かない可能性もあるとは思っていたが、あんな状況になるとは思ってもみなかった。
 後半は藤枝ボールでキックオフ、負けられない藤枝も前に出てくるが、ザスパもカウンターで応酬する。岡田とのコンビネーションで放った加藤のシュートは枠外、逆に藤枝もセットプレイから秋本がヘディングシュートを放つが、これを吉田がファインセーブ。暑さもあり、徐々にお互いの守備が緩んでくると、一瞬の隙を見逃さなかったのは、藤枝だった。68分、左から右にサイドチェンジしたボールを、アーリー気味にゴール前に入れる。デカモリシには舩津が付いていたが、これをものともせずにヘディングシュートを放ち、同点ゴールを奪われる。ザスパに油断がなかったわけではないが、デカモリシの実力を認めざるを得ないゴール。これで試合は振り出しに戻った。
 昇格争いは混戦状態、抜け出すには勝ち点3が欲しい両チームは、勝ち越しゴールを狙う。しかし、ここでザスパを大きなアクシデントが襲う。自陣からのフィードを追いかける高澤が腿裏を押さえて倒れこむ。そのまま起き上がれず担架が入る。スタンドからは悲鳴にも似た声が上がる。騒然とする中、水を飲む両チームの選手。ザスパのDF陣はセンターサークル付近で話し合っている。ベンチも引き上げてくる高澤と交代選手の準備で慌ただしくしている中、なんと試合が再開されてしまう。レフェリーが笛を吹いて試合を中断していたが、まだすべての選手の準備が整っていない中、大きなジェスチャーもせずドロップされたボールは、そのまま藤枝の選手が繋ぎ、ザスパの右サイドへ。慌てて戻るザスパの選手。しかし、無情にもそのままクロスをダイレクトでゴールに決められてしまう。藤枝側のゴールライン付近から静かに始められたリスタートに、敵味方限らず多くの選手が気づいていなかった。確かにルール上は問題ないかもしれないが、あんなアンフェアな状況からリスタートできてしまうのは、ルールとして問題なのではないか?ザスパ側の猛抗議も認められず、ベンチのシュナイダーGKコーチにもイエローカードが提示される始末。エース高澤が負傷退場し、1点ビハインドの絶体絶命。怒号とチームコールが飛び交う中、試合は再開される。田中稔也、田村友とすでに2枚のカードを切っていたザスパ、高澤の代わりに飯野七聖が入った。
 アクシデントと微妙なレフェリングで気持ちが切れてもおかしくない状況。しかし、選手もサポーターも諦めていない。アディショナルタイムは6分。刻々と過ぎていく時間の中、必死でゴールに向かうザスパの選手。すでに残り1分になろうかという時間帯で、再びあの選手が奇跡を起こした。GK吉田のフィードを田村が競って左サイドにボールが流れる。拾った藤枝の選手に猛然と詰める佐藤祥、クリアボールが佐藤の足に当たり、クリアが甘くなると、詰めていた光永がボールを拾い、PA内の加藤に。加藤がワンタッチで戻したボールを再度光永が中に入れる。DFの間に入り込み、トラップすると、左足でゴール右隅に蹴りこんだのは、田中稔也。GOOOOOAL!!! アウェイ長野戦に続き、アディショナルタイムに起死回生の同点ゴール。残りは約1分。最後まで勝利を狙ったが、あえなくタイムアップ。試合はドローに終わった。
 アクシデントとジャッジで複雑な心境となった試合後。しかし、このピンチをドローに持ち込んだザスパの選手たちに、スタンドからは大きな拍手と声援が飛んだ。昇格のライバルとなっている北九州や熊本は明日試合の予定。その結果によっては首位陥落もあり得る。そして、青木翔大に続き、おそらく高澤優也も欠くことになる次節以降。苦境に立たされたザスパだが、チームとサポーター、クラブに関わる全ての人の結束力は、一層高まったように感じる。【yosuie@中毛】



■ 2019年10月12日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第26節

ブラウブリッツ秋田 2−2 ザスパクサツ群馬

ソユースタジアム 736人

ストライカー不在


 ザスパは2点差を守れなかった。前半12分、MF加藤のパスをMF後藤が右足で決めて先制。同29分は加藤の落とした球にMF姫野が合わせて追加点を挙げた。その後、1点を返され、2―1で折り返した。
 後半は防戦一方。守備的な選手を投入して逃げ切りを図ったが、試合終了間際に混戦から失点した。(10月13日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年10月20日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第27節

ガイナーレ鳥取 1−0 ザスパクサツ群馬

チュウブYAJINスタジアム 3011人

首位陥落


 ザスパが攻めあぐねた。前半は積極的にミドルシュートを放ち、前節から2人を入れ替えた攻撃の連係がスムーズだった。だが、35分にCKの2次攻撃を受けて失点。1点リードを許して折り返した。
 後半は高さのあるDF田村や攻撃的な選手を投入。球を支配して逆転を狙ったが、守備を固めた相手を崩し切れなかった。(10月21日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年10月27日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第28節

ザスパクサツ群馬 0−0 カターレ富山

正田醤油スタジアム群馬 4409人

気まぐれな風神

 青木、高澤の両エースストライカー、ゲームメーカーの後藤の負傷離脱で、1トップに久木田を置いたり、高さのある田村を後半に投入する苦肉の布陣も不発。8連勝の後は、2分1敗と勝ち点を伸ばせず、前節は13試合ぶりに黒星を喫し、首位を明け渡して、3位に転落したザスパ。今日の相手は直近8試合で6勝2分けと絶好調の富山。ザスパの一時の運気が完全に富山に移ったみてぇだ。ザスパに在籍した高橋駿太や碓井もいるし、彼らの恩返しはカンベンしてほしいやぃね。
 雨がまっさか続いた10月だったけんど、この日は朝から晴天。天気予報でも晴れの予想。暑くもなく寒くもねぇ絶好の観戦日和。今日は上毛新聞一丸マッチっつーことで、試合前には上毛新聞の号外も配られたで。上毛新聞で宣伝してくれたせいか、観客も多いみてぇだ。今日のスタメンはGK23吉田舜、DF19吉田将・32渡辺・2舩津・24光永、MF14田中・6佐藤・7加藤・9岡田、FW13久木田・39田村、サブGK21キム、DF28福田・22飯野、MF8窪田・15ジャスティン・30姫野、FW20岩田との発表。今日はもともとDFの久木田・田村がFWの4-4-2ってことでいいんきゃ?チームを救うゴールを決めることがでぎるんか期待だぃね。
 14時の試合開始が近づくと、西から低く黒い雲がどんどん迫り、いきなし北風が強まり、落ち葉が勢いよく舞う敷島。草津節詠唱の時にもピッチに水がまかれてた。試合前のコイントスで、ザスパは後半に風が強まる目論見なんだかエンドを交換し、後半風上になるんを選択。(でも敷島でこれをやったときはあんまり良くねぇ結果の時が多いと記憶してるんだけんど。)フラッグが強くたなびく中、試合開始・・・確認すっと久木田が右SBで、田村はボランチ、前線は加藤と岡田の4-4-2なんきゃ?果たしてザスパサポをも欺くこの布陣が吉とでるかどうか・・・前線の上背がねんが気がかりだぃなぁ。風はますます強くなり、数分でスタッフが慌てて集まりザスパゴール前の広告ボードを飛ばされねぇように急ぎ皆倒してったで。強風に乗じて一気呵成に攻められればよかったんだけんど、強風でボールも右へ左へ流れちまう始末。ザスパは左サイドハーフの田中を軸に攻勢を仕掛けてぐんだけんど、強風の影響かボールの収まりが悪くって、上手い攻撃の形が作れねぇ。前半35分を過ぎると、ポツポツ雨粒が落ちるようになり、ついには本降りに。天気予報を信じて雨具を持ってきなかったヤツらはびしょ濡れじゃねーきゃ。そんな天候の中、攻撃の決め手を欠きスコアレス。まぁ風上になる後半に期待すっきゃねぇな。
 後半開始。まだ雨は降ってる。風上に立てた後半勝負だ。しかし攻勢を強めたのは風下の富山だった。ザスパゴールにシュートを次々に浴びせるが、GK吉田の好守が冴える。後半16分には富山は高橋駿太が入ぇる。敵になった駿太はなんかやりそうでおーかおっかねぇやぃね。攻める富山、守ってカウンターで前線の加藤へ託すザスパの構図。後半20分過ぎると、雨も風もだんだんつ弱まってきたで。後半25分岡田に替え、岩田を投入。加藤からボールを受けた田中が撃ったシュートは力なく阻まれ得点ならず。後半29分には、高橋駿太がゴール前でフリーでボールを受けた。やられた!と覚悟したがシュートは枠の外へ。この頃から雲が切れ、雲の間から陽が差し、風もほぼ無くなっちまったで!風の神様に完全に見放され、ザスパの後半風上の目論見は見事にハズレた格好だぃね。後半33分、ザスパはクロスに岩田がヘッドを見舞うが、これが悲しいほど相手GK正面で難なくキャッチされちまう。でもこれが本日最大のザスパの好機だったぃ。その後は吉田に替え、姫野を投入。攻める富山、守るザスパ。富山に目の前でがんがんシュートを撃たれ、まぁず心臓に悪りぃ。ロスタームにまたもやゴール前で駿太に渡り肝を冷やすが、シュートは枠の上に飛び難を逃れた。駿太も古巣相手で気負ってたんだんべな。そのままザスパが耐え凌ぎ、結果は0−0のスコアレスドロー。
 久々に無失点で終わったことは好材料なんだけんど、後半風上の目論見も見事に外れちまい、頼みのカウンターも不発、今日は「負けなくて良かった」っつーんが率直な感想だぃなぁ。今節が終わり、ザスパの勝ち点は50。首位の北九州は勝利で勝ち点55に伸ばした。2位の藤枝はドローで勝ち点51でザスパとの差はわずかに1。しっかし4位の熊本は勝利し、勝点50となり勝ち点で並ばれちまった。残りは6試合、次節はその熊本とホームで今季の命運を分けるリアル天王山。なんとか勝ってほしいやぃ。今は暗雲漂う状況だけんど、今日の天気みてぇに最後の最後には晴れることを期待すんべ。がんばれ!ザスパ!【すずき@東毛】



■ 2019年11月4日(月・休) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第29節

ザスパクサツ群馬 3−1 ロアッソ熊本

正田醤油スタジアム群馬 3977人

勝利のために必要なもの

 目の前のゴールネットが揺れた。紺色のユニフォームが膝をつく。しかし、チャントは途切れない。選手を再び立ち上がらせるために。
 2019シーズンのJ3も、残すところあと6節。クライマックスが近い。前節首位ギラヴァンツ北九州が一歩抜け出し、勝ち点差5で3位につけるザスパは、引き離されないように目の前の試合を勝つしかない。さらに、前日に北九州、2位の藤枝MYFCがすでに勝っている状況。もう勝ち点3以外は許されなくなっていた。
 対戦相手は勝ち点が並んでいるロアッソ熊本。アウェイでは悔しい逆転負けを喫している。J2昇格への生き残りをかけた大勝負となる。
 祝日の夕方、正田スタに集まったサポーターは4000弱。陽が沈んで、寒さが地面から伝わってくる。加えて上州名物の空っ風が、斜めに吹き込んできている。しかし、スタンドはその冷気を遮るように、サポーターの熱気に包まれていた。
 ザスパのスタメンは、GK吉田舜、DF吉田将也、舩津徹也、渡辺広大、光永祐也。ボランチには出場停止の佐藤祥に代わり、田村友と磐瀬剛が初先発となった。右SHに姫野宥弥、左に田中稔也。ツートップには岡田翔平と加藤潤也が入る。サブには2試合外れていた後藤京介が戻ってきた。対する熊本は、2年前までザスパに在籍していた高瀬優孝が左サイドで姫野、吉田と対峙する。
 コイントスで勝った熊本は、攻撃方向をチェンジ、風上に立った。これが序盤の攻防に大きく影響を及ぼした。キックオフ直後から、前に出てくる熊本。左サイドに陣取る高瀬が、鋭いクロスを早々に放り込んでくる。風にも乗ってゴールまで届いたボールは、ポストを直撃。ザスパサポーターは肝を冷やした。3年前は、紺黄のユニフォームを纏い、当時のエース瀬川とのホットラインでアシストを量産。その後ケガもあったが、その運動量と左足の精度は衰えを知らず、敵に回すと厄介だということを改めて感じた。序盤は高瀬の後手を踏んでいた、ザスパの右サイド。しかし、時間の経過とともに、姫野と吉田の連携でその脅威を封じ込めていく。ボールが渡る前に距離を詰め、アーリークロスを出すスペースを与えない。前線の岡田と加藤もチェイスを繰り返し、中盤では田村と磐瀬が熊本の攻撃に芽を摘む。バイタルに入りこまれても、舩津と広大が粘り強く対応し、熊本にシュートを撃たせない。風下のザスパはセカンドボールを拾えず、押し込まれる展開から何度もCKを取られたが、冷静かつ的確な対処で大きなチャンスを作らせない。熊本にとっては風上を得た前半のうちに先制しておきたかっただろうが、0-0のままハーフタイムを迎えた。
 後半は風上となるはずだったザスパだが、試合当初のような強い風は収まり、優位性はなくなってしまった。だが、勝ち点3はもぎ取らなければならない。前半はある程度自陣内に引いて守っていたが、後半は積極的に前から圧力をかけ始める。徐々にザスパがボールを持つ時間が増えると、この日最初のビッグチャンスを迎える。62分、右サイドの姫野が加藤とのコンビネーションで中央に侵入、放った左足のシュートは熊本GK山本海人に弾かれるが、こぼれ球を狙っていた岡田が素早くボールに寄せて、右足でゴールに流し込む。しかし、無常にも左ゴールポスト脇を外側にすり抜けてしまう。先制のチャンスを逃してしまった。どちらも勝ち点3を譲れない。その後も一進一退が続き、時計の針はスコアレスのまま73分を迎える。ベンチの布監督が動く。岡田に代え、復帰したての後藤を投入。加藤がワントップに、トップ下に後藤が入った。パス能力の高い後藤にボールが集まりだし、試合の流れがに変わり始める。74分、後藤のパスを起点に右サイドの吉田から中央に折り返し、受けた田中がシュートモーションからフェイントでヒールキック、後ろにいた磐瀬が低弾道のミドルシュートを放つ。しかし、これを山本がファインセーブ。1点が遠い。
 時計の針が80分を指す。残り10分。そして、運命はここから大きく揺れ動く。熊本の守備が緩んできているのが、素人目にも分かった。左サイドでボールを持つ加藤がすかさず縦パスを入れる。PA内で受けた姫野はダイレクトでいったん外へ送る。待ち受けていた光永が、中央にクロスを送ると見せかけて、マイナスのグラウンダーパスを出す。完全にフリーとなった後藤が左足を振り抜く。そのシュートは、ゴールマウスの左隅を射貫いた。GOOOOOAL!!! 先制点を奪ったのはザスパ。盛り上がるスタンド。このまま終えれば、勝ち点3を奪えるはずだったが、負けられないのは熊本も同じ。その執念がザスパに襲いかかる。すでに三島、原一樹といった攻撃のカードを切って、是が非でも勝ちに繋げたい熊本は、一瞬の隙を逃さなかった。86分、ザスパPA手前の中央付近で得たファウルによるFKをクイックリスタート。サイドに展開し、上げたクロスを吉田が一度は弾いたものの、こぼれたボールを押し込まれる。1-1の同点。あと少しを逃げ切れなかった。
 しかし、スタンドの空気は冷えていない。すぐさま選手を鼓舞するチャントが響き渡る。
 「ここから始まる道 前だけ向いて 恐れることなく行こう 俺たち草津」
 今シーズン、何度も起こしてきた奇跡。その残像が、サポーターの瞼の裏には残っている。リスタートしたザスパの選手たちも、焦ることなくボールを繋ぐ。しかし、時計は90分を回っている。残るはアディショナルタイム4分。さらに1分が経過する。右サイドに持ち上がった舩津から、寄ってきた後藤が受け、最後尾の広大に回す。今度は左に展開、受けた光永が田中に送る。内側に切れ込みながら前線の加藤へ。受けた加藤は左に流す。パスを出してからオーバーラップしてきた光永が、そのボールをダイレクトで折り返す。ゴール前に上がっていた田村が、DFを引き付けてボールの下をくぐる。ボールを捉えたのは、後ろから走り込んできた田中。ジャンプしながら放ったヘディングシュートが、ゴールネットを揺らす。GOOOOOAL!!! ザスパの救世主が3度目のアディショナルタイムゴールをもたらした。総立ちで沸き立つスタンド。興奮冷めやらぬまま残り1分、熊本陣内でボールキープしていた光永が、隙を見つけてゴール方向にドリブル、角度のないところからシュートに行かず、マイナスに戻す。待ち受けていたのは途中出場の岩田。右足インサイドでボールの角度を変え、ダメ押しのゴールを押し込んだ。GOOOOOAL!!! 3-1。昇格のライバル熊本を突き放す、価値ある1勝を挙げた。
 最後まで決してあきらめず、勝利をもぎ取った勇者を迎えるスタンド。勝利の草津節が響き渡る。ここ数年、忘れていたこと。勝利のために必要なものは、選手の能力や監督の采配だけではない。フィールドの選手、ベンチ、スタッフ、サポーター、関わる人すべてが、同じ意識を共有すること。この日のスタジアムは、J昇格後初めて連勝した、あの時の光景と重なって見えた。【yosuie@中毛】



■ 2019年11月10日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第30節

ヴァンラーレ八戸FC 1−1 ザスパクサツ群馬

ダイハツスタジアム 1955人

痛すぎるドロー


 ザスパが突き放せなかった。前半は相手に球を支配される時間帯があったものの、GK吉田舜の好セーブもあり、無失点。徐々に敵陣で支配率を高めた。
 後半は13分にMF田村のシュートのこぼれ球に反応したFW岡田が押し込んで先制。8分後に同点に追い付かれ、猛攻を仕掛けたが及ばなかった。(11月12日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年11月17日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第31節

ザスパクサツ群馬 0−1 ギラヴァンツ北九州

正田醤油スタジアム群馬 4839人

ここから始まる道

 試合終了を告げるホイッスルは、聞こえなかった。ピッチ上の選手と同じく、ゴール裏も最後の1秒が尽きるまで、試合をあきらめずチャントを歌い続けた。
 前節アウェイでヴァンラーレ八戸に追いつかれ、痛恨のドローとなったザスパ。昇格圏内の2位藤枝MYFCが勝ち、その差は3と広がった。しかし、首位のギラヴァンツ北九州は4位のロアッソ熊本と引き分け、ザスパとの勝ち点差は5のまま。そして、今節はその北九州をホームに迎え、J2優勝戦線への生き残りをかけた大一番。週末が近づくにつれて、気持ちが昂るばかりだった。
 いよいよ決戦の日。試合開始は19時だったが、敷島公園周辺では高校サッカーの県予選が行われており、早い時間からレプユニを着たサポーターの姿がちらほら見られた。そんな中、吉報が舞い込む。ザスパクサツ群馬の弟分であるザスパ草津チャレンジャーズが、関東社会人サッカー大会で優勝し、悲願である関東リーグ昇格の切符を手に入れたのだ。さらに、先立って行われた試合で、2位藤枝が敗れた。勝てば2位に浮上できる。この勢いに乗って、トップチームも北九州を打ち破りたいところ。選手バスが到着すると、たくさんのサポーターがこれを迎え、チームコールを叫んだ。
 ザスパのスタメンは、GK吉田舜、DFが吉田将也、舩津徹也、渡辺広大、佐藤祥。不動の左SBだった光永祐也が、この試合はスタメンを外れた。ボランチは先発に復帰した後藤京介と高さのある田村友。右SHに姫野宥弥、左に飯野七聖が入り、岡田翔平と加藤潤也がトップに入る。一方北九州は、元ザスパの加藤弘堅がスタメンに名を連ねた。
 試合前から意気上がるスタンド。この一戦にかけるサポーターの気持ちが、その声に現れている。キックオフとともに、その大声援で選手の背中を押し、勢いよく攻め込むはずだったが…。
 現実はそう甘くはなかった。開始直後からペースを握ったのは北九州。局面でのボールの奪い合いに勝ち、冷静にボールを回し、ザスパ陣内に攻め込む。受け身に回ったザスパだったが、集中を切らさずゴールは割らせない。しばらく我慢の時間が続く。が、悪い流れを断ち切ることができなかった。36分、加藤弘堅に左に展開されると、守備の枚数が足らず、1対2となる。佐藤がボールホルダーとの距離を詰められず、バイタル斜めから高橋大悟に打たれたシュートは吉田舜が懸命に伸ばした手の先を通り、ゴール左隅に収まる。許してはいけない先制点を奪われてしまった。ゴール裏から一瞬途切れたチームコールは、しかしすぐに再開される。これまで何度も逆境を跳ね返してきた、選手たちを信じて。
 後半、絶対に負けられないザスパは、死に物狂いでボールを繋いでいく。飯野が、交代で入った福田俊介がチャンスを迎えるが、ゴールを割れない。アディショナルタイム男の田中稔也が左サイドを突破してクロスを上げるが、惜しくも相手GKに防がれる。
 北九州は強かだった。この試合、局面での競り合い、攻撃の連携、守備の統率、すべてがザスパを上回っていた。奮戦虚しく、0-1のまま試合終了。勝てば首位に勝ち点差2と肉薄できたはずが、逆にその差は8と広がり、北九州の背中は遠退いた。
 試合後、ゴール裏で俯く選手たちに、サポーターはチームコールを叫び続けた。数字の上では昇格はもちろん、優勝の可能性も潰えてはいない。可能性のある限り、最後の1秒まで選手たちを信じ、サポーターは叫び続ける。あきらめたら、目標には永遠に辿り着けない。【yosuie@中毛】



■ 2019年11月24日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第32節

ガンバ大阪U-23 0−1 ザスパクサツ群馬

パナソニックスタジアム吹田 866人

望みをつなぐ


 ザスパが辛くも逃げ切った。前半はFW榎本やMF姫野、DF磐瀬が積極的にシュートを放った。守備でも球際や総力で相手に対抗し、スコアレスで折り返した。
 後半8分、敵陣ゴール前で姫野の落とした球に、MF飯野が右足で技ありのシュートを放ち先制。その後は負傷者を出しながらも体を張った守備で守り切った。(11月25日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年12月1日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第33節

ザスパクサツ群馬 1−0 いわてグルージャ盛岡

正田醤油スタジアム群馬 5881人

3から2

 昨年ザスパに所属していた大久保哲哉は、「昇格争いはラスト3試合が本当の勝負」と語っていたという。優勝争いを賭けた大一番、首位ギラヴァンツ北九州戦に敗れたザスパ。2位藤枝MYFCとの勝ち点差も3のまま縮まらず、そのラスト3試合を迎える。
 前節、アウェイのガンバ大阪U-23戦は、飯野七聖のJ初ゴールで1-0の辛勝。藤枝も譲らず勝利し、このまま藤枝が勝ち続ければ、勝ち点で追い付けず、J2昇格圏の2位に届かない。ザスパにとっては引き分けすら許されず、さらに他力が必要となる状況で、ラスト2戦目のホームいわてグルージャ盛岡戦を迎えた。正田醤油スタジアム群馬には、普段以上の張り詰めた空気が感じられる。
 この日は2019シーズンのホーム最終戦であると同時に、スポンサーであるケービックスのスペシャルマッチ、草津町サンクスデーに加え、先日発表されたとおり、7年間にわたってユニフォームサプライヤーを務めたフィンタの契約満了、今シーズンはアンセムまで提供してくれたLACCO TOWERのメンバーが勢揃いするなど、イベントやトピックも盛りだくさんで、試合開始前から多くの人が訪れている。対戦相手盛岡のローカルフード、福田パンが用意した1700個のパンは、試合開始1時間半前に完売した。
 ザスパのスタメンは、GK吉田舜、DFが右から吉田将也、舩津徹也、渡辺広大、光永祐也の不動の布陣。ボランチは磐瀬剛と佐藤祥のコンビ。右SHには姫野宥弥、左には飯野。トップ下には後藤京介が入り、ワントップには前節同様、前橋育英出身の榎本樹が起用された。前節復活を果たした高澤優也はこの試合もベンチスタート。また、前節後半途中交代し、ケガが心配された加藤潤也もベンチ入りし、サポーターは胸を撫で下ろした。その他、控えにはGK蔦颯、DF田村友、MF金城ジャスティン俊樹、田中稔也、FW岩田拓也が名を連ねる。
 盛岡は順位こそ最下位だが、ザスパは過去3戦で勝ったことがない相手。勝利へのプレッシャーのかかる中で、簡単ではない試合。そんな選手を後押しするように、スタジアムには続々とサポーターが詰めかけ、席が埋まっていく。ここのところ急に寒さが厳しくなった群馬だったが、この日は少し和らぎ、雲が多いながらも青空も見える。試合開始まで1時間を切り、ピッチアップに入場する選手たちを大声援で迎えるゴール裏。観客の入場は絶えることなく、スタンドの隙間がなくなっていく。試合開始15分前、大型ビジョンにはLACCO TOWERの「火花」の最新ライブ映像が流れた。サポーターの気持ちを燃え上がらせ、奮い立たせるこの曲で、さらにテンションが上がる。選手入場に合わせて草津節を唄い、ビッグフラッグを掲げる。そして、そのスタジアムの雰囲気を盛り上げるように、陽の光が差し込んできた。緑に輝くピッチに、引き締まった表情の選手たちが入場してくる。2019シーズン最後のホーム戦。それぞれの想いを胸に、試合開始のホイッスルを聞いた。
 序盤から激しいプレスをかけるザスパ。前線から榎本と後藤が追い込み、両サイドは姫野と吉田将也、飯野と光永が挟み込んでボールを奪う。ボランチの佐藤と磐瀬は獅子奮迅、最終ラインで渡辺と舩津が跳ね返す。攻撃では、左サイドから飯野が相手の裏を突き、鋭いクロスを入れる。CKから渡辺が頭で合わせるが、惜しくもバーの上。終了間際の波状攻撃も実らず、前半は0-0のまま終わった。
 ハーフタイム、同時進行している他会場の途中経過を確認すると、なんと藤枝が0-3で負けている。最後まで分からないが、最も理想的な結果になる可能性がある。点を取らせたい。この試合勝たせたい。想いをチャントに込めて唄う。
 後半、盛岡も攻勢に出る。途中交代で入った宮市のロングスローから決定機を作られ、ネットを揺らされるが、オフサイドの判定で命拾いをする。負けじとザスパも抜け出した飯野がシュートを放つが、ゴールマウスを逸れていく。55分、後藤に替えて高澤を投入、10月5日の藤枝戦以来、約2ヶ月ぶりにエースが敷島に戻ってきた。相棒の復活で勢いを得た吉田将也がクロスを送るが、なかなか合わない。75分、榎本に替えて加藤がピッチに入る。広範囲に動き回る加藤のプレーで、ザスパに流れが傾いていく。右サイドで加藤とのワンツーで抜けた吉田将也が、マイナスのグラウンダーを送ると、姫野が滑り込みながら合わせるが、これは相手GKがファインセーブ。ゴールまで辿り着けない。83分、最後は飯野に替えて田中。攻撃的なカードを3枚切り、チーム一丸となってゴールを奪いに行く。その気迫を感じながら、声で後押しするサポーター。プレーに焦りはない。そして、信じる気持ちがついに結実したのは、試合終了まで残り5分を切った86分だった。最終ラインの舩津が右サイド吉田将也に渡す。内側にドリブルした吉田が相手を引き付けて、サイドに張る姫野へ。姫野がダイレクトで上げたクロスはDFが弾くが、こぼれた浮き球を佐藤が枠にコントロールしたシュートを放つ。このボールに反応した高澤が、瞬時の判断で頭に当てて軌道を変える。GKの手をすり抜けたボールはポストを叩いた。しかし、この跳ね返りにいち早く反応したのは高澤、得意のヘッドで無人のゴールへ流し込む。GOOOOOAL!!! 劇的な復活弾。湧き上がる歓声。エース高澤が決めた値千金のゴールで、ザスパが土壇場でリードを奪った。 諦めない盛岡は、アディショナルタイムに入り、FKからヘッドでつないで嫁坂が決定的なシュートを放つが、見切った吉田舜が右足でブロック、同点の危機を救う。チーム全員で攻め抜き、守り抜いたザスパ。1-0で盛岡を下し、ホーム最終戦を白星で締めくくった。
 同時刻で終了した藤枝は、そのまま0-3で敗れた。この結果、勝ち点で藤枝と並んだザスパは、得失点差で大きく差をつけ、昇格圏内の2位に浮上した。3位から2位へ、そして、J3からJ2へ。残すは最終戦のアウェイ福島ユナイテッド戦のみ。J2へ復帰を自らの手で勝ち取る権利を得た。もう振り返る必要も、横を見る必要もない。前だけ向いて、恐れることなく行こう。夜明けがそこまで迫っている。【youie@中毛】



■ 2019年12月8日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第34節

福島ユナイテッドFC 1−2 ザスパクサツ群馬

とうほう・みんなのスタジアム 2795人

福島の歓喜

 陽が傾いた福島市・とうほう・みんなのスタジアムに試合終了を告げる長い笛の音が響くと、メインスタジアム北側を埋めたザスパサポから歓喜の雄叫びが上がった。満面の笑みで仲間と抱き合う者、見ず知らず同志でハイタッチをする者、歓喜の涙にむせぶ者もいた。あのJ3陥落から雌伏2年、J3の難行を終え、J2への帰還が決まったで。

 連勝し、勝ち点60の2位で迎えた最終戦。J2復帰にはアウェイで福島に勝利すれば文句なく決まるで。ドローや負けても同じ勝ち点で並ぶ藤枝の動向で復帰は可能だ。だけんど、ここは勝って自力でJ2復帰の権利を掴みてぇところだ。古りぃサポータの中には同じような記憶がある人もいるだんべ?2004年、当時JFLで最終戦のHondaFCとの最終戦、勝てば文句なし、負けても0-3以上で負けなければJFLで2位になってJ2参入が決まる一戦だったぃね。オレはあの時、浜松市都田でのHondaFC戦に出かけて・・・結果はまさかの0-3の敗戦、総得点差でJFL3位に転落。あん時の帰ぇりの公式応援バスの中は、まるでお通夜のようだった。あの日オレはザスパをずっと応援してごうと心に誓ったんだっけ。翌日Jリーグの忖度でJ2参入が認められたんだぃなぁ。そしてその数日後、仙台でJ1で優勝した横浜Fマリノスを天皇杯で破るという大金星を挙げるとゆう伝説になったんだっけ。そういや横浜Fマリノスが前週にJ1で2004年以来の優勝をしたんだぃなぁ。この流れなら今度もJ2復帰が決められるんじゃねん?まぁでもあの時にみてぇにJリーグは今度は忖度なしだかんべだから、絶対に2位にならなっきゃな。3位藤枝はJ3優勝を決めた北九州との対戦。もしもに備えて北九州の奮戦を期待してぇところだぃね。(あの2004年のノスタルジーに浸りてぇヤツはこっちみてくんなぃ!はぁ15年もこのサイトやってるんだぃなぁ・・)
 両毛線で小山駅へ向かい、そっから東北新幹線を乗り継ぎ福島駅へ。福島駅で車で来ていたとも@川崎さんらと合流し、とうほう・みんなのスタジアムへ向かう。とうスタは郊外の広大な運動公園の一角にあるで。行ぐ途中、正面に見える雪雲をかぶった吾妻山から風花が舞ってきた。駐車場に着くと、そこにはすでに多くの車。群馬ナンバー・前橋ナンバー、そして高崎ナンバーの車べぇじゃねーきゃ!一体何台群馬から来てるん?(後に福島駅からのとうスタへの無料シャトルバスは定員をオーバーし、乗れねぇ人たちは乗り合い定額タクシーで馳せ参じたと聞いた)スタジアムに向かうと、長蛇の列。とうスタではホーム・アウェイ関係なく入場口がいっしょで、前に並んでた福島サポの方はこんなに並んで待ったのは初めてとゆってたで。オレだって決して遅くついたわけじゃねんだけんど、スタジアムグルメのいもくり佐太郎はザスパサポにより瞬殺されたみてぇではぁ売り切れだった。
 スタジアムに入場。メインスタンドの北半分にザスパサポが大勢馳せ参じている。バックもゴール裏も芝生席で、ちょうどザスパがJFLだったころの敷島陸上にどことなく似てるな。本日の運命の一戦、スタメンはGK23吉田舜、DF19吉田将・32渡辺・2舩津・24光永、MF35磐瀬・6佐藤・30姫野・14田中・22飯野、FW27榎本、サブに33蔦、DF28福田・39田村、MF15ジャスティン・41後藤、FW7加藤、そして17澤。いつ加藤や高澤が投入されるんかが楽しみだぃね。  いつしか立ち応援が許された応援ゾーンはほぼ埋まり、その他のメインスタンド北側もザスパのサポータでいっぺぇとなった。その数、およそ2千人。ホームの正田スタではパブリックビューイングが行われてて、900余の人がメインスタジアムで応援してるそうだぃね。そしてスタジアムに来なくってもDAZNでモニタの前で観戦してる人、仕事中や家族サービス中に忍ばせたスマホで経過を観ようとしてる人・・・ザスパを応援してる人はおーかいっぺぇいるだんべ。2019年のJ3での初戦は、こことうスタで2-1で福島に敗戦、J3の苦行が始まった。なんの因果か、J3の最後になるかもしれねぇこの1戦を再びこのとうスタでやることになるとは!みちのくの寒風に負けじとみんなして草津節詠唱。ビッグフラッグが掲げられ、さながら正田スタのホーム戦のような雰囲気だで。今日だけは絶対に負けるわけにはいがねぇ!勝って帰ぇるぞ、J2へ!
 試合開始。ザスパは風上からの攻撃、正田スタに負けない強く冷てぇ風が吹いてる。ザスパは4-2-3-1、福島は4-4-2かな。開始早々、左から光永がクロスを上げ姫野が体を入れながらふわっとしたシュート。決まったか!と思ったが、右ポストに阻まれ先制点を逃す。早く点を取って気分的に楽になりてぇやぃなぁ。前半は風上に立ったザスパの攻勢が続く。何度もゴールに迫るが、福島に阻まれて得点ならず。前半31分には田中が思いっきりよくミドルシュートを放つが、今度は左ポストに当たっちまった。押してるんに点が取れねぇ。前半37分、ここで布監督は榎本に替えて、エースの高澤を投入。榎本が故障してるとは思えねぇし、これは福島側へのプレッシャーなんか。観てるオレ達もびっくりしたけんど。ATは1分。前半終了、0-0。
 ハーフタイムに藤枝vs.北九州の結果をチェック。こっちも0-0だった。後半開始、メンバー交代はなし。今度は風下からの攻撃。風は冷たく、そして強く、GK吉田も守りづれぇだんべなぁ。開始3分、右サイド寄りの敵陣中央FKを獲得。姫野の放ったボールは、ゴール前へ。そこで待っていたのは渡辺広大!見事なジャンピングボレーシュートが福島ゴールに突き刺さった!GOOOOOAL!!! ザスパ先制!「布先生(彼は監督でなく先生と呼ぶ)を男にするためにザスパに来た」と公言してた広大の有言実行の値千金の先制弾!俄然、ボルテージが上がるザスパサポ。
 スタジアムの興奮が冷めやらぬうちの後半7分、相手ペナルティエリアに侵入した磐瀬が足をかけられ、PKの判定。キッカーはエース高澤。冷静に左隅にキック!決まったかと思ったら、味方がエリアにキック前に入ったため蹴り直しに。あぁこれで高澤は蹴りづらくなったんべなぁと観ているほうが緊張(笑)したんだけんど、高澤は平静というか飄々というか、今度は逆の右側にキックを放った!GOOOOOAL!!! 決まった!これで0-2。藤枝どうなった?あーまだ0-0だ。このまま行けばJ2に復帰できる!しかしサッカーでは「0-2は危険なスコア」。攻めるのか?守るのか?まさに監督の思案が問われる状態だんべ。
 この直後、福島はイスマイラを投入。手足が長く身体能力がすげぇ高そう。飯野のシュートは相手GKの好守に阻まれ追加点を奪えず。イスマイラが入ってから、徐々に風上に立つ福島ペースになってゆき、元ザスパの小牟田も投入された。小牟田、今日は仕事しなくっていいからな!そして後半39分、ヘッドでボールをザスパDFの裏に通されると、走り込んだイスマイラに決められちまう。一瞬呆然・・・これで1-2。流れは福島にある。流れを変えようとザスパサポの応援は一層ボルテージが上がる。藤枝の結果をチェック。まだ0-0。北九州頼むよ。その後も福島は攻勢を強め、ザスパゴールに襲い掛かる。イスマイラが危険だ。早く終わってくれ。43分には田中に替えてジャスティンを投入。アディショナルタイムは3分の表示、ここで姫野から福田にチェンジ。福田!あと残り僅か!全力で防いでくれ!耐え忍ぶザスパ。祈るような時間が続く。そして響いた勝利の終了の音。この瞬間、ザスパはJ2復帰を決めた。改めて藤枝の試合結果を確認すっと、アディショナルタイムに藤枝が得点して1-0で勝利してるじゃねーきゃ!もしあそこで福島にもう1点決められドローで終わってたら、ザスパは3位に転落し、ドーハの悲劇に肩を並べる惨劇になってたんだんべなぁ。いやぁ勝って本当に良かった。
 選手・監督・奈良社長やスタッフ、サポータで歓喜の草津節の大合唱。そして青と黄色の何十条の紙テープでの祝福と布監督の胴上げ。「ザスパクサツ群馬の皆様おめでとうございます」と小粋に大型ビジョンに掲示してくれ、おーか寒みぃ中、最終戦セレモニーの開始を遅らせて待っててくれた福島の選手や運営の皆様、ザスパクサツコールでエールを送ってくれた福島サポの皆様本当にありがとう。寒い中、本当にお疲れ様でした。いつかまたJ1やJ2で対戦するんべぇや。
 陽が落ち暗くなった福島駅から新幹線で帰路へ、車中で一人祝杯を挙げる。15年前は無念の帰宅だったけんど、今日はご満悦の帰宅だで。「オレってやっぱザスパが好きなんだなぁ」ってしみじみ再認識できた遠征だったで。J2に無事復帰できたからゆえるんだけんど、J3に落ちたことってザスパにとっておーか意義があったんじゃねぇきゃ?あのままJ2でグダグダやってたら選手もサポもフロントも目指すベクトルがぐちゃぐちゃのままだったんじゃねぇん?今日の福島の試合は、選手もサポもフロントもベクトルが一致団結した、まさに「ONE TEAM」だったと思うで。かつて2004年にみんなしてこさえた玉が、時が経つにつれ、その放つ光が鈍り、深い傷が増え、何かの拍子で割れちまう可能性すらあった。J3の艱難、我らを玉にす。その玉が2度目のJ2で磨かれ、まばゆい光を取り戻し、そしてまっとまっと輝けるように。ただいま、J2!【すずき@東毛】




Special Thanks
ご寄稿、ご協力、画像のご提供あんがとね! (順不同)

yosuie@中毛 様
ばた@前橋 様
山本五十八@太田 様 様
え亥輪@前橋 様
あきべー@北毛 様
マッシー@前橋 様
とも@川崎 様
THES-NAMAKA@前橋 様

製作協力:三束雨@藤岡



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