「医療人のための群馬弁講座」特講




第1節〜第17節

戦いの鐘が鳴る










■ 2019年3月10日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第1節

ザスパクサツ群馬 2−2 ブラウブリッツ秋田

正田醤油スタジアム群馬 3691人

戦いの鐘が鳴る

 今年もこの歌がスタジアムに響き渡る。2019シーズンもザスパクサツ群馬は、J3リーグで戦うことになった。このことは、想像以上にクラブに重くのしかかった。昨シーズンオフ、ザスパは大量の契約満了を発表した。長らくチームを支えたベテラン、大卒2年目の若手、サポーターの人気も高かった、地元出身の選手。降格初年度に得られる救済金もなくなった今シーズンは、前年の3分の2の予算でやり繰りしなければならない。ホームグラウンドの正田醤油スタジアム群馬のバックスタンドも、特別なことがない限り閉鎖。mottoザスパクサツ群馬広め隊の活動も一時休止。いろいろな部分で影響が出る中、いよいよシーズンが開幕する。新加入選手は22人。即戦力の期待のかかる大卒選手たち、J3で実績を残すストライカーたち、上位カテゴリから出場機会を求めてやってきた選手たち。名前より実力。限られた予算の中で、2年目の布サッカーを具現化できる選手が集結した。サポーターもこの状況に手をこまねいていたわけではない。ポスターやビラ配りを行い、ツイッターで来場を呼びかけ、クラブとともにザスパを支える。苦しい中にも生まれたこの一体感。そして、開幕の日は訪れた。
 生憎の雨予報も、直前に試合が終わるまではもつ方向に好転し、スタジアム周辺にはスタグルを堪能する人たちが溢れる。選手バスが到着すると、フラッグを振り、チャントを歌いながらサポーターが出迎える。ゴール裏のスタンドでは、選手にスペシャルな開幕の挨拶を届けようと、サポーター有志が中央に集結し、ファンバナを掲げる。LACCOTOWERによる公式応援ソング、「火花」と「雨後晴」が流れる。いよいよこの時が訪れた。相手は昇格のライバルと目されるブラウブリッツ秋田。広げられるビッグフラッグ。掲げられるマフラー。選手入場とともに流れるアンセム「夜明けの行進曲」。それをかき消すように響き渡るラスハル「草津節」。バックスタンドを閉じたことで、ゴール裏の密集度が高まり、応援の迫力が増す、という予想外の結果を生んだ。さらに、コアサポーターたちの努力でメインスタンドも巻き込み、選手の気持ちを奮い立たせる雰囲気を作っていく。
 昨年に引き続いてスタメンを守った選手はわずかに二人。舩津と久木田以外は、ベンチ入りも含めてすべて新加入選手。生まれ変わったザスパがどんなサッカーを見せるのか。果たしてJ3で戦い抜く力があるのか。期待と不安が入り混じる中、キックオフのボールは蹴られた。試合開始とともに目を見張ったのは、中盤の運動量。二列目の姫野と佐藤が、ボールホルダーに瞬く間に詰め寄り、秋田の自由を奪う。両サイドの光永と飯野が高い位置をキープし、アンカーに入った青木翼はボールを散らす。そして、次に驚かされたのが前線の二人。青木翔大がボールを収め、ファーストシュートを放つと、辻は常にパスカットを狙い、隙あらば相手DFの背後を窺う。DFラインには、左に回った舩津と右の久木田が昨年同様のパフォーマンスを見せれば、中央に陣取った渡辺が的確な指示とフィードでチーム全体をコントロールする。開幕戦のスタメンGKを射止めた吉田舜は、ピンチで輝きを放つ。秋田が右サイドから中央に回し、放ったミドルシュートが選手に当たってコースが変わる。難局にもルーキーは冷静にボールを弾き、さらにそれに詰めた選手が放ったシュートも弾き出す。最後はポストに当たり、絶体絶命のピンチを逃れた。その後、一進一退が続く中、迎えた40分、待望の先制ゴールが生まれる。右サイド、パスを受けた飯野が縦に仕掛け、持ち前のスピードで相手DFを振り切る。ライン際から放ったクロスは、ゴール前で待ち構える青木翔大のヘッドによって、ネットに叩き込まれた。GOOOOOAL!!! 歓喜の渦に包まれるスタジアム。
しかし、落とし穴は意外な形で待ち受けていた。主審のジャッジがザスパを苦しめる。ルーズボールをスライディングしながらカットした舩津に、相手選手が突っ込むと、なぜか舩津にイエローカードが提示され、秋田のFKに。跳ね返したボールが右サイドに展開され、PA内に切り込んできた秋田の選手が足を滑らして転倒すると、あろうことか、主審はその選手に付いていた飯野にイエローカードを提示し、PKを指示した。ゴール裏に陣取るザスパサポーターの目の前。ジャッジに対する疑問の声が上がる中、大型ビジョンで再生されたリプレイでも、飯野は相手選手に一切触れていない。非難と怒号が飛び交う。当然、ピッチ上の選手たちも猛抗議をするが、判定は覆らない。秋田の選手が冷静にPKを蹴り込み、同点で前半を終了する。
 スタジアムの雰囲気が落ち着かないまま迎えた後半だが、ザスパの選手たちは前半同様、豊富な運動量と球際の強さで秋田を追い詰めていく。辻がパスカットから惜しいシュートをバーに当てると、52分、追加点は左サイドから生まれる。舩津、佐藤、光永のコンビネーションで敵陣深くに侵入すると、光永の上げた正確なクロスに姫野が競る。GKがはじいたボールを胸トラップし、冷静にゴールに蹴り込んだのは再び青木翔大。GOOOOOAL!!! ゴール裏の陸上トラックを横切り、サポーターの待つスタンドに駆け寄る選手たち。スタジアムが最高の雰囲気に包まれる。このまま開幕戦を白星で飾ることができるか。辻が再び決定機を迎えるが、相手GKのファインセーブに阻まれ、逆に運動量が落ちてきたザスパが劣勢になる。自陣内でのプレイが増える中、中盤でのパスを奪われると、一瞬の隙を突かれて同点ゴールを許す。失点をするときはあっけない。しかし、諦めない選手とサポーターは、終盤までその熱を維持し、アディショナルタイムに怒涛の攻勢に出る。ルーキー高澤が途中出場で前線に変化をもたらすと、窪田がその多彩なキックでコーナーからチャンスを作る。青木翔大がハットトリックまでもう少しのところに迫るが、秋田も決死の守備でゴールを割らせない。両チームが死力を尽くした開幕戦は、2−2のドローで終えることとなった。
 追いつかれて引き分けたザスパだったが、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。気迫をみなぎらせてボールを奪いにいく選手は、見ている者の心を揺り動かした。2019年型のザスパクサツ群馬が、J3で大いに戦える確信と、懸命に走る選手を支えたい気持ちがスタジアムに溢れる。新たな船出は勝ち点こそ1だったが、眼前に広がる伸びしろという名の海は、どこまでも果てしなく続いて見えた。【yosuie@中毛】



■ 2019年3月17日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第2節

ザスパクサツ群馬 2−1 SC相模原

正田醤油スタジアム群馬 3303人

夜明け前

 前節2度のリードを奪いながら、2度追いつかれドロー発進となったザスパ。とはいえアグレッシブな姿勢は今後に期待できるっつー話だで。オレは前節は仕事で観に行げなかったんで今節が今季初観戦!せっかくなんで試合見ながら一杯やっかと思ったんで、今日はJR両毛線で前橋駅→シャトルバスを選択。シャトルバスの待ち時間に、前橋エキ―タを見物。ザスパグッズを扱ってたセーブオンはローソンになってたんは想定内としても、なにこの廃墟みてぇな寂れっぷり(´Д` ) いやぁ栄枯盛衰、盛者必衰だぃなぁ。シャトルバスで正田スタ到着。今年からバックスタンドが開放されねんで、オレは2005年のJ2昇格初年度の開幕戦以来、15年ぶりにメインスタンドで観戦してみることにしたで。しかものんびり見物すっかっつーことで、南側に初めて行ってみたんさね。天気予報じゃ寒気のせいで大気の状態が不安定で、午後にはにわか雨の予想なんだぃなぁ。まだいぃ天気で暖っけぇんだけんど試合終了まで降らなきゃいーんだけんど。そしてさっそく昼間っからビールのダメ人間と化す(笑)
 今日のザスパのスタメンはGK23吉田、DF13久木田・21渡辺・2舩津、MF22飯野・5青木翼・24光永・30姫野、沼田出身の14田中が初スタメン、FWには11辻、そして前節2ゴールの10青木。サブはGK1小泉、DF4岡村、MF15ジャスティン・8窪田、6佐藤、FW7加藤・17高澤。相模原には、元日本代表、2002年ワールドカップの立役者、あの稲本や以前ザスパにいた梅井、そして昨年までの主力だった阿部巧がいるで。
 試合前にはLACCO TOWERより、2019ザスパクサツ群馬公式応援ソングとして、新曲『夜明前(よあけまえ)』が披露され、キックインセレモニーも細川さんが務めたで。本当に今年はザスパの新しい夜明けが来てほしいもんだぃね。
 草津節詠唱の後、ザスパボールでキックオフ。ザスパは3-5-2みてぇだな。前節2ゴールの青木、おそらく2列目を務める田中に注目だ。それにしても相模原の梅井のガタイはまっさかでっかくってすげぇなぁ。ずいぶんと成長したもんだ。開始早々、FKのこぼれ球を渡辺が後ろからシュートするもこれは相手GK正面。しかしこっからザスパは両サイドからの攻撃を中心にボールをゴール前までは運ぶことがでぎても、そっから全然シュートを撃たなく(撃てなく)なってぐ。前節活躍の青木は梅井にマークされてるし。対する相模原も似たような展開で、攻守は入れ替わるもんの双方ともにシュートが少ねぇ展開。お互い模様眺めしてんのかな。ザスパの方が優勢に見えるんだけんど、特筆すべき展開もなく、前半は終了。天気はどうやら持ちそうだし、勝負は後半だんべ。
 後半開始、相変わらずの展開。後半14分辻に替わって高澤、18分には田中に替え加藤、と前2枚を替え活性化を狙ったザスパ。加藤は(群馬弁でゆうと)はしっこくって、なんかやってくれそうな雰囲気だで。そっから押し込む場面が増えてCKのチャンスを何度か獲たもんの、ゴールを割れず。そうこうするうちに、後半22分、相模原の大石に中央付近で裏を取られゴールを決められ先制を許す(´Д` ) 押してんのに点が取れねぇザスパ、少ねぇチャンスを確実に決めた相模原。流れは相模原に行っちまうんか?後半31分、姫野に替え、窪田を投入。替わった窪田がシュートを放つが、相手DFに阻まれる。嫌な流れで時は過ぎ、あぁこのまま負けちまうんかと思った矢先・・・後半41分、ペナルティエリアの左前から加藤がゴール前にグランダーを入れっと、これを青木が梅井と交錯しつつスルー(単に足が届かなかったんきゃ?)、結果相手GKがボールに反応できねぇで、そのボールはゴールにそのまま転がり込んだ。GOOOOOAL!!! いやぁラッキーだけんど、これで同点!相模原はここであの稲本を投入。
 アディショナルタイムは3分。1分経過したぐれぇの時、右サイドから飯野が上がり、クロスがあがったもんの誰も中央では合わせられず、反対の左サイドに流れたボールを光永が折り返すと、これに合わせたのはまたもや加藤!GOOOOOAL!!! いったいどこでどう合わせたんか全くわかんねんだけんど(リプレイで見てもよくわかんね)とにかく、ボールが角度を変えてゴールを割って、見事な逆転弾!敗色濃厚な雰囲気から、こんな5分かそこいらで2点を奪取して、しかもアディショナルタイムの逆転劇なんて久しくなかったんで、場内は大興奮だぃね!その後の相模原の反撃を無難にクローズさせて、2-1で今季ホーム初勝利!雨も全然降んなかったし、いーこと尽くめ!(笑)
 開幕ホーム2戦で1勝1分。前節は青木が2得点、今節はその青木が元ザスパの梅井に封じられちまったが、替わって入った今季初起用加藤が2得点の大活躍!監督の采配ズバリ的中!加藤は「新ミニ四駆」のキャッチフレーズのごとく、縦横無尽の姿勢がすんばらしいやぃなぁ。おまけに5分で大逆転の劇的勝利なんて滅多に(笑)ねぇし、今日花粉症や天気予報の雨の脅しに負けねぇで観戦に来た人たちは完全勝ち組だんべ!今年は点が取れそうな試合が多そうでまぁず楽しみだぃ。・・・ねぇねぇ、ほんとに新しい時代の「夜明け前」だって信じていーんだんべ?【すずき@東毛】



■ 2019年3月24日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第3節

カターレ富山 1−0 ザスパクサツ群馬

富山県陸上競技場 2089人

まるで別のチーム


 ザスパがスコア以上の完敗。前半からディフェンスラインの裏を狙う相手に手を焼き、防戦一方。決定機をつくれない中、前半40分に富山のFW高橋に抜け出され、先制点を許した。
 後半は選手交代で前線の人数を増やして攻勢に出たが、守備を固める相手を切り崩せず、交代枠を使い切った後、MF窪田が負傷退場するなど、不運も重なった。(3月25日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年3月30日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第4節

ザスパクサツ群馬 0−1 ヴァンラーレ八戸FC

正田醤油スタジアム群馬 2206人

初モノに弱し

 J3のレベルは日進月歩で上昇している。3節を終えた時点で、昨年最下位の北九州、ブービーの藤枝が3連勝、JFLから昇格したヴァンラーレ八戸も、すでに初勝利を飾っている。ザスパは前節アウェイで富山相手に初黒星。今節はその八戸と初めての対戦となった。ここのところの暖かい陽気と比べ、日差しがなく冷え込んだ正田醤油スタジアム群馬。霧のような雨が降り、ピッチの視界も若干悪い。しかし、その霧を晴らすような声援を、試合前から送るゴール裏のサポーター。頂を目指すチームに力を与えるべく、スタジアムの温度を上げる。
 ザスパは前節からスタメンを変更し、加藤潤也が初先発。トップ下に入った。試合前には、ザスパのJ昇格時より取締役として支援をしていただいた、グローバルピッグファーム株式会社、赤地会長の追悼セレモニー、今年も音楽でザスパを支えるLACCO TOWER塩崎 さんのキックインセレモニーが行われた。
 そして前半キックオフ。ザスパは前節の反省を生かし、コンパクトな陣形と前線からのプレスが復活、八戸にボールを運ばせない。飯野、光永の両ワイドが高い位置からゴール前にボールを送る。中盤で加藤がボールを受け、辻、青木翔大のツートップにボールを供給する。なかなか主導権を握れない八戸は中盤の競り合いで後手を踏み、前半だけで3枚のイエローカードをもらってしまう。しかし、スコアは動かない。ザスパは辻の抜け出しや、CKから青木翔大の折り返しなど、ビッグチャンスがいくつかあったが、ゴールには結びつかなかった。この状況を見て、布監督が早々に手を打つ。
 後半の頭から辻に替えて高澤を投入。昇格に向けて、連敗だけはできないザスパは、さらに攻撃の時間帯を増やしていった。あとはゴールを決めるだけ。中盤の青木翼に替えて姫野を投入し、ペースを上げるザスパ。サポーターの応援にもさらに熱が入る。しかし、その先には落とし穴が待っていた。77分、吉田のフィードをセンターライン付近で収めた青木翔大が足を滑らせ、ボールが八戸に渡ってしまう。一度は光永がクリアしたものの、拾ったボールを右サイドのDFライン裏に送られ、戻った飯野がマークに付くが、詰めるより早く打たれたシュートは、ザスパのゴールネット右隅に吸い込まれた。痛恨の失点。ここまでほとんど危なげなく守っていたのに、ワンチャンスを決められてしまった。しかし、落ち込んでいる暇はない。八戸ゴールに向かって迫るザスパ、CKから高澤のヘッドは、相手GKに2度阻まれる。舩津に替えて中村駿太を投入、その中村のヘッドも相手GKがファインセーブ。どうしてもゴールを割ることができない。前節の終盤のもどかしさを払拭する攻撃を最後まで続けたが、結果は0-1の敗戦。連敗を喫してしまった。
 前節の不甲斐ない敗戦に続き、昇格組の八戸相手に連敗。ゴール裏からはブーイングと厳しい声が飛んだ。しかし、試合内容はきちんと改善されていたように思う。それだけに、ゴール、勝利という結果が出なかったことが非常に痛い。次節は、より結果が求められる。【yosuie@中毛】



■ 2019年4月6日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第5節

Y.S.C.C.横浜 0−2 ザスパクサツ群馬

ニッパツ三ツ沢球技場 1468人

ゼロに抑えて勝つ


 ザスパが今季初の完封勝利を飾った。前半28分にMF光永の左クロスにMF佐藤が飛び込んで先制点を挙げた。7分後、最終ラインからのロングボールを受けたMF飯野が右から中央へ送り、FW加藤潤が右足で合わせて追加点。
 後半、ザスパは防御を敷き、YS横浜の攻撃をコントロール。好機もつくられたが、無失点で逃げ切った。(4月7日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年4月14日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第6節

セレッソ大阪U-23 3−2 ザスパクサツ群馬

ヤンマースタジアム長居 669人

2点リードを守れず逆転負け


 ザスパには痛恨の試合となった。前半は好機をつくれなかったが、終了間際、MF飯野のクロスにFW加藤潤が走り込み、頭で合わせて先制した。
 追加点の欲しいザスパは後半5分にFW加藤潤のクロスにFW青木翔が体ごと投げ出し、左足でねじ込んだ。その1分後、1点を返されると、同31分、同38分と立て続けに失点した。(4月16日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年4月26日(金) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第7節

ザスパクサツ群馬 0−0 ガンバ大阪U-23

正田醤油スタジアム群馬 1875人

我慢比べ

 前節はセレッソ大阪U-23相手に2-0から痛恨の逆転負け。天皇杯予選の都合で2週間ぶりの試合となったガンバ大阪U-23戦は、我慢比べの展開となった。
 「フライデーナイトJリーグ」と銘打たれた金曜ナイトゲームとなった一戦。月末、しかも10連休前ということもあり、いつも以上に渋滞する敷島公園周辺。何とか試合開始前に辿り着き、急いで着替える。朝から雨の降る肌寒い天気。万全の準備でグラウンドに集中する。
 U-23チーム相手に続けて負けられないザスパは、スタメンをいじってきた。GKは吉田舜。最終ラインに舩津が復帰、中盤に姫野、佐藤に加え、鈴木順也が初先発。前線には加藤と青木翔大。青木翔大はこの試合で、J通算100試合出場を達成した。そして、今シーズンのウリである両翼。これまでは、右ワイドの飯野に左ワイドの光永で固定していたが、この試合は飯野が左に回り、右には金城ジャスティン俊樹が今季初先発。全体的に守備重視である事が、この時点で窺えた。
 対するガンバ大阪U-23は、前橋育英出身の松田陸が凱旋先発。その他にも若く才能溢れる選手ばかり。そして、その若いチームを率いるのは、ザスパの前監督、森下仁志氏。2年前、J3降格を招いた指揮官との対戦に、特別な意識を持たないサポーターはいない。調子の上がらないチーム。前監督との因縁の対決。複雑な想いを胸に、声を上げてチームを鼓舞するサポーター。ザスパボールで前半がスタートした。
 5分、姫野のフィードに右に流れた青木翔大が戻してジャスティンが中央にクロス、流れたボールを飯野がダイレクトにシュートしたが、相手GKに弾かれる。ガンバはDFラインからビルドアップして隙を窺うが、ザスパは飛び込まずにブロックを作って侵入経路を作らせない。27分、鈴木の放ったミドルシュートは惜しくもバーの少し上。引いて守るザスパは、相手にボールを握らせながらカウンターを狙う。今シーズンは両翼が高い位置を取ることが多かったが、この試合は頑なに自陣に網を張り、ガンバの個人技を警戒する。それでも36分に右サイドから繋いだボールを枠内に飛ばされるが、吉田舜のファインセーブで窮地を逃れた。そのままスコアレスでハーフタイムを迎える。前節の反省か、昨シーズンアウェイで大敗した教訓か。この日は最後まで守備に意識を集めていた。
 後半も同じような展開が続く。ザスパは少ない好機で得点を狙う。52分、佐藤がスルスルと持ち上がって打ったミドルはDFに当たりCKに。加藤の蹴ったボールにゴール正面で青木翔大がヘッドで合わせたが、これもゴールマウスを捉えられず。66分、舩津のタッチラインギリギリのフィードに抜け出た飯野が、相手チャージに体制崩しながらも中央に送ったボールは、あと少し青木翔大が届かない。守備重視の展開に少ない好機で決めきなければならないが、得点を奪えないまま時間が過ぎていく。そして布監督が勝負に出る。満を持して左サイドに光永を投入、飯野が右に回る。78分、青木翔大が落としたボールを加藤が運び、左サイドに飛び出した姫野にスルー、追い付いた青木翔大がキープしてゴールラインぎりぎりに出したボールを光永が折り返すが、飯野の頭にはジャストミートせず。さらに田中を投入、勝ち点3を取りに行く。アディショナルタイムに2度のCKを得るが、これも得点に繋げられず、両チーム無得点のまま、試合終了のホイッスルが鳴った。
 個人技のあるガンバ大阪U-23相手に、引いて守ったザスパ。我慢比べは痛み分けで終わった。たしかに守備重視で、相手にボールを持たれる時間は長かったが、決定機の数では、2得点だった前節と比べても遜色なかったように思う。1点取れれば勝てた試合。消極的な戦いに見えた試合後、ゴール裏ではサポーターと選手、監督が意見をぶつけ合う場面も見られたが、勝利への最短ルートを探った結果が、この戦術だったのかもしれない。大量の選手入れ替えで、チームの戦術の徹底と攻守のバランス、意識の共有は道半ば。最後に笑うための我慢比べが続いている。【yosuie@中毛】



■ 2019年5月5日(日・祝) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第8節

ギラヴァンツ北九州 1−0 ザスパクサツ群馬

ミクニワールドスタジアム北九州 7553人

修羅苦羅


 ザスパは好機をものにできなかった。序盤は互いに決定機をつくれなかったが、FW青木翔らが相手ゴールに迫った。だが、前半終了間際に相手CKから失点。1点をリードされて折り返した。
後半は一進一退の攻防。青木翔やFW高沢らが敵陣に入るもゴールは遠かった。シュート数は計8本で、相手を2本上回った。(5月6日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年5月18日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第9節

藤枝MYFC 1−1 ザスパクサツ群馬

藤枝総合運動公園サッカー場 1733人

勝利が消えた


 ザスパが辛くも勝ち点1を手にした。前半は前線のプレスが効き、相手を自由にプレーさせなかった。MF飯野が惜しいシュートを放つなど、ザスパペースで進んだ。
 後半は一転、藤枝が主導権を握ったが、後半38分にオウンゴールでザスパが先制。だがその6分後、ドリブルで持ち込まれて同点弾を許した。(5月19日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年6月1日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第10節

ザスパクサツ群馬 4−1 FC東京U−23

正田醤油スタジアム群馬 2570人

鬱憤を晴らす

 勝利の草津節が正田醤油スタジアム群馬に響き渡るのは、3月のSC相模原戦以来、実に3ヶ月ぶりのことだった。布体制2年目の今シーズン、かつてないほどにチームを刷新し、開幕2試合を1勝1分で終えたが、アウェイ富山戦でつまづくと、そのまま低空飛行が続く。9節を終えて2勝3分4敗。首位北九州とはすでに勝ち点差が8離れている。特に、先取点を取られると追いつけない、先制しても逃げきれないなど、攻守のバランスがなかなか合わず、勝ち点を逃す結果となっている。J2復帰を目指すチームに、もうこれ以上の取りこぼしは許されない。天皇杯を挟んで1ヶ月ぶりとなった、ホーム正田スタでのリーグ戦。迎えるのはFC東京U-23。是が非でも勝ち点3を取らなければならない。
 ザスパは試行錯誤の中、手ごたえをつかんだ4バックをこの試合でも採用。GK吉田舜、右SBには飯野のケガもあり、リーグ戦デビューとなる吉田将也。CBは渡辺広大と舩津徹也のベテランコンビ。左SBは光永。ボランチは佐藤祥とジャスティン。右SHに前の試合でJ通算100試合出場を達成した青木翔大。左SHに田中稔也。FWはトップ下気味に加藤潤也と、前線に張る高澤優也。ベンチには前節に続き、復帰した岡田翔平が入る。対するFC東京U-23は、2種登録の選手中心。昨年の対戦でゴールを決めた久保建英は、すでにトップチームで活躍、初めてA代表に召集されている。ベンチには月夜野出身、ザスパのジュニアユースから巣立った宮崎幾笑がいる。
 30℃越えの異常な暑さから少し落ち着き、爽やかな風が吹き抜けるスタンドには、紺黄のフラッグがたなびく。今シーズン初めて胸スポンサーとなったファームドゥの社長は、試合前の挨拶で「夢は大きく持とう!ザスパもいつかACL出場を」とエールを送った。キックオフに先立ち、青木翔大の100試合出場セレモニーが行われ、プレゼンターとして登場したのは、大学時代の同期、小林誠。かつてザスパ草津チャレンジャーズからトップ昇格を果たした小林の登場に、スタンドから歓声が上がった。
 そしていよいよキックオフ。風下に立つザスパは、冷静にボールを回しながら、サイドに展開して攻撃を組み立てていく。初先発となった吉田将也も果敢なオーバーラップでチャンスを演出、右サイドで何度かCKを得るが、決定機にはならない。さらに、中盤でのボール奪取からチャンスを作るザスパペースで試合が進む。最初の歓喜が訪れたのは、32分だった。右サイドで青木翔大が入れたクロスを高澤が頭で落とし、ダイレクトで田中がシュート、DFがはじいたボールが落ち着かないところへ、スルスルと入り込んだ佐藤祥が囲まれながらもゴールに押し込んだ。GOOOOOAL!!! 待望の先制点に勢いづくザスパ。40分、体の強さを生かした青木翔大がDFラインを突破してクロス、逆サイドで受けた田中がPA付近で待つ加藤潤也につなぎ、フワッと入れたクロスを待ち構えていた高澤が打点の高いヘッドで叩く。相手GKの手を弾いて、ボールはネットに収まった。GOOOOOAL!!! 高澤は先週の天皇杯決勝点に続く、リーグ戦初ゴール。理想的な時間に追加点を奪ったザスパ。FC東京U-23をシュート1本に抑え、前半を終えた。
 ホームでの久しぶりの勝利へ期待が高まる。しかし、サポーターも選手も浮かれてはない。先月C大阪U-23相手に、2−0から悪夢の逆転負けを喫したばかり。後半に入っても、攻める姿勢は変わらない。3点目は、またしてもルーキーの初ゴールによって生まれた。61分、左サイド相手ゴールラインまで押し込んだザスパ、クリアボールを田中がカット、加藤潤也につなぎ、シュートが相手DFに当たって、ボールは右サイドPA外に流れる。拾いに向かった佐藤祥がスピードを緩めると、後方から走り込んできた吉田将也が右足一閃、低い弾道のボールは、ゴール裏で見守るザスパサポーターの歓喜とともにネットに突き刺さった。GOOOOOAL!!! 3−0となり、前に出てくるFC東京U-23を尻目に、カウンターを繰り出すザスパ。75分には、1年ぶりに岡田が正田スタのピッチに戻ってきた。豊富な運動量でチャンスをつかむと、惜しいシュートを放った。FC東京U-23も宮崎幾笑を投入。試合のリズムが変わりかけたが、止めを刺したのは、高澤だった。渡辺広大のフィードを青木翔大が素晴らしいトラップで受けると、ゴール前の高澤に。放ったシュートは一度GKに弾かれたが、冷静に流し込んでこの日2点目。GOOOOOAL!!! 2週間で3点を奪った大卒ルーキーが、新エースに名乗りを挙げた。このまま完封できるかと思われたが、アディショナルタイムのCKから不要な失点。結局4−1で試合を終えた。
 完璧ではなかったものの、これまでの鬱憤を晴らすようなゴールショーで3勝目を飾ったザスパ。4バックで守備が安定し、青木翔大がSHで存在感を発揮、トップ下で加藤潤也が輝きを放ち、高澤が覚醒し始めている。1週間後もホームで迎える鳥取戦。連勝すれば、見える景色が変わってくるに違いない。【yosuie@中毛】



■ 2019年6月9日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第11節

ザスパクサツ群馬 5−0 ガイナーレ鳥取

正田醤油スタジアム群馬 3380人

進撃のザスパ

 4点目が決まった時、スタンドは喜びと驚きが混在する、異様な興奮に包まれた。痛快。スタジアムでこんな気分になれたのは、いつ以来だろう?
 前節背水の陣で臨んだFC東京U-23戦で、4-1と結果を出したザスパ。1週間後の今節は、ガイナーレ鳥取をホームに迎える。連勝すれば波に乗れるはずだが、2種登録の選手が中心だった前節と比べ、今節の相手は、かつてJ2で刃を交えた昇格のライバル。これまで煮え湯を飲まされた試合も多い。今日が本当の勝負、と思いながらスタジアムに向かう。隣のサッカーラグビー場では、前橋育英ー前橋商のクラシコが行われている。
 空は曇天、雨予報も出ているが、すぐに降り出しそうな雰囲気はない。気温も低めで、選手も動きやすいだろう。ザスパは前節からキープコンセプトのスタメン、唯一田中稔也に代わって、岡田翔平が今季初先発。左膝の前十字靭帯断裂と側副靭帯損傷という大ケガから、ここまで復活してきた岡田のスタメン発表に、スタンドから暖かい拍手が起こる。対する鳥取は、大ベテランのフェルナンジーニョが健在、昨季最終戦で見事なFKを決められた三沢直人が、YS横浜から移籍してスタメンに名を連ねている。この日は「群馬県オールスバルスペシャルマッチ」と題して、県内のスバルグループがバックアップ、来場者には特製タオルが配布された。選手入場時に掲げられ、スタジアムがザスパカラーに染まる。キックインセレモニーには、スバル車を愛用している、2011年女子W杯優勝メンバーの丸山桂里奈さんがサプライズ登場、スタンドから歓声が上がった。
 そして、いよいよキックオフ。やはり前節のように、簡単にはボールを回させてくれない。吉田将也が遠目からロングシュートを放ち、バーに当てたものの、それ以降は自陣内でのプレーが続く。それでも、今のザスパの守備は簡単に崩れない。そして、奪ったボールを右サイドに展開すると、吉田将也がアーリー気味にあげたクロスに、左から高澤優也がヘディングで合わせる。GKは逆を突かれ、飛び込んだ加藤潤也の足も届かず、そのままゴールネットを揺らした。待望の先制点と思われたが、線審がフラッグを上げている。ジャッジについての説明はないのでよく分からないが、最後の加藤の飛び込みがオフサイドと判定されたのか?後でリプレイを見直しても、相手選手はGKを含めて高澤がヘディングした時点でボールには触れられず、加藤の位置は相手のプレーにも結果にも関与しないと思われる。加藤をはじめ、選手は猛抗議したが、判定は覆らない。しかし、こういう状況から崩れていくようなチームの脆さは、いつのまにかなくなっていた。30分、自陣内からまたも右サイドに展開し、青木翔大が相手DFをかわしてドリブルでバイタルエリアに進入する。そして、その外を追い越す高澤にパス、PA内に侵入した高澤がシュートモーションに入りかけたところで、相手DFに倒された。すかさず主審が笛を吹き、PKを指示。キッカーはもちろん高澤。右に蹴るモーションから、GKの動きを見てゴール左に切り替えて綺麗に決めてみせた。GOOOOOAL!!! 前節に続いて良い時間帯に先制点をゲット。これで試合を優位に進められる…と思ったのだが、実はこれは、圧巻のゴールショーの始まりに過ぎなかった。
 次の歓喜は、わずか1分後。スローインから左サイドで岡田がキープ、いったん佐藤祥に戻し、中央で待つ青木にパス。青木はワンタッチで右サイドに流すと、そこにいるのは吉田将也。ダイレクトでの折り返しを受けた青木は、ゴールに背を向けて相手DFを背負ったまま反転、左足でゴールに蹴りこんだ。GOOOOOAL!!! 流れるようなパスワークと芸術的なシュート。立て続けの得点で地鳴りのような歓声が上がる。しかし、ザスパは手綱を緩めない。4分後、渡辺広大がFKで右サイドに振る。受けた青木が吉田将也に戻し、さらにボランチのジャスティンへ。中を見つつジャスティンが縦に出した先は、すでに前に走り出している吉田将也。そのまま鳥取の左陣を深く抉ると、中央にグラウンダーの速いクロスを送る。そのボールに左足で合わせたのは高澤。ボールはコースを変え、ゴール左隅に吸い込まれる。GOOOOOAL!!! 驚嘆と歓喜に包まれるスタンド。ボルテージはさらに上がる。2分後、吉田舜のゴールキックから、セカンドボールを拾った佐藤が前線へパス、流れた加藤が左サイドで受けると、中央に向かって切り込んで行く。前を走る高澤に出したパスは相手DFに当たって弱まる。高澤はキープせず、後ろ向きで流すと、そこに走りこんでいくのは岡田。体制を崩しながらも放ったシュートは正確にゴールマウスを捉え、彼の復帰弾はザスパサポの狂喜とともにネットを揺らした。GOOOOOAL!!! 岡田のゴールを祝福するザスパの選手の傍らで、鳥取の選手は試合中にも関わらず、円陣を組んでいる。圧巻の4ゴール。その場にいるすべての人に衝撃を与える7分間だった。攻撃力が自慢の鳥取相手に、圧倒的な試合運び。ザスパのためだけの前半が終わった。
 後半もザスパの勢いは止まらない。開始早々、加藤がPA内に侵入してシュートを放つが、相手DFにブロックされる。加藤は古巣の鳥取相手に気合充分。ゴールこそ奪えなかったが、ピッチを縦横無尽に走り、大勝の立役者となった。攻めに出るしかない鳥取を逆手に取り、何度もDFの裏を取り、鋭いカウンターを演出した。特に、吉田舜の素早く正確なパントキックを受けて高澤に出し、ゴールに迫ったシーンは、得点には至らなかったものの、スタンドを大いに沸かせた。後半2度ほど決定機を迎えた高澤だったが、決め切れずハットトリックはお預け。しかし、2試合連続2得点で、一気にチーム得点王に並んだ。ザスパのJリーグでの歴代最多得点は、1試合4点。この記録が打ち破られる時がとうとうやってきた。とどめの5点目を奪ったのは、躍動する右SBだった。83分、自陣ゴール前でマイボールにすると、佐藤が降りてきた高澤にパス、高澤は左サイドに張る加藤へ。驚異的はスピードでゴールに迫る加藤、恩返しゴールを期待したサポーターの予想を裏切り、シュートではなく横にパスを出す。そのボールを走り込んで押し込んだのは、吉田将也。この終盤に来ても落ちないスピード、自陣から一気に最前線まで駆け抜け、ゴールに流し込んだ。GOOOOOAL!!! その後、鳥取の最期の抵抗を受け流し、前節の轍を踏まずに零封。5-0の爆勝。いつの間にか降り出した雨の中、歓喜の草津節がスタジアムに響いた。
 ザスパはこれで4勝3分4敗の五分に星を戻した。しかし、首位熊本との勝ち点差は8のまま。昇格に向けて予断を許さない状況に変わりはないが、チームの雰囲気、スタジアムの雰囲気は確実に好転している。次節はアウェイ長野でのバトルオブ上信越。3連勝で混戦J3の台風の目へ。期待に胸踊り、週末が待ちきれない。【yosuie@中毛】



■ 2019年6月16日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第12節

AC長野パルセイロ 0−1 ザスパクサツ群馬

長野Uスタジアム 3196人

94分の閃光

 僕らはこの光景をいつまでも忘れないだろう。スタジアムのライトに照らされ、緑の芝にひざまづき、溢れる感情を抑えきれずに、両手で顔を覆う彼の姿を。

 当初は雨の予報だった。日が近づくにつれ徐々に内容が変わり、迎えた当日、群馬は30℃に届く暑さと、強い風が吹き荒れる、まったく別の陽気になった。長野市は、群馬にも拠点のあった真田氏ゆかりの地。高速を使えば、目的地の長野Uスタジアムまで、そんなに長くはかからない。試合開始の2時間前には到着できるように、刻を見計らって車に乗り込んだ。
 幸い道も混んでいない。しかし、上信越道に入り碓氷峠に近づくと、にわかに厚い雲が湧き出てきた。山沿いの天気は不安定になっている。いくつかトンネルを越えて、千曲川のほとりにたどり着いた頃には、空一面が雲に覆われていた。群馬と比べて、気温も低い。
 1年前、意気揚々と向かった僕らの目に飛び込んできたのは、田園風景の先に佇む、巨大な建造物。そこには、屋根付きの素晴らしいサッカー専用スタジアムがあった。強い羨望と大いなる敗北感。その時の思いがまた蘇る。アウェイ入場口には、ザスパサポーターの入場列が伸びていた。選手バスを鼓舞するパルセイロサポーターの歌声が響いている。売店には、おやきや山賊焼き、蕎麦などのご当地名物が並んでいる。
 試合まであと1時間を切った。和やかだったスタジアムの空気に、少しずつ緊張感が混じっていく。ピッチアップを始める選手たちの気持ちを盛り上げるように、双方のゴール裏からチャントが響く。
 屋根に反響して増幅されるアンセム。選手入場の音楽が流れると、パルセイロ側のスタンドだけではなく、ザスパのゴール裏からもビッグフラッグが出現した。選手の往来も多く、隣県の良きライバルとして、お互いをリスペクトしているからこそ、このスタジアムの雰囲気が成り立つ。しかし、勝負は負けられない。昨日、首位の熊本が敗れた。今日勝って3連勝を飾れば、勝ち点を詰めることができる。パルセイロボールで試合はスタートした。
 ここ2試合で9ゴールを叩き出しているザスパ。好調な攻撃陣が、パルセイロゴールに襲いかかる。対するパルセイロは、自陣のスペースを埋めつつ、ロングボールでザスパのDF裏を突く。その攻撃をはじき返そうとして、アクシデントが起こった。CBの舩津徹也と渡辺広大がヘディングで交錯、舩津の額に血が滲んだため、ピッチ外での治療を余儀なくされた。一時的に数的不利となったザスパに、パルセイロが牙を剥く。右サイドからのクロスはPA外にはじき出したが、こぼれたボールに詰められ、相手選手に当たってコースが変わる。ここはGK吉田舜がとっさの判断で足に当て、事無きを得る。
 苦しい時間が続いた。スペースは埋められ、ザスパのストロングポイントであるサイド攻撃が生かせない。相手に持たれる時間が自然と長くなり、ここ何試合か味わっていない、ジリジリした展開となる。それでも、勝てない苦しみから這い上がり、勝利を味を知った選手の目は、光を失っていなかった。ゴールラインを割りそうなボールにも、必死に食らいつく青木翔大と岡田翔平。少ない綻びから突破を試みる吉田将也と光永祐也。黒豹のようにしなやかな動きで相手のボールを奪い取る佐藤祥。チャンスに繋げられず、咆哮する金城ジャスティン俊樹。この日はゴールを挙げられずにピッチを去った、高澤優也の悔しそうな顔。必死にボールを追い、勝利への執念が滲み出る姿。求めていたのは、このザスパだ。
 後半も残りわずか。ザスパにこの日最大のチャンスが訪れる。右サイドコーナー付近で佐藤がボールを絡め取ると、即座にセンタリング、待ち構えた青木がドンピシャのヘッドで合わせた。しかし、挙げかけた両手は、相手GKのファインセーブで押しとどめられた。
 負けられない。布監督が、次々と攻撃のカードを切る。ドリブル突破のできる田中稔也、前線でターゲットとなる福田俊介。ケガから復帰した窪田良がピンポイントのパスを吉田将也に通すも、ゴールに繋がらない。
 90分を過ぎても試合は動かない。流れが良くない。声を上げながら、苦い記憶が頭をよぎる。(また引き分けなのか…)
 ボールはザスパ陣内へ。タッチラインに逃れるも、前半から脅威となっていたロングスローがゴール前に入る。一度弾くも、セカンドボールを拾われ、再びPA内にボールを入れられる。 (決められるかもしれない…)
精度を欠いたクロスを光永がクリア
拾った窪田がタックルを受けながらも、ボールを前線に送った。

(残り時間は…?)

待ち受けた加藤潤也が前を向く。
相手GKはまだ準備が整っていなかったが、
加藤はシュートを打たず、
猛然とゴールに向かってドリブルを開始した。

(入らないかもしれない…)

相手DFの戻りも早い。
引きつけた加藤が右足のアウトサイドでボールを出す。

(入らないかもしれない…)

走り込んだ田中は、ダイレクトに打たず、
右足で受けると、左に切り返した。

(入らないかもしれない…)

GKの動きを見極めながら放ったシュートは、


パルセイロゴールの右隅を射抜いた
GOOOOOAL!!!




 眼前の出来事に、はじけるゴール裏の空気。自分が何を叫んでいるか、何が聞こえているか、解らない。直後に吹かれた試合終了のホイッスルは、耳に届かなかった。チームメイトに手荒い祝福を受けた田中が、ゴールライン際まで歩み寄り、膝を落とす。両手で顔を覆った後、天を指し、何かを叫んだ。目蓋に滲んだ水分で、その姿が歪んで見えた。散り散りだったスタンドの歌声が徐々に揃っていく。

 茶臼山の手薄な家康本陣を狙う真田赤備えの突撃の如く、ラストプレイでのゴール。突き出した槍は届いた。AC長野パルセイロを0-1で下し、ザスパは3連勝を果たした。劇的勝利とニューヒーローの誕生。上位追撃の準備は、今整った。【yosuie@中毛】:画像提供【え亥輪@前橋】




■ 2019年6月23日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第13節

ザスパクサツ群馬 3−1 カマタマーレ讃岐

正田醤油スタジアム群馬 2149人

縦横無尽

 前節ラストワンプレーの田中の劇的ゴールで、3連勝を飾ったザスパ。今節の相手讃岐、そして次の熊本と、J2からの降格組の上位との対戦が続かぃね。ここで連勝でぎれば、遅ればせながら昇格争いに名乗りを上げることができるで。(逆に連敗しちまったらおーかやべぇやぃね)まずは今節3位の讃岐との2年ぶりの対戦さね。天気予報では試合の時間は雨の予想。雨具を用意して正田醤油スタジアム群馬へと向かう。途中腹ごしらえで、験担ぎに西片貝の〇亀製麺で「釜玉うどん」を食ったで。・・・店に常備されてる釜玉うどんにかける「だし醤油」が我らが正田醤油の製品じゃねーきゃ!ならばカマタマを正田でかんましてやるんべぇ(笑)
 腹も満たされ、鉛色の空に覆われた正田スタに到着。このまま天気が最後までもつといいんだけんど。ザスパのスタメンを確認。GK23吉田、DF19吉田将・2舩津・32渡辺・24光永、MF6佐藤・15金城・7加藤、FW9岡田・10青木翔・17高澤、サブにGK21キム、DF28福田・5青木翼、MF8窪田・30姫野・前節のヒーロー14田中、FW18中村。4バックにしてから負け知らずのザスパ。方や讃岐のスタメンには元ザスパのMF永田がいるで。前節J3最年長ゴールを決めたFW我那覇はベンチ外だったで。
 間もなく試合開始の19時あたりから雨がポツポツと落ち始め、草津節詠唱の頃には結構な雨になっちまったぃ。あぁぁ天気もたなかったかぁ。まぁ今日は濡れる覚悟で来たからいいだんべ。
 試合開始、ザスパは高澤がワントップ、2列目が左から岡田・加藤・青木翔の4-2-3-1みてぇだぃな。讃岐の永田はアンカーの位置のようだ。ザスパは中盤の底からサイドに展開する攻撃で、讃岐を押し込む。讃岐の攻撃に各選手が激しくプレスをかけて、ボールの出所を封じ、ほとんど前に進ませねぇ。それにしても加藤の運動量がすげぇ。さっき敵陣深くにいたかと思えば、今度はサイドで激しいプレスをかけてるで。ザスパのペースで試合が進む。まさに圧倒の展開。いつしか雨も止んでた。前半24分左サイドの光永のクロスに、ゴール前で高澤が足で合わせるも相手GKの攻守に阻まれ得点ならず。その後も高澤にゴールのチャンスが訪れたが、得点を奪えず。今んところ讃岐を完全に封じてるし、何としても先制点が欲しいやぃ。
 前半36分、右奥でFKを得てキッカーは金城。ちょんと短く右前に出して、吉田将がクロスを上げる。これを讃岐がクリアしたこぼれ球を光永がダイレクトにボレーでシュート!ボールはゴール左サイドネットを揺らした!GOOOOOAL!!! 先制点はザスパ!光永の初ゴール!その後もザスパペースで進み、前半の讃岐のシュートは0本に抑えたで。
 後半開始。再び雨が降り出す。後半4分、ボールを加藤が、左サイドの敵陣深くからドリブルで中央へ突破。たまらず讃岐・永田が足を懸けて倒し、主審はPKの判定。加藤自らこのPKをゴール中央に蹴り込んだ!GOOOOOAL!!! 追加点、いい度胸じゃねーきゃ!これで2-0。
 しかし俗にいう「2-0は危険なスコア」。こないだC大阪U-23の試合もこっからひっくり返されたんだぃなぁ。(嫌な予感っきゃしねぇ・・)讃岐も選手を替えて、ザスパゴールに迫るも吉田舜の好セーブもありゴールを割らせず。雨の中あんなに走ってる加藤を始め、ザスパの面々は後半も運動量が全然落ちてねぇで。後半30分、岡田に替えて前節のヒーロー田中を投入。雨がますます強くなって、はぁオレの防水じゃねぇデジカメを取り出したらぼっこれちゃうんべっつーレベルだ。双方、攻撃を仕掛けるが得点は奪えず。ピッチはスリッピーになり足を滑らす選手が双方にみられるが、こんなに土砂降りなんに、水が浮いて田んぼ状態になんねぇ正田スタの芝生がすんばらしい。芝生管理のレベル高ぇやぃなぁ。残り時間は10分。後半39分、讃岐のカウンター、左サイドの突破を許し、このクロスを替わったばかりのペ スヨンに決められ、2-1。やべぇ、このまま逃げ切れるんきゃ?(嫌な予感っきゃしねぇ・・)・・・しかしこの日のザスパは今までのザスパと違ってたで。
 その4分後の43分、ザスパのカウンター、田中から逆サイドの吉田将へ。吉田将は相手守備陣をきっちり引き付け、最後に中央に流す。走り込んだんは、またも加藤〜!冷静に無人のゴールに流し込んだ!GOOOOOAL!!! これで3-1! その後は高澤に替え福田を入れ守備を固め、アディショナルタイムには加藤から姫野に替えて落ち着いて試合をクローズさせて、3-1で勝利!これで見事に4連勝!降りしきる雨の中、歓喜の草津節が敷島の杜に木霊したで。いやぁザスパが勝てば、土砂降りのずぶ濡れもまた楽しぃやぃ!
 今日はまさにミニ四駆の名のごとく、縦横無尽に正田のピッチをかんまして、大活躍した加藤はじめ、選手各位が自分の仕事をきっちり行って、攻守に安定した試合をみることができたで。いやぁだいぶチームとして成熟してきてるんじゃねぇーきゃ?次節はアウェイで首位の熊本との対戦。期待でぎるんじゃね?ここは首位も喰って5連勝して、一気に昇格争いに加わるんべぇ!【すずき@東毛】




■ 2019年6月30日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第14節

ロアッソ熊本 2−1 ザスパクサツ群馬

えがお健康スタジアム 3085人

追撃失敗


 ザスパが接戦を落とした。前半9分、カウンターからMF加藤潤の右クロスにFW高澤は合わせて先制。GK吉田舜が好セーブで再三のピンチを救ったが、同34分に左サイドを破られ、追い付かれた。
 後半24分に逆転弾を決められると、ザスパは攻めに転じた。FW青木翔やDF光永がゴールを脅かすも、相手GKに阻まれた。(7月1日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年7月7日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第15節

ザスパクサツ群馬 2−0 福島ユナイテッドFC

正田醤油スタジアム群馬 2472人

布監督不在

 前節首位熊本とのアウェイゲーム。勝てば一気に勝ち点差を詰めるチャンスだったが、怒涛の猛追もゴールが奪えず、1-2の敗戦。おまけに、明らかに短いアディショナルタイムについて説明を求めた布監督に、主審は理解力がないのか退席処分を命じたため、1試合の指揮停止処分に。追い上げムードが一旦途切れた中、迎える今節ホーム福島戦は、今後に繋げる重要な試合。冷たい霧雨の舞う正田醤油スタジアム群馬に、2500人近くのサポーターが詰めかけた。
 ザスパはここのところ不動のスタメン。ベンチにはケガから戻って前節も途中出場した飯野、キャッチコピーが初お披露目となった、坂井大将もいる。対する福島には、昨年まで紺黄のユニフォームでともに戦った、小牟田が名を連ねている。
 是が非でも勝ち点3を取りたいザスパだったが、前半開始早々から不穏な空気が流れる。キックオフ直後にボールを受けた加藤潤也に、相手選手が後ろからタックル、加藤は右足を押さえたまましばらく起き上がれない。主審はプレーを止めたものの、カード提示はなし。何とか起き上がった加藤だったが、明らかに危険なプレーだった。その後もボールを保持するザスパに、福島の選手は間合いを詰めてディフェンスを仕掛けてくる。バックパスを蹴り返そうとした吉田舜にも相手FWが詰めて、危うく押し込まれそうな場面も。そんな状況下でも両サイドに活路を見出し、福島ゴールをこじ開けようとするザスパ。21分、左サイドの崩しからマイナス気味に折り返したボールを高澤がダイレクトでシュートしたが、枠の外。27分、自陣内からのフィードを相手DFと競りながら裏に抜けた高澤、GKと相手DF2人を引き付け、ゴール前でフリーの加藤潤也にパスをする。GKの動きを見ながら冷静に逆を突くダイレクトシュートを放ったが、わずかに逸れ、ゴールネットを揺らせない。思えば、加藤は最初のタックルで負傷し、ボディバランスが崩れていたのかもしれない。逆に41分、相手FWのイスマイラに抜け出され、GK吉田舜が飛び出すもループでかわされたが、ゴールライン際に辛うじて戻った舩津がクリア、絶体絶命のピンチを救った。前半は福島のラフプレイに手を焼きながらも、決定機は作ったが決めきれず、勝負は0-0のまま後半45分に受け渡された。
 後半に入っても、試合展開は変わらず。64分、自身のポストプレイを加藤から再度受けた高澤がGKと1対1になるが決められず。布監督に代わって指揮を執る清川ヘッドコーチは、岡田に替えて窪田を投入した。残り20分弱。待望のゴールという結果は、その清川コーチが担当するセットプレイから生まれた。71分、右CKを得たザスパは、ジャスティンが蹴り入れる。右足でゴールと逆方向に曲がりながら落ちていくボールは、ほぼ正面で待つ青木翔大の頭にピタリと合い、渾身のヘディングシュートは相手GKのグローブを弾きながら、ゴールネットを揺らした。GOOOOOAL!!! 福島も小牟田を投入。イスマイラとの長身ツートップでザスパDF陣に圧力をかける。点差は最小の1。何か事故があれば、ゲームが振出しに戻ってしまう。そんなギリギリの中で結果を出したのは、高澤だった。87分、吉田将也のアーリー気味のクロスを、大外で待っていた高澤がヘッドで相手ゴールに叩き落とし、GOOOOOAL!!! 今季6点目。その前のプレーで相手DFと交錯、転倒し、鼻骨を負っていた高澤。そんな状況で決めた追加点は、福島の息の根を止める素晴らしいゴールだった。終盤の福島の猛攻も身体を張って止めるザスパ。そしてこのまま試合終了。 前節の敗戦を引きずらず、仕切り直しの一戦できっちり結果を出して、再び追撃の銅鑼を鳴らした。
 雨中の歓喜。布監督不在という逆境を乗り越え、J2昇格レースの勝負は、まだまだこれから。選手、フロント、サポーターが同じ方を向き、次なるステップへ向け、足並みは揃っている。【yosuie@中毛】




■ 2019年7月14日(日) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第16節

アスルクラロ沼津 1−1 ザスパクサツ群馬

愛鷹広域公園多目的競技場 2025人

苛立つドロー


 ザスパが決め手を欠いて、引き分け。前半23分、相手GKがこぼした球を、MF坂井が蹴り込んで先制。前半終了間際にPKを許し、1−1で折り返した。
 後半は互いに譲らず、目まぐるしい攻防戦。猛攻を仕掛けたザスパはFW高澤のヘディングシュートがGK正面になるなど、決定力を欠いた。(7月15日『上毛新聞』より引用)





■ 2019年7月20日(土) ■

2019明治安田生命J3リーグ 第17節

いわてグルージャ盛岡 2−2 ザスパクサツ群馬

いわぎんスタジアム 1308人

前半劣勢 後半猛攻するも逆転ならず


 ザスパが辛くも引き分け。前半は相手の圧力を受け、球を保持できない時間が続いた。前半19分、同26分にCKから立て続けに失点。1点を返せず、0−2で折り返した。
 後半はFW岡田らの投入でサイドに起点をつくり、持ち味の攻撃が活性化。後半23分にFW高澤、同43分にFW青木翔がゴールを決めて追いついたが、逆転はならなかった。(7月21日『上毛新聞』より引用)





Special Thanks
ご寄稿、ご協力、画像のご提供あんがとね! (順不同)

yosuie@中毛 様
ばた@前橋 様
山本五十八@太田 様 様
え亥輪@前橋 様
あきべー@北毛 様
マッシー@前橋 様
とも@川崎 様
THES-NAMAKA@前橋 様

製作協力:三束雨@藤岡



Copyright(c) 2019
すずき@東毛

無断転載、複製公開はかたくお断りすらぃね!

リンクはフリーだけんど
トップページ http://jn1bpm.sakura.ne.jp/gunma/thespa/ にたのまぃね!

もどる